最後の救急車を見送り、シオンはようやく肺に溜まった息を深く吐き出した。冷子の手にかかった男子生徒は驚くほど手際の良い作業で数台の救急車に乗せられ、総合病院へ搬送された。付近住民(といっても大抵はアナスタシアの関係者だが)は「毒ガスが発生した」「細菌が漏れた」などと一時騒然となったが、救急車が行ってしまうと次第に落ち着きを取り戻し、散り散りに解散して行った。その後はアナスタシアとアンチレジストの手によって情報規制がなされ、当時現場に居合わせた野次馬以外にこのことが知られることは無かった。鑑は落ち着いてオペレーターのリーダーに今回の件を報告しており、その背後では綾が仲間のオペレーターからこっぴどく叱られていた。

夜になり、若干涼しさをはらんだ8月の風がシオンの髪をなびかせる。右のツインテールを押さえた時、背後から綾が声をかけた。

 

「はぁ…やっとお説教が終わった…。なんだか戦闘よりもどっと疲れたわ…」

 

「あら?意外と早かったですね?」

 

「いろいろ報告があるから続きは後でゆっくりだって…それと当分は勝手な行動は慎む様にだってさ、はぁ…」

 

「ふふ…それだけ心配されるほど大切に思ってもらってるんですから、感謝しないとダメですよ?」

 

「まぁそうね。今回ここまで乗り込めたのもあの人たちのおかげだし。なんだかんだで振り回しちゃったからね」

 

綾が背後のオペレーターを振り返りながら呟く。先ほどまで綾を叱っていた仲間は今では携帯電話であちこちに電話をかけていた。

 

「なんか実感湧かないけど、終わったんだね…。とりあえず今回の件は…」

 

「そうですね…。私も現実感が無くて…。でも、正直今回は自分の未熟さを思い知らされました。綾ちゃんが来てくれなかったら私は今頃どうなっていたか…」

 

「まぁそれは私も同じことだしさ…単身乗り込んでシオンさんがいなかったら…。それにしても、あいつら一体なんだったんだろう?涼の身体を持って行った奴ら…」

 

シオンが涼にトドメを刺し、その場にいた全員が完全に力つきている時、突如3人の人間が部屋に入ってきた。 パニック映画の中に出てきそうな冗談みたいな格好の奴らだった。それぞれ真っ黒い服を着て、フルフェイスになったガスマスクの様なものをすっぽりと被っていたので、正体は全く分からない。3人は迷うこと無く涼の動かなくなった身体を運び出し、何事も無かったかの様に消えて行った。わずか15秒ほどの出来事。その場にいたシオン、綾、鑑の3人はあまりの手際の良さに声も発することが出来ず、ただ呆然と成り行きを見守るしか無かった。

 

「涼さんも最後に計画がどうとか言ってましたよね…。おそらく、私達の知らない所で何か大きな動きがあるのはほぼ間違いないでしょう。正直、アンチレジストという存在自体、見直した方がいいかもしれません」

 

「アンチレジストを…?」

 

「はい。自分で所属しておきながら、この組織はあまりにも謎が多過ぎます。マスメディアや警察を押さえ込む影響力や、あそこまで充実した施設や人員の維持…一個人や企業が取り仕切るには並大抵のことではありません。それこそ国家レベルでもない限り…。私なりに、少し調べてみます」

 

「確かに…。それが組織の方針だと勝手に思い込んできたけど…。私にも手伝わせて!もちろん人妖討伐も続けながらね!」

 

「もちろんです。これからもよろしくお願いしますね。綾ちゃん!」

 

「ええ、シオンさんもね!」

 

シオンと綾は満面の笑みが浮かべながら、パシンと小気味いい音を立ててお互いの手を握り合った。普通に生活していれば出会うことすらなかったであろう2人が、しかも組織の中のトップクラスの実力を持つ2人がお互いをパートナーとして認め合ったことは、横のつながりの殆ど無いアンチレジストという組織にしてはかなりの異例だった。

 

「あー、盛り上がっている所申し訳ないですが…」

 

2人がびくりとして振り返ると、報告を終えた鑑が眼鏡を直しながら立っていた。

 

「か、鑑君!?報告はもう終わったの?」

 

「いえ、まだ途中ですが、概要だけ話してひとまず病院へ向かうみたいです。ある意味病み上がりみたいなものですし、念のため僕を含め3人とも病院で検査入院する様にと」

 

「はぁぁ…」

 

綾がひときわ大きなため息をついた。やれやれ、また入院か。退屈な上に訓練が出来ない病院の中に居ることは綾に取って苦痛でしかなかった。

 

「その前に一度シャワー浴びたいですね…。結構汗かきましたし、それ以外にも色々浴びましたし…」

 

シオンが何の気なしに呟くと、普段は冷静な鑑が珍しく真っ赤になって下を向いた。自分も「それ以外」をシオンに浴びせた1人だし、その記憶は今でも鮮明に覚えている。そのことを思い出すと自然と健康な男子の反応が起こり、それを悟られない様に思わず腰を引く。

 

「と…とにかく!双子の捜索も含めて後処理は彼らに任せて、我々は少しでも休養を取るべきです。この隙をついて人妖が攻めて来たら、当然2人にも出動していただくのですから」

 

「あ…双子ってあの…」

 

「由里ちゃんと由羅ちゃんだっけ…。モニタールームで見たときは一方的にやられてたけど、あの後人妖の仲間になったってこと?」

 

「それは今から調べるそうです。組織もあまりの事態に混乱しています。このままこちらの内部情報が2人を通じて人妖側に流れる危険性も…いえ、既に流れているかもしれませんが…。どういう経緯で今回の様になったかは分かりませんが、このまま我々も活動を続けていれば、いずれ2人には再び会う時が来るでしょう…」

 

鑑が話し終わると、その場に居る3人は声を発することが出来なくなった。無言。ひとときの静寂が、残暑の残る空気を少しだけ冷やした。正門からはアンチレジストの黒塗りの車が一台、3人に向かって石畳を踏みしめながら走ってきた。

 

 

 

 

緑の縁取りの中でセイレーンが微笑んでいるカフェの奥の席で、金髪と茶髪の美少女2人と眼鏡をかけた整った顔立ちの男子生徒がテーブルを囲んでいた。テレビや雑誌に出てきそうな美男美女が3人揃い、ましてやシオンはかなり目立つ風貌をしていたため時々チラチラと伺う客も居たが、次第に飽きて自分たちの世界に戻って行った。シオンと綾、鑑は久しぶりの再開に楽しげに談笑していたが、店内の喧騒のために何を喋っているかは隣の席でも聞き取るのは難しかった。


「うわぁ、シオンさん髪おろしたんだ!?すっごい綺麗…さわらせて!」

 

「ええ、いいですよ~」

 

綾が手をわきわきと動かしながら問いかけ、シオンがいつも通りのんびりと答える。綾がシオンの髪に触り、おお~、とか、うわぁ~とか感嘆の声を上げているのを見て、鑑がため息をつきながら眼鏡を直した。

精密検査として入院したものの、それは半ば取り調べみたいなもので、アンチレジストの上層部と名乗る人間が(といっても厳重に顔を隠していたが)ひっきりなしに病室を訪れアレコレと質問をしては帰って行った。しかも3人の口裏合わせを防ぐかの様に入院中は別々の個室に移され、1週間後の退院の時までお互いの顔を見ることすら出来なかった。

厳しい戦闘の後であったため、退院後、それぞれ普段の生活のペースに戻るのに更に半月ほどかかり、ようやく落ち着いて3人が顔を合わせることとなった。

 

「いやぁやっぱり綺麗だね~。これだけ長いのに枝毛一本も無いし…」

 

「ありがとうございます。鑑君がおろした方が威厳が出るとか落ち着いて見えるとか言うので、試しにやってみたんですよ」

 

「えっ!?ま…まさか2人って付き合うことにしたの!?」

 

「ぶっ!違いますよ!」

 

鑑が飲んでいたカフェラテを吐き出し、珍しく大きな声を出した。普段は落ち着いているが、色恋の話は苦手らしい。

 

