Яoom ИumbeR_55

Яoom ИumbeR_55は「男性→女性への腹パンチ」を主に扱う小説同人サークルです。

いただいている依頼がひと段落しそうなので、思い切って冬コミに申し込みました。
新作を作っていますので、もし受かったらよろしくお願いします。

サクカ案5

NOIZ 笑み5
 美樹が雑居ビルの間の路地に足を踏み入れた瞬間、下水と生ごみが混ざり合ったような臭いが鼻をついた。数十メートル背後では若者で賑わっているビルや店舗が煌びやかな光を放っているというのに、溪谷のようなこの隙間には届かない。
 灯されたジッポーライターの火が一際明るく見えた。
 タバコを吸うようになったのも、この臭いを紛らわすためだったな──と思いながら、美樹はショートホープに火を付けた。粗大ゴミの間を縫うようにして、赤い蛍と共に路地の奥へと進んでいく。途中、浮浪者の男がダンボールに包まって寝ていた。年齢は養父と同じくらいだろうか。美樹は少し迷った後、ブーツのつま先でダンボールを小突いた。男は濁った目を開けて美樹を見上げた。
「すまないが、今日はほかの場所で寝てくれ。これから大事な商談があるんだ」と言いながら、美樹は一万円札を取り出して男に差し出した。
 男はかなり年季の入った浮浪者のようだ。肌は泥のように真っ黒で、まばらに生えた白髪混じりの髪の毛は蝋で固めたように束になり、まるで海底でゆらめくワカメのように見えた。
 諜報員の変装でもここまでは化けられまいと美樹は思ったが、万が一のことがある。
 男は信じられない素早さで美樹の手から紙幣を奪うと、身振り手振りで訳のわからないことを喋り出した。何か同意を求めているようだったが、痴呆が進んでいるのか言葉の体を成していない。美樹は小さくため息を吐くと、少し強めに男の腹を蹴った。男は転がるようにして路地の入り口へと消えていった。
 美樹がさらに奥に進むと、袋小路に派手な格好をした若い女が一人、裏返したビールケースに座っていた。オーバーサイズのスカジャンに短いデニムショーツ。髪の毛は白に近い金髪のショートカットで、ピンクのインナーカラーが入っている。女は消えてしまいそうなほど白い顔を上げて美樹を見ると、にっこりと笑った。
「また会えると思ってなかったよ……」
 女は派手な格好とは裏腹に、子供を寝かしつけるようなとても穏やかな声で言った。
「お互い様だ」と美樹が返事をして、煙を長く吐き出した。
「鷹宮美樹……だっけ? 今の名前……」
「……ああ」
「ショッポ吸ってるのは変わってないんだ?」
「そうだな」
「一本ちょーだい」
 女は動作のひとつひとつを確かめるようにゆっくりと立ち上がると、差し出されたタバコを受け取り、慣れた手つきで美樹の咥えているタバコの先端に重ねて火をつけた。そして盛大に咽せた。
「今はなんて呼べばいい? まだミツキのままでいいのか?」と、美樹が聞いた。
「ううん。今はアヤ」と、涙を浮かべて咳き込みながらアヤが答えた。
「……知り合いと同じ名前だな」
「じゃあ、ちょっと早いけど変えようかな。名前なんてなんでもいいんだ。どうせ本当の名前も知らないんだし……あ、ちなみにあの浮浪者、スパイじゃなくて本物だよ。まぁ軽い蹴り一発で一万円もらえたなら良かったんじゃない?」と言いながら、アヤはインイヤーモニターを指で三回叩いた。「はい、今からはオフレコ。通信も監視も切ったから、なに話しても大丈夫だよ」
 アヤは美樹にハグをするように両手を広げた。美樹は視線だけで周囲を見回す。人影は全く見えないが、おそらく何人もの人間が美樹とアヤを中心に半径数キロメートルに渡って配備されているはずだ。アヤという女王蟻を守る兵隊蟻のように、周囲の状況を逐一監視し、情報は全てアヤに集まってくる。
「その様子だと、情報屋稼業は順調そうだな」と、美樹が言った。
「順調もなにも、私にはそれしかできないもの。あの頃に比べてネットワークは数万人に増えたから、もう私に調べられないことは無いと思う。まぁ最近は諜報よりも、空気入れたり噂流したりして抗争を起こさせる依頼の方が多いかな」と言うと、アヤはビールケースに腰掛けた。「で……今日はどうしたの? 神社の養子になってからすっかり丸くなったと思ったけれど、ちょっと雰囲気が戻ってる気がする」
「……久し振りに、殺さなきゃならない奴ができた」と言って、美樹は顔を歪めたまま地面に捨てたショートホープをブーツの底で潰した。
「まぁ怖い」と言いながら、アヤは両手で頬杖をつきながらにっこりと笑った。「でも笑ってないわね。そういう怖い顔をしている美樹はまだ安全だもの。本心じゃないんでしょ?」
 わからない、と言って美樹は二本目のタバコを取り出した。
「ねぇ美樹……私はこっちに戻ってきてほしくない。私と違って、やっと大切なものが見つかったんでしょ? こっちに戻ってきたら、もう『鷹宮美樹』には戻れなくなっちゃうよ?」
「……大切な人をこいつに殺された。どうするかは真実を知ってから決めたい」と言いながら、美樹はアヤに写真を手渡した。
 アヤは写真をじっと見つめながら「……綺麗な人。どこの国の人?」と言った。
「ロシア人だ。名前は……その時はシオン。アスクレピオス社の創業家の長女だ」
「あの製薬会社の? すごいセレブじゃない。で、『その時は』ってどういうこと?」
「シオンの中にはノイズという別の人格がいて、今は完全にノイズに乗っ取られている。世の中を騒がせているレイズモルトや人妖事件も、そいつが黒幕だ。そして私の目の前で、大切な後輩を殺した……」
 アヤは深いため息を吐いて首を振った。
「……もちろん無理にとは言わない」と、美樹が言った。「ノイズが率いている組織の規模やレベルはわからないが、本人は全く表に出ずにこれだけ社会を混乱させる能力があることは確かだ。危険な仕事に変わりはない」
「ううん、大丈夫」と言って、アヤはにっこりと笑った。「この仕事は命懸けになりそうだけど、美樹がいなかったら私はとっくに死んでるんだもの。最優先でやってあげる。二日間だけ時間をちょうだい」
「……すまないな。報酬は言い値を払う」
 美樹の言葉に、アヤはまたにっこりと笑って首を振った。
「じゃあ、今度はこんな臭い場所なんかじゃなくて、素敵なお店で一緒に食事して。お互い生きてたらだけどね」
「……私もお前も死なないし、食事にも行く」
 アヤが笑顔のまま、美樹の言葉を噛み締めるように何回か頷いた。
「──ねぇ、みんな死んじゃった。最後まで残ってたリョーコもカエデも」
「……そうか」
「みんな必死だったよね……孤児院を放り出されてから、頼れる人もお金も何も無くて……。二人とも良い子だったのに……」
 良い子、という言葉を聞いた瞬間、美樹の表情が微かに歪んだ。
「みんないつか死ぬけれど、死ぬのは嫌。死なれるのはもっと嫌……。でも私は今の状況がすごく好きだよ。明日死ぬかもしれないと思えば、毎日が全力で生きられる。美樹も同じでしょ?」
「……ああ」
「じゃあ、食事楽しみにしてるから」
 美樹がアヤに礼を言って、路地の入り口に向かって歩き出した。ふと、あのホームレスは新しい寝床を無事に見つけたのだろうかと考えた。美樹がしばらく歩いてから袋小路を振り返ると、アヤの姿は最初から存在しなかったかのように消えていた。


「ゔっぶぇぇぇぇッ!? おぶぇろろろろろろろッ!!」
 サンドバッグから解放された瞬間、朝比奈は両手で腹を押さえながら激しく嘔吐した。バトルスーツの腹部は長時間殴られ続けてロボロに破れ、素肌には何ヶ所も青痣が浮かんでいる。
 豚は嘔吐している朝比奈の頭をバスケットボールのように掴むと、勃起した男性器を朝比奈の口に強引に捩じ込んだ。
「んぐぉおぉぉぉぉッ!?」
「あぁ……やっとひとつになれたね朝比奈ちゃん……。喉がすごく締まってチンポが溶けそうだよ……おおおおおッ!? また出るッ! 出る出る出る出るぅッ!」
 豚は朝比奈の苦痛などまるで考えず、後頭部を貫くような勢いで朝比奈の頭を前後に揺すった。朝比奈の地獄のような悲鳴と、豚の恍惚とした声が重なる。やがて豚の男根が二回りほど膨らむと、もう何度目かの放出にも関わらず多量の粘液を朝比奈の喉奥にぶちまけた。気管や食道がたちまち粘液で満たされ、朝比奈の瞳がぐりんと裏返る。
 恍惚の表情を浮かべている豚とは対照的に、朝比奈は両腕をだらりと脱力したまま痙攣していた。腹部は大量に飲まされた粘液でみるみるうちに膨らみ、浮かび上がった青痣が一層強調される。豚は長い放出を終えるとようやく朝比奈の口から男根を引き抜き、朦朧とする朝比奈を無理やり引きずり起こして腹部に拳を打ち込んだ。
「ぶぼぇあッ!?」
 ぽっこりと膨らんだ胃が一瞬で潰れ、大量の白濁液が朝比奈の口から吹き出す。朝比奈はそのまま吐き出した粘液の中に倒れ込み、赤ん坊のように身体を丸めながら失神した。
「ああ朝比奈ちゃん、なんでそんなに可愛いんだい? もう時間がないのに、またムラムラしてきたよ……」
 豚は大きなトラブルに直面した時のように、剃り上げた頭を両手で抱えた。すぐさま「ティッシュのようなもの」と呼ばれた少女が豚の足元に駆け寄り、少女の口には有り余るほどの男根を咥える。
 豚はしばらく無言で少女の奉仕を受けていたが、やがて少女を無理やり引き起こすとベッドに放り投げた。豚もベッドに登り、怯えと期待の入り混じった表情を浮かべている少女に挿入し、激しく腰を振り始めた。豚の押しつぶすようなピストンに少女の身体は完全に隠れ、巨体の陰からは少女の悲鳴とも嬌声とも取れぬ絶叫が漏れ続けた。ようやく豚が放出を終えると、大股開きになったままガクガクと痙攣する少女が残された。
「ふぅぅ……そろそろ出発しなければな。まだ出し足りないが、仕事はきっちりこなさなければ……。おいゴミ穴、朝比奈ちゃんのケアはくれぐれも丁重にするんだぞ。きちんと仕事をすれば、またお情けで使ってやる」
 少女はその言葉に痙攣しながら口角を上げ、なんとか頷いた。豚は少女に一瞥もくれることなく、シャワーを浴びに部屋を出て行った。


※こちらの文章はラフ書きになりますので、製本時には大きく内容が変わる可能性があります。

ご依頼ありがとうございました。
シオンさん腹責め&足フェチ要素多めに、という内容で制作させていただきました。
冒頭部分の公開許可をいただきましたので、こちらに掲載させていただきます。

ご相談等ありましたらメールにてお願いいたします。
→roomnumber55.japan@gmail.com


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1
「大久保さん、お待たせです」と言いながら部下の下田は港湾倉庫の一角で車を停めると、運転席に座ったまま断りもなしにタバコに火をつけた。
 下田は三十歳を過ぎても敬語もろくに使えないうえに、運転席から降りてドアも開けに来ない。だが、与えられた仕事はきっちりする男だ。
 個人的に付き合いたい人間と、一緒に仕事をしたい人間は分けて考えるべきだと大久保は考えているので、大久保は下田の態度に対しても取り立てて腹を立てたりはしなかった。
 大久保が自らドアを開けて降り立つと、海風が吹いて倉庫の錆び付いたトタンの壁と屋根を震わせた。ようやく下田も降りてきて、咥えタバコのまま大久保の横に並んで倉庫を見上げた。タバコに混じって香水の匂いも漂ってくる。
「タレコミはホンマでしたわ。ワシらのシマ荒らしてた奴らで間違いなかったんで、とりあえずワシと井上でボコしてパイプ椅子に縛り付けてます。例のNPO法人に偽装して、家出少女に売春斡旋しよった三人ですよ。男が二人と女が一人。売れそうなら船の手配しますけど、歳取りすぎてるから良い値は付かんと思いますわ。クスリで内臓ボロボロの可能性もあるんで、まぁ使い道は無いと思います。殺すなら馴染みの漁師に頼んで沖に捨てさせますんで。ジジイの一人漁師なんで足は付かんですよ」
「お前そんな人脈までいるのか?」
「今は漁もハイテク化ってやつでね、ボロ船と古い頭しか持っていない漁師はみんな青色吐息なんですわ。ソナーやエンジンですら着いていけんかったのに、今やAIと人工衛星でしょ。実入は減る一方だから、『副業』でもして金蓄えとかんと不安でたまらん……と考える老人は多いんですよ。まぁ漁師に限らんですけどね。そういう奴らに声を掛けて、上手いこと使うことが自分の手を汚さないコツなんですわ」
 下田は一気に捲し立てると、タバコを足元に落としてギラギラと光る革靴で踏んだ。
 あらためて見ると、なるほど自分とは違って確かに女にモテそうだと大久保は思う。大久保はスキンヘッドに髭を蓄え、筋肉も脂肪も分厚いプロレスラーのような体型のため下田や井上からはマフィアのようだと揶揄(からか)われる。対して下田は複数の女に貢がせている、いわゆる「ヒモ」が本業だ。野生味と危なっかしさがない混ぜになった雰囲気。サイドを刈り上げ、ジェルで固めた剣山のような髪。日焼けサロンで真っ黒に焼いた肌に異様に白い歯。本気でプロのキックボクサーを目指していた名残の盛り上がった筋肉。
「わかった、その時は連絡する。捕まえるのには苦労したのか?」と、大久保が言った。
「いやいや、所詮素人の火遊びですわ。大人しく詫び入れて消えりゃあ金だけで見逃してもよかったんやけど、威勢だけは良くてナメた態度とってきやがったんでね。ほんま手間ばかり掛かって金にならん仕事ですわ。せめて大久保さんが『能力』使って遊んでやってくださいよ」
「そうか……。ご苦労だったな、今日はもう上がってくれ。女が待っているんだろ?」
「助かりますわ。あいつら均等に相手しないと拗ねるんでね。ワシの身体はひとつしかないのに困ったもんですわ。んじゃ、お先っす」

 下田を帰すと、大久保は一人で倉庫に入った。がらんとした空間にパイプ椅子だけが並べられ、それに縛り付けられている三人の視線が一斉に大久保を捉える。全員サラリーマン風のスーツ姿だ。男は三十代半ば、女は二十代後半あたりか。男二人は下田と井上に殴られたらしく、唇が切れて目にも青アザができている。女は売る時のことを考えて殴らなかったのだろうが、顔や身体は悪くはないが大久保の顧客にとっては歳をとりすぎている。確かに三人とも下田の言う通り売り物にはなりそうもない。
「おいてめぇ!」と、小柄な男が巻き舌で吠えた。とても未成年保護をしているNPOの職員には見えない相貌だ。「とっとと縄をほどきやがれクソハゲ! 俺たちのバックに誰がついてるのか知ってんのかよ?!」
 この後に及んでまだ虚勢を張れるのかと感心したが、サイズの合っていない安物のスーツが迫力を削いでいる。
 大久保は男を無視して女の足を凝視した。
 ジャケットに合わせたグレーのタイトスカートから、透け感の無い黒タイツに包まれた足が伸びている。肉付きは大久保好みの足だが、タイツの色が気に入らない。
 大久保はため息を吐くとジャケットとシャツを脱ぎ、上半身裸になった。
 分厚い筋肉の上に分厚い脂肪が乗った身体はウェイトリフティングの選手を思わせる。明らかに常人とは違う体型に三人の顔に緊張が走ったが、先ほどの男がまた吠えた。
「おい何ストリップしてんだよ! 汚ねぇ身体晒してんじゃねぇぞデブ!」
 大久保はゆっくりと吠えている男に近づき、その頭をポンポンと叩いた。
「……大したもんだ。君がもう少し頭が良ければ、私の部下にしてもよかったんだがな」
 赤ん坊をあやしているようなしぐさに、男の顔が真っ赤になった。
「おいナメてんのかよハゲ! ふざけてると──」
 ズブリ。
 次の瞬間、まるで泥水に手を突っ込んだように、大久保の手が男の頭に「沈んだ」。
 それを見た隣の女が限界まで目を見開いた。頭の内部に手を突っ込まれた小柄な男はビデオの一時停止のように硬直し、無言でただ一点を無表情で見つめている。
 大久保は難手術を行う外科医のような顔でしばらく男の頭の中をまさぐると、男の頭蓋骨の中で手のひらを思いきり握った。
「ブッ!」
 内部で空気が破裂したような音が男から発せられると、鼻と耳から大量の血を噴き出して白目をむいた。直後に身体が海から打ち上げられた魚のように激しく跳ね始める。女が大きな悲鳴を上げた。男の激しい痙攣は止まらず、椅子ごと背後にひっくり返ったまましばらくバタバタと暴れた。
「……脳味噌の硬さは豆腐に近いなどと創作には書いてあるが、あれは実際に潰したことのない奴の妄想だ。実際はもう少し硬い。そうだな……生焼けのハンバーグに近いかな。外側が少し硬くて、中はボロボロの筋張ったミンチが詰まっているような……」
 その言葉を聞いた別の男が嘔吐した。大久保はその男の背後に近づき、男のシャツを捲り上げて左右の脇腹から両手を突っ込んだ。先ほどと同様に泥の中に突っ込むように大久保の手が埋まる。
「ぐぎゃあああああああ!!」
 大久保が手を動かすと、凄まじい悲鳴と共に男が血泡を吹き始めた。瞬く間に顔面が蒼白になり、肺が血で満たされたのかゴボゴボという音が喉から鳴ると、大量に吐血して椅子ごと倒れ込んだ。
 女は歯をガチガチと鳴らしながら涙を流している。大久保が何をしたのかよくわからないが、一瞬で仲間の男二人がおぞましい方法で殺された。次は明らかに自分の番だ。
 大久保が女の正面に回り込んで、スラックスのジッパーを下ろして太い男性器を露出させた。男性器にはグロテスクな突起がいくつも埋め込まれている。
「あ……あの……」と、女が無理やり笑顔を作りながら震える声で言った。
「わ……私……なんでもします……。風俗店のナンバーツーをやっていたこともあって、技術には自信があるんです。それに、あ、あなたみたいな逞しい人、好みなんです……。好きなだけ使ってください……だ、だから──」
「靴を脱げ」
 有無を言わさぬ大久保の言葉に、女は弾かれるように靴を脱いだ。
「そのまま足でしごけ。わかるだろ?」
 女は激しく何回も頷くと、足の裏で大久保の男性器をしごいた。緊張のため汗で蒸れた足裏と、シャリシャリとした化学繊維の感触が悪くない。しごき方も手慣れていて、的確にポイントを攻めてくる。だが、如何せんタイツのチョイスが悪すぎる。化学繊維の肌触りはシルクに劣るし、色も白ではない。大久保は歯痒さに徐々に腹が立ってきた。
「ど、どうですか? 足でするのを頼まれるお客さんも多かったので、結構練習したんです。こんな風に先っぽを親指で擦られると気持ちいいんですよね?」
 女は恐る恐ると言う感じで足の親指と人差し指で大久保のカリ首を挟みながら、もう片方の足の親指の腹で鈴口を擦った。強い刺激に大久保の背中に電気が走る。
 実に惜しい。
 肉付きや技は悪くはないが、なぜこの女は化学繊維の黒いタイツを履いているのか。自分で履き替えさせてもいいが、やはり天然物の興奮には敵わない。
 大久保が発射すると、女は大袈裟に喘いだ。白い粘液が女の黒いタイツとスカートにシミを作る。大久保が粘液に濡れた男性器をぐいと女の顔の前に突き出すと、女は自ら前屈みになって咥え込み、頬を凹ませて尿道に残ったものを啜った。
「悪くなかったぞ。いや、かなり良かった」と言いながら、大久保は女の頭を撫でた。女は頭に触れられた途端ビクッと震えたが、安堵の表情を浮かべる。「君が最初からガーターベルトの付いた白いシルクのタイツを履いていれば、飼ってやってもよかったんだがな。あいにく私は本物にしか興味がなくてね」
 大久保が女の頭を引きつけると、何の抵抗も無く男性器が女の口蓋を貫き、脳に達した。

