「いぎっ…いぎぃ……」

 

男はかれこれ1時間ほど2人の攻撃を受け続け、コンクリートの床に芋虫のように転がっていた。由羅に蹴られ、由里に殴られても、男は反撃らしい反撃を殆どせず、むしろ攻撃されるのを喜んでいるようであった。

 

「はぁ…はぁ…どうなの…?もう満足したでしょ?いい加減にくだばりなさいよ…」

 

由羅が息を切らしながら男に尋ねる。一方的に攻撃しているとはいえ、休む間もない攻撃の連続はかなりの体力を消耗する。しかし男はどんなに攻撃を受けても、何度も立ち上がり一向に力尽きる様子は無い。再びむくりと男が起き上がる。

 

「ふぅ…ふぅ…。す、すごいよ。2人とも、す、凄く強いんだね。ぐふふ。も、もっと、もっと攻撃して…ゆ、由里ちゃぁぁん!!」

 

男は由里に突進し、抱きつくように両手を広げる

 

「い、いやぁぁぁ!こ、来ないでください!」

 

由里のアッパーが男の顎にしたたかに入り、すぐさまがら空きのブヨブヨの腹に強烈なストレートを見舞った。

 

「何してんのよぉぉぉ!!」

 

後頭部めがけ由羅の飛び膝蹴りが決まり、前のめりに倒れかけたところを由里のボディブローが見事に入った。

 

「ぐぶぉぉぉぉ……ぐふ…ぐふふ…」

 

男はヨロヨロと数歩下がり腹をおさえて呻くが、その顔には笑みが浮かんでいた。

 

「え……?」

 

「た、倒れない…の?」

 

今まで由里か由羅のどちらか一方の攻撃を受けても昏倒していた男が、アンチレジストでもトップクラスの2人の連携技をまともに食らって倒れないはずがない。 様子が違う男の態度に2人は動揺していた。

 

「ど、どうしたんだい…は、早く、も、もっと殴ったり蹴ったりしてよ…ゆ、由羅ちゃんも、もっと罵ってよぉ…」

 

「こいつ!たまたま甘く入ったくらいで、調子に乗るんじゃないわよ!」

 

「もう…次で決めるから!」

 

2人は同時に男に向かって駆け出す。由羅は甘く入ったと言うが、そんなはずが無いことは自分が一番よく知っている。あれは確実に男の後頭部をとらえていた。それに加え直後に由里のボディーブローもまともに入っている。あれほどの攻撃で倒れないわけが無い。

 

「うぉぉぉぉ!!」

 

「はぁぁぁぁぁ!」

 

左右から同時に由羅の蹴り、由里の突きが男にショットガンのように襲いかかる。しかし、見る見るうちに男の様子は変わって行った。

 

「ぐっ!痛い!い、痛いぃぃ!も、もっと…もっとだよぉ…」

 

「ぐっ!、こ、このぉ!!」

 

「えいっ!えいっ!…な、何で?」

 

男はもはやよろけることも無くなり、最初こそ痛がっていたものの、15秒ほど攻撃を受けている間には徐々にダメージすらも受けてないように見えなくなって行った。由里と由羅の表情に焦りと戸惑いの色が現れる。

 

「ほらぁ…もっと蹴ってぇ…由里ちゃんも、も、もう少し強く殴ってくれないと、ぜ、全然感じないよぉ…あれ?な、何でやめちゃうんだい?」

 

「はぁっ!はぁっ!はぁっ…な、何なの?」

 

「う…嘘…。全然…きいてない…」

 

「ほ、ほらぁ…な、なんで来てくれないの?こ、こここ、来ないなら…」

 

男の目がぎらりと光る。

 

「こ、こっちから行くよ!」

 

 

ズギュッ!!!

 

ドブゥッ!!!

 

「うぐぅっ!!??うぐぅあぁぁぁぁぁ!!」

 

「うぶぅっ!?……ぁ……ぁ……!!!」

 

男の左右の手が同時に高速で動き、脂肪で膨らんだ鈍器のような拳が正確に由里と由羅の腹部にめり込んだ。由羅は目を見開いて嘔吐き、由里は呼吸もままならないほどの衝撃を受け止めた。

 

「ぐふふふふ……ふ、2人とも…仲良く食らっちゃったねぇ…ど、どうだい?ぼ、僕の攻撃は?」

 

「あ…あぐ…ぁ…。ま、まぐれ当たりで…いい気になるんじゃ…ないわよ…。は、早く…これ…抜きなさいよぉ…」

 

男は2人の腹部に拳をうずめたまま、にやぁと下品な笑みを浮かべた。

 