「だって、普通女性の髪型に意見するのってそういう関係になってからじゃない?しかも鑑君のリクエストにシオンさんも合わせてるんでしょ?」

 

「会長とはそう言う関係ではありません!人間としては尊敬できますが……」

 

「女性としては尊敬できないの?はぅぅ…」

 

「い…いえ、そう言う訳では……。と、とにかく会長、休んでいた間に溜まった業務があるんですから、当面はアンチレジストのことは置いといて、生徒会長のシオン・ イワーノヴナ・如月さんとして生活して下さいよ。間違ってもこの前のメイド服で登校なんてしないで下さいね」

 

「わ、わかってますよ!あれはあくまでも個人的に好きな格好なだけで、公的な場には持ち込みませんから!」

 

「あーあ、とうとうコスプレ好きを認めちゃったよこのお姉さんは…」

 

「だって好きなんだから仕方ないじゃないですかぁ…」

シオンが下を向きながら真っ赤になって呟くと。綾と鑑が同時に笑い出し、つられてシオンも笑った。一時の平和を3人の笑い声が包んでいた。

「ぐっ…ぐむっ……んむぅ………ガリッ!」

 

「!!?ぐっ…!?ぐぉぉ!?」

 

突如自分の急所を襲った苦痛に涼がくぐもった声を上げ、シオンの口から男根を引き抜く。涼の男根にはうっすらとシオンの並びのいい歯形が残っていた。

 

「はぁっ…はぁっ…うぐっ…」

 

シオンは弱々しく座り込みながらも、輝きを失っていない目で涼を睨みつけていた。痛みと剣幕に思わず後ずさりすると、ゆっくりとシオンが立ち上がる。

 

「……もうこれ以上、あなたの好きにはさせません!」

 

「馬鹿な…あれだけのチャームを飲まされておいて…多少吐き出したくらいでは効果が薄れることは無いはずだ…!?犯されたくてたまらないはずだぞ!?何が起きた!?」

 

シオンは確かに、先ほど綾と共に涼に奉仕している最中は身体の火照りを押さえられなかったし、綾に対してもある種同性愛的な感情すら抱いていた。しかし、今は徐々に霧が晴れるように身体の火照りやぼうっとした思考が薄れ、正常に戻って行くのを感じていた。体中を取り巻く倦怠感は相変わらずだったが、思考さえ戻れば何とかなるかもしれない。

 

「………どちらにしろ、お前らはもう終わりなんだよ!」

 

涼がシオンに突進しながら拳を振るうが、シオンは転がるようにしてそれを避ける。攻撃は出来ないものの、もともと大振りの涼の攻撃は掴まれでもしない限り避けることなら何とか可能だった。

 

「ちょこまかと…」

 

しかし、時間が経つにつれ徐々にシオンの動きも鈍くなってくる。シオンがバックステップを踏んだ際、背中がパソコンを置いているデスクに当たり、一瞬動きが止まった。その隙をつかれ、胸の辺りの布を掴まれると一気に引っ張られ、同時に拳が鳩尾に埋まった。

 

ズギュゥッ!!

 

「うぐあっ!?あ……あ………」

 

「ははははっ!やっと捕まえたぞ!!さぁ、お楽しみだ!」

 

ボグッ!!ズムッ!!ゴギュッ!!ズブゥッ!!!

 

「あぐっ!?うぐぅっ!!ぶふっ!!ぐふぅぅっ!!」

 

嵐の様な拳が、シオンの下腹部、臍、鳩尾とランダムに責め立てるが、そのいずれもピンポイントで急所を突いていた。拳が埋まるたびにシオンの巨乳が大きく揺れ、口から溢れた唾液がぽたぽたとその上に落ちた。徐々にシオンの意識が遠のいて行く。

「ほらほらどうした!!このまま死ぬか!?内蔵をぐちゃぐちゃにして………ぐっ!?なっ!?」

 

突然、涼の首に誰かの腕が巻き付き、ギリギリと締め上げている。 不意をつかれ涼の顔が一瞬でこわばり、攻撃が止まる。シオンは何が起きたか分からなかったが、考えるよりも先に身体が動いた。普段の半分ほどの力だったが、今出せる力のすべてを使い、渾身の回し蹴りを放つ。爪先が涼の顎先にヒットする会心の当たりだった。少ない威力でも、てこの原理で涼の顔が勢いよくぐりんと90度傾き、頭蓋の中で脳が揺さぶられる。さらに前屈みに倒れかかった涼の顎を膝で蹴り上げた。

シオンにしてはえげつない攻撃だったが、この間彼女はほとんど無意識で呼吸すらしていなかった。涼の首は自分の体重に逆らって顎を跳ね上げられ、一瞬後頭部と背中が付くのではないかというほど反り返った後、ガクリと顔面から地面に着地した。シオンは今の蹴りで体力のほとんどを使い果たし、ガクリと膝をつく。

 

「ぷはっ……はぁ…はぁ…な…何…?何が起きたの…?」

 

倒れた涼の背後に立っていたシルエットが徐々に鮮明になる。見ると、先ほどまで涼に身体を乗っ取られていた鑑が立っており、呆然と涼を見下ろしている。

 

「うぐっ……けほっ…か…鑑君!?だ…大丈夫なの?」

 

「やっと…自由に身体が動かせるようになりました…。 こいつに乗っ取られている間も、僕の意識はずっと覚醒していました…。すみません、会長に酷いことを…」

 

「鑑君……」

 

シオンは白い手袋をはめた両手を口元に当て、瞳からは涙がこぼれている。驚愕と、安堵が入り交じった表情だ。

 

「感傷に浸るのは後です、今はこいつを倒さなければ…。生憎、武器と呼べそうなものはこれくらいしか無いですが」

 

鑑は後ろのポケットから先ほど涼が叩き割った瓶の口の部分を取り出した。破片はナイフの様に鋭く尖がり、先端には4cm四方の小さな布が刺さっていた。鑑もかなり体力を消耗しているようだったが、気合いとともに飛び上がると、迷うこと無く涼の背中、過去に友香が刺した場所と同じ箇所に破片を突き刺した。ビクリと涼の身体が跳ね、鑑を跳ね飛ばす様な勢いで立ち上がる。

 

「があぁぁ…!な……きさ……貴様……!?」

 

涼は肩で息をしながら自分の背中を伝う血を指で拭い、信じられないという表情で鑑を見つめる。瓶の口を掴んで抜こうと試みるが、思った以上に深く突き刺さっており抜くことが出来ない。

 

「馬鹿な…俺に乗っ取られたんだぞ…?脳が耐えられず自我が崩壊してもおかしくはないはずだ…そうでなくとも、一生植物状態に…」

 

「おそらく僕が意識を失ったら、もう目を覚ますことは無かったでしょう。まるで暗い部屋に閉じ込められた様になりながら、自分の身体を使った貴方の行為を見ているだけの時間は本当に辛かった。いったい何人、知っている顔が目の前で犯されたか…」

 

「貴様……」

 

「ですが、おかげで色んなことも分かりましたよ。篠崎先生のこととか、チャームのこととかね。おそらく会長への貴方のチャームの効き目が弱かったのも、会長は過去に篠崎先生の作った濃縮合成したチャームを打たれていたからです。人間には『耐性』という能力がありますから、一度強い薬を使うと、それよりも同じ効果のある弱い薬は効き目が出難くなるんです。篠崎先生にチャームの強化版を作らせたのは失敗でしたね。それに、アンチレジストのオペレーターとして、初めて戦闘で役に立てました」

 

そう言うと鑑はあまり見せない笑顔をシオンに向けた。シオンの顔に驚愕の色が浮かぶ。

 

「オペレーター…?ま…まさか鑑君……?」

 

「僕もびっくりですよ。如月なんていう珍しい名前の人が上級戦闘員にいることは知っていましたが、まさか会長だったなんて。普段のおっとりしているイメージからは想像がつきませんからね。まぁ、その服が会長の趣味なのは分かりますが…少々やり過ぎですよ?」

 

「あっ…これはその……支給されて……いや…趣味ではあるんだけど……」

 