 大久保が下田との電話を切った直後、もう一人の部下の井上から電話がかかってきた。
「どうした?」
「遅くにすみません。ちょっと困ったことになりまして」と、井上が言った。感情の起伏に乏しい井上にしては、珍しく焦ったような声色だった。「氷川さんが、アンチレジストにやられました」
「……なに?」
 やはり只事ではなかった。
 氷川は大久保の太客だ。人妖だが表向きは社会的成功をおさめており、表立って動きにくくなったため大久保から十代の少女を月に数人買っている。
「間違いないのか? 氷川さんは今まで何人も戦闘員を返り討ちにしてきただろ?」
「現場にいた氷川さんの部下から聞いたので、確かです。それも一人で乗り込んできた女一人に……」
「女?」
「白人の女だったそうです。金髪に緑眼。そして、とんでもなくエロい格好をしていたとか」
「待て待て待て、情報が渋滞しているぞ」と言いながら大久保は目頭を押さえた。「あの氷川さんが色仕掛けに負けたとでも言うのか? そんな人じゃないだろう」
「わかってますよ。ただその女、格好はともかく、めちゃくちゃに強かったらしいです。逃げ切れたボディーガードはそいつ一人。肝心の氷川さんは他の部下と一緒に、あっという間にやられたらしいです」と言いながら、井上は一息つくために水を飲んだ。「その白人女、モデルみたいなスタイルに爆乳な上、露出度がえらい高いメイド服みたいなのを着てたらしいです。アホみたいに短いミニスカートにちっこいエプロン付けて、上は水着のビキニみたいな格好で腹や谷間も丸見え。しかもガーターベルトが付いた白いタイツまで履いていたらしいです。今時AVの撮影でもそんな際どい格好してる女なんていないですよ」
「……その情報、間違い無いんだな?」
「ええ。氷川さんは間違いなくその女に──」
「違う。女の格好のことだ。ガーターベルトが付いた白いタイツを履いていたのか?」
「ボディーガードは一度見たら忘れないって言ってたんで、間違いないでしょう」
「……その女なら高く売れそうだな」と言うと、大久保は床に転がっている三人を一瞥した。「下田に漁船をキャンセルするように連絡してくれ」


2
 鷺沢は関係者用の地下駐車場に車を停めると、運転手を待たせたまま警視庁に入った。
 カツカツと軽快な靴音を響かせて歩く姿はキャリアウーマンを思わせるが、実はアンチレジストの上級戦闘員から叩き上げて副司令官にまで昇り詰めた人物だ。鷺沢が警視庁に呼び出されるということは、また普通ではない事件が起こったことを意味している。そして、決まって指定される場所は遺体安置所だ。慣れたとはいえ、やはり気が重い。
 遺体安置所の扉を開けると、アンチレジストとのパイプ役を務める顔見知りの老刑事が出迎えた。
 背後には布をかけられたステンレス製の解剖台が見える。布の膨らみから察するに、遺体は三人分ありそうだ。
「すみませんね、お忙しいところ」と、老刑事は眉をハの字にしながら頭を下げた。こう見えても現役の頃は大規模な反社会的勢力と渡り合ってきたというのだから、人は見かけによらないものだ。
「とんでもありません。これも仕事ですから」と言いながら、鷺沢は口角だけを上げて笑顔を見せた。思えば自分も戦闘員の頃は笑顔を見せたことなどなかった。
 老刑事が遺体に被せられたシートを取ると、三十代と思しき男女の遺体が現れた。男性が二人と女性が一人。外傷は見当たらない。凄惨な遺体を覚悟していた鷺沢にとって、拍子抜けするほど綺麗な遺体だった。しかしよく見ると、その表情はいずれも地獄を見たような苦悶に満ちている。
「見ての通り綺麗なものです。ただ中身は本当に酷い」と、老刑事が言った。「男性の一人と女性は脳を激しく損傷しています。もう一人はほとんど全ての内臓がズタズタです。しかも、どうやら被害者達は生きたまま中身だけを損傷させたれたらしい……。私はこの歳まで刑事一筋ですがね、こんな凄惨な遺体は初めてですよ」
「……生きたまま中身だけを?」
「ええ。私も解剖に立ち会いましたし、レントゲンやMRLも見ましたがね、中身はほとんど原型を留めていません。それなのに外傷は死亡推定時刻の数時間前についたであろう擦り傷や殴られたような跡がある程度。超音波や衝撃波を使った形跡も無い。一体どのようにやったのか……。あと、これは大変言いにくいんですが……」
 老刑事は申し訳なさそうに鷺沢から目を逸らした。
「女性の被害者はどうも、勃起した男性器のようなもので脳を掻き回された形跡があるんですよ……。もちろんそんなはずがないことは理解しているんですが、特徴的な形状がどうもそうらしいと……。また、引きちぎられた内臓の一部には指の跡のようなものも見つかりました。もしこれらのことが事実だとしたら人間では不可能です。鷺沢さんをお呼びしたのも、これらのことを相談したかったからなんですよ」
 鷺沢はハンカチで口元を押さえた。
「すみませんね。これも仕事なもので……」
「大丈夫です」と言いながら、鷺沢は気分を落ち着かせるようにハンカチを丁寧に畳んだ。「被害者が特殊な能力で殺害されたことについては理解しました。ですが人妖にこのような能力はありません。賎妖という、特殊能力を持った人妖の亜種によるものだと思います。もっとも、外傷を負わせずに内部を破壊するなどという能力は聞いたことがありませんが……」
「では、申し訳ありませんがこの件は……」
「ええ、我々アンチレジストが預かります」
「どうかお気をつけて……。それと、被害女性の口の中にこんなものが押し込められていました……」

「私が倒した人妖の写真が、被害女性の口の中に?」と、如月シオンは眉根を寄せながら言った。
 呼び出しを受けて学院から制服姿でアンチレジスト本部に直行したシオンは、到着すると真っ直ぐに鷺沢の待つ会議室に向かった。完璧な東欧系外国人の容姿の割に、シオンの日本語の発音は極めて滑らかだった。
「そうです。しかも裏に日時と場所が書かれた状態で」
 鷺沢の説明を聞き終えると、シオンはふむ、と言いながら顎に指を当てて天井を見上げた。
「随分と大胆なものですね。警視庁の中で宣戦布告するなんて」と、シオンが言った。
「事前に包囲されるリスクを全く考慮していません。対策があるのか秘密の抜け道でもあるのか、それとも賎妖としての能力によほど自信があるのか」
「おそらく後者でしょう。その……聞いた話では、被害者は恐ろしい亡くなり方をしていたとか……」
 鷺沢がチラリとシオンの顔を見た。作り物のように均整の取れた顔がわずかに引き攣っている。鷺沢はシオンが人の死にトラウマのようなものを抱えていることを知っているので、あえて遺体の詳細を伏せて話していたのだが、おそらく本部に向かっている途中になんらかの情報網を使って調べたのだろう。それもかなり正確に。
 鷺沢は隠しても無駄だと理解し、ありのままをシオンに伝えた。説明の途中、何回かシオンの喉が小さくキュッと鳴った。
「……二次被害を防ぐために単独で行かせてください。警察の介入も断った方がいいでしょう」と、ハンカチで口元を押さえながらシオンが言った。
「申し訳ありません。本来、賎妖討伐の任務は上級戦闘員の役割ではないのですが……」
「目的は明らかに私です。倒された人妖の復讐なのか、それとも別の目的があるのか……ともかく、私が行かないと見せしめとして更に被害が広がる可能性があります。現場に私を降ろした後は、輸送班もすぐに現場から離れてください」
 鷺沢は青い顔をしているシオンに礼を言うと、オペレーターを呼んで作戦立案に入った。


3
 波の音が静かに響く港湾倉庫に、アンチレジストの輸送車が音もなく停車した。
 電動式のスライドドアが開き、中から黒いロングコートを羽織ったシオンが姿を現した。長い金髪をツインテールにまとめ、エメラルドのような瞳で倉庫を見上げる。写真の裏に記載されていた番号の倉庫は、シオンを招き入れるように扉が開いていた。
「如月上級戦闘員、降車確認しました。ではシオンさん、どうかお気をつけて……。皆あなたの帰りを待っています」
 同乗していた女性のオペレーターがスマートフォンに向かって報告すると、シオンに心配そうな視線を向ける。
「ええ、皆さんもお気をつけて。なるべく早くここから離れてください」
 シオンは笑顔で返すと、一人で倉庫に向かって歩き始めた。背後で輸送車が来た時と同じように無音で走り去り、周囲は再び波の音に包まれる。
 倉庫に入ると、見計らったかのように明かりが点いた。同時に入口の扉が自動で閉まる。予想していた展開のため、シオンは落ち着いていた。倉庫はパレットが雑多に積まれている以外は荷物らしいものは無く、奥のパレットに三人の男が座っている。柄の悪いチンピラ風の男と、筋肉質で巨体な坊主頭。それに上半身裸で帽子を目深に被った相撲取りのような巨体の男もいる。
「おーおー、ホンマに一人で来たんか?」と、チンピラ風の男が立ち上がって言った。片眉を上げて挑発するような表情をしている。「ホンマにガイジンさんやな。日本語わかる? キャンユースピークジャパニーズ?」
「……ええ、問題ありません」と、シオンが滑らかな発音で返すと、チンピラ風の男はヒュウと口笛を吹いた。坊主頭の男も立ち上がる。
「俺は下田。こっちの坊主頭は井上や。あっちのデカいのは大久保さん。で、あんたが氷川さんブチのめしてくれたってのはホンマかい?」
 シオンは黙って頷いた。下田はまた口笛を吹いた。
「めっちゃ可愛い女の子なのにやるのぉ。こっちが名乗ったんやから、名前くらいは聞かしてくれんか?」
 シオンは表情を変えずに、黒いロングコートを脱ぎ始めた。ゆっくりとボタンを外すシオンの動作に三人の男の視線が釘付けになる。ぱさりとコートが床に落ちると、下田は額に手を当てながら「おいおいおい」とわざとらしい声を上げた。
 コートの中はビキニのようなメイド服姿だった。小さなエプロンの付いたミニスカートからガーターベルトのついた白いロングタイツが伸び、上半身は大胆に腹部が露出して胸だけをメイド服の意匠を取り入れたトップスが隠している。豊満な胸や太腿を舐めるように凝視する三人の視線を気にすることなく、シオンは落ち着いた動作でフリルのあしらわれたヘッドドレスをツインテールの根元に結んだ。
「アンチレジスト上級戦闘員、如月シオンと申します。本日はお招きいただき、ありがとうございます」
 片足を引き、両手でスカートの裾を軽くつまみながらお辞儀をするシオンに下田は手を叩いた。
「こりゃ丁寧にどうも。しかしネェちゃん、話には聞いていたけれどすごい格好やなぁ。そのまま洋物のエロビデオに出られるんちゃう? よかったら知り合いに監督おるから紹介しよか?」
「遠慮させていただきます……。それよりも、ご用件をうかがってもよろしいですか?」
 シオンは軽口をいなすと、お辞儀をした姿勢のまま視線だけを三人に向けた。
「損害賠償請求ってやつだ」と、帽子を目深に被った大久保がようやく立ち上がった。「氷川さんは我々の太客でね。君が余計なことをしてくれたおかげで、このままでは今年の売り上げと利益は大幅な下方修正が必要なんだ。穴埋めをしてもらわないと困るんだよ」
「人身売買は反社会的行為です。こちらに補償の義務はありません。あなた方も拘束させていただきます」
「この状況でずいぶんと自信があるじゃないか。その服は組織の支給かね? そんな下品な格好で色仕掛けのつもりだろうが、下田や井上にはともかく私には効かんぞ?」
「この服は私の趣味です。誰に強制されたものでもありません」
「ならばただの痴女か。ちょうど良い。日本語がペラペラで露出が趣味の金髪巨乳の若い白人女なんて、人妖以外にも高く売れる。損害は君の身体で補填してもらうことにしよう」
 大久保が顎をしゃくると、下田と井上がシオンに飛びかかった。
 二人は予想以上に俊敏な動きをしていたが、シオンはお辞儀の姿勢のまま上体を沈めると、床を蹴ってそれ以上のスピードで二人に向かって距離を詰めた。まさか向かってくるとは思わず虚を突かれた二人の間をすり抜けると、シオンは激しい摩擦音を立てながら急停止し、フィギュアスケートのスピンのように回転しながら、振り返った下田の顔面に回し蹴りを放った。
「がッ?!」
 下田が顎を押さえて後ずさると、前に出てきた井上が拳をシオンに向かって振り下ろした。
 しっかりとした型ができているボクサーのパンチだったが、シオンはパンチを躱すと井上の腕を掴み、その腕に身体を巻きつけるように跳躍してこめかみに踵を当てた。井上の意識が半分飛ぶ。シオンはハンドスプリングの要領で回転し、グラついた井上の脳天にとどめの踵落としを浴びせた。井上の巨体が倒れると同時に、後退りしていた下田に距離を詰める。
「ま、待て待て待て! 待たんかい!」
 下田が両手を前に出して静止を試みるが、シオンは地を滑るように距離を詰めて下田の腹に膝を突き込んだ。
 水を打ったような沈黙が倉庫内に染み渡る。
 シオンは顔から地面に崩れ落ちた下田から、ゆっくりと視線を大久保に移す。大久保は「ひぃ」と喉を鳴らすと床に両手を着けた。
「ま、待ってくれ! 私の負けだ!」
 大久保は額を床に擦り付けた。
「そ、そんなに強いとは思わなかった! 大人しく捕まる! 手荒な真似はしないでくれ!」
「……そのまま両手を背中で組み、床に伏せてください」
 大久保はシオンに言われるがまま、うつ伏せの状態で床に身体を投げ出した。シオンが警戒しながら近づき、折りたたみ式の手錠を取り出す。だが次の瞬間、大久保は弾かれたように起き上がるとシオンの太ももにタックルを仕掛けた。掴んだ部分のタイツが破れ、肉付きの良い太ももが覗く。
 シオンは歯を食いしばってバランスをとるが、大久保はなかなか太ももを離さない。それどころかシオンの太ももに頬擦りまでしてくる。シオンは背中に寒気を感じ、大久保の帽子を叩いて落とすと髪の毛を掴んだ。なおも太ももに頬擦りをしてくる大久保の顔を無理やり剥がし、顎を膝で蹴り上げる。常人であれば脳が揺さぶられて失神しているはずだが、大久保はなおもシオンの太ももに縋りついた。
 シオンは体勢を変え、正面から大久保の髪の毛を両手で掴んだ。そのまま鼻に膝を突き込めば戦意喪失させられるが、相手へのダメージも大きい。迷いの後、シオンは大久保の髪の毛を掴んだまま身体を引き起こすと、鳩尾に膝を突き込んだ。大久保の身体から力が抜け落ちる気配を感じる。
「ゔッ!?」
 倉庫に響いたのは、シオンの悲鳴だった。
 シオンが恐る恐る視線を落とすと、大久保の胸のあたりから別の男が「生える」ように飛び出しており、シオンの鳩尾に丸太のような拳を突き込んでいた。
「な……え……? んぶぅッ?!」
 心臓を直接殴られたような猛烈な苦痛を感じ、シオンが大久保の髪の毛から手を離して、口と腹を抱えたまま後ずさる。何が起こったのかわからない。シオンが視線を向けると、筋肉も脂肪も多そうながっしりとした体型の全裸の男が、まるで大久保の身体から脱皮するかのように中から這い出てきた。
「いやぁ焦ったよ。氷川さんを倒したというからどれほど強いのかと思ったが、まさかこれほどとはな。高額ではあったが、ある人妖から筋弛緩効果のある薬剤を買っておいてよかった。香水のように身体に振っておいたんだよ。薬が効くまでの時間稼ぎと不意打ちが上手くいったから良かったようなものの、紙一重というところだな」と言いながら、大久保は今まで”着ていた”男を蹴った。「こいつは適当に買ってきただけの、ただの死体だ。名前も知らん」
 目の前の現象に驚愕しているシオンの背後で音もなく井上が立ち上がり、シオンの脇の下から手を入れて羽交締めにした。
 すぐさま大久保が近づき、シオンの剥き出しの腹に鈍器のような拳を突き入れる。
 倉庫全体が震えるような重い音が響き、大久保の拳が手首までシオンの腹に埋まった。
「ゔぐぇぁッ?!」
 大久保の攻撃の威力は凄まじく、まるでプレス機に押しつぶされたようにシオンの腹が陥没した。背後からシオンの身体に密着している井上にも衝撃が伝わっているのか、くぐもった声を漏らしながら顔を顰める。
「さて、しばらく眠ってもらおうか。君にいくらくらいの値が付くのか楽しみだよ」
 ずぎゅる、という嫌な音が倉庫内に木霊した。
 大久保は指を伸ばし、ナイフのようにシオンの鳩尾に突き入れた。貫手を突き込まれた瞬間、シオンの身体が電気に撃たれたように跳ねる。
「あがあああッ!」
 急所をピンポイントで突かれ、シオンは大口を開けて唾液と共に悲鳴を吐き出した。やがて緑色の瞳が瞼の裏に隠れ、がっくりと全身の力が抜けた。

ありがたいことに現在多くの個人依頼をいただいております。
本編の執筆はしばらく時間がかかると思いますので、今しばらくお待ちください。
作業の合間にご要望を多くいただいているシオンさん短編でも作って発表したいなとは思っています……。

また、新刊[ NOIZ ]でイラストを描いていただいたスガレオンさんの新刊が発売されました。
今日まで全作品15%オフクーポンも使えるので是非よろしくお願いします。