「んん~。そ、そんなこと言っていいのかい、ゆ、由羅ちゃん?だ、大好きなお姉ちゃんが、く、苦しんじゃうよ?」

 

由羅はびくりとなって男にすがるような目を向ける。この日初めて見せた弱々しい表情だった。

 

「な、何する気?ゆ…うぐっ…由里を…離してよ」

 

由羅は自分も同じように拳を突き刺されたままの状態であるにもかかわらず、由里の解放を求める。由里は下を向いたまま、息が継げない状態で小刻みに痙攣していた。

 

「ほ、本当にお姉ちゃんが大好きなんだねぇ…由羅ちゃんは…。ぐふふ、ゆ、由里ちゃんの方が、こ、拳が深く入っちゃったから、く、苦しいだろうねぇ?」

 

「げ、外道!…うぅっ……ゆ、由里だけでも…離して」

 

「んふぅ~。そ、そうはいかないよ?んー、こ、これは由里ちゃんの胃かな?ぐふふ、隣でお姉ちゃんが苦しむ様子を見せてあげるからね…」

 

「な、なに…する…や、やめ…」

 

由羅が精一杯静止の言葉を口にするが、男は容赦なく由里の胃を捕まえ、強引に握りつぶした。

 

グギュゥゥゥゥゥ!!!

 

「ぐ!?ぐぶっ!!??ごぶぅぇぇぇぇぇぇ!!」

 

「ゆ、由里!?由里ぃぃ!!」

 

ビクンと由里の身体が跳ねると、大きくガクガクと痙攣したまま黄色い胃液を吐いた。

 

「あ…ああ……ああああ……」

 

「い、いやぁぁぁぁ!」

 

白目を剥いて痙攣し続ける由里を見て、由羅が悲鳴を上げる。男は投げ捨てるように由里を地面に突き倒した。

 

「ゆ、由里!?んむぅぅぅぅ!!??」

 

由羅は慌てて由里に駆け寄ろうとするが、すぐさま男に捕まり、右手で口を塞がれる。喋れない状態のまま キッと男を睨みつけた。

 

「ん、んんー!!んー!!」

 

「ぐふぅ…ゆ、由羅ちゃん…さ、さっきはたくさんたくさん蹴ってくれたよねぇ…す、凄く気持ちよかったよ…ぐふふ、お、お礼に、こ、今度は僕がたくさんたくさんたくさんたくさん…蹴ってあげるからねぇ…」

 

「ん!?んん…んんー!」

 

由里の瞳に恐怖の色が浮かび、目が泳ぎはじめる。逃れようとするが、男の強い力で押さえつけられており、首をわずかに動かすことで精一杯だった。

 

「膝蹴りが凄く気持ちよかったよ…こ、こんな短い足で申し訳ないけど…ぼ、僕も膝で蹴ってあげるね…」

 

ズギュゥッ!!

 

「ぐっ!?ぐむぅぅぅぅ!!!」

 

男は強引に由羅の身体を直立させると、丸太のような膝を由羅の細い腹部にめり込ませた。想像を絶する衝撃に由羅の身体がくの字に折れ、男の手の間からくぐもった悲鳴が漏れる。

 

ズギュッ!ズギュッ!ズギュッ!ズギュゥゥッッ!!

 

「ぐぶっ!!ぐむっ!んむぅっ!!んぶぅぅぅっ!!!」

 

口を塞がれているせいで、まともに悲鳴すら出せない由羅。男の一撃一撃は非常に重く

、食らうたびに視界が狭くなって行くのを感じた。

 

「ゆ、由羅ちゃん、や、止めて欲しい時はいつでも言ってねぇ?あんまり我慢してると…」

 

男は笑みを浮かべると由羅の口をおさえている手に力を込めた。

 

「死んじゃうかもよ?ちゃあんと『止めて』って言ってねぇ…」

 

由羅の瞳が絶望に染まる。下を見るとものすごいスピードで男の膝が自分の腹に飛び込んでくる所だった。

ご機嫌いかがでしょうか?
number_55です。

おかげさまで開設当初から安定したアクセス数をいただき、右のロゴから行けるブログランキングも現在6位~8位という上位をいただいております。ありがとうございます。


さて、現在製作中のcase:TWINSですが、冒頭は腹パンチがほとんど無い状態で進行しており、期待されておられる方には申し訳なく面っています。

個人的に腹パンチはある程度のストーリーとシチュエーションあって引き立つものと考えており、今回はキャラクターにもある程度性格と個性を与えることを念頭において製作しております。


今回ので大体キャラ説明は書き終えたので、次回から腹パンチ劇場開幕です。


勝利間近になって調子に乗っていたら逆転されて、徐々に追い詰められていくシチュエーションは気合いが入りますね。


ではまた