2人が会話している最中、涼はじりじりと後ずさりをしながら距離を取る。弱っているとはいえ、アンチレジストが3人もいる現状に加え自らも深手を負ってしまった。綾と一緒に来たオペレーターもいつ応援を呼んで来るか分からない。ここは一旦退いた方が得策だ。

 

「くくく…とことん運のいい奴らだ…。だが、お前らももうまともに動ける体力は残っていないだろう?ここは一旦退いてやるが、いずれ……むっ!?」

 

足下を見ると、綾の手が涼の足首を掴んでいた。後ずさりしながら、綾の倒れている近くまで来てしまったらしい。

 

「久しぶりね……。生憎まだ腕を伸ばすくらいの力は残ってるのよ…。あと…さっきアンタに言った言葉は取り消し。アンタなんかに初めてはあげられないわ!」

 

「なっ…貴さ……うぉあ!?」

 

綾は掴んだ足首を強引に捻った。涼がバランスを崩してたたらを踏んだ所に、床一面に広がった自ら放出したのチャームの水たまりがあった。粘度の強い液体に足を滑らせ、背中から倒れ込む。背中に突き刺さったままの瓶の破片が自らの体重と床の固さに挟まれ、いとも簡単に涼の体内に飲み込まれて行った。

 

「ぐぶっ…!?が…がぁ……」

 

一度強くビクリと身体を跳ねさせると、しばらく細かい痙攣が続く。その後、ごぼっという音と共に口からは血の泡が吹き上がった。内蔵のどこかにダメージを負った証拠だ。

 

「シオンさん!」

 

「会長!」

 

綾と鑑が同時に叫ぶ。シオンは力強く頷くと、何とか手近なパソコンの置かれたテーブルの上によじ上ると、涼に向けて膝から落下した。

 

「もう…攻撃をする力は無いですが、あなたに『落ちて行く』ことくらいは出来ます!これで終わりです!」

 

ずぶりとシオンの膝が、涼の鳩尾に落下する。シオンは膝の先に何か硬い感触を感じた。先ほどの瓶の破片が皮一枚隔ててシオンの膝に触れる。破片が完全に涼の心臓を貫通した証拠だった。涼の身体が大きく跳ねる。

 

「がああああっ!?ごぶっ……お……お前ら……これで……終わりだと…思うなよ…。まだ……計画は……始まった……ばか………り…………」

 

そこまで言うと、涼の口の中にごぼりと大量の血液が溢れ、自ら後に溺れるようにごぼごぼと咽せた。目を覆いたくなる様な光景だったが、シオンは呆然と一部始終を見届けた。涼は目を見開き、ばたばたと痙攣しながら自分の爪で喉をかきむしっていたが、突然ぱたりと全ての動きが止まった。目はシオンを凝視していたが、もはやその画像が涼の脳に映像として届けられることは無かった。

「あっ…あぁ…こ、こんなにたくさん濃いのが……す……すごいぃ……」

 

綾は顔中に粘液をぶちまけられながらも恍惚とした表情を浮かべ、ドロドロに白く染められた舌を出したまま、うっとりと涼を見上げていた。涼は綾の胸ぐらを掴んで無理矢理立たせると、顔を覗き込むようにしながらこの上ない征服感に満足げな笑みを浮かべた。

 

「くくくく…とうとうお前も堕ちたな…。さて…どうしてほしいんだ?」

 

涼は容赦無く綾のスカートの中に手を入れ、薄い布地越しにクレヴァスをなぞった。くちゅりという淫靡な音と共に、涼の中指が綾の固くなった突起に触れ、綾の身体がビクリと跳ねる。

 

「あうっ!?あ…あはぁん!?や…そこおっ!?」

 

「んん?なんだこのくちゅくちゅいってる音は?それにこんなにクリトリスを腫らせて…。まさか、敵である俺のチンポをしゃぶって興奮したのか?」

 

涼は悪戯っぽい笑みを浮かべながら綾の顔を覗き込む。チャームで快感神経を過敏にされ、初めて男性に触れられる敏感な箇所から送られる快楽を必死に否定しながらも、崩れ落ちそうな身体を涼の腕を掴んで必死に支える。

 

「くくくく…敵だろうが何だろうが、チンポなら誰のでもいいんだなお前は?正義感ぶっていても、正体はとんだ淫乱娘だ。何なら、ぶち込んでやってもいいんだぞ?」

 

「あ…あぁ…うう……くうぅっ……」

 

綾は涙を浮かべ、必死に歯を食いしばって耐えたが、涼の言葉を否定する言葉はとうとう出て来なかった。強烈すぎるチャームの効果は、たとえ綾であろうとその身体と精神を蝕んで行った。

 

「どうした?普段なら『冗談じゃない』とか言うだろう?もしかして、本当に俺に犯されたいのか?」

 

「うぅっ……くっ……す……するなら……好きにしなさいよ……」

 

顔を真っ赤にしながら、消え入る様な声で綾は呟いた。その言葉に肯定の意味が含まれていることは誰が聞いても明らかだった。しかし、涼はニヤリと笑うと、掴んでいたセーラー服の襟元を捻って綾の首を絞めた。一瞬で綾の表情が変わると、空いている右手で大量のチャームを飲まされ、少しだけ普段より膨らんでいる綾の下腹に拳を埋めた。

 

「ぐっ!?あ……けほっ……く…くる……し………」

 

グジュウッ!!

 

「!!?……ぐぶっ!?うぐあぁぁぁ!!!」

 

膨らんだ胃を押しつぶすように深々と突き刺さった拳を、柔らかな肉が包んでいた。涼はすぐさま拳を引き抜くと、2発目、3発目と打撃を加え続け、綾を責め立てる。拳によって綾の胃は何回も無惨に変形させられ、大量のチャームが胃の中で暴れながらすぐに喉元までせり上がって行ったが、首を制服で締め上げられているため吐き出すことが出来ない。

 

「ぐぶっ!?ごぶぅっ!!ぐぅぅっ!?うげっ…!あぐぉぉっ!!」

 

「ははははっ!あれだけの攻撃で俺が満足したとでも思ったのか!?たっぷり時間をかけて嬲り殺すと言っただろう?予定は変わるが、最期にはちゃんと犯してやるから安心しろ!」

 

「や…やめ!やめて下さい!」

 

シオンが涼の足にすがりつくが、拳は綾の腹部に突き刺さり続け、その度にむき出しの柔肌は痛々しく陥没した。綾の顔からは血の気が失せ、目は空ろに泳ぎ、悲鳴も徐々に小さくなって行った。

 

「あぐっ…ぐぶぅっ!うげっ……ごぶぅっ!!う……うぐっ!?」

 

「ほらほら?早く吐かないと胃が破裂するぞ……?何なら、手伝ってやろう」

 

涼は綾の首を解放すると、渾身の力を込めて拳を綾の胃に捻り込んだ。解放された喉元を一気にチャームが駆け上がった。

 

ズギュリィィィッ!!

 

「ぎゅぶぅっ!!?が……ごぼっ……うげぇぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

綾の口から大量の白濁が滝のようにこぼれ落ちた。長時間にわたる嘔吐で、びちゃびちゃと足下に白濁の水たまりが出来る。
涼が制服を掴んでいる腕を解放すると、綾は糸の切れた人形のようにその場にうつ伏せに崩れ落ちた。目は完全に白目を剥き、口からはひゅうひゅうと通常ではない呼吸音が漏れる。シオンは力の入らない身体で必死に抗議していたが、綾が倒れるとすぐさま近づき、呼吸を楽にするように仰向けに寝かせた。

 

「あ……綾ちゃん……嘘……こんなの……」

 

綾は失神したままだったが、呼吸はいくらか楽になったようだ。その様子にほっとしていると、すぐに後ろから涼が近づき、シオンの頭を掴むと無理矢理肉棒を口にねじ込んだ。

 

「あ…ああっ…!?むぐぅっ!?んむぅ…」

 

「はははっ、次はお前だ。完全にチャームの虜になって、綾のを見て我慢が出来なくなっただろう?安心しろ、お前も綾の次に犯してやる。そのエロい身体を1回も使わずに殺すのはさすがに勿体ないからな」

「あ……あぐ……ぐぶっ!?そ……そんな……こんな……ことって………」

 

綾は深々と自分の腹部にめり込んでいる涼の拳を、信じられないという表情で見つめていた。一瞬で窮地に立たされ、涼の嬉々とした表情とは対照的に、綾の表情には絶望の影が色濃く浮かんでいる。

 

「あ…綾ちゃんを離して!!」

 

あまりの事態に呆気にとられていたシオンがはっと我に帰り、2人の元へ駆け出す。涼はすぐに綾の身体を邪魔なものを捨てるかのように足下に放り投げると、飛んできたシオンの回し蹴りを片手で受け止めた。

 

ガシィッ!