先日のりょなけっとで配布した新刊のDL販売が開始されました。
興味のある方はよろしくお願いいたします。
※詳細は下記画像をクリックしてください。

skebにてオンラインゲーム「ブレイヴガール レイヴンズ」 ミア・ストレイアの腹パンチSSの依頼をいただきました。
すでにサービスが終了しているゲームのため世界観やキャラ設定などの調査に苦労しましたが、楽しんで書くことができました。
ご依頼いただきありがとうございました。

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 頭から冷たい水をかけられ、ミア・ストレイアは一気に覚醒した。
 咳き込みながらもミアの目にまず入ったものは石造りの床と、火かき棒やノコギリのような禍々しい器具が掛けられた壁。
 ミアにとってはもちろん見知らぬ部屋だ。こんな禍々しい部屋は見たことがない。
 部屋は居住性が全く考慮されていないようで、敷物や家具の類は無く、窓すらも無いようだ。いつ煤を払ったのかわからないほど汚れた暖炉には乱雑に火がくべられ、吊り下がった粗末なランプが澱んだ空気に頼りない光を放っている。
 ミアが混乱した頭で周囲を見回すと、両手首に鈍い痛みが走った。天井から垂れ下がった手枷が両手首の内側を合わせた状態で嵌められ、少しでも体重がかかると皮膚に食い込むようになっている。
「お目覚めですかな? 副団長様」
 部屋の奥の暗がりから男の声がした。ミアが視線を送ると、声の主が粗末なランプの下にのっそりと姿を現した。筋肉も脂肪もたっぷりとついた男。髪の毛を綺麗に剃り上げ、低い気温にもかかわらず上半身は裸だ。
 男は空になったバケツを床に放り投げると、紫色の芋虫のような唇を歪めるようにして笑った。
「副団長様がぐっすりと眠られておられたので、少し水浴びをしていただきました。ご気分はいかがですかな?」
「あなたは確か、半年前の……」と、ミアが男を見ながら言った。異様な風貌の男だが見覚えがある。
「おお! 覚えていただけているとは光栄でございます!」
 半年前の吹雪の夜、門の前で行き倒れていたこの男をミアは介抱した。男は行商人の用心棒を生業としていたらしいが、強力なデモニアの襲撃に遭い、一人で命からがら逃げてきたのだという。ミアの献身的な介護で男は数日で回復し、ミアの役に立ちたいと入団を希望したのだ。
 男はミアに舐め回すような視線を送った。
 聖騎士の鎧のような純白のブーツから色白の太腿がのぞき、短いスカートを挟んで、割れてはいないがキュッとくびれて引き締まった腹部からボリュームのある下乳までが露わになっている。かろうじて胸の先端から袖までを覆う黒いインナーが色白の肌を引き立て、綺麗な長い黒髪を白いリボンでポニーテールのようにまとめている。そして露出の激しさと対比して凛とした芯の強さと優しさを感じる清楚な顔つき──。
 男はミアの眩暈がするほど白い肌を凝視しながら本能的に唇を舐めた。
「ようやく副団長様に恩返しができることになりました。私をあそこまで大切に扱っていただいたのは副団長様が初めてです。忌み嫌われてばかりだった、このデモニアの私めを……」
 男の頭に紫色のモヤがかかり、節くれだった黒い角が表れた。
 ミアが息を呑むが、すぐに唇をキュッと結んだ。状況が飲み込めないが、相手のペースに巻き込まれるわけにはいかない。
「恩返し……? この状況がですか?」
「その通りでございます」
「ふざけないでください。いったい何が目的なんですか?」
 男は嫌らしい笑みを浮かべたまま、手揉みをしながらミアに近づいた。
「簡単な話です。ブランを裏切って我々に協力していただきたい。あなたほどの実力があれば、我らが祖国リラの再興も早まるというものです」
「……なんですって?」
「我々デモニア再興部隊は散り散りになりながらも、密かに三国に対して浸透作戦を続けてまいりました。私のように行き倒れを装って軍団に入団したり、旅の学者と偽って研究機関に所属したり、中には政権の中枢に入り副大臣をしている者もおります。デモニアの中には絆《ほだ》されて三国に居場所を見出す不届き者も一部おるそうですが、我々デモニア再興部隊は違います。リラの復興を渇望し、我らを滅ぼした三国への恨みを忘れず、決起のタイミングを待っているのです。あと少しで、世界中の組織に浸透が完了します。じきに一斉攻撃が始まるでしょう。当然、ここブランも焼け野原になります。その前に、副団長様にはぜひ我々の仲間に入っていただきたい。聡明さや実力ももちろんですが、私は個人的に副団長様を殺したくはないのです。先ほども申し上げた通り、私にあそこまで優しくしていただいた方は副団長様──ミア様が初めてでしたからね」
「お断りします」と、ミアはキッパリと言った。「脅しのような手段を使う方々に協力することはできません。交渉なら正々堂々と……うぶぅッ?!」
 ずぷん──という音と共に、男の鈍器のような拳がミアの剥き出しの腹部にめり込んだ。
 引き締まってはいるが決して筋肉質ではないミアの腹部は男の攻撃を受け止めきれず、ダメージは内臓にまで深く達している。
「ぐぷッ……! ごえッ!?」
「少しはご自分の立場をお考えください。これでも副団長様のお腹を突き破ってしまわないように、かなり手加減をしておるのです」
 男はミアを殴った自分の拳を愛おしそうに撫でながら言った。決して脅しではない。男は常人をはるかに超える身体能力を持つデモニアだ。その気になれば人間の身体など容易に破壊できるだけの力がある。
「ああ、言い忘れましたがミア様には私の妻になっていただきます。昼は戦場でかつての仲間の相手、夜は私の相手……。しばらくは眠れないと思いますがね」
「ゲホッ……はぁ……はぁ……どちらもお断りです……。軍団の皆さんや……祖国は絶対に裏切りません……ゔぶッ?! ぐふッ! ぶふッ! ゔぶぁッ!」
 男のゴツい拳が連続してミアの腹部にめり込んだ。一撃一撃が失神しそうなほど重く、しかし失神しないギリギリの手加減を男は心得ていた。おそらく男は女性に対して過去に何回も、このような拷問を繰り返してきたのだろう。
 ぼぐんッ……という重い音とともに、さらに強烈な一撃がミアの腹にめり込んだ。男のゴツい拳が手首まで完全に埋没し、ミアの背骨に拳骨の先端が触れる。
「ゔぐあああぁッ!?」
 あまりの衝撃と苦痛にミアは仰け反って絶叫した。
 普段の凜としているが朗らかな彼女からは想像がつかないような濁った悲鳴が拷問部屋の石壁に響き渡る。
「聞き分けのない方ですなぁ副団長様は……。まぁ、その方が私も『お願い』のしがいがあるというものですが……」
 ズンッ! という音を立てて、男がミアの鳩尾を突いた。
「ぎゅぶぇッ!?」
 ミアの身体が電気に撃たれたように跳ねた。下乳まで曝されているため当然急所である鳩尾まで剥き出しの状態であり、男の攻撃をミアは無防備の状態で受け止めるしかなかった。
 ズンッ! ズンッ! ズンッ! ズンッ! と男は執拗にミアの鳩尾を責めた。連続で容赦無く急所を突かれ、ミアはまともに呼吸をすることもできずに白目を剥いて叫び続けた。
「ぶぇッ! ぎぁッ! がぶッ! ぐあッ! あがぁッ!」
「酷い顔ですな。いつもの綺麗なお顔しか知らない仲間が見たらどう思うか……。さて、ここはどうですかな?」
 ずぎゅッ……という音と共に、男はミアの子宮のあたりを殴った。当然ヘソの下あたりも守られていないため、男の拳は手首まで埋まり、ミアの子宮は無惨にも拳によって潰されている。
「おごあッ?! あああああああッ!」

「はははは、鳩尾とはまた違った苦痛でしょう? 女性にとってはとても大事な場所ですからな」
 男は鳩尾、子宮、ヘソ、脇腹と一撃ごとに殴る場所を変え、その度にミアの体は大きく跳ねた。質の違う苦痛が短いスパンで連続で与えられ、ミアの脳内は生命の危機を感じてパニックに陥る。
「ゔッ?! ぐあッ! あぶッ! ぐあああッ! ゔぇッ! おっぶ?!」
「いつも目のやり場に困っていたんですよ。腹から胸まで剥き出しにしたスケベな格好で飛んだり跳ねたり……少しは男の欲望というものを考えてほしいものですな。まぁ、こういう『お願い』の時は急所が剥き出しなので助かりますがね」
 大口を開けて唾液を撒き散らしながら、ミアは男に殴られるままに悶えた。両手を拘束された状態ではガードすることもできず、素肌も剥き出しになっているためダメージは全く減衰することなくミアに打ち込まれる。目を覆いたくなるほどの責め苦がしばらく続いた後、糸の切れた人形のようにミアの全身から力が抜けた。
「ふぅ……どうですかな? そろそろ考えが変わりましたかな? あまり殴りすぎて私との子供が出来なくなっても困るのですがね」
 ミアは項垂れたまま肩で息をしているが、力なく首を振った。男はミアの髪の毛を掴んで顔を上げさせる。ミアは涙と唾液で顔をぐちゃぐちゃにしたまま、なお気持ちが折れていない瞳でこちらを睨んでくる。
 ぐじゅり──と、今までで一番大きな衝撃音が響いた。
「ゔぶぇッ!? がッ?! あああああああああッ!」
 男は加減していた力をやや解放し、ミアの腹に肘まで埋まるほどの威力で拳を打ち込んだ。ミアの背中が男の拳の形に隆起し、背骨の軋む嫌な音が響く。
「ぐぇッ……! ぐあああッ……!?」
「まったく、本当に副団長様は生真面目で頑固でありますな。騎士の精神と言えば聞こえはいいですが、身を滅ぼしては元も子もありませんぞ?」
 男は今までとは比にならないほどの威力でミアの腹部を突き上げた。ミアの腹筋は完全に弛緩し、男の拳を搗《つ》き立ての餅のような柔らかさで包み込む。当然ダメージは全て受け止めるしかなく、ミアはだらしなく舌を出したまま白目を剥いた状態で悲鳴を上げ続けた。
「ゔッ!? うぐぇッ! ぐあぁッ!」
「私の経験上、腹を殴られている時の女の顔は、男に激しく突かれている時と同じです。なるほど、普段は凛としたミア様もこんな風に情けない顔で感じてくれるのですなぁ……。これから迎える初夜が楽しみですよ」
 男はさらに力を解放してミアの腹を真上に突き上げた。背中がゴムのように膨らんだ後、凄まじい音と共にミアの身体が宙に浮く。天井付近までミアの身体が浮遊した後、無防備な状態で自由落下する勢いを生かして男がさらにミアの腹を突き上げた。
「お゙お゙お゙お゙お゙お゙ッ?!」
 自らの体重と落下速度、そして男のボディアッパーの威力がミアの剥き出しの腹に突き刺さる。あまりの威力にミアの瞳孔は点のように収縮し、窄めた口から唾液が噴き出した。
「ほれほれほれほれ。死なないように頑張ってくださいよ? 過去の女はほとんどこれで壊れてしまいましたが、ミア様には耐えていただけると信じておりますぞ」
「ゔぶぇッ?! お゙ッ?! ぶッ!? ごぶッ!? ぐえぁッ! がああああッ! あああああッ!」
 ミアの足が地面につく暇もなく、まるで落ちてくるボールをリフティングするように男は何回もミアの華奢な腹を突き上げ続けた。凄まじい威力に完全に弛緩したミアの背中は何回も男の拳の形に隆起し、内臓が掻き回され、背骨が軋む。男は笑みを浮かべながら玩具のようにミアを扱っているが、当のミアの感じている悪夢は想像を絶するものだった。男の股間は誰が見ても明らかなほど隆起しており、ミアを蹂躙することで性的に興奮していることが見てとれる。
 ようやく男の地獄のような腹責めが終わり、鎖の音と共にミアの足が地についた。
 ミアはもはや自力で立っていることも出来ず、両手首に嵌まっている手枷に吊られるようにしてかろうじて転倒を免れている。
「がッ……かひゅッ……! うあぁ……ッ」
 絶命を免れたとはいえ、ミアにはもはや顔を上げる力も残っておらず、腹部には痛々しい拳の痣が無数に浮かんでいた。
 ミアの腹がギュルギュルと音を立てると、操り人形のようにミアは顔を上げた。目の焦点が合っておらず、無意識下の体の反射だとわかる。やがて頬が風船のように膨らんだ。
「ぐぷッ?! うぶッ……ごぷッ……! おぶろぇあぁぁぁぁぁ……ッ!」
 内臓が正常な位置に戻ろうとしている反動からか、ミアは途切れかけた意識のまま大量に嘔吐した。ビチャビチャと汚い音を立てて床に胃液が広がる様子を男は笑みを浮かべたまま見つめている。やがて男はひゅうひゅうと虫の息になって項垂れているミアに近づき、手枷を力任せに破壊した。完全に失神したらしく、崩れ落ちるように男に倒れ込む。
「まったくミア様は……どこまで私のチンポをイライラさせれば気が済むのですかな? 少しは責任をとっていただかないと治まりがつきませんぞ?」
 男はミアの髪の毛を掴んで膝立ちの姿勢にさせたまま、片手でベルトを緩めてズボンを脱いだ。熱が伝わってくるほど隆起した男根を露出させると、そのまま半開きになってるミアの口に強引にねじ込んだ。
「ん……むぐッ?! んむうぅぅぅぅ?!」
 口内に勃起した男性器を無理やりねじ込まれるという人生で初めての事態に、ミアの意識は強引に現実に引き戻される。なんとか視線だけを上に向けると、先ほどまで自分を蹂躙していた男が恍惚の表情を浮かべていた。
「ほおおぉ……上目遣いが可愛いですぞミア様。どうですかな? 私のチンポの味は?」
 ミアは限界まで口をこじ開けられた状態で、目に涙を浮かべたまま首を振る。どうと聞かれても初めての経験なのだ。なぜこんなことをしているのかすらミアは理解できないでいる。
 だが、その初心な様子は男の嗜虐心を更に焚きつけた。
「ぐふふふ……ミア様は太刀の扱いは一級でも、男の扱いはこれからですかな? 安心してください、夫になる私がたっぷりと教えて差し上げますよ。どうすればそのスケベな身体を使って男を悦ばせることができるかを……」
 男はミアの頭を両手で掴むと、ミアの鼻が男の腹に触れるほど強引に引きつけた。当然ねじ込まれている男根はミアの喉奥まで侵入し、膨れ上がった亀頭が喉を擦り上げる。
「んぐぉッ!? んッ?! んぶッ!? ぐッ!? んんんッ!」
「ほおおおおっ……小さい口ですなぁミア様は……。私のチンポが喜んでいるのがわかるでしょう? 今は手伝って差し上げますが、次は自分からその可愛い唇と喉を使って私のチンポにご奉仕するのですよ」
 男は恍惚とした表情で天井を見上げたままミアの顔を激しく前後させるが、喉奥を何度もえぐられているミアは呼吸すらままならず地獄のような苦痛を味わっていた。
 やがてミアは窒息寸前になり、身体がガクガクと痙攣し始める。瞳は半分以上が瞼に隠れて喉の筋肉も収縮するが、それは逆に男にさらなる快感をあたえることになった。
「おおおっ?! 喉が締まって……ようやく素直になってくれましたねミア様……。おぉ……出る……全部飲むんですよ……その方が愛を感じますからね……おおおおッ! 出る出る出るッ!」
 男が男根をミアの喉の奥まで突き込むと、何の躊躇も無く大量の精液を吐き出した。男の射精は壊れた蛇口のようであり、突然喉奥で大量の熱い粘液を放出されたミアはパニックに陥った。
「んぶぇッ?! ごきゅっ……ごくっ……んぐぉぉぉぉッ!?」
「ほおぉ、気持ちいい……。止まりませんぞミア様……どうですかな? 愛する夫に初めて射精してもらった気分は?」
 男はようやくミアに視線を落とした。ミアはいまだに硬度と太さを保った男根を咥えたまま、飲みきれなかった精液を口から大量に逆流させて白目を剥いていた。普段のミアの姿からは想像すらできないほど無様で完全に屈服させられたような姿に、男は射精したばかりであるにも関わらず、再び股間に血液が集まってくる気配を感じた。
 男はミアの口から男根を引き抜くと、上着を掴んで無理やり立たせて精液でやや膨らんだ腹に渾身の一撃を喰らわせた。
「おっぶぇぁッ?!」
 背骨がミシミシと音を立てるような音と共にミアの胃は完全に潰れる。ミアの身体は人形のように後方に吹き飛び、そのまま背中を激しく壁に叩きつけられた。
「うぶッ……?! うぶえろろおぉぉ……!」
 ミアはしばらく腹を抱えたような姿勢で、無理やり飲まされた大量の精液を吐き出すと、そのまま受け身も取らずに吐き出した精液の上に倒れ込んだ。
 男がゆっくりと近づいてミアの身体を軽々と抱え上げると、その形の良く大きな胸を手で転がした。温めたゼリーを詰めた風船のような心地良い感触が手のひらに伝わる。
 男はミアの顔を覗き込む。大量の汗で髪が額に貼り付き、半開きになった口周りは精液と唾液で汚れている。その姿はまるで激しい性交の後のようで、艶かしい色気のようなものを男は感じ取った。
「さてと、少し休憩したら『お願い』の続きをしましょうか? まだミア様から正式にお返事をいただいていませんからね」と、男がミアの唇に触れそうな距離で囁いた。「次は二人きりで、ベッドの中でね」

2022年9月10日(土)開催の「りょなけっと12(Re)」にスペースをいただきました。
現在連載しているNOIZ編の清書版に挿絵4枚追加したものを配布する予定です。
詳細については後日連絡しますので、よろしくお願いいたします。

サークルカット(number_55)