 

「ああっ!?くぅっ…」

 

「くくく、 綺麗な蹴りだな、今は蚊が止まりそうな速さだが…。突き技が得意な綾と、蹴り技が得意なお前か。確かに言いコンビだな」

 

「な…何で…?力が…入らない…」

 

「くくくく…俺の使役する部下に特殊能力を持つ者がいてな…頭も容姿も最悪の全く役に立たない下賎な屑だったが、そいつの汗に含まれる成分は相手の筋力を弛緩させて弱らせることが出来た…。それを冷子に成分検出させて科学的に合成してみたんだが、どうやら成功のようだな…。あの屑もやっと役に立ったか…」

 

「筋肉を…弛緩…?ま…まさかあの瓶の中身ですか?この…体の怠さも…?」

 

「そうだ…濃縮して一瞬で効き目が出るようにしてある。あの液体から発生したガスを吸ってしまったら、もはや立っているだけで精一杯だろう?綾の得意なパンチも、お前の得意な蹴りも、攻撃力は全てしなやかな筋力があってこそだ。もちろん、防御力もな!」

 

涼は掴んだシオンの足首を引っぱり、シオンの身体を強引に自分の身体に引きつけると、その勢いを殺さずにむき出しの腹部に丸太のような膝を埋めた。

 

ズブゥゥッ!!

 

「う”ぅっ!?……あ……あぅ……うぐぅっ!?」

 

「ほらほら…どうだ?自分の得意技の蹴りで攻められる気分は?お前ほど綺麗ではないが、威力はそこそこだろう?」

 

ズブッ!ドズゥッ!グジュッ!ドブゥッ!!

 

「……うぐっ……!!?………う……ぐぶぅっ……うあぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

まともに悲鳴も上げられないほどの蹴りが、膝が、爪先が、次々にシオンの腹に突き刺さった。トドメとばかりに涼はほとんど無抵抗になったシオンの背中に、後ろに衝撃が逃げないように左手を置くと、シオンを抱きかかえるようにしながら渾身のボデイブローを突き込んだ。シオンの背骨が軋むほど奥深くに右の拳が埋まる。

 

ドグジィィィッ!!!

 

「うぐうぅぅぅっ!?………かはっ……う……うぶぇあぁぁぁぁ!!!」

 

完全に胃を押しつぶされ、シオンの口から大量に飲まされた男子学生の精液や涼のチャームが逆流し、床に白い水溜まりを作る。顔からは血の気が引き、腰から下がガクガクと痙攣を始め、危ない状態であることが伺える。

 

「くくくく…背骨が掴めそうなほど深く入ったな…。あのガスの中には濃縮したチャームの成分も入っている。お前達ももう終わりだ…」

 

「あぐっ……うぐえぇぇぇ………。あ…ああぁ…そ…そんな……ここまで…来て……」

 

シオンがガクリと両膝を着く。唇はガクガクと震え、口からは絶えず胃液や精液が逆流している。シオンが落ち着くのを見計らって、涼は倒れている綾の髪を掴んで無理矢理膝立ちにさせ、ギンギンに勃起したペニスを2人の前に突き出した。 涼は自分の眼下に跪いている2人を満足そうに見下ろす。

 

「ほら、死ぬ前に俺のチンポに奉仕をしろ。何ならお前らの処女を奪ってやってもいいが、生憎時間がないものでな…。綾、まずはお前からだ。せいぜい気合いを入れてしゃぶれ」

 

涼が勃起したペニスをぐいと綾に向かって突き出す。綾は青ざめた顔で涼の顔とペニスを交互にに見ながら、震える声で抗議した。

 

「な…何言ってるのよ…。そんなこと…で…出来る訳ないでしょ?す…好きでもないアンタなんかの……こんなものを……」

 

「コチャゴチャ言ってないでとっととしゃぶれ!」


「ふざけないで!誰がアンタのなんかの……ああっ…!?むぐっ!?んぐぅぅぅぅ!?う…うむっ……んむぅぅぅぅっ!?」

 

 

 

涼が綾の頭を鷲掴みにすると、強引にその小さい口の中に収まりきらないほどの極太を突き入れた。綾の口が限界にまで開かれ、あまりのことに目には自然と涙が浮かぶ。

 

「ははははっ!そう言えばお前はしゃぶるのも初めてだったな!くくく…どうだ?初めての男の味は…?くぅぅっ……綾が…綾が俺のを…」

 

「むぐっ!?んむぅぅっ!!ぷはっ!!はぁ…はぁ…な…す…すごぃ…ふ…太いぃ…」

 

綾はたまらず涼のペニスを吐き出すが、すぐさま涼に口内を再度犯される。さらにはシオンの頭を掴み、まるで自分のペニス越しに綾に口づけをさせるように2人の唇を合わせた。

 

「あ…やぁっ!?んむぅぅぅっ…!?ん…ちゅっ…あ…綾…ちゃん……」

 

「んむぅぅぅっ……シ…シオンさ……ちゅぶっ…んむっ……あふぅっ…」

 

綾とシオンの2人が自分の性器にフェラチオをしている。夢の様な光景が眼下に広がり、涼は限界を突破しそうな射精感を歯を食いしばって耐える。2人はチャームの影響もあるのか、上気した顔でまるでお互いの舌を求め合うように涼のペニスに奉仕を続けた。

 

「ちゅぶっ…はぁ…はぁん…んむっ…あはぁ………シオンさん……」

 

「綾ちゃ……はぅぅっ……あ…はぁぁ…ちゅっ…れろぉぉっ……」

 

繰り広げられる極上の美女2人の痴態に涼はとうとう我慢の限界を迎え、奥底からせり上がってくるマグマを感じると、2人の唇にサンドされていた限界まで膨張したペニスを綾の口内に押し込み、狭い唇でペニスをしごかせた。

 

「んぐぅっ!?んっ…んっ…んっ…んふぅぅっ…」

 

「くぅぅぅっ…!!限界だ…。窒息するほど出してやるぞ綾ぁ…!舌全体で味わった後、一滴残らず飲み込め!!」

 

どびゅうぅぅぅぅっ!!ぶぢゅっ!ぶびゅぅぅぅぅぅっ!!

 

「んっ…んふっ……むぐうっ!?ぐむっ…!?ぐ……んふぅぅぅぅぅぅっ!!?」

 

涼は一旦ペニスを綾の口元まで引き抜くと、考えられないほどの大量の体液を躊躇無く綾の口内に噴出した。綾の頬は一瞬で風船のように膨らみ、口内から食道、胃までを白濁で満たし、飲み込めない分は口元からこぼれ落ちた。

 

「うぶっ…んんぅ……うぶぅっ……う……うぐ……」

 

「はははは……いい眺めだな…。まだ止まらんぞ…。ほら、俺を見上げながら飲み込むんだ、音を立ててな…。くくくく…お前が俺のチンポにいやらしくしゃぶりついて、その奉仕が俺を満足させたという証をくれてやってるんだ…。嬉しかろう?」

 

「う…うぅん……ごぎゅ…ごきゅ…ごきゅ……んふぅぅぅ……ぷはぁっ!!あ……はぁ…はぁ…はぁ…あ…あぁっ!?か…顔に……」

 

綾は涙を溜めた上目遣いで、喉を鳴らして涼の体液を飲み込んでいたが、その量の多さにたまらず涼が放出し切る直前にペニスを吐き出した。残った残滓が綾の顔に振りかかり、あどけない童顔を背徳的ないやらしさに染め上げてった。

ただいま空港から書いてます。


先日2chに読み切りを投稿して、いくつかお言葉をいただきました。嬉しかったです。
個人的にはもう少し大切に練ってから投稿してもよかったかなと思いました。頭に浮かんだイメージをうまく伝えきれなかったといいますか、早さを求めていろいろおろそかになったり…。

改行もブログと違って文節ごとなのに投稿中に気づき、投稿中に書き直したりと実際てんてこ舞いになりながらの投稿でした。

今日見てみたらリンクを貼らせていただいているK氏も投稿されており、続きが気になります。また機会があれば投稿したいですね。

仕事では先週末から福岡、鹿児島、名古屋、宮崎、東京と移動が重なっています。土曜日に休めればブログの更新もしたいですね。

ではまた

今日か明日、2chに書き下ろしを1本投稿してみようと思います。

毛色を変えて海賊ものなんかどうでしょう?