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 シオンはメールが無事に送信されたことを確認すると、深いため息を吐きながら力尽きたように執務机に突っ伏した。
 いや、実際に力尽きたのだ。今回翻訳を担当した論文は専門用語が特に多く、しかも英語からドイツ語、フランス語、日本語へと三ヶ国語分を依頼されていた。いつも通り主だった作業は外注したのだが、原文自体が難解なためシオン自身によるチェックや修正に予想以上の時間と手間がかかってしまった。余裕を持って組んでいたスケジュールも人妖の出現多発で想定よりも遅れ、気がつけば納期当日。結果的に間に合ったとはいえ、ここ数日は深夜まで作業を進めていたので疲労はピークに達していた。
「今から帰っても寝るだけか……」
 執務机に頬をつけたまま時計を見ると、日付が変わるか変わらないかという時間だった。同時にくーっとお腹が鳴る。そういえば夕食も済ませていなかった。せっかく早起きしてパスタソースを作ってきたのに冷蔵庫に入れっぱなしになっている。
 うう……と呻きながらシオンは椅子から立ち上がり、伸びをしたまま片手で口を隠して欠伸をした。眠そうな顔をしたまま小鍋でたっぷりの湯を沸かし、グラグラと煮立ったところで火を止めてディンブラの茶葉を多めに入れ、軽くかき混ぜて蓋をする。アイスティーは都度作るよりも鍋で大量に作るべきだとシオンは考えている。同じ茶葉を使ってもアイスはホットに比べ絶対的に香りで負けるため、割り切って味の安定を目指した方が紅茶としては良い。保存も効くため急な来客にも対応できる。
 茶葉を煮出しながら、今日はこのまま泊まってしまおうとシオンは思った。
 替えの下着やシャツは常備してあるし、アナスタシア聖書学院には運動部向けの広いシャワールームもある。学院を私物化しているみたいで気が引けるが、移動時間を考えると泊まった方が明日のコンディションが良いはずだ。
 グラスにたっぷりの氷を入れて抽出の終わった紅茶を注ぎ、多めにミントを入れてバースプーンで潰した。清涼感と爽やかな渋みが疲れを溶かしてゆく。夕食は迷ったが、体型維持のために食べないことにした。紅茶の残りをガラスサーバーに取って冷蔵庫に入れ、熱めのシャワーを浴びて生徒会長室に戻ると強烈な眠気が襲ってきた。シオンは下着の上にパジャマがわりにシャツを羽織り、ソファに横になって毛布をかぶると数分で眠りに落ちていった。

 シオンは微かに寝息を立てながら安らかな顔で眠っている。
 金色の長いまつ毛がようやく顔を出した朝日を浴びて砂金のようにきらめいていた。背中に敷かないように胸の上でまとめられている長い金髪が、風もないのにかき分けられる。肩までかけていた毛布もゆっくりとめくられて床に落ちた。
 下着とシャツしか身につけていないシオンの肢体があらわになると、何もない空間からごくりと唾を飲む音が湧き上がった。
 胸の大きさのためにシャツのボタンが悲鳴をあげている。合わせ目の隙間から、細かい刺繍の入った高価そうなブラジャーが覗いていた。サイズからしておそらく特注品であることは間違いない。獣のような息遣いが強くなり、シオンの胸が太で指に鷲掴みにされたように凹んだ。

 叫び声が自分のものだと認識するまで少し時間がかかった。
「……夢?」と、ソファから跳ね起きたシオンが周囲を見回しながら言った。いつもの生徒会長室だ。壁の時計は五時十五分を指している。
 嫌な夢だった。
 夢の中でシオンは石板のような物の上に寝ていて、金縛りにあったように身体の自由が利かなかった。建物の中なのか、それとも森の中なのかすらわからない。状況に困惑していると、やがて石板と地面の隙間から太い蛇が十匹ほど這い出てきて、一斉にシオンを睨んだ。声を上げたくても、声帯が石のように固まっていた。蛇は赤い舌をちらつかせながら、脇や肩からシオンの体をゆっくりと這い上がり、胸や首に絡みついてきた。鱗のザラザラとした感触がシオンの肌をなぞり、ついに嫌悪感が臨海に達したところで目を覚ました。
 無意識に動いたのだろう。シャツは第三ボタンまでがはだけていて、毛布は完全に床に落ちていた。
 シオンはため息をつきながら頭を振り、額に貼り付いた前髪を指で払うと落ちた毛布を丁寧に畳んだ。無意識に蛇を探してしまうが、もちろん一匹もいない。首元や胸には玉の汗が浮かんでいて、シャツも寝汗を吸って重くなっている。この時間ならシャワー室には誰もいないだろう。シオンは歯を磨いて昨夜作ったアイスティーで喉を潤すと、着替えとタオルを持って生徒会長室を出た。
 シャワールームは案の定、誰もいなかった。
 脱衣所でブレザーとスカートをハンガーにかけ、ソックスを脱いでランドリーポーチに入れる。髪ゴムを口に咥え、シャツのボタンを全て外したところで、脱衣所からシャワールームへ続く自動ドアがひとりでに開いた。反射的にシオンがそちらに顔を向け、そのまま石像のように数秒固まった。動くものは何も見えない。しばらくすると自動ドアは何事もなかったかのようにゆっくりと閉まった。
「……え? なに……?」
 シオンは髪ゴムを置き、警戒しながら自動ドアに近づいた。身につけているものは下着と前のボタンが全て開いたシャツのみという無防備な格好だ。巨乳のためシャツが大きく開き、引き締まった腹部からショーツまでが晒されている。
「誰かいるんですか……?」
 開いたドアから恐る恐る声をかけるが返事はない。警戒しながら中に入るが、人の気配もなかった。左右に七つずつ仕切られたシャワーも全て扉が開いている。
 気のせいか、とシオンは思った。
 こんな早朝に学院内に人がいるわけがない。自動ドアもおそらく誤作動か何かだろう。しかし、踵を返して足速に脱衣所に戻ろうとしたシオンの腹部に強い衝撃が走り、身体が硬直した。
「……ぐぷッ?!」
 強制的に肺の空気が押し出され、胃のあたりから猛烈な不快感と苦痛が広がる。
 ゆっくりと視線を自分の腹部に落とすと、開いたシャツの間の生腹が握り拳のような形に陥没していた。それを理解した瞬間、電撃のような苦痛がシオンに襲いかかった。
「な……に……? んぶぅッ?!」
 ダメージは深刻だった。不意打ちなどという生やさしいものではない。完全に油断しきった状況で、なおかつ足速に歩いていた勢いもあり、透明な拳はシオンの腹に予想以上に深くめり込んでいた。膝から崩れ落ちそうになると、透明な何かはシオンのブラジャーを掴んで引き起こし、再びヘソの辺りを突き上げた。
「おごぉッ?!」
 シオンの両足が浮くと同時に、更なる追撃が襲った。人間の力ではない。掴まれていたブラジャーが引きちられ、トラックに撥ねられたような威力で背中から壁に叩きつけられた。目の前に星が飛び、一瞬視界が真っ暗になる。
「げほっ……げほっ……ゔッ?! うぶッ! おぐッ! ぶぐッ! ゔぶッ!」
 透明な何かはシオンを壁に磔にするように、執拗にシオンの腹部を連続で殴った。相手が全く見えないため防御も対処もできず、シオンはされるがままに相手の攻撃を受け入れる。側から見れば、シオンが一人で奇妙なダンスをしているように見えるだろう。だが、相手は確実にいる。おそらく人妖……いや、賎妖(せんよう)と言われる怪物だろうとシオンは思った。賎妖は人妖ほど優れた身体能力や頭脳、容姿を持たない代わりに、それぞれが弱点を補うような特殊能力を持っている。透明になれるという能力は聞いたことはないが、それ以外に説明がつかない。
 シオンは床付近にある清掃用の蛇口を蹴った。激しく水が流れ出すが、その隙に鳩尾を鋭く突かれる。
「ゔあッ?!」
 急所を突かれ、上体がぐらりと傾いたところで胃の辺りに掌底を打ち込まれた。
「おごッ!? ゔ……うぷっ……!」
 直接内臓を握り潰されたようなダメージがあり、胃が痙攣を起こして激しく収縮した。起きがけに飲んだ紅茶まじりの胃液が食道を迫り上がる。息をつかせる暇もなく、ゴツい拳が再びシオンの鳩尾に埋まった。シオンは電撃に打たれたように身体を跳ねさせると、たまらず窄めた口から茶色がかった透明な液体を吐き出した。液体が空中に肥満男性の胸と腹のシルエットを描いて床に落ちる。やはり賎妖か、とシオンは途切れかけた意識の中で思った。

 男は自分に向かって倒れかかったシオンを抱きとめた。首筋や髪の毛から今まで嗅いだことのないような甘い香りが漂い、くらくらとした目眩を覚える。
 男はシオンの読み通り賎妖と呼ばれる存在だった。人妖と同様に異性の人間との粘膜接触で養分を得るのだが、人妖のように異性を魅了するような優れた容姿や、チャームと呼ばれる魅了効果のある体液を分泌することができない。この男の場合も例に漏れず、異性の調達は透明化の能力を用いて施設に忍び込んで強姦するか、弱みを握ってアジトへ連れ去るといった卑劣行為に及ぶことで糊口をしのいでいた。人妖のように多くの女をはべらせて、先を争うように奉仕させるような状況など夢のまた夢だ。奉仕どころか、女の目に男の姿が映ることすらないのだから。男の相手をさせられる女はいつも泣き叫び、親の仇を見るような目で睨むか、地獄の鬼を見るような目で怯えた。だから男も選り好みなどせず、養分補給を優先してとにかく隙のある女をもっぱらのターゲットにしていた。
 だが、今日は違った。
 今朝方、腹を空かせた男は名門校のアナスタシア聖書学院に忍び込み、目ぼしい女を餌食にしようと探っていたところでシオンを目撃したのだ。
 雷に打たれたような──という表現があるが、まさにこの事かと男は思った。
 白に近い金髪に緑眼の白人女性。周囲の生徒と同じ制服を着ているが、シオンは虹色のオーラを纏っているかのように明らかに周囲から浮き上がって見えた。モデルのような引き締まった体型に、男の視線を釘付けにするような胸と太もも。ニコニコと周囲の女子生徒と話している様子を男は唾液が垂れていることにも気が付かずに凝視した。名門校なだけあって周囲の女子生徒も垢抜けた雰囲気だったが、シオンのそれはまさに外来種と言っていいほど周囲の生態系を破壊していた。
 犯すならこの女しかない、と男は思った。
 普段の男であれば周囲の女子生徒でも十分すぎる獲物であったが、魅入られてしまった男はシオンをストーキングすることにした。
 どうやらシオンはこの名門校で生徒会長をしているらしく、学業の合間を縫って頻繁に教師や生徒と打ち合わせをしていた。多忙な様子だったが、打ち合わせをした相手の誰しもがシオンに対して憧れや好意を抱いていることがわかった。完全に外国人の見た目に反して日本語の発音は男とたむろしている賎妖仲間よりも綺麗であり、語彙力も高いように思えた。
 そのような状態で昼間は一人になることがなく、放課後になって生徒会長室に入っても絶えず来客があった。このまま来客の誰かと帰宅されたら襲えなくなると落胆したが、運は男を見放さなかった。シオンは何かの作業に没頭してるらしく、深夜に入浴道具を持って、疲れた様子で部屋を出ていくまで生徒会長室に篭りきりだった。ドアの施錠はされていなかった。男はようやくチャンスが来たと思いこっそりと中に侵入したが、一日中気を張っていたためかシオンを待つ間に部屋の隅で眠りこけてしまった。目を覚ますと明け方になっていて、目の前のソファでシオンが静かな寝息を立てていた。

 男は自分にしなだれ掛かるように倒れたシオンの顔を覗き込んだ。
 近くで見ても恐ろしいほど整った容姿だ。
 力なく瞑った瞳に半開きの口元。雪のような白い頬に金糸のような髪が貼り付いて艶かしい色気を加えている。シャツ越に柔らかく大きな双丘が男の裸の胸でつぶれ、たちまち股間に血液が集まってきた。
 男は荒い息遣いで慎重にシオンを床に寝かせ、馬乗りになってシャツの上から両胸を鷲掴みにした。手に余るほどの巨乳に指が埋まり、シャツ越しの素肌はとろけるような柔らかさと張りが絶妙なバランスで混在している。普段の生活では会話すらできないほどの女の胸を揉みしだいているという現実に、頭の芯が焼き切れそうになる。
「んっ……う……」とシオンも微かに反応を示す。男はシオンのシャツを強引に開いた。ボタンが千切れ、ぶるんと音がしそうな勢いで汗に濡れた胸が全て露わになる。男は無我夢中でシオンの胸を捏ね回し、片方の乳首に吸い付くとジュルジュルとわざとらしく音を立てた。
「はぁぁ……たまんねぇよ……」
 男は唾液を飲み込むのも忘れ、舌先で乳首を転がしながら空いた手をシオンの股間に伸ばした。
 だが同時に、シオンはうっすらと目を開けた。
 しばらく不思議そうな顔でグニグニと音が聞こえてきそうなほどいやらしい形に変形している自分の胸を見る。
 男は咄嗟にシオンから離れようとしたが、その直前にシオンの表情が切羽詰まったものに変わり、仰向けのまま膝を蹴り上げた。
 膝が男の股間にクリーンヒットし、地獄のような悲鳴が響く。その隙にシオンはシャワー室のひとつに身を隠した。息を殺して待ち、気配を頼りに男が近づいてきたタイミングで全開にしたシャワーを浴びせた。
「ぶあっ?! やべぇっ……」
 水が男の身体を伝って流れ、シルエットを完全に浮かび上がらせた。シオンは男に足払いをかけて転倒させると脇腹を蹴り上げる。男は四つん這いのまま個室に逃げ込むが、清掃用の蛇口から流れ続けた水が大きな水溜まりになり男の足跡が丸見えだ。シオンは跳躍し、男の背中に膝を落とした。
「がああああッ?!」
 シオンの思わぬ反撃に男は混乱したまま悲鳴を上げる。出鱈目に暴れて抵抗するが、シオンは冷静にレインシャワーのコックを捻って男の全身を浮かび上がらせた。その後は一方的だった。男の筋力は通常の人間よりはあるが、その攻撃は単調で姿さえ見えればシオンにとって難なく躱せるものだった。自ら逃げ込んだシャワー室で男は完全に袋小路に陥り、シオンは何発も男の腹に膝を埋めた。そしてたまらずシオンを突き飛ばして浴場に出たところで、派手な音を立てて滑って転んだ。
 水溜りがくっきりと、うつ伏せに倒れた男の形に凹んでいる。
 シオンは男を仰向けにすると、胸に馬乗りになるような姿勢で両膝で男の頸動脈を絞めた。男の顔色は見えないが、これで傷付ける事なく失神させられる。その後はアンチレジストに回収を頼めばいい。
 だが、男は最後の力を振り絞ってシオン目掛けて霧状に水を吐いた。
 倒れている時に水を口に含んでいたのだろう。シオンは一瞬怯んだが、その直後に目に激痛が走った。男はシャワー室で攻撃を受けている最中に石鹸の欠片を口に含み、水と一緒に咀嚼して吐き出したのだ。激痛でシオンが男を解放した隙に、男は立ち上がる勢いを利用して渾身の力でシオンの腹を突き上げた。
「ゔっぶぇッ?!」
 シオンの両足が浮き、だらしなく舌が飛び出した。完全に弛緩した生腹に背骨が触れそうな勢いで拳が埋まり、視界が一気に狭まる。
「よくも好き勝手やってくれたなぁ……。犯されるだけで済むと思うなよ?」
 男は腹を抱えて前屈みになっているシオンのシャツを背中から掴み、逃げられないように固定した。
 どぶん! という凄まじく重い音が室内に反響した。
「ゔあぁぁぁぁッ?!」
 丸太のような膝が深々と腹にめり込み、シオンは体内の空気を全て吐き出す勢いで悲鳴を上げた。
「おら! おら! おら! おら! おら! おら! どうだ! 何発も腹に膝蹴りくれやがって。同じ目に遭わせてやるよ」
「うぶッ?! おっぐぇッ?! ぐぶッ!! ぐあッ!? あぐッ!?」
 シャツを掴まれたことでシオンは後ろ手に縛られた状態と同じになり、男の猛攻を防御もできずただ受け止めるしかなかった。賎妖とはいえ力は常人よりも強い。一撃だけでも失神するほどの威力の膝蹴りを執拗に何発も何発も息つく間も無く打ち込まれ、収縮した瞳が瞼の裏に隠れ始めた。
「う……うぁ……あ……」
 ようやく地獄のような膝蹴りの連打が終わると、男は意識が朦朧としたシオンの背中を壁に押し付けた。シャツの前立ては完全に開いており、胸の谷間から鳩尾を通って引き締まった腹部までが露わになる。男は薄布一枚すら守るものが無い状態の鳩尾に、撞木のような拳を突き刺した。
「ひゅぶッ?!」
 急所を突かれ、シオンの意識は一瞬で覚醒し、次の瞬間には混沌に叩き落とされた。
「おら、ここ弱いだろ? 男でも鳩尾突かれたら悶絶するからな」
「ゔッ……がッ?! ああああッ!」
 男はシオンの鳩尾に深く拳を突き刺したまま、抜かずに反応を楽しんだ。拳をグリグリとねじ込み、心臓の鼓動と呼吸が阻害される。苦痛でシオンは空気を求めて口をパクパクと動かした。男は責め苦を続けながら、あらためてシオンの身体を舐め回すように凝視した。汗やシャワーの水でシャツがぴったりと貼り付き、シオンの胸や乳首の形を浮かび上がらせている。男は空いた手でシオンの胸を乱暴に揉み始めた。
「ぐっ……うぅ……」と、シオンは歯を食いしばったまま呻いた。鳩尾を貫かれたまま見知らぬ男に好き放題に胸を揉まれているという苦痛と恥辱に耐えながら、気丈にも男を睨みつける。視界はまだ戻っておらず、男は透明化を解除していないため、もちろんシオンから男の姿は認識できない。
「……なんだその目は? まだ自分の立場がわかってねぇみたいだな」
 男はシオンの鳩尾から拳を抜くと、激しく咳き込むシオンの呼吸にタイミングを合わせて子宮のあたりに拳を打ち込んだ。
「ゔあッ?!」
「女の急所はここだろ? ガキ産めねぇ身体にしてやってもいいんだぜ?」
 ボグッ! ボグッ! ボグッ! ボグッ! と、男はサンドバッグを殴るようにシオンの子宮に連続して拳を埋めた。シオンも必死に防御しようとするが、相手の姿が見えないためほとんど意味をなさない。
 男の攻撃は執拗だった。子宮のある下腹部を守ろうとすると鳩尾を突かれ、シオンが前屈みになった瞬間に腹を膝で蹴り上げられ、上体が起きると同時に再び子宮を潰した。反撃を試みる暇もなく、シオンは襲いくる激痛に大粒の涙を流しながら床に崩れ落ちた。
 男は自らの股間にシャワーを浴びせると、腹を抱えて割座の姿勢でうずくまっているシオンの髪の毛を掴んだ。顔を上げさせられたシオンの口から「ひっ」と小さい悲鳴が漏れた。完全に勃起した男性器のシルエットが力を誇示するように浮かんでいる。
「へへ、太いだろ? アジトに連れ込んでから実際に見せてやるよ」と言いながら、男はシオンの頭を両手で掴んだ。男根の放つ熱気がシオンの鼻先に伝わってきて、先端が半開きになっている口元を狙っている。
 不意に自動ドアが開いた。
 シオンと男は咄嗟に音の方向に視線と向ける。アナスタシア聖書学院の制服を着た背の低い女子生徒が、不安そうな表情で脱衣所からこちらを覗き込んでいる。早朝学習か自主トレ後に朝シャワーを楽しもうとした生徒が騒がしさに気がついたのだろう。
 男の行動は早かった。
 女子生徒を認識した瞬間にシオンを突き飛ばし、自動ドアに向かって走った。
 床に溜まった水がバシャバシャと音を立てながら男の足形を作る。
「だめ! 逃げて!」
 まだ視界が回復していないシオンが咄嗟に叫んだが、女子生徒は事態が飲み込めず固まったままだ。
「えっ? な、なに…………ゔぼぇッ?!」
 女子生徒の身体が、腰から吊り上げられたような姿勢で宙に浮く。
 男が何の容赦も無く、ただ様子を見に来ただけの女子生徒の腹を身体が浮くほどの勢いで突き上げたのだ。シオンと違って鍛えられていない女子生徒は訳もわからない状況で不意打ちを喰らわされ、考える間もなく失神させられた。シオンからは女子生徒が宙に浮いたまま、力なく全身を弛緩させている様子がぼやけて見える。
 シオンが力を振り救助に向かおうとするが、立ち上がる前に女子生徒の身体が投げ捨てられたように床に落ちた。こちらに近づく足音が聞こえ、男のつま先がシオンの腹に突き刺さる。
「ゔぐッ?!」
「ったく、とんだ邪魔が入りやがった。せっかくアジトに連れ込んでからブチ込んでやろうと思ったのによ」
 男は両手で腹を押さえながら嘔吐いているシオンの顔を強引に上げ、貪るように唇を吸った。
「んんっ?! んんんんんんッ!」
 突然の行為にシオンは目を見開き、大粒の涙が流れる。男はシオンの口内を蛇のような舌で蹂躙し尽くすと、唾液と一緒にシオンの喉に錠剤のような固形物を押し込んだ。シオンはそれに気がついておらず、必死に男から逃れようとしている。男はシオンの唇をようやく解放すると、耳元で囁いた。
「後で連絡する。あの女を助けたかったら俺から接触するまで普段通りに過ごせ。いいか、警察に連絡したら殺す。警察以外の外部へ連絡しても同じだ。ま、警察が出てきたところで俺が捕まるはずないけどな」
 言い終わると、男は力任せにシオンを蹴り飛ばした。シオンが失神する直前、女子生徒の身体が宙に浮くように連れ去られていく様子が見えた。