まずはキャラを作らないと…。 

「な…何をしたの…何なのこの甘い匂いは…?」

 

「綾ちゃん気をつけて…絶対に何かある!」

 

2人は咄嗟に涼に対して身構える。涼はゆっくりと立ち上がると、一歩ずつ2人に向かって歩き出した。

 

「…俺にここまでの屈辱を与えたことを後悔させてやるぞ…死ぬまで嬲り尽くしてやる…!」

 

涼は2人に対して突進を開始する。標的は…シオンだった。

 

「おおおっ!!」

 

「またそれですか?………!?なっ…!?くぅっ…!」

 

先ほどと同様の大振りな右ストレート。シオンは警戒しながらもチャンスと思い、再び涼の死角へ潜り込もうとステップと取るが、突如脚がゼリーに覆われた様な重苦しさに襲われる。

脚が一瞬もつれたと思った頃には、既に拳はシオンの鼻先に迫っていた。一瞬の判断でかがみ込んで何とかそれを避ける。拳が自分の頭上をかすめたかと思うと、数本の金髪がはらはらと目の前に落ちてきた。あれをそのまま食らっていたら…。

 

「シ、シオンさん!?」

 

「くっ…やあっ!」

 

しゃがんだ体勢で、涼に脚払いを書ける。当たり所がよく、転びはしなかったものの衝撃は先ほど涼が負傷した肋骨に響いたようだ。呻きながらよろめいた所を、綾がさらに追い討ちをかける。

 

グギィッ!

 

「があっ!?ぐぅぅっ…」

 

よろめく勢いを利用したレバーブローがしたたかにヒットし、涼の口からくぐもった声が漏れる。その声が途切れないうちに、シオンの滑らかな脚線が鞭のようにしなりながら綾の頭上を高速で通り過ぎ、涼の顔のほぼ正面に見事な回し蹴りを叩き付けていた。

 

バギィッ!!

 

「がぶっ!?ぶぐぅっ!!」

 

レバーブローを撃たれ、憎々しげに綾をにらんでいた涼の顔は、一瞬でシオンのエナメルで出来たハイヒールの裏側に隠れてしまった。

 

「おおぉ…やるぅシオンさん!私達結構良いコンビかもね!」

 

「ふふ…光栄ですね…」

 

「ぐがぁぁぁあああ!!」

 

涼は声にならない咆哮を上げ、2人から離れる。鼻からは血が滴り、上唇も一部裂けているものの、思ったほどダメージは無いらしい。

 

「くぅぅ…まだこれほど動けるとはな…だが、もう少しだ…」

 

「もう少し…?どういうことよ?」

 

綾が拳を握りしめながら、ゆっくりと涼に近づく。

 

「ハッタリ言うのもいいけど、こっちはあまり殴りたくないってさっき言ったでしょう?そろそろ終わりにしてあげるわ!」

 

綾がダッシュし、涼の顔面へ拳を放つ。しかし次の瞬間、綾は腕全体に強烈な怠さを感じた。先ほどレバーブローを放ったときにもわずかに感じた感覚だったが、今回は腕全体にまるで無数の穴が空いて、そこから水がこぼれるように力が流れ出した様な、強烈な脱力感だった。

それはとてもパンチとは言えない勢いで、ただ惰性で腕が涼に向かって伸ばされただけだった。一瞬の軽いめまいから気付いたときには、自分の右手はがっしりと涼に掴まれていた。そして…

 

グジュリィッ!!

 

「あ…綾…ちゃん…?」

 

「え…?」

 

綾が自分の腹部を見下ろすと、涼の拳が手首まで隠れるほど深く、自分の華奢な腹部に突き刺さっていた。

 

「あ……う……ぐぶっ!?うぶあぁぁぁぁ!!」

 

「う…嘘…綾ちゃん!?」

 

あまりの衝撃の強さからか、綾が状況を把握してから苦痛を感じるまで数秒のタイムラグがあったが、その後に襲ってきた苦痛は想像を絶するものだった。涼が拳を抜き取った後も、綾の腹部には拳の後がくっきりと残っていた。

 

「あぶっ…!げぼぉっ!?な…なに……今の……?」

 

綾は口の端から唾液を垂らしながら、かすむ目で涼の表情を見る。涼はこれ以上無いほど嬉しそうな顔をして、再び拳を握りしめていた。

 

「くくく…やっと効いたか…。もう一発くれてやるから、自分で確かめたらどうだ?」

 

ふたたび拳が唸りを上げて綾の腹部を襲う。一瞬腹筋に力を入れるが、今度は腕ではなく腹筋から力が抜け落ち、完全に弛緩したへそ周辺に拳が吸い込まれて行った。

 

ズブゥゥッ!!

 

「げぶぅぅぅっ!!?うぐっ……ごぼぁああああ!!」

 

涼の拳は何の抵抗も無く綾のくびれた腹に吸い込まれ、内蔵をかき回した。両足が地面から離れるほどの衝撃に、綾の瞳孔が一気に収縮し、黒目の半分がまぶたの裏に隠れる。

 

「ははははっ!いい顔だな!それに、相変わらず良い声で鳴くじゃないか?さっきまでの勢いはどうした?」

 

涼は失神寸前の綾の顔を覗き込みながら、冷酷な笑みを浮かべる。そして口の端から垂れている透き通った唾液を舌で掬い取ると、強引に綾の口の中へ舌をねじ込ませた。

 

「うぶうっ…!?んむっ……んんぅ!?」

 

綾は半ば混濁した意識の中で、口の中を這い回る粘液にまみれた軟体動物の感触に身の毛がよだった。焦点の定まらない目で涼を見下ろすが、全身の力が抜け抵抗が全く出来ない。

 

「んんむ…ちゅばぁっ…。くく…美味しい唾液だ…。お前とは2回目だな。さぁ、もっと出してもらおう…」

 

グリィィッ…!!

 

「あ”あ”あ”あ”あ”っ…!?かはっ……!う……うぶっ……」

 

痛々しいほどに綾の腹に深く突き刺さった拳を、さらに奥へねじ込む。綾はもはや溢れる唾液を飲み込むことも出来ずに、ただ白目を剥きながらだらしなく舌を垂らして喘ぐしか無かった。

「……私も本当にナメられたものですね…私に対して1人で挑むとは…。面倒なので2人同時にお相手していただけませんか?病み上がりの私相手に強気になるのも分かりますが、正直面倒なもので…」

 

「その必要は無いわ…。あと、とりあえず私が勝ったらすぐにでも服を着て欲しいわね…。見たくもないものが目の前にあるのは結構不快なのよ」

 

「見たくもないものですか…くくく…もう少してこれをしゃぶりそうになっていた人のセリフとは思えませんね…」

 

「…少し黙りなさいよ!」

 

綾が涼に対して駆け出す。それを合図に涼も綾に向かって突進し、お互いの射程圏内で拳が機関銃のように飛び交う。

 

「やっ!はぁっ!」

 

「ぐうっ…こ、こいつ…!」

 

お互い多少の攻撃は受けていたが、綾の方が優勢であった。綾は来るべきこの日に備え、なお一層の修練を積んでいた。手堅く涼の攻撃をガードすると確実にカウンターを当て、相手の反撃が来る前に距離を取る。一撃が重い人妖に対しては最も有効な戦法だ。
涼の攻撃は徐々に大振りになり、なおかつほとんどガードをせずに綾の攻撃を食らっていた。

 

メキリッ!