 熱心に物理を教える教師の声をシオンは上の空で聞いていた。
 はたして女子生徒は無事なのだろうか。
 あの賎妖はまだ学院内にいるはずだが、昼前になっても接触はない。新たな被害者を物色してるのかもしれない。
 悩んだ末、シオンはアンチレジストに連絡することにした。机の中でスマートフォンを操作し、アンチレジスト専用のアプリを起動しようとしたところで、腹部に圧迫感を感じた。不思議に思ったのも束の間、背中に手のひらが添えられる感触があると同時に、シオンの腹部がシャツを巻き込んでベコリと凹んだ。
「んぶぅッ?!」
 慌てて両手で口を塞ぐが、教室中の視線が奇声を上げたシオンに集中する。シオンは青ざめた顔をしたまま、ゆっくりと口を押さえている手を離した。
「す……すみません。なんでもありま……んゔッ?!」
 ぐぼっ、という音と共にシオンの腹部が再び陥没する。シオンは目を見開いたまま再び両手で口を塞いだ。あの賎妖の仕業だ……とシオンは確信した。いくら最後列の席とはいえ、まさか授業中に接触してくるとは思わなかった。胸から下が机で隠れているため周囲からは見えないが、シオンからは拳の形に陥没している自分の腹部がはっきりと見える。拳は腹にめり込んだまま抜かれず、ジワジワと胃液が逆流して額に脂汗が額に滲んできた。
「だ、大丈夫ですか? 顔色が悪いようですから、保健室で休んだ方が……」
 教師の言葉に、シオンは口を塞いだままコクコクと頷いた。立ち上がっても男はまだ拳を抜かない。
 前席の女子生徒が付き添いを申し出たがシオンは口元を押さえたまま首を振って断り、前屈みになったまま教室を出た。ドアを閉めた途端に強引に手を引かれ、女子トイレに連れ込まれると洗面台の対面の壁に背中から叩きつけられた。
「おいおい警告しただろ。警察に連絡するつもりだったのか?」と、男は咳き込むシオンに言った。壁に背を付けたシオンからは洗面台の鏡越しに自分の姿が見えるが、実際はその間に男が立ち塞がっているはずだ。
「……どこにも連絡なんかしていません。電話する素振りでもありましたか? あんなことをして、かえって怪しまれたらどうするんです?」
 シオンは何も無い空間を睨みながら言った。男はしばらく黙った後、「まぁいい」と言いながらブレザー越しにシオンの胸を鷲掴みにした。シオンの胸が太い指の形にグニッと凹む。シオンは「くっ」と声を出した後、歯を食いしばって悔しそうな表情を浮かべた。下手に抵抗して女子生徒に危害が及ぶことは避けたい。
 男はしばらく胸のボリュームと柔らかさを堪能した後、おもむろにシオンの手を掴んで自分の男根を握らせた。その太さと熱さに、思わず息を呑む音がシオンから漏れる。男はシオンの手を乱暴に握ったまま上下にしごきはじめた。男根はボリュームを増し、熱がシオンの手に伝わってくる。
「おら、なにボーッとしてんだよ? 自分で動かせ。手コキだよ手コキ。どうせ何回もやってんだろうが」
「て……てこ……?」
「あ? 焦らしてんのか? こうやってチンポ握ったまま上下に動かすんだよ」
 男は再びシオンの手を握り込んで上下にしごいた。手を離された後、シオンは恐る恐るといった様子で男の行為を真似る。この場で勝負を仕掛けてもいいのだが、気持ちがどこかでブレーキをかけているようだ。それに連れ去られた女子生徒の居場所もわからないため、今はこの男を倒すよりも従う方が得策だ。
「おい真面目にやれや。もっと強く握ったまま速く動かせ。ぎこちない演技なんかしやがって。遊んでるからこんなエロ乳になったんだろ?」と言いながら、男は無遠慮にシオンの両胸を捏ね回し始めた。
 シオンは悔しそうな表情を浮かべながら、言われた通りに手の動きを早めた。男はようやく満足した刺激が得られはじめたのか、汚い溜息を吐きながらシオンの両胸を揉み続ける。
「おおぉ……いいぞ。へへ……他の生徒が真面目に授業受けてるのに、お前は胸揉まれながら男のチンポしごいてるなんてな。今ほかの生徒が入ってきたら透明化を解除してやるよ。お前が授業中にスケベなことしてる変態ガイジンだってことを教えてやらなきゃな」
 顔が見えれば、おそらく男はとんでもなく下衆でおぞましい表情を浮かべているのだろう。シオンは黙って下唇を噛みながら黙々と手を動かし続けた。こんなことのなにがいいのかわからないが、男が性的に興奮していることは伝わってくる。
 男の呼吸が徐々に荒くなり、胸を揉む手つきも乱暴になってきた。その呼吸に呼応するように自然とシオンの呼吸も激しくなり、手の動きも速くなってくる。
「ぐっ……スケベ女め……おぉ……ああああいくいくいくいく!」
 男根がどくんと脈打つと、虚空から白濁した液体が放出されてシオンの太ももとスカートをべっとりと汚した。放出はすぐには止まらず、壊れたポンプのように大量の粘液をシオンに吐き続けた。
「えっ? い、いやあッ!」
「離すんじゃねぇよ!」
 射精を見ることすら初めてのシオンは驚いて手を離しかけるが、男はその手を強引に掴んで亀頭を握り込ませた。放出は壊れたポンプのように続き、シオンの手全体が生暖かい白濁液でドロドロになる。
 あまりの出来事に、ようやく放出が終わるとシオンは呆然と粘液に汚れた自分の手を見つめた。
 男は放心状態のシオンの鳩尾に一撃を喰らわせると、うずくまるシオンの頭上から声をかけた。
「今夜十時だ。あの女を助けたかったら夜十時に五階の奥の空き教室に一人で来い。場所はわかるだろ。一秒でも遅れたらあの女を連れて俺はトンズラする。お前が大人しく俺の女になるんだったら解放してやるよ。アジトに行く前に、教室で制服着たままパイズリくらいは頼むぜ。お前みたいなガイジンが日本の制服を着ているのは結構そそるからな」
 男はそれだけ言うと気配を消した。見えないだけなのか、本当に去っていったのかはわからなかった。

 生徒会長室でシオンは粘液で汚れた手と太ももを入念に洗い、除菌シートで何回も拭いた。スカートと靴下はビニール袋に入れて捨てた。
 入室前に侵入の形跡がないことは確認したが、それでもあの男がいないとは限らない。常に見られているかもしれないという緊張感で脈が早まる。
 もはやあの男を倒すしかない、とシオンは思った。
 そのためには完璧に位置を把握する必要がある。サーモゴーグルでもあればいいのだが、もちろんそんなものを用意している時間もないし、用意している様子を知られたら女子生徒に危害が及ぶ。男のターゲットが自分であるうちに対処しないと被害の拡大は免れない。
 シオンは夜まで生徒会長室で過ごし、机を整理するフリをしながら万年筆のインクを化粧品用の小さなジャーに移し替えた。あたかも出先での補充用に小分けにしたように見せかけて、数個をポケットに忍ばせる。タイミングを待ってペイントボール代わりに男にぶつければ位置が把握でき、戦闘はかなり有利になるはずだ。
 男に告げられた時間が迫り、シオンは覚悟を決めてメイド服を模したバトルスーツに着替えた。ガーターベルトの付いた白いタイツに同素材の長手袋をはめ、フリルのついたミニスカートとトップスを身に着ける。小さなエプロンを腰に巻き、髪をツインテールに結んでヘッドドレスを飾った。普段のシオンを知る者が見たら目を疑うような露出度の高い服装だった。だがシオンは至って真面目だ。タイツや手袋にはシオンの腱や関節に合わせてテーピングと同じ効果がある素材が編み込まれているし、トップスはシオンの大きな胸が戦闘で動かないように固定する役割を持っている。もちろんデザインもメイド好きなシオンのモチベーションを上げる大切な要素でもある。
 非常灯のみが点灯している廊下を進み、男の指定した空き教室を目指した。ドアの隙間からは明かりが漏れ出ている。緊張のせいか体温が上がり、心臓がこめかみに移動したように高鳴りを感じる。緊張をほぐすようにスカートに忍ばせたインク入りのジャーを指で撫でた。

 時間通りに教室の扉を開けた。
 窓にはカーテンが引かれ、灯りが外に漏れないように対策されている。
 教室の奥で、シャワー室で連れ去られた女子生徒が目を閉じたまま壁にもたれかかっていた。いや、壁からわずかに背中が離れている。よく見ると女子生徒の胸が男の手の形に凹んでいた。女子生徒は透明な男の身体にもたれかかり、背後から胸を揉まれているのだ。
「へへ……約束通り来たか……っておい!」
 女子生徒の背後から男の声がした。男が立ち上がったのか、支えを失った女子生徒の身体が床に倒れる。
「なんだよその痴女みてぇな格好は……。いや待て、聞いたことがあるぞ……アンチレジストの戦闘員でヤバいくらい強い奴がいるってな。そいつは冗談みたいなエロいメイド服着て、長い金髪をツインテールに結んだガイジンだって……まさかお前がそうなのか?」
「……強いかどうかはわかりませんが、アンチレジストでこのバトルスーツを着ているのは私だけです」
 男はしばらく呆然とした後、乾いた声で笑った。目の前にいる冗談のような格好をしたシオンこそが、今まで多くの人妖や賎妖を倒してきた宿敵であると確信したからだ。人妖ですら手こずる相手に、それより能力の劣る自分が正面から闘って勝てるわけがない。だが逆にシオンを倒すことさえできれば、自分は周囲から一目どころか別格の扱いを受けるはずだ。しかも今回は絶好の機会なのだ。
「まぁいい。とりあえず部屋の真ん中まで来い」
 男の気配が消えた。シオンは言われた通りに部屋の中央で棒立ちになる。女子生徒は薬で眠らされているらしく、微かな寝息を立てたまま動かない。シオンが全身を緊張させていると、剥き出しの腹部を男が撫ではじめた。いやらしい手つきに嫌悪感を覚えるが、インクを浴びせられる機会は一度きりだ。もっと確実なチャンスを待って行動するために、シオンは抵抗することなく男の行動に身を任せた。男の手はシオンの腹を円を描くようにさすっていく。
「……んっ……んふっ……」
 自分の意に反して吐息が漏れ、シオンは慌てて口を塞いだ。不意に撫でられている腹部からゾクゾクとした快感が駆け上がってきたのだ。反射的に男がいるであろう位置に攻撃を繰り出すが、思うように力が入らない。まるで重油の中で泳いでいるようなもどかしさを感じる。不意に背後からスカートの中に手を入れられ、尻を撫でられた。咄嗟に背後に蹴りを放つが、いつもの十分の一の力も出ない。
 シオンの緩慢な攻撃を男はことごとく躱し、小刻みに距離を取りながらシオンを翻弄した。男は満足に動けないシオンを嘲笑うかのように太ももや腹を撫で、背中をなぞったと思えば背後から胸を鷲掴みした。「あんッ!」とシオンの口から嬌声が漏れた。その声にシオン自身も驚く。男はシオンの胸を円を描くようにこね回し、固くなり始めた乳首を服の上から摘む。
「あっ……! やだっ……んうっ……」
 身体の反応が異常に敏感になっていることに驚きながら、シオンはインク入りのジャーを握った。だが絶好の機会にも関わらず、シオンの意に反してジャーを握った手がそのまま動かなくなった。男は慣れた手つきでシオンの胸を揉みしだき、固くなって生地を押し上げている乳首を弾いた。シオンは身体の底から溢れてくる快感に混乱しながら嬌声が漏れるのを堪えるために小指を噛んだ。
「良い声で鳴くじゃねぇか。もう完全に薬が回ってるみたいだな」と、男が胸を揉みながら言った。
「く……薬……? んむっ?!」
 男はシオンの顎を掴んで顔を向けさせると、強引にシオンの口に舌をねじ込んだ。すぐにでも顔を離したいのに、シオンは目を閉じて遠慮がちに男の舌に自分の舌を絡めてしまう。
「シャワー室でキスした時に飲ませたんだよ。特殊な媚薬みたいなもんだ。快感や苦痛を増幅させる効果と、俺の唾液と混ぜて飲ませることで無意識に俺へ服従させる効果もある。俺にまともに攻撃ができないのも、俺という主人への服従効果のためだ。メイドのお前にはピッタリな効果だろ? おら、やましいもん持ってんだろ。ご主人様にとっとと差し出せ」
 シオンの意に反して手が勝手に動き、インクの入ったジャー容器を男の前に差し出した。男の透明な手がそれを掴み、ゴミのように教室の隅に投げる。容器が割れる音と同時にシオンの腹に男の膝が深く埋まった。
「ゔぶッ?!」
「こすい手を企んでんじゃねぇぞ! ご主人様に逆らいやがって……使えねぇメイドにはお仕置が必要だよなぁ」
 男はシオンのトップスを掴むと、シオンの腹に膝を何発も打ち込んだ。拳とは比べ物にならない威力に加え、薬の効果でシオンは防御はおろか腹筋を固めることすらできず、男の膝が背骨に届きそうなほど深く埋まる。
「ぐぶぇッ! ごぼぉッ!? ごぶぇッ!? げゔぅッ!!」
 男の猛烈な膝の連打はシオンの意識が朦朧としても止まらず、シオンが耐えきれなくなって尻餅をついてからも執拗に爪先で腹を蹴ってきた。トップスの背中部分を掴んで無理やり立たせると、力が逃げないように背中に手を当てて拳を腹に埋める。
「うぶぇッ?!」
 胃液が逆流し、ビチャビチャと音を立てて床に広がる。
「汚ねぇんだよ! ご主人様の許可無く吐いてんじゃねぇぞ!」
 男はシオンの背骨を挟み込むようにして何発もシオンの腹を陥没させた。地獄のような苦痛であるにも関わらず、薬の効果で抵抗や防御をすることも出来ない。シオンは白目を剥いたまま止まらない腹責めで胃液を吐き続け、その無様な姿に男は更に興奮の度合いを高めていった。
 男はぐったりとしたシオンを教壇の上に寝かせると、そこに自らも登りシオンのトップスをむしり取るように剥ぎ取った。よほどしっかりと固定されていたのか、ぶるん、という擬音が聞こえてきそうなほどの勢いでシオンの胸が解放され、目が眩むほどの白い肌とうっすらと色づいた乳首が露わになる。男は貪るようにシオンの双丘を鷲掴みにし、片方の乳首に吸い付いた。
「んあッ?!」と声を上げながらシオンの背中が浮く。薬のせいで感度が数倍になった身体は乳首を吸われただけでかなり強い快楽を感じているようだ。覚醒したシオンは自分の胸が露わになり、男によってグニグニといやらしい形に変形させられている様子を黙って見るしかなかった。男は必死の表情でジュルジュルと音を立てながら乳首を吸い続け、空いた手でもう片方の乳首も転がす。傍目にはシオンが一人で教壇の上で悶えているようにしか見えないが、男の姿が見えるのであれば、残飯に群がる餓鬼のごとくおぞましい姿を晒していたことだろう。
「ちくしょう……たまんねぇ……。おら、そのスケベな乳でご主人様のチンポにご奉仕しろ」
 男が腹の上に跨るような気配があり、胸の谷間に肉を巻き付けた鉄棒を挟まれたような感触があった。シオンは困惑した様子で男の顔があるであろう位置を見つめる。
「なにボサっとしてんだ? 早くパイズリ奉仕しろやエロメイド」
 パイズリ奉仕という言葉の意味がわからず困惑するシオンに業を煮やし、男は強引にシオンの手首を掴み、左右から胸で男根を挟ませた。乳圧が加わっただけでシオンの吸い付くような肌が男根を擦り上げ、それだけで暴発してしまいそうなほどの快感が男の脳内で弾けた。
「くおおッ?!」と男は上体を仰け反らせるが、少しでも長くこの極上の快感を堪能しようと耐えながら、ゆっくりと腰を振り始める。
「あっ……やっ……やだ……」
 自分の胸の谷間を好きでもない男の勃起した性器が前後しているというおぞましさにシオンは青ざめるが、同時に薬の効果でもっとこの男に奉仕したいという気持ちも芽生えてくる。男が手を離してもシオンは自分の胸を左右から挟みつづけ、教えられてもいないのにより強く挟めるように、脇を絞めて肘で左右から胸を圧迫した。予想外の行動に男の許容値はたちまち限界まで達する。
「ぐうぅッ!? クソッ……このエロメイドめ……。ご褒美をやるから口を開けて舌を出せ」
 男の言葉にシオンは眉をハの字にしたまま小さく頷き、口を開けた。目をとろんとさせたまま大きく口を開けて舌を出すシオンはまるで「ここに射精してください」と言っているようで、男はすぐさま臨界を迎えた。
 男は腰を振りながら必死の形相で先端をシオンの谷間から出すと、一気に大量の粘液を放出した。コップの水を浴びせられたような量の粘液がシオンの舌や顔に降り注いでいく。
「ん……んぶッ?! ぷはッ!? あぁッ!」
 シオンは放出の勢いに驚いて顔を逸らすが、男の放出は止まらずにシオンの顔を汚し続けた。美女の整った顔を自分の粘液で汚すという背徳感と征服感に、男は射精しながら更に性欲が湧き上がってくる。シオンは顔中を白濁液で汚され、涙を浮かべて放心した様子で肩を上下させている。男の勃起は全くおさまらず、シオンの腿に馬乗りになるとヘソのあたりに拳を打ち込んだ。
「うぐッ?!」
「なに勝手に寝てんだよエロメイドが。あと五回はするぞ」
 男は左右の拳を交互にシオンの腹に打ち下ろし、餅をつくようにシオンの柔らかい腹を殴った。
「うぐッ?! ぐあッ! ぐぶッ! ゔぐッ! ごぼぉッ!?」
「たまらねぇ……もうここでブチ込んでやるよ。おら、ここがいいのか? それともここか?」
 男はシオンのヘソや脇腹、子宮のあたりや下腹部を殴り続けた。感覚の違う苦痛がランダムにシオンに襲いかかり、脳がパニックを起こして出鱈目な信号を送り続ける。男の掌底がシオンの鳩尾に放たれ、大量の空気を一気に飲まされたような衝撃を受けた。まともに呼吸ができずにシオンの顔色が真っ青になっても男の拷問は止まらず、シオンは苦痛に歪む顔を男に晒し続け、男はそれを見て興奮の度合いを更に高めていった。
「ゔあッ!? がッ! あぶッ! ああああああああッ!」
「おらおらおらおら! 大事なところが大変なことになってるぜ?」
 男が連続してシオンの子宮を殴った。潰されるような勢いの攻撃と薬による苦痛の増幅でシオンは白目を剥き、口から唾液を溢れさせながら悶える。とうとう机が壊れ、シオンと男は床に落下した。シオンは白目を剥いたまま痙攣している。男はシオンに覆いかぶさると、中指をヘソに突き立てた。
「へへへ……一度やってみたかったんだよなぁ。ヘソ姦ってやつをよ……」
 ぶちゅん、と音がして、男の指がヘソを貫いて中に侵入した。
 脳に冷たい雫が垂れるような感覚があり、全身の血圧が下がるような感覚がシオンを襲った。
「う……うぁ……あああああああああああッ!!」
 あまりの事態にシオンが目を見開いて絶叫した。
 芋虫のような男の指が身体の中で這い回っている。
 不思議と痛みは無かったが、内臓を掻き回される不快な感覚だけははっきりと感じた。
「やっ……やだ……やめ……」
 唇が震えてまともに言葉が出てこない。
 やがて両手で肩を掴まれたような感触があり、穴の開いたヘソに男性器が突っ込まれた。
「ひゅぶっ……!」とシオンが窄めた口から息を吐く。
 皮膚を掻き分けて男性器がゆっくりと抽送をはじめた。
「あーやべぇ……。マンコとは違う気持ち良さだわ。内臓がうねってチンポに絡みつくのがわかるぜ」
「うぶッ……えゔっ……! うえぇっ……」
 男性器で直接内臓を掻き回されているという事実に猛烈な吐き気と気持ち悪さが込み上げてきた。シオンは白目を剥き、脱力したまま舌を出したまま喘ぐ。男はシオンの感じている苦痛など意に介さず、恍惚とした表情を浮かべたまま夢中で腰を振り、やがて大量に放出した。血液と粘液が、ヘソから抜かれた男性器のシルエットを浮かび上がらせる。それを呆然と見るシオンをよそに、男はシオンのスカートの中に手を入れてショーツを掴んだ。シオンはビクッと震え、慌てて男の手を掴んだ。
「邪魔すんじゃねぇ! いよいよメインディッシュだろうが!」
「いやあッ!」
 シオンは必死に首を振って抵抗した。本来なら蹴りの一発でも食らわせるところだが、薬の効果でまともな抵抗が封じられている。しかしそれでも最後の一線は譲ることができない。シオンは出来る限りの抵抗として、必死に男の手を掴んでショーツが剥ぎ取られることを拒んだ。
 鍔迫り合いのような状況の中、やがてシオンの視界に白い霞がかかってきた。
 蓄積したダメージで失神するのだろう。だが、失神すれば男の思う壺だ。
 シオンは自分を奮い立たせるために叫んだ。

「やめてぇッ!」
 シオンの絶叫が生徒会長室に響いた。
 目の前に男の姿はなく、場所も空き教室ではない。
 あの地獄のような光景はどこに行ったのか。シオンは執務机の椅子に座ったまま呆然としてきょろきょろと周囲を見回した。ハッとして腹部のあたりをさするが、怪我をしている様子はない。
「……え? うぷッ?!」
 状況が飲み込めない中、不意に顔中にまとわりつく猛烈な臭気と粘ついた不快感を感じた。反射的に左手で頬を擦ると、ドロドロとした気持ち悪い感触があった。すわ賎妖にかけられた粘液かと思ったが、手のひらを見ると明らかに違うものだった。
「……納豆?」
 手に謎のペースト状のものがついている。
 潰れた納豆と味噌に、銀色に光る細かいラメのようなものや、紫色の欠片が渾然一体となった得体の知れないものだった。
 それがまるで泥パックのように顔全体にへばりついている。そして右手にフォークを握っていることに気がついた。フォークの先には乾燥した麺が巻き付いている。
「……えっ? えっ?」
 困惑した様子でフォークと左手のペーストを交互に見る。そして眼下に自分の顔の形に凹んだパスタ皿があることに気がついた。そこには明らかに茹で時間を間違えてブヨブヨになったパスタと、シオンの顔に貼り付いているものと同じ謎のペーストが盛られている。何をどう間違えたのか、自分はこの皿の上に顔から落ちた状態で眠っていた、あるいは失神していたらしい。
 徐々に昨夜の記憶が蘇ってきた。
 翻訳した論文を提出してシャワーを浴びた後、やはり空腹を感じて家から作ってきたパスタソースを温めたのだ。自信作のソースで、好物の納豆と味噌をベースに栄養バランスを考えてイワシとカツオと紫キャベツとチアシードを全てミキサーにかけた栄養満点のソースだ。美味しいもの同士の組み合わせだから相乗効果で更に美味しくなっているはずだ。パスタもパッケージの茹で時間通り三分……いや、三十分だったかもしれない。とにかく完璧に仕上げたパスタだった。一口食べて咀嚼しているうちに、どうやら疲労がピークに達して寝てしまったらしい。
 それにしても……とシオンは思った。
 なぜあんな夢を見てしまったのだろう。人質を取られていたとはいえ、夢の中で自分は言われるがまま手や胸を使って男に奉仕して……。
「ああッ!」とシオンは頭を抱えて立ち上がった。いわゆる淫夢の部類に入る夢を見たことで恥ずかしさと自己嫌悪に押し潰されそうになる。ひとまず火照った身体と汗とパスタソースを流すためにすぐにでもシャワーを浴びたい。時計を見ると、夢に見た時と同じく五時十五分を指していた。
 もし同じ賎妖が現れたら、有無を言わさずシャワー室で倒そう……。
 シオンは顔を真っ赤にしながらタオルと着替えを掴み、小走りで部屋を出ようとしたところで椅子の足につまづいて派手に転んだ。



今回もありがたいことに熱量多めのリクエストをいただきました!
……が、納品後に誤ってskebアカウントを削除してしまったので新規にアカウントを作り直しました。
こちら

現在は審査が通りリクエスト受注が再開されています。
直接のご依頼は下記メールアドレスからよろしくお願いします。
roomnumber55.japan@gmail.com


skebでありがたいご依頼をいただきました。

スクリーンショット 2022-05-14 21.46.57


「これが次のターゲットって、マジですか?」
 黒いレザーライダースを着た男が、スマートフォンに転送された写真を食い入るように見ながら興奮気味に言った。男の向かいに座るベージュのスーツを着た男が頷く。
 写真は望遠レンズで盗撮されたもののようだ。学校の制服らしき深紅のブレザーを羽織った白人の女が写っている。まったく癖の無い完璧なストレートの金髪に、エメラルドを埋め込んだような瞳。アジア系とは骨格そのものが異なるのか、顔も小さく腰の位置も高い。身体に余分な脂肪が付いていないのに、胸は一般的なそれと比べても明らかに大きい。
「周りの女が完全に引き立て役じゃないですか……。それに、やっぱり天然物の金髪は違うな。ハードブリーチだと髪が痛んで仕方がないんすよ」
 レザージャケットの男が自嘲するように自分の爆発したような金髪を掻いた。対面の男が低い声で笑う。
「蓮斗(はすと)くんなら気に入ると思ったよ。ターゲットは如月シオンという名前だ。アナスタシア聖書学院で生徒会長を務めている」
「アナスタシア? 名門中の名門じゃないっすか。入学自体がめちゃくちゃ難しいって聞いたことありますよ」
「そうだ。その中で彼女の成績は主席。もちろん特待生だ。しかも実家は大手製薬会社の創業家。単身で来日後、学生生活をしながら色々とビジネスもしているらしい。そして我々の仲間を少なくとも六人は倒している。実際はもっと多いだろうがね」
 ひゅうと蓮斗が口笛を吹いた。「なんかアニメの世界から迷い込んできたような人っすね。たぶんトイレも行かないはずだ」
 スーツの男がまた低く笑う。蓮斗が続けて言った。
「で、なんでそんな完璧超人が、わざわざ自ら進んで危険なことしているんですかね? 一見人間と見分けがつかないのに、人間を養分にする怪物──人妖(じんよう)討伐期間『アンチレジスト』の戦闘員なんてやってるんだろう。金に困っているどころかむしろ余ってそうだし」
「怪物などと言わないでもらいたいな。我々人妖は進化した人類だ。それとも殺されたいのか? 旧型人類の蓮斗くん?」
 スーツの男は顔色を変えずに足を組んだ。蓮斗は必要以上に慌てた様子で両手を前に突き出して振る。
「いやいやいやとんでもない! 今のはただの軽口ですよ。僕と桧垣さんの仲じゃないですか」
「先ほども言ったが、彼女は我々にとって脅威だ。冗談を聞く余裕がないのだよ。やるのかやらないのか、すぐに答えてくれ」
「もちろんやりますよ。俺みたいな人間──いや、旧型人類の方が向こうも油断するでしょうし、今までだって上手くやってきたじゃないですか。報酬と、いつもの『つまみ食い』の許可さえもらえれば文句はありません。というか、この写真見せられたらやらない選択肢はないですよ」
「なら交渉成立だ。前金は今日中に口座に振り込んでおく。『つまみ食い』として君の好きな腹パンプレイとやらをするのは構わんが、本番と顔を傷つけるのはダメだ。彼女はあくまでも私の栄養源なのだからな」
 桧垣はアンプルケースとパッキングされた白い粉を取り出してテーブルの上に置いた。白い粉を見つめたまま蓮斗の喉が鳴る。ヤク中が、と桧垣は心の中で吐き捨てた。
「知っていると思うが、アンプルの中身は強力な催淫剤だ。いつも通り君のプレイを手助けするための一味も加えてある。トリップ中に間違って自分に打つなよ」
「大丈夫ですよ。じゃあ、成功したら連絡しますんで……」
 早く出ていけという雰囲気を隠そうともせず、落ち着きのない声で蓮斗が言った。桧垣は鼻を鳴らすと部屋を出る。閉めたドアの向こうから早速ビニールを破く音が聞こえた。

「あら? もうこんな時間……」
 生徒会長室で黙々とキーボードを叩いていたシオンは、時刻が二十時を過ぎていることに気がついて手を止めた。立ち上がってグッと伸びをした後、ふぁ……と小さくあくびをする。窓の外を見ると、夕方から本降りになった雨は上がったようだ。アンティークのティーカップを小さなシンクで丁寧に洗い、水滴の残らないようにクロスで磨く。自然と鼻歌がこぼれた。
 今日は一日平和だったなとシオンは思った。最近は人妖の活動も活発になり、出動のない日の方が少なかったくらいだ。幸いにして強力な人妖に出くわすことはなかったが、疲労やダメージは自分でも気がつかないうちに蓄積されている。帰宅して身体のケアに努めようと思った矢先、スマートフォンが警告音を発した。アンチレジストが作ったアプリが人妖の被害の発生を知らせている。シオンはシンクから飛び出すようにしてスマートフォンを手に取った。近場の現場なら応援に駆けつけられる。
「発生元は……アナスタシア聖書学院?」
 近場どころか、自分がいる場所が現場だった。
 シオンはクローゼットの隠し扉を開け、バトルスーツを取り出して素早く着替えた。バトルスーツと言っても、その服は一見して痴女と見間違えるほどの露出の激しいものだった。ベースはメイド服なのだが、肩や腹部が大きく露出している。ビキニのような胸のみを隠すトップスに、小さなエプロンを巻いたミニスカート。白いシルクのロンググローブを身につけ、同素材のサイハイソックスにはガーターベルトまで付いている。
 普段の凜とした生徒会長としてのシオンを知る者が見たら目を疑いそうなデザインだが、当のシオンは真剣そのものだ。と言うのも、このバトルスーツはほどんど全てシオン自身がデザインしたものだ。バトルスーツは各戦闘員の士気向上や特性に合わせてデザインやカスタマイズが施されている。シオン自身も大好きなメイド服の意匠を取り入れながら、稼働部には極力布を少なく、蹴り技を主体とするためにパンツではなくミニスカートを取り入れ、結果としてこのデザインになった。彼女自身の羞恥心が一般のそれとはややズレがあることも、この奇抜なデザインが完成した要因のひとつだが。

 シオンが外に出ると、黒づくめの服を着た男がずぶ濡れで立っていた。
 極端な痩身に青白い肌。雨に濡れているにもかかわらず爆発したような金髪。鼻が詰まっているのかぐずぐずと鼻を鳴らしながら、薄ら笑いを浮かべてシオンを凝視している。
 異様な雰囲気の男だった。しかも違法な薬物を常用していることは明らかだ。
 シオンの視線が男の右手に移る。男は右手でトートバッグを持つように女子生徒の上着を掴んでいた。女子生徒はぐったりと脱力し、手足が力なく地面へと伸びている。
「おいおいマジかよ」と、その男は爛々とした目でシオンを見ながら叫んだ。叫ぶと同時に手を離したため、女子生徒の身体が足元の水たまりに落下する。「それシオンちゃんの戦闘服? 痴女かと思ったよ。今までアンチレジストの戦闘員は何人か倒したけれど、そこまでエロい格好の奴は初めてだ。それとも誘ってんの?」
 シオンは男の軽口に乗らず、冷静に倒れている女子生徒を観察する。肩が上下しているので息はある。周囲に男の仲間が隠れている様子もない。そして名乗る前からシオンの名前を知っていることから、突発的な行動ではない。人妖の中には敵であるアンチレジストに恨みを持ち、戦闘員自身がターゲットにされることも珍しくない。自分を釣るために女子生徒を人質にしたつもりなのだろう。それなら甘いと言わざるを得ない。
「……お名前を」と、シオンが静かな声で言った。同時に身体がゆらりと横に傾く。「私の名前はご存知のようですので、お名前を教えていただけますか?」
「名前? ああ、蓮斗って言うんだ。ハスの花の蓮に、北斗七星の斗。本名じゃないけどな」
 蓮斗が言い終わる直前に、シオンは身体を傾けて体重をかけた軸足で思い切り踏み切った。一気に距離を縮めて対処する間も与えず、次の瞬間には蓮斗の腹部にシオンの膝が深々とめり込んでいた。
「ぐぼぇッ!?」
「ダメですよ蓮斗さん。最初から切り札を相手に見せては」
 蓮斗の耳元でシオンが囁く。衝撃で蓮斗の身体がスローモーションのように浮き上がると同時に、シオンは高速でスピンしてスカートが翻るのも気にせず後回し蹴りを放った。長い脚に遠心力を最大限に乗せ、トップスピードで踵が蓮斗の顔面に叩きつけられた。蓮斗は悲鳴を上げる暇もなくトラックに撥ねられたように弾き飛ぶ。
 まさに瞬殺だった。
 蓮斗は十数メートル弾き飛ばされ、地面に仰向けに倒れた。十分に距離が取れたことを確認すると、シオンは女子生徒に駆け寄った。女子生徒は硬く目を閉じたまま動かない。濡れた髪が額に貼り付いているが、大きな怪我はしていないようだ。シオンが肩を貸して女子生徒を担ぎ上げようとした瞬間、腹部に噛みつかれたような衝撃が走った。同時にシオンの身体が電撃に打たれたように跳ねる。なにが起こったのかわからない。シオンは腰から下の感覚が無くなり、女子生徒を抱えたまま崩れ落ちた。視界の隅に、女子生徒が自分の腹部にスタンガンを押し付けているのが見えた。