 

「ぐおぉっ!?」

 

綾の右フックが涼の左脇腹に当たり、肋骨から嫌の音が響いた。相手が両手で脇腹を押さえたところで、すかさず左膝でむき出しの金的を蹴り上げた。人間の男性ならその一撃で失神してもおかしくない衝撃、急所の存在しない人妖でもダメージは相当なものであるらしかった。

 

「がっ!?があぁぁぁ!!」

 

涼は脇腹と股間を押さえ、脂汗を流しながら歯を剥き出しにして荒い息を吐いている。普段の人を食った様な表情からは一変して、獣の様な顔になっていた。

 

「間抜けな格好ね。身体能力の高さに思い上がって防御を疎かにするからこんなことになるのよ。もう勝負は見えたんじゃない?」

 

綾はゆっくりと片膝を付いている涼に近づくと、両手の拳を腰に当て、仁王立ちで見下ろす。涼はしばらく肩で息をしていたが、ニヤリと笑うと綾に言った。

 

「はぁ…はぁ…ふふふ…相変わらず着丈の短いセーラー服だ。下乳が見えていますよ?動きやすいのは分かりますが、下着くらいは付けたらいかがですか?」

 

「な…なっ!?」

 

綾の同年代のそれより結構大きい部類に入る胸は、下から覗けるほどショート丈のセーター服を押し上げていた。また、普段は我慢出来ても戦闘時は締め付けられる感覚が嫌で下着を外している。

綾は真っ赤になり、あわててセーラー服の裾を両手で下げる。その隙をついて、涼はきびすを返して走り出した。涼の走るその先には、シオンが壁にもたれて休んでいた。

 

「あっ!?ひ…卑怯者!」

 

綾も慌てて走り出すが、既に涼はシオンに対し唸りを上げて拳を放っていた。

 

「油断するからだ!この女を人質に取れば、お前も手は出せまい!」

 

しかし、拳がシオンの顔面に当たる一瞬前、涼の前からシオンの姿が消えた。涼の目が大きく見開かれる。一瞬のうちにシオンは涼の右隣に移動し、涼の右腕を自分の右手で掴んでいた。音も無く、あまりにも鮮やかな移動は端から見たら瞬間移動のように見えた。

 

「…綾ちゃんのおかげでもう十分休めました。それに、私だってアンチレジストの戦闘員なんですよ。鑑君の仇くらい、自分で取れます!」

 

シオンの放った右膝が、涼の腹部に吸い込まれて行った。予想外の展開に涼は腹筋を固めることもままならず、ずぶりという音と共に涼の胃がシオンの膝の形にひしゃげた。

 

「シオンさんナイス!そして、これで終わりよ!!」

 

ごぎりっ!!

 

「がっ!?がごぉぉ!!」

 

シオンの膝の真裏に、綾が渾身の突きを放った。涼の胃は完全に潰れ、弾かれるように2人から離れると、両手で口元を押さえてのたうつ。

 

「ごっ…ごぶぅ…うぶぉぉぉぉ……」

 

シオンと綾はお互い顔を見合わせ、お互いの拳を合わせると再び涼に視線を戻す。綾が涼に近づき、のたうつ様を見下ろしている。今度は胸が見えないように、両方の腕で胸を持ち上げるように隠している。

 

「どう…?もう終わりにしない?これ以上やっても苦痛が増えるだけよ?私達はあなたみたいに相手を痛めつけて喜ぶ趣味は無いから…おとなしく捕まってくれるのならこれ以上攻撃はしないわ」

 

「ぐぅぅぅぅっ…げろぉっ!!」

 

涼は綾をちらりと見上げた後、何かの黒い塊を吐き出した。一瞬血かと思い、綾はうっと顔をしかめ、目を細める。

 

「はっ…!?な、何を持っているんですか!?」

 

しかし次の瞬間、涼の手には小さめの茶色い薬瓶が握られているのにシオンは気付いた。涼は厳重に封をされた薬瓶を握りしめて立ち上がると、力いっぱい地面に叩き付けた。
小さなパァンという音と共に瓶が砕け、不思議な甘い匂いが当たりに漂い始める。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…。まさかこれを使うとはな…。俺としたことが、貴様らみたいなゴミ虫相手に何という屈辱だ…。だが、これで俺の勝ちだ…。貴様ら…たっぷりと時間をかけて嬲ってから殺してやる…」

 

涼はもはや普段の話し方ではなくなっており、端正な顔立ちは元の表情が伺えないほど怒りを表す深い皺が刻まれていた。瞳は妖しい紅い光をいっそう強め、唾液を垂れ流しながら歯をむき出しにして、今にも折れそうな力で食いしばっていた。 

「くくく…許さないのはこちらも同じですよ…」

 

涼が脇腹の刺し傷を撫でながら綾に微笑みかける。しかし、それは「これが自分のスタンスだ」と言いたげに、ただ口元だけで微笑みを表現しただけで、目は決して笑ってはいなかった。

 

「こちらはあなた方のおかげで結構大変な目に遭いましてね…。ここへ向かう途中に行き倒れて、使役している賤妖に助けられるなどと無様な醜態を晒し、挙句の果てに蘇生までの間胸くそ悪い人間の身体を借りなければならないとは…いやはや、生き恥を晒すとはこういうことを言うのでしょうね…」

 

「自分で撒いた種でしょう?なに人のせいにしてるのよ。こっちだってあなたに…その…色々されたんだから…お互い様でしょう?」

 

「いえいえ…あなた方下賎な人間が、高貴な存在の人妖に良いようにされるのは自然の摂理でしょう?」

 

涼がゆっくりと綾とシオンに歩み寄る。綾はわずかに身体をシオンの前に移動して、庇うように涼に対峙する。

 

「どこまで思い上がっているの?生き物に優劣なんて無いわよ!」

 

「ははははっ!あなた方はいつもそうだ。自分のしていることは棚に上げて、他の人が同じことをすれば我慢が出来ない。時々ニュースで見ませんか?例えば人里に熊が出た場合、観光地に猿が出た場合。たいてい結末は決まっているでしょう?」

 

「そ…それは…」

 

「違います!」

 

突如響いた声に、一瞬場の空気が動かなくなった。綾の足下に座り込んでいたシオンがゆっくりと立ち上がって涼に向かい合う。

 

「確かに私達は自分勝手に動く生き物かもしれませんが、それでも様々な生き物と共存をしようという動きも少なからずあります!浜辺に打ち上げられたイルカやクジラを助けたり、さっき貴方がおっしゃった人里に出た動物だって、麻酔で眠らせて山に返すことだってあるんです!全てが最悪の選択ではないんです!」

 

シオンの頭の中に、隣の部屋のケージに入れられた、ぼろぼろになった動物達の死体が浮かび、涙がこみ上げてきた。それを振り払うかのように強く頭を振る。金髪のツインテールが揺れ、弱々しい蛍光灯の光を浴びてキラキラと輝いた。

 

「……まぁいいでしょう。こちらの計画も順調に進んでいます。今はあなたにお礼をすることに集中しましょうか?」

 

涼の目がギラリと光を放つと、2人に向かって、いや、綾に向かって突進を始めた。一気に距離が縮まり、綾の顔面を目掛け拳を放つ。

 

「あ、綾ちゃん!?危ない!!」

 

「うぁっ!?」

 

紙一重でよけるが、風圧で綾の右頬がヒリヒリと痛んだ。まともに食らっていれば、鼻の骨どころか頬骨や眼底の骨にまで深刻なダメージがあっただろう。綾は涼は一切手加減をする気がないことを、この一撃で悟った。

 

「くっ…このっ!!」

 

空いた涼の腹部を狙い、裏拳を放つ。ごぎゅりという音がして、オープンフィンガーグローブを付けた綾の拳が埋まる。

 

「ぐぶっ!?」

 

「やあああっ!!」

 

裏拳が入ると同時に、降りてきた顔面に向かってストレートを放つ。綾は考えるより先に身体が最善の選択をして相手に攻撃する。その選択が間違うことはほとんど無い。綾をアンチレジストの上級戦闘員たらしめる素質だ。

 

ガシッ!!