「──あ、目が覚めた?」
 遠くで蓮斗の声がした。
 気がつくと、シオンは固いコンクリートの床に寝ていた。微かにカビの匂いも感じる。学院内のどこかの倉庫だろう。
 粘つくような水音も聞こえてくる。
 視界が徐々に鮮明になるにつれ、シオンは目の前の状況に息を呑んだ。
 倉庫には使われなくなった備品に混じって古いソファが置かれ、蓮斗はそこに足を大きく開いて座っている。そして蓮斗の足の間では、先ほど助けようとした女子生徒が一心不乱に蓮斗の男性器にしゃぶりついていた。女子生徒は背後でシオンが目を覚ましたことなど全く気にせず、派手に水音を立てながら頭を前後に揺すっている。
「な、なにをして……!」
「おっと、変な気を起こさない方が良いよ」
 立ち上がったシオンを蓮斗が手で制した。
「この子は完全に洗脳が済んでいてね。今からシオンちゃんが俺に危害を加えたら自殺するように命令してある。シオンちゃんがこの子の命なんてどうでもいいって思うんだったら、さっきみたいに俺を蹴っ飛ばしてもいいけどね」
 蓮斗が立ち上がると、じゅぽんと音を立てて女子生徒の口から男性器が抜けた。女子生徒はまるで海に宝物を落としてしまった子供のような顔をした後、恨めしそうにシオンを睨んだ。シオンも動くことができず、拳を握ったまま直立不動になる。
「そうそう、それでいいんだよ」
 蓮斗は勃起した男性器をしまうこともせず、ゆっくりとシオンの背後に回った。背後からシオンの首筋を舐め上げ、露出した腹部を撫でる。撫でられた箇所からピリピリと軽い電流が駆け上がるような不思議な感触があった。
「名前も知らない女なんて気にしなきゃいいのに、優しいんだねシオンちゃんは。あれはもはや自分の意志の無い奴隷さ。繰り返し人妖達が作った媚薬を打っているから、もう元には戻らないよ」
 蓮斗が背後からシオンの大きな胸を餅を捏ねるように揉みしだいた。かなりの巨乳だが弾力と張りがあり、蓮斗の指を心地よく押し返す。蓮斗はますます硬くなった男性器をシオンの尻に押し付けた。
「……最低ですね。それに『人妖達が開発した』って……」
「そう、俺は人妖じゃない。あいつらに協力して甘い汁を啜っているただの人間さ」
 布ごしに固くなってきた乳首を摘むと、シオンの食いしばった歯の隙間から声が漏れた。自分の意に反し、徐々に身体の奥が熱くなってくるのを感じる。好意を抱いていないどころか、こんな下衆な男に身体を弄られているというのに不思議と嫌悪感が少ない。何かがおかしいとシオンが思った瞬間、蓮斗はいきなりシオンの顎を掴んで背後を向かせると、強引に唇を吸った。
「んむうッ?!」
 突然のことにシオンが目を見開く。強引に舌を吸われ、甘噛されるのを抵抗なく受け入れた。
「ぎこちないなぁ、もっと舌出せよ」
 囁くような蓮斗の声に、シオンは小さく口を開いて舌を出した。はっと気がついた時には再び蓮斗の舌がシオンの口内に侵入して、蛇のように舌の裏側や口蓋を嬲った。初めてのキスがこんな男に……と思ったが、心とは裏腹に興奮を覚えていることも確かだった。シオンはようやく顔を背けて蓮斗の口を強引に離した。肩で息をしながら、上気した顔で蓮斗を睨む。
「よし、だいぶ効いてきたみたいだな」と、蓮斗が言った。「シオンちゃんが寝ているうちに、そこの女と同じ特製の媚薬を注射させてもらったのさ。本当は少し楽しんだ後にシオンちゃんは人妖共に渡さなきゃいけないんだけど、気が変わった。あれだけ強かったら人妖相手でも勝てるだろうし、なにより最高のオナホになりそうだ。ガンガン薬使って俺の奴隷にしてやるよ」
「なっ?!」
 シオンが蓮斗の腕を振り解いた瞬間、腹部に衝撃が走った。胃が強制的に収縮したことを感じ、「ぐぷッ……」と口から空気が漏れる。恐る恐る衝撃のあった自分の腹部を見ると、蓮斗の拳が完全に隠れるほど自分の剥き出しの腹にめり込んでいた。
「な……? ぐぶッ!?」
 生腹を殴られたことを自覚し、時間差で苦痛が脳に伝達する。しかし、同時にゾクゾクとした快感も下腹部のあたりから迫り上がっていた。
「んぐぅぅぅッ?!」
 シオンが叫び声を抑えるように両手で口をおさえたまま、脊椎を駆け上がる苦痛と快楽に耐えた。苦痛と快楽という正反対の感覚が濁流のように脳を満たし、未知の感覚と混乱でビクビクと身体が震える。シオンの混乱を尻目に再び蓮斗は拳を引き絞り、まだ腹の凹みが戻らないシオンの生腹を突き上げた。
「ゔぶぇッ?! がッ……ああああッ!」
 不意打ちのような状態で背中が盛り上がるほどの衝撃を受け、シオンの大きく開けた口から唾液がほとばしる。しかし強烈な快感も同時に脊椎を駆け上がり、シオンは思わず仰け反った。
「気持ち良いだろ? あの媚薬は催淫と同時に、腹パンされるとオーガスムと同じ快感を得られるようになる。つまり今のシオンちゃんは、腹パンされるとチンポ突っ込まれた時と同じ快感を感じる変態になっちゃったってこと」
 蓮斗は連続してシオンの華奢な腹を殴った。シオンは本能が快楽を求めるためか、ガードはおろか腹筋を固めることもせず蓮斗の拳を受け入れる。シオンはやがて四角いコンクリート製の柱にまで追い詰められ、これ以上後退できない状態で腹に連打を浴びた。
「ゔあッ……! うぶッ!? ゔぐぇッ! おぐッ?! ゔッ?! ああああッ!」
「おい、誰が倒れていいって言ったよ? 俺がまだ満足してないのに勝手にイクんじゃねぇ」
 蓮斗はズルズルと尻餅をつきそうになるシオンのトップスを掴んで強引に立たせると、ずぶりとシオンの腹に拳を埋めた。
「ゔッ?!」
 白い肌がゴツゴツした拳で痛々しく陥没し、シオンの身体がくの字に折れた。腹に埋まっている蓮斗の腕にシオンの巨乳が触れる。
「倒れるなよ? 一人でヨガってんじゃねぇぞ変態が」
 蓮斗はシオンの腹に埋まったままの拳を抜かず、そのままキリのように捻って押し込んだ。胃を潰され、シオンから「ぎゅぶぇッ?!」という聞いたことのないような悲鳴が漏れる。蓮斗は構わずシオンの胃や腸を捻り、鳩尾部分まで突き上げるようにして体内を掻き回した。経験したことのない苦痛に加え、快楽も先ほどとは性質の違う強烈なものが駆け上がってくる。シオンは大粒の涙を流したまま、悲鳴とも嬌声ともつかない声を上げながら蓮斗の責め苦に身を任せた。
 蓮斗が「おい」と声を上げると、それまで床に座り込んでいた女子生徒がバネのように立ち上がった。蓮斗が目配せし、顎をしゃくる。女子生徒は鞄からロープのついた手錠を取り出し、慣れた手つきでシオンの手首を柱を巻き込むようにして後ろ手に拘束した。おそらく過去に何回もやらされているのだろう。蓮斗はシオンに見せつけるようにして両手にメリケンサックを嵌めた。
「そろそろ本番だ。ピストンしてやるよ」
 ぐりゅっ……とゴツい音を立てて、シオンの生腹にメリケンサックを付けた蓮斗の拳が埋まった。「ゔぶッ?!」とシオンは口を窄めたまま悲鳴をあげる。綺麗な緑色の瞳が点のように収縮した。ズンッ! ズンッ! ズンッ! ズンッ! ズンッ! ズンッ! と、今までの生腹を打つ音とは明らかに違う重い音が倉庫内に響いた。
「あぐッ! うぶッ! ぶぐッ! ゔッ! ごぶッ! ごえッ! ぐあッ!?」
「おら、ガン突きしてやるよ。ピストン気持ちいいだろ? まだ倒れるんじゃねぇぞ」
 サンドバッグのように腹部をめちゃくちゃに殴られ、しかも一発一発が先程の比ではないほどの苦痛をシオンに与えている。そして苦痛の増幅に比例して快楽も増幅されていった。
「あぶッ?! ゔああああッ! あぐッ!? ああああああああッ!」
 シオンは自分が叫んでいることすら認識しないほど絶叫した。強烈な苦痛と快楽の濁流で脳の処理能力が飽和に達し、頭がおかしくなるほどの感覚をただの叫びとして放出するしかなかった。瞳は半分以上が瞼の裏に隠れ、大口を開けてだらしなく伸ばした舌から唾液が噴き出すことも構わず叫び続けた。
「ひっでぇ顔。普段済ましてるくせに腹パンされてイキまくりやがって。そのアヘ顔撮影して学校中に貼り出してやろうか?」
 痴女のような際どいメイド服を着た巨乳の金髪少女が、薄暗い倉庫の柱に後ろ手に拘束されて、男に生腹を何発も殴られて絶頂している──。普段の凜としたシオンを知る者がこの痴態を見たら頭を抱えて卒倒するだろう。
 蓮斗はへそのあたりからやや下腹部の子宮あたりに狙いを変えた。「ぶぎゅッ?!」とシオンの反応も変わる。違う快楽が駆け上がったのか、シオンは前屈みになって崩れ落ちそうになるのを蓮斗がトップスを掴んで引き上げた。
「なんだここがイイのか? え? ここか? ここが気持ち良いのか? おい? ここが弱いのか?」
 蓮斗は連続してシオンの子宮のあたりに膝を打ち込んだ。筋肉が少なく柔らかい下腹部が痛々しく陥没し、シオンは完全に白目を剥いて叫んだ。苦痛と快楽でもうわけがわからなくなっているのだろう。シオンの痴態に蓮斗の男根も痛々しく勃起している。
 蓮斗は狙いを変え、シオンの鳩尾に貫手を放った。ずぶりと指先が鳩尾に埋まり、シオンの身体がびくりと跳ねる。蓮斗はそのまま手首を捻り、抉るようにシオンの鳩尾を責めた。
「ひゅぐッ?!」
 急所を突かれ、シオンの身体が大きく跳ねる。シオンは汗と涙と涎で顔をぐちゃぐちゃにしたまま、意識が途切れて全身が弛緩した。蓮斗はがくりと落ちたシオンの頭を覗き込む。
「最高だ……絶対人妖なんかに渡さねぇぞ……」
 蓮斗はシオンの頬を伝う涙を舌で舐め上げると、ゆっくりと腹を撫でた。最上のシープスキン以上に柔らかく滑らかでキメの細かい肌だった。汗ばんだ生腹の中は散々殴られたために内臓や腹筋が痙攣し、グルグルと音を立てて蠢いている。シオンは眉間に深く皺を寄せて「んっ……」と呻いた。まだ苦痛と快感を感じているのだろう。腹を撫でながら、蓮斗はシオンのトップスの中に手を入れて直接胸を弄(まさぐ)る。出来立てのマシュマロのようなシオンの胸は、今まで何人も女性と関係を持ってきた蓮斗をして、この世にこれほど柔らかく滑らかなものがあったのかと思うほど感動する手触りだった。中心の固い突起は胸の大きさに比べて控えめであり、むしろ品の良さまで感じるほどだった。
「っあ……んっ……」
 苦痛の無い純粋な性的刺激で、シオンは失神したまま微かに声を漏らした。蓮斗は腹や胸を堪能した後、ふたたびシオンの腹に拳を埋めた。
「うっ……ぐっ……うぐっ……」と、シオンは目を閉じたまま声を漏らす。意識がある時ほどの派手な悲鳴は上げず、むしろ快楽の方が勝っているように見えた。失神したシオンを俯かせたまま、蓮斗はサンドバッグのようにシオンの腹を連続で殴った。
「うっ……うぁっ……んふっ……んぅっ……んふぅッ……」
 シオンの腹は完全に弛緩し、まるでつきたての餅を殴っているような感覚だった。失神したまま喘ぐような声を発し、涙を流して身体をよじる。「えうっ……!」とシオンの身体がびくりと跳ね、透明な胃液が口から溢れた。まるで快感から逃げようとするような様子に、蓮斗はさらに興奮を高めていった。弛緩したシオンの腹に手を埋め、内部を楽しむように掻き回す。シオンは眉間に皺を寄せながらも、愛撫を受けているように吐息を声を漏らした。
「くそッ……! 限界だ……」と蓮斗は歯を食いしばりながら言った。男の理想を現実にしたような女が自分の欲望を全て受けてとめ、腹を責められながら喘いでいる。蓮斗の露出した男性器は限界まで昂っており、風が触れた程度ですぐに射精してしまいそうなほど達している。
 蓮斗はシオンの胃を掴むと、強引に鷲掴みにした。「んぶぅッ?!」とシオンは一瞬目を見開く。窄めた口から胃液が弧を描いた。蓮斗はシオンのスカートをずり下げ、下腹部を露出させると鼠蹊部の間の子宮を目掛けて拳を打ち込んだ。
「んおおおおおッ?!」
 子宮や卵巣に与えられた衝撃は、強烈な快感と苦痛となってシオンの脊髄を駆け上がる。女性として最重要な器官を責められ、シオンは一気に現実に引き戻された。シオンはゆっくりと下腹部に視線を落とす。蓮斗のゴツい拳がまるでレイプするようにシオンの滑らかな下腹部に手首まで埋まっていた。認識した瞬間、さらに強烈な快感と苦痛が子宮から全身に広がった。脳内にバチバチと電気的な刺激が走り、歯を食いしばって叫ぶのを堪えたままビクビクと痙攣する。その様子を見た蓮斗は唾液を飲み込むのも忘れ、シオンの子宮にさらに強烈な一撃を埋めた。
「あがあああああああッ!!」
 とどめていた理性が決壊し、シオンは叫び声を上げて絶頂した。白目に近いほど瞳が裏返り、だらしなく舌を出した先から唾液が糸を引いて突き出た胸に垂れる。拘束している紐が緩んだのか、シオンは腰が抜けたようにその場に座り込んだ。限界は蓮斗も同じだった。座り込んだシオンの視線の先に天井を向いて反り返る蓮斗の男根がある。シオンがそれを直視した瞬間、蓮斗はシオンの頭を掴んで半開きになったシオンの口に強引に男根をねじ込んだ。
「むぐッ?! んんんんんッ?!」
 勃起した男性器を口内に無理矢理ねじ込まれるという今までの人生で想像すらしてこなかった行為に、シオンは涙を流したまま蓮斗の顔を見上げた。だがそれは蓮斗の興奮をさらに高めるだけだった。
「ああクソッ! もう出るッ!」
 ただ咥えさせただけで、蓮斗の男根は暴発した。溜まりに溜まった精液のマグマが高圧で尿道を駆け上がり、壊れた水道のようにシオンの口内に噴き出した。
「んぶうッ?! むぐぅぅぅぅぅッ!? 」
 突然熱い粘液が口内に溢れ、シオンは目を見開いた。必死に首を振って蓮斗から逃れようとするが、蓮斗はシオンの頭を掴んで逃がさない。蓮斗は強すぎる快感に腰が抜けるのを必死に堪え、歯を食いしばって失神しないように耐えた。
 長い放出が終わり、ずるりとシオンの口から男根が抜かれる。シオンは出された精液で頬を風船のように膨らませたまま、大粒の涙を流しながらどうしていいのかわからず蓮斗を見上げて震えている。大量に口内射精されたまま座り込んで許しを乞うようなシオンの姿に、蓮斗の男根は瞬く間に硬度を取り戻した。
「全部飲め。せっかく出してやったんだから吐き出すなよ?」
「んぶッ……んぐッ……ごきゅッ……ごきゅッ……ぷはッ……はぁ……はぁ……」
 ぼうっとした頭でシオンは素直に従った。
 喉を鳴らして精液を飲み干した後、きちんと飲んだことを示すように小さく舌を出す。舌や唇、頬には白濁した粘液の残滓が残っていた。蓮斗の背中を加虐心が駆け上がる。
「……エロ過ぎだろお前? 俺の精液は美味かったか? 他の男と比べてどうだったんだよ?」
「わ……わか……りません……変な……味で……」
 夢を見ているような様子でシオンが答えた。その視線は再び反り返っている蓮斗の男性器に釘付けになっている。女性としての本能なのか、熱い息を吐きながら、とろけるような視線を送っていた。
「あ? わかんねえわけねぇだろ? 物欲しそうに俺のチンポ見つめやがってこのドスケベメイドが。ほら、メイドらしく射精してくれたチンポに感謝のご奉仕をしろ。まだ尿道に精液が残ってるだろ」
 蓮斗はシオンの手錠を外すと、シオンの眼前に腰をぐいと突き出した。シオンは蓮斗の腰に手を当てたまま、困惑したような表情で蓮斗を見上げている。早くしろと言いながら蓮斗はさらに腰を突き出したが、シオンはどうしていいのかわからない様子で恐る恐る男根を触った。
「……お前、まさか本当に処女なのか?」
 蓮斗が低い声で笑った。凄まじい征服感が麻薬のように脳内に噴き出している。
「しかたねぇな。じゃあまずはそのスケベな胸の使い方を教えてやるよ。どうやったら男が悦ぶかをな──」
 蓮斗の指示でシオンはおずおずと胸を持ち上げて、トップスの下の隙間から蓮斗の男根を胸の谷間に挟み込んだ。暖めたゼリーを詰めたマシュマロに包み込まれるような感触に、蓮斗は「おおおッ?!」と叫びながら仰け反る。シオンは恐る恐ると言った様子で眉をハの字にしながら蓮斗を見上げているが、その乳圧は凶悪そのもので油断したら一瞬で射精してしまいそうなほどの快感だった。
 蓮斗が命じると、シオンは拙いながらもゆっくりと蓮斗の男根を挟んだまま胸を上下に動かした。シオンの吸い付くような肌が蓮斗の男根の根元から先端までを隙間なく擦り上げ、蓮斗はシオンに悟られないように歯を食いしばったまま強烈すぎる快感に耐えた。
(これ……本当は好きな人にしてあげることなんですよね……?)
 敵であるこの男に自分はいったい何をしているのだと心の底で思ってはいても、強力な催淫剤と本能が男性に射精を促すように動いてしまう。
 シオンはコツを覚えはじめたのか、次第に上下運動がリズミカルになっていく。ぐっちゅ、ぐっちゅ、ぐっちゅ、ぐっちゅ、と粘つくような水音がシオンの胸の谷間から響き、蓮斗の先走りとシオンの汗が混ざり合って潤滑油となり更に快感の度合いを高めていった。
「ぐッ……?! クソッ……もう出るッ!!」
 どくん……と強く男根が脈打ち、シオンの谷間に大量の精液が溢れた。
「あっ……やぁッ?!」
 シオンは粘液が胸の間に広がる感覚に嫌悪感を覚え、谷間からわずかに噴き出した精液に顔を背けた。
「おら、なに逃げてんだよ? お前がそのスケベな胸使って俺に出させたんだからな。責任持って全部舐めろ」
「うっ……うぅ……」
 シオンは微かに抗議の混じった視線を送るものの、おずおずと舌を伸ばして鎖骨と胸の間に溢れた精液を掬い取った。わずかに顔を出している男根の先端も舌先でくすぐり、尿道に残っているものも吸い出していく。射精後の敏感な鈴口を責められ、蓮斗はシオンに悟られないように腰を浮かせた。