 

「くぅっ!」

 

綾の右手首を、涼ががっしりと掴んだ。綾の細い手首に、両の手はあまりに暴力的に見えた。

 

「ふぅ…ふぅ…効きましたよ…今の一撃は…。やはりまだ身体の能力は完全には戻っていないようだ…。しかし、貴女ごときに負けるはずが無い!」

 

ドグッ!!

 

「うぐっ!?ぐぅぅ……」

 

「綾ちゃん!?」

 

涼の右の拳が、綾のショート丈のセーラー服からむき出しになった腹部目掛けて放たれる。綾は咄嗟に腹筋を固めてダメージを堪えるが、全くのノーダメージという訳ではない。

 

「ほぅ…強くなりましたね…。よろけながら打ったとはいえ、私の一撃を耐えるとは…」

 

「うくっ…あ…当たり前でしょ?アンタと違って…黙って寝てた訳じゃないんだから…」

 

  涼は綾の手首を解放し、一旦距離を取って構える。

 

「くくく…これはお言葉ですねぇ…。強がっているようですが、もともとあなた達人間の身体とはスペックが違うというのに…。そう言えばシオンさんのお相手をした時も、私は鑑とかいう人間の身体を借りていましたね。いやはや、あの時はまるで身体が鉛になったみたいで、歯がゆい思いをしましたよ。早く私自信の攻撃でのたうち回るあなた達が見てみたいですね…」

 

鑑の名を聞いて、シオンがピクリと反応する。後ろからわずかに拳を握る気配が綾にも伝わった。鑑という名は綾にとって初耳だったが、シオンとは何らかの関係があることは分かった。

 

「シオンさん、悪いけど、ここは私に任せてくれる…?」

 

「えっ…?で、でも…」

 

「こいつとの決着は私自身でつけたいの。それに、残念だけどシオンさんは今までの戦闘で疲労がたまってるから、無理しても結果は見えてるわ…。詳しくは知らないけど、鑑さんの分も、あいつには身体で払ってもらう。もちろんシオンさんの分もね!」

 

そう言うと綾はシオンにニッと歯を見せて笑い、拳と手のひらをパシッと合わせた。

 

「100パーセントあり得ないけど、もし私があいつに負けそうになったら助けにきて。だから、今は休んで私に任せて欲しいの。気持ちを無視するようだけど、どうかお願い…」

 

「綾ちゃん…分かったわ。その代わり、危なくなったらすぐに助けに入るから。それは了承して」

 

綾は力強くうなずくと、涼に向き合い再び拳と手のひらをパシッと合わせた。


涼はシオンの胸を乳首が重なるくらいぎゅうっと合わせると、その中心へ男根を突き込んだ。本来はさらさらとした上質なタオルケットの様な肌はわずかに汗ばみ、むっちりとした弾力とわずかな抵抗を持って男根を受け入れた。まるで暖めたゼリーを詰めた柔らかい風船に挟まれている様な錯覚に陥るが、現実はさらに極上なものだった。

 

「お、おおおおおっ…。こ、これは確かに…凶悪なまでの気持ちよさだ。正面から突き込んでいるのにすべて隠れるこの大きさ。肌触りや弾力も…。遠慮は無用ですね…」

 

涼は最初からフルストロークでシオンの柔肉に鋼の様な肉棒を繰り返し突き込んだ。ぱんっぱんっという小気味いい音が響き、涼に極上の快楽を送る。

 

「あっ…あっ…あっ…わ…私…またエッチなことしてる…。ああっ…ふ…太いぃ…」

 

チャームの効果があるとはいえ、上気した顔で自分の胸に突き込まれている男根を凝視しながら無意識に呟く言葉は、男性の本能をこの上なく刺激した。こいつは天性のものがあるなと涼は思い、射精感は早くも限界に来ていた。

 

「ああっ…ビ、ビクッてなった…。で…出るんですか…?ま…また…白いの…いっぱい出しちゃうんですか…?ふああっ!ま…まだ大きくなるの?す…すごい…」

 

悩ましげな上目遣いで見上げながら溜息まじりで呟くシオンに、涼は瞬く間に限界まで追い込まれていった。男根を勢い良くシオンの谷間に叩き込みながら、最後のスパートに入る。背中に電気が走る瞬間に一気に引き抜き、

 

「ぐううっ…も、物欲しそうな顔をして…。くおっ!?う、受け止めなさい!」

 

「あっ!あっ!あっ!ああっ!す、すごいぃ…も…もう……えっ!?あ…あああっ!?」

 

涼は男根を引き抜くと、控えめなシオンの乳首に男根の先端を押し付け、放出しながらそれを左胸全体に塗りたくった。左胸全体がべっとりと粘液まみれになっても放出は止まらず、さらにシオンの半開きの口に男根を突っ込んだ。

 

「あ…熱いぃっ…!!あ…こんなに…どろどろに……。む…むぐぅっ!?ん…んぅ……んぐぅっ!!?ぶぐっ…うぶううぅぅ!!?」

 

「くおおおっ…し…舌が絡み付いて…て…手も……と…止まらない…」

 

シオンは突然男根を押し込まれ、慌てて手と舌で男根を押し出そうとするが、それは逆効果に絶妙に男根を刺激し、激しい涼の放出でシオンの頬は風船のように膨らみ、口内から喉にかけてドクドクと熱い樹液が流し込まれた。シオンはチャームによる軽い絶頂を味わい、わずかに痙攣しながら焦点の合わない目でただ涼を見上げていた。

 

「あはははっ!すごぉい!チャーム飲まされながらイけるようなら、そのうち精液でも大丈夫になるわよ。………………………なぁにがアナスタシア創立以来最高の生徒会長よ…。清楚なお嬢様が聞いてあきれるわね?今じゃ男のチ○ポにしゃぶりついて尻尾振ってる一匹のメス豚、いえ、メス牛かしらね。本当にくだらないわね」

 

最初はいつもの余裕のある顔で手を叩いていた冷子の表情と口調が、突然刺々しいものに変わり、シオンにゴミ溜めに群がる蠅を見る様な視線を送る。

 

「本当に気持ち悪いわ、吐き気がする。涼、もう済んだでしょう?あの双子から連絡で、予定通りアナスタシアを離れるらしいわ」

 

冷子はシオンに再び一瞥を投げつけると、そそくさと隣の部屋に向かって歩き出した。涼はぐったりと座り込むシオンを残念そうに見つめている。

 

「はぁっ…はぁっ…くぉぉ…最高でしたよ…。出来るなら最後までお付き合い願いたいですが、生憎時間のようです…。またお目にかかりたいですね…」

 

「あ…あぅ…ふ…双子…?ま…まだ、仲間がいるんですか…」

 

「ええ…あなたも知っていると思いますが……おや…?いやはや……いいのですか?」

 

涼が珍しく少し驚いた表情をしている。部屋の中に入ってくる2人の少女、レジスタンスの戦闘員、由里と由羅が無表情で部屋に入ってきた。

 

 

 

 

 

「止まって下さい綾さん!1人で乗り込むのは危険です!あなたにまで何かあったら…!!」

 

背後からオペレーターの悲痛な叫びが聞こえるが、綾は聞こえない振りをして研究棟を目指し疾風のように掛けて行った。シオンの行動が追えなくなってから2時間。いくら何でも遅過ぎる。当初、音声通信が途絶えた後もシオンの動きだけは追えたものの、駐車場から広場まで移動し、研究棟に入ったと同時にシオンの反応までもが消えてしまった。おそらく軍事基地のように、研究棟全体が特殊な妨害電波のようなもので覆われているのだろう。

2時間してもシオンが出てくる気配がないことに、綾の天性の勘と今までの経験が警鐘を鳴らしていた。とても嫌な予感がする。

居ても立ってもいられずに学校の制服から戦闘用のセーラー服に着替えアジトを飛び出そうという時に、綾とパートナーを組んでいるオペレーターと出くわし、その呼びかけでいつの間にか5人ほどが自主的にシオン救出に名乗りを上げた。

 

「待っててシオンさん…。すぐに助けに行くから……ッ!?」

 

研究棟付近の噴水広場に、野球部のユにフォームを着た男子学生が3人ほど倒れていた。眼鏡をかけた学生は耳から血を流している。

 

「ちょ…ちょっとあなた!大丈夫!?一体何が…?」

 

あわてて綾が眼鏡をかけた学生の元に駆け寄る。失神こそしているものの、呼吸や心音は正常だった。念のため他の2人も確認したが、いずれも命に別状は無いらしい。ほっとして通信機のスイッチを入れる。

 

「こちら綾、救じ…」

 

「なにしてるんですか綾さん!!勝手に行ってしまって…いくら強いからって、もしものことがあったらどうするんです!?」

 

綾の言葉を遮り、耳がキーンと鳴るほどの怒声がイヤホンを付けている右耳から左耳へ抜ける。綾はよろよろとよろけ、倒れている眼鏡につまずきべしゃりと見事に転んだ。

 

「わわっ…痛った!!?」

 

「えっ!?ちょ…大丈夫ですか!?」

 

「もう!急に大声出すからびっくりしたじゃない!先に行ったことは謝るわ。あと、研究棟前の広場でけが人3人を発見。救助を要請します」

 

「けが人?容態は大丈夫ですか?」

 

「失神しているけど、呼吸や心音は安定してるわ。まったく、ここで一体何があったのよ…。とにかく私は研究棟に向かうから、救助の方は任せたわよ。研究棟は何があるか分からないから、あなた達は下で待機していて欲しいの。もし2時間して私が戻らなかったら、ファーザーに連絡して…」

 

「あ…ちょっと綾さ…」

 

一方的に通信を切った後、改めて研究棟を見上げる。選ばれたもののみが入ることを許されたアナスタシア聖書学院、建物から地面の石畳に至るまで中性ヨーロッパ調に統一された広大な敷地内の、ほぼ中央にそびえる現代的な建物は、周囲の景観から明らかに浮いていた。月の光を浴びて不気味に光りながらそびえる巨大な研究棟は、まるで悪魔の根城のようにも見えた。

単身研究棟に入る。ドアが半分開いており、すんなり中に入ることが出来た。注意して1歩1歩進んで行くが、周りに人の居る気配がない。奥を見ると、まるで招き入れるようにエレベーターが青白い光を廊下に落としていた。

ごくりと固唾を飲む音が廊下全体に響いた気がした。綾は意を決し、エレベーターに入る。扉が、まるで獲物を捕えた食虫植物がその葉を閉じるように、ゆっくりとしまっていった。

 

 

 

「うわ…酷い臭い…。涼…アンタ張り切り過ぎ…。冷子、アンタまたシャワーに入れてあげた方がいいんじゃない?」

 

「やぁよ…面倒くさい…。それよりここを離れるんでしょ?どこだか知らないけど、行くなら早くして欲しいわ」

 

「あなたがシオンさんですか…へぇ…モニターで見るよりも本物の方が綺麗ですね…」

 

「あ…あなた達……由里さんと…由羅さん…?な…何故ここに…?」

 

目の前には、会議室でファーザーが流した映像で見た双子。肥満体の人妖に散々責め立てられ、堕ちる所まで堕ちたように見えた彼女達が、目の前で人妖と親しげに話をしている。あまりの出来事にシオンは事態が飲み込めなかった。

 

「シオンさんに良いニュースですよ…。お友達の綾さんがもうすぐここに来てくれます…。シオンさんも乗ったエレベーターに入ると自動的にこの階に着くようにセットしてきましたから…」

 

「ちょっ…!由里!?あんたいつの間にそんなことしたの?ヤバいじゃん!?」

 

「大丈夫だよ由羅…その前にここを出ればいいから…。隠し通路は知っている人にしか分からないしね…。シオンさん、とりあえずこれだけでも…」

 

のんびりとした動作でシオンにフリルの着いた黒いトップスを付けてあげる由里と、パタパタと慌てて端末を操作する由羅。遠くの方で重いものが動く音がした。

相変わらず対照的な2人に半ば呆れながら、冷子が涼に声をかける。

 

「なんだかんだでこの2人に任せてれば安心ね…。さぁ涼、すぐ出発するから服を来て著頂戴」

 

「………綾」

 

「え…?」

 

「………私はしばらくここに残りましょう…。仮死体験などという貴重な体験をさせていただいて 、彼女には個人的に色々とお礼がしたいものですからね…」

 

涼の目は興奮のためか、人妖特有の縦に切れた瞳孔が赤い光を放ってた。表情こそ、表面的にはいつもの落ち着いた柔らかい笑みを浮かべていたが、長い付き合いの冷子にはその奥にどす黒いマグマの様な怒りがフツフツと沸き立っていることを察知出来た。

 

「ちょっと!気持ちは分かるけど今はここを離れるのが先決でしょう!?今は綾って娘1人かもしれないけど、数が増えたら厄介になるわよ。それに、あの娘を殺すならいつだって…」

 

「いえ、私ももう我慢が出来ないのですよ…。後で新しいアジトの場所を連絡して下さい。なるべく早く済ますつもりですが…ククク、明日の夜までには戻りますよ…」

 

涼がこうなってしまうと止まらないことを冷子は知っていた。説得を諦めて双子と共に部屋を出る。冷子達と入れ替わるように綾が部屋に飛び込んできた。

 

「シオンさん!大丈夫!?」

 

綾は目の前に広がっている光景に、しばらく言葉が出なかった。床中にまるで白いペンキをぶちまけたかのように、あちこちで白濁の粘液が水たまりを作っており、その中心には白濁まみれになり鳶座りで呆然と佇むシオンと、その正面で全裸で仁王立ちになり顔だけをこちらに向けている涼の姿があった。

シオンは綾が視界に入るとゆっくりと顔を向け、安堵のためか緑色の瞳からは一筋の涙が流れた。

 

「綾ちゃん……私……汚れちゃった……」

 

「…………ッ!!」

 

綾はわなわなと震えながら、シオンの目の前に立っている涼に憤怒の視線を向ける。しかし、その姿を見た涼はにやりと嗤うと、いきなりシオンの細い顎を掴み、そのまま男根を口内に押し込んだ。

 

「うぶっ!?うむぅぅぅっ!!?」

 

「なっ!?やめろぉぉぉぉっ!!」

 

綾が涼に突進すると、あっさりとシオンの口から男根を引き抜き数歩後ろに下がる。どうやら挑発のための行為だったらしいが、綾は完全に頭に血が登り、ふぅふぅと肩で息をしていた。今にも飛びかかりそうになる気持ちを堪えながら、シオンの肩に手を置く。

 

「シオンさん、もう大丈夫だから…。待ってて…すぐにあいつをぶちのめすから!」

 

ギリリと綾のはめている革製のグローブが軋む。シオンは下を向き、ぽろぽろと涙を流しながら綾の手を自分の肩からそっと外した。。

 

「!?。シ、シオンさん…?」

 

「わ…私…汚れちゃったから…綾ちゃんに会わせる顔が無い…」

 

「そ…そんなことない!な…何言ってるのシオンさん…。『汚された』の間違いでしょ!?あんな下衆にやられたことなんて気にしない方がいいよ!」

 

「ち…違うの……。さ…されてるうちに私…だんだん気持ちよくなって…。あの…イクっていうの…?それにもなっちゃって…。自分がこんなにエッチだったなんて知らなくて……。もう…学校にも…アンチレジストにも居られない……」

 

シオンは細い肩を振るわせながら泣いていた。綾はチャームや精液が身体に付くこともかまわずに正面からシオンをしっかりと抱きしめた。一瞬ビクリとしたシオンだったが、徐々に力が抜けて行き、弱々しく申し訳無さそうに綾のセーラー服の袖を掴んだ。

 

「大丈夫…大丈夫だから…。シオンさんは絶対に汚れてなんか無い…。もしそうだったらこういう風に抱きしめられる訳無いでしょう?絶対に大丈夫…。悪いのは全てこのチャームのせいだから。いまからシオンさんをこんな風に傷付けた奴を懲らしめるからね…」

 

綾も目に涙を浮かべながら立ち上がり、手のひらでぐしっと涙を拭うと、涼に対して向き合った。

 

「お前…絶対に許さないから…。もう謝っても絶対に許さないから!!」

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