「よし、立て。壁に背中を付けろ」
 蓮斗は肩で息をしながらシオンに命じた。
 シオンはまるで輪姦された後のように胸や顔を精液で汚されたまま夢を見ているような恍惚とした様子で立ち上がり、命じられた通りに壁に背中を付けた。蓮斗はシオンを支えるように股の間に膝を入れる。湯煎して溶けたゼリーのような感触が太ももに伝わってきて、蓮斗は自分でも驚くほどの量を射精したにもかかわらず男根に血液が集まるのを感じた。
 蓮斗は恋人にするようにシオンの大きな胸を両手で転がした。シオンは催淫剤が回って思考が鈍化しているのか、身体を捩って快楽に身を任せている。「んっ……ぅあ……んぅっ……」と、シオンは悩ましげな表情を浮かべながら吐息を漏らした。蓮斗がシオンの唇を吸うと、シオンも遠慮がちに舌を絡める。蓮斗の太ももに当たる温度はますます上がり、シオンの感じている快楽が蓮斗にも伝わってくる。
 蓮斗はシオンのトップスに手をかけ、一気に引きちぎった。ぶるん、という音が聞こえてきそうな勢いで締め付けられていたシオンの胸が解放され、大きく揺れる。
「あっ……? やあッ?!」
 一瞬正気に戻ったのか、シオンは両手で胸を隠した。蓮斗はそれを待っていたかのように、油断しきったシオンの腹に強烈な一撃を食らわせた。蓮斗の拳は背骨に届きそうなほど深くシオンの生腹に埋まり、シオンは「ゔっぶ?!」と呻きながら大きく目を見開いた。衝撃で指が食い込むほど自分の胸を鷲掴みにしている。蓮斗はシオンの腹に埋まっている拳を抜かず、もう一方の拳をシオンの鳩尾に打ち込んだ。
「ひゅぐッ?!」
 ビクン、とシオンの身体が跳ねた。そのまま身体が硬直し、窒息した金魚のように口をパクパクと動かすと、がっくりと頭を落として失神した。蓮斗がシオンを支えていた両方の拳を抜くと、拳が埋まっていた箇所がクレーターのように陥没していた。
 げぷっ……という音と共にシオンの口から大量に飲まされた精液が逆流する。シオンは支えを失い、青白い顔をしたまま床に膝を着いて、そのまま倒れ込んだ。蓮斗はシオンの肩を蹴って仰向けにすると、胸の上に座るように腰を落として男根を扱いた。今まで大量に放出したにもかかわらず、蓮斗はさらに大量の精液をシオンの青白い顔に放った。シオンは一瞬顔をしかめたが、目を覚ますことなく大量の射精を顔に浴びた。
「くそッ……腰に力が入らねぇ。サキュバスかよこいつ……。絶対に人妖には渡さねぇ」
 蓮斗はふらふらになりながら難儀して立ち上がると、スマートフォンで失神しているシオンを写真に収めた。壁に手をついて支えながら倉庫の出口に向かうと、視界の隅に女子生徒の姿が入った。女子生徒は絶望したような表情を浮かべて、蓮斗をじっと見つめながら胸や股間を弄っている。
「なんだお前、まだいたのかよ? しかもオナってたのか?」と、蓮斗は心の底から嘲笑するように言った。「もうお前用済みだわ。どこへでも行っちまえ。二度と俺の前に姿見せんじゃねぇぞ」
「え……? そ……んな……。その女を捕まえるのに協力すれば、この後たくさんご褒美くれるって……」
「うるせぇな。見りゃわかんだろ」と言って、蓮斗は振り返ってシオンを一瞥した。「お前じゃもう勃たねぇって言ってんだよ」
「ま……待ってください! 私、蓮斗さんがいないと生きていけません! どんなことでもしますから!」
「あ? 知らねぇよ。ゴミが騒いでんじゃねぇぞ。生きてけないならどこか見えない所で死んどけ」
 蓮斗が出ていくと、倉庫内は水を打ったように静まり返った。
 女子生徒は能面を被ったように表情を無くしてしばらく硬直していたが、やがて這うようにしてシオンに近づくと、胸や顔にへばりついた蓮斗の精液をじゅるじゅると音を立てて啜り始めた。空いた手で自分の性器をぐちゅぐちゅと乱暴に弄りながら、まるで妖怪のような必死の形相で蓮斗の精液を舐める。
 青ざめた表情で失神しているシオンの顔は、女性の自分が見ても心底美しいと思えた。それがなおさら彼女を腹立たせた。
「ふざけんなよ……どうやったらこんな風に生まれてくるんだよ……」
 女子生徒はシオンの口内に強引に舌をねじ込んで胃液混じりの精液を啜り、剥き出しになった胸を鷲掴みにした。乳首も捩じ切れる勢いで摘み、青痣のできている腹を乱暴に弄る。シオンは苦痛と快感を感じているのか、眉間に皺を寄せながら悩ましげな吐息を漏らした。その様子に女子生徒は頭の中で糸の切れる音が聞こえた気がした。握りしめた拳を力任せにシオンの腹部に叩きつける。
「ぶぐうッ?!」と、シオンは悲鳴を上げながら一瞬で覚醒した。シオンの視覚に入ったものは、鬼の形相で鉄槌を振り上げている女子生徒の顔だった。
「んぐッ?! ぐぇッ!? うぐッ! ぐぶぅッ!」
 女子生徒は女性とは思えない力で憎しみを込めた鉄槌を振り下ろす。シオンは最初こそ苦悶の表情を浮かべていたが、薬剤の効果で徐々に快楽の色が浮かび始めた。
「てめぇなに感じてんだよ!? 蓮斗さんの腹パンセックス受けていいのは私だけだろうが!」
 女子生徒は杭を打つようにシオンの腹に拳を叩きつけ、中指を臍に刺して乱暴に掻き回した。シオンはその度に叫び声を上げて悶える。
「この下品な乳で何人の男誘惑したんだよ?! カマトトぶりながら媚びたパイズリなんかしやがって! そんなに男に媚び売りてぇのかよこの淫売!」
 シオンは首を振りながら両手を前に出して微かに抵抗するも、正気を失っている女子生徒には何の意味の成さず更に怒りを買うだけだった。女子生徒は千切れるほどの勢いでシオンの胸を掴み、生腹に拳を叩きつけ、脇腹を蹴り、ジャンプして膝をシオンの腹に落とした。シオンはその度に激しく嘔吐し、女子生徒はシオンが吐き出した精液混じりの胃液を啜った。呼吸困難になりながら嘔吐している最中も女子生徒の攻撃は止まず、シオンはエビのように背中を丸めたまま悶えた。シオンはやがて吐くものがなくなり、白目を剥いたまま透明な胃液が自分の意思に反して逆流することに身を任せた。
「んッ?! んんんんんんんーッ!」
 女子生徒の絶叫が倉庫内にこだまする。
 シオンと蓮斗の体液を舐めながら、女子生徒は何度目かの絶頂に達した。ようやく満足したのか、シオンの身体に覆いかぶさるようにして絶頂の余韻にぐったりと肩を上下させている。やがてゆらりと起き上がると、蓮斗の名を譫言のように呟きながらボロボロの状態で気絶しているシオンを気にも留めずに倉庫から出ていった。

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 首都高からでも、アナスタシア聖書学院の礼拝堂が空を焼く灯がかすかに見えた。
 ノイズはそれを横目に見ながら、車内のインターコムを使って数人の相手と連絡をとった。アナスタシア聖書学院に残った者からは、美樹が凍るような表情でバイクを駆って行ったと報告が入った。その他の細かい準備も順調に進んでいるようだ。
 何よりだ。世界は順調に崩壊と再構築に向かっている。
 ラジオをつけてみると、世の中は相変わらず混乱していた。三神が人妖の存在を明るみにして以来、疑心暗鬼による傷害事件や殺人事件が増えていた。小規模な略奪も発生しており、店舗に営業時間を短縮するよう政府が求めていた。その裏番組では若手の芸能人が呑気に高校生の恋愛相談に応じていた。誰も自分が当事者になるなんて想像すらしていない。だからこそ気がついた時にはもう遅いのだ。
 ノイズはあらかた指示を出し終えると、深く息を吐いて包み込まれるようなシートに身体を預けた。
 とろけるようなレザーシートの感触が心地良い。
 あと三日だ。
 あと三日で世界が変わる。
 シオンが人間以上の存在だと、ようやく世界が認めるようになる。
 ノイズが口角を上げた瞬間、突然激しい頭痛に襲われた。まるで脳の中心に無数の針が出現したような痛みだった。ノイズはシートから跳ね起きて、両手で頭を抱えてうずくまる。運転手と助手席に座る秘書はすぐに異変に気がついた。見かねた運転手が車を止めるか聞いてきたが、ノイズは必要ないと吐き捨てるように言った。 
「……シオン?」と、自分の意図に反して口が動いた。
 いや、あり得ない。シオンが私を認識することはないはずだとノイズは思った。シオンが私を認識するということは、お父様の死をシオン自身が認識するということだ。それだけは何があっても避けなければならないし、そうならないように、あの日、精神科医を脅してシオン側からは不可侵の壁を築かせたではないか。シオンは私を知らない。そしてお父様の死は私が全て持っていく。だからこの頭痛は、決して親友の美樹に対して行った自分の仕打ちに、シオンが抗議しているわけではない。
 潮が引くように頭痛が消えて行ったと思ったら、今度は胃を締め上げられるような感覚があり、ノイズは目を見開いて反射的に口を抑えた。
 胃の中は空っぽのはずなのに、胃そのものが喉から飛び出してきそうな激しい吐き気だ。
 前席からの視線に気がつき、ノイズは手探りでアームレストのスイッチを押して前席との間のパーテーションガラスを不透明にした。
 運転席との通信も切れ、エンジン音すら聞こえないほどの静寂に包まれる。
 しばらく彫像のように動かないでいると、発作の嵐が去ったのか徐々に感覚が戻ってきた。額と口元を押さえていたレースの手袋が脂汗でぐっしょりと濡れている。
 時間が無いのかもしれない。
 もし自分が主人格のうちに消滅してしまったら、シオンの人格はどうなるのだろうとノイズは思った。都合よくシオンが目覚めてくれればいいが、もし目覚めなかったとしたら人格の無い空の器になってしまう。それだけはダメだ。
 ノイズは初めて恐怖を覚えた。
 あと三日……三日で全てを終わらせなければならない。世界も、自分も。

 豚はシャワーを浴び終えると、鼻歌を歌いながらゲランの香水を首筋と股間に吹きかけた。
 深紅の絨毯が敷き詰められた広い室内を全裸で横切りながら、腹や胸の肉の間に残った汗をタオルで拭いている。部屋の隅には三毛猫柄のマイクロビキニを身につけた年端も行かない少女が控えていて、豚のためにペリエをグラスに注いだ。豚はそれを一息で飲み干すと中央の朝比奈を一瞥した。
「ブランデーや葉巻でも嗜めば格好がつくのだろうが、あいにく私は自ら進んで毒物を体内に入れるマゾ的な趣味は持ち合わせていなくてね。酒やタバコなんぞをやる奴は自殺願望があるか、それとも致命的なバカのどちらかに違いない。そうは思わないかね?」
 豚の粘つくような視線を朝比奈が睨み返す。
「まぁそう睨まずに再会を喜ぼうじゃないか。どうかくつろいでおくれ。ここは私が趣味で持っているラブホテルで、この部屋は私専用のプレイルームだ。何棟か他にも持っているが、ここが一番気に入っている。もちろん間違っても従業員や部外者が勝手に入ってくることはない。ああ、この子のことは人間と思わなくていい。『ティッシュ』みたいなものだ」と言うと、豚がビキニ姿の少女の頭をぽんぽんと叩いた。少女は豚に触られると発情したような表情になった。
 室内の照明はダウンライトのみで薄暗い。奥に設置されたキングサイズのベッドには黒いシルクの寝具で完璧なベッドメイクが施されている。そして部屋の中央には場違いなほど本格的なサンドバッグが置かれ、朝比奈はそこにロープで拘束されていた。
 さてとと言いながら豚が朝比奈に近づくと、バトルスーツに包まれた朝比奈の身体を舐めるように見回した。全裸なので男性器が限界まで勃起していることがわかり、朝比奈はたまらず目を逸らした。
「今まで神はいないと思っていたが、どうやらノイズ様がそうであったらしい。こうして二度も朝比奈ちゃんと巡り合わせてくれたのだからね」
 ぐいと近づけた豚の顔に、朝比奈が唾を吐いた。豚は満面の笑みで顔についた唾液を舐め取ると、朝比奈の腹に鈍器のような拳を埋める。数十キロはあるかというサンドバッグが大きく跳ねた。豚の拳に挟まれた朝比奈の身体がくの字に折れる。
「うっぶぇあ゙ッ?!」
 朝比奈の華奢な身体に鈍器のような腕が痛々しく埋まり、苦痛に目と口が大きく見開かれた。
「おっと、少し強かったかな? すぐに壊さないように注意しないと長く楽しめないからねぇ」
 朝比奈は激しく咳き込みながらも、気丈に豚を睨み上げる。
「げほっ……卑怯者。女の子一人拘束して、恥ずかしくないんですか?」
「卑怯? 勘違いしてはいけないよ朝比奈ちゃん。卑怯とは勝負に勝つために汚い手を使うことだ。これは勝負ではない。朝比奈ちゃんをサンドバッグにして一方的に蹂躙したいという私の欲望を満たしたいだけだ。頑張って私にご奉仕して気持ちよくしておくれ」
 豚は腕を引き絞り、朝比奈のへそのあたりの腹部に鈍器のような拳をぶち込んだ。当然防御など出来るはずがない。どっぶ……という聞いたこともないような重い音が響き、朝比奈を括り付けたサンドバッグがくの字に折れる。もちろん豚の拳とサンドバッグの間に挟まれた朝比奈の腹部は大きく陥没し、逃げ場の無いダメージが容赦無く朝比奈の小さな体を襲った。
「ゔぶぇッ?! お……うぐぇああああああああ!!!」
 普段のしゃんとした朝比奈からは想像できないような濁った悲鳴が反響した。たった一撃で朝比奈の瞳は点のように収縮し、限界まで開いた口から大量の唾液が飛び散った。
「力の加減が難しいな。ノイズ様の薬を飲んでから身体に力が漲りすぎてね。華奢な朝比奈ちゃんのお腹に合わせて、少し軽くしてあげよう」
 ずぷん……と朝比奈の下腹部に拳が埋まる。「ゔッ?!」と朝比奈の口から搾り出すような悲鳴が漏れ、サンドバッグが振り子のように大きく振れた。そして戻ってくる勢いを生かして豚が朝比奈の鳩尾を貫く。ぼんっ、という音と共に、朝比奈の鳩尾が陥没した。
「おぎゅぅッ?!」
 身体の中心が破壊されたような感覚があり、朝比奈の意識が飛んだ。かくんと頭が落ちそうになる朝比奈の髪の毛を豚が掴む。
「ダメだよ朝比奈ちゃん。ちゃんとエッチな顔を見せてくれないと」
 豚が強制的に持ち上げた朝比奈の顔を覗き込んだ。朝比奈は朦朧とする意識の中で唾液を垂らしながらも、まだ豚を睨んでいる。
「良い顔だねぇ。これは私の経験だが、お腹を殴られた時の顔はセックスで絶頂してる時の顔と同じだ。朝比奈ちゃんはどんな顔でイっちゃうのかよく見せておくれ」
 朝比奈の顔を上げさせたまま、豚が重い拳の連打を朝比奈の腹に埋めた。ズンッ! ズンッ! ズンッ! ズンッ! ズンッ! ズンッ! と衝撃が響くたびに、苦痛に歪んだ朝比奈の顔が豚の前に晒される。
「ぐぷッ! ぐぇッ! ごぇあッ! ゔッ! ゔぁッ! ごぶッ!」
「んーいいね。なるほど、朝比奈ちゃんはこんな顔でイっちゃうんだねぇ。普段の澄ました顔とは大違いだ。後でレイプして確かめるのが楽しみだよ」
「げぼッ……ゔッ!? うぐぇッ! おぐッ!」
 腹を殴られるたびに、朝比奈のバトルスーツが激しく引き攣れて陥没した。朝比奈の痛々しい悲鳴が部屋に響くが、豚は朝比奈の感じている苦痛など意に介さず、まるでおもちゃを弄ぶように朝比奈の腹を殴ち続けた。大きな肉ダルマのような豚が小柄な朝比奈をサンドバッグに拘束して、抵抗はおろか防御すら不能にした状態で腹を殴り続けるという、常人であれば目を背けたくなるような光景が目の前に広がっている。だが止める者は誰もいない。朝比奈は文字通りサンドバッグのように、ただ豚の攻撃を受け入れるしかなかった。
 豚はフルコースの料理を楽しむように、的確に殴り方を変えた。
 ズンッ! ズンッ! ズンッ! と下腹部、腹、鳩尾と連続して殴ったと思ったら、脇腹を殴り、再び腹に拳を埋めると数十秒抜かないようにした。
 的確な残酷さで与えられる苦痛に朝比奈も様々な悲鳴を上げ、ただ無様に苦しむ顔を豚に晒すしかなかった。そしてその顔を見て豚はさらに興奮した。
「最高だよ朝比奈ちゃん。こんなに興奮したのは久し振りだ。スノウちゃんとどっちが具合が良いか、確かめるのが楽しみだよ」
「げぼっ……く……くた……ばれ……ッ……!」
 気丈に返す朝比奈に、豚は満面の笑みを浮かべた。バトルスーツの下腹部のあたりを掴むと、そのまま強引に引っ張る。かなりの伸縮性のある生地で豚の力を持ってしても容易には引きちぎれない。
「なるほど、衝撃吸収スーツだとは聞いていたがここまで高性能だとはな」と言いながら、豚はさらに力を込める。
 とうとう生地が耐えきれなくなり、引き攣れるような音を立てて腹部のあたりが大きく破り取られた。朝比奈の顔に今まで以上に絶望感が濃く浮き上がる。
 豚が朝比奈の生腹に狙いを定めて拳を埋めると、どぷん……という重い音が響いた。スーツ越しに殴っていた時とは明らかに違う水っぽい音だ。
 そしてその一撃で、朝比奈の瞳がグリンと裏返った。
「えぐぁッ?!」
 叫ぶような悲鳴が朝比奈の喉から漏れた。明らかに感じているダメージが今までの比ではない。豚は壊さないように注意しながら、容赦のない攻撃を続けた。
「おぶッ?! ごぇッ?! ぐぇあぁッ!」
 朝比奈は白目を剥きながら舌を限界まで伸ばし、苦痛に歪む無様な顔を豚に晒している。何も守るものが無くなった生腹に豚のゴツゴツとした拳が埋まるたび、電気ショックを受けたように朝比奈の身体が跳ねた。
「ええぃクソッ!」  豚が控えていたビキニ姿の少女の髪を掴み、雑巾のような扱いで自分の男根を少女の口に捩じ込んだ。
「むぐッ?! んんんんッ?!」
 少女は突然の衝撃に目を見開き、自分を支配している豚を上目遣いで見る。豚の男根を咥えている時は絶対に豚の顔を見るように教え込まれているのだ。
 豚は両手で少女の頭と顎を挟むように持つと、少女の後頭部を男根で貫通させるような勢いで激しく前後に揺すった。喉奥を顎が外れそうな極太で突かれ、少女の口からは地獄のような嗚咽と悲鳴が漏れるが、豚は意に介さずに恍惚とした表情を浮かべた。やがて歯を食いしばったまま呻くと、常人の男性の数回分はあるほどの量の白濁液を放った。
「ごぼッ?! んぶッ?! ごぶぇッ?!」
 少女の口や鼻から白濁液が逆流するが、豚はさらに少女の顔を自分の腹に押し付けた。食道までねじ込んだ男根から直接胃に粘液を吐かれ、呼吸もままならない少女はすぐに白目を剥いて痙攣し始める。
「ふぅぅぅぅぅ……あぁ……出る出る出る……」
 死にそうな少女の顔とは対称的に豚は恍惚の笑みを浮かべた。長い放出が終わると、失神した少女の髪を掴んでゴミのように床に投げ捨てた。そのまま腹を蹴飛ばして部屋の隅に転がす。少女は失神したまま口から噴水のように白濁液を吐き出した。  朝比奈も項垂れたまま意識が飛びかけているようだ。
 豚は朝比奈の鳩尾を軽く弾いた。
「ひゅぐッ?! ぐぁッ!」
 電気ショックを受けたように朝比奈の身体が跳ねる。そして目の前の豚の顔を見ると、さっと顔から血の気が引いた。
「ダメだよ朝比奈ちゃん。夜は長いんだから勝手に居眠りなんかしちゃあ……」と、豚が朝比奈の耳元で囁くように言った。「それじゃあ早速、第二ラウンドといこうか?」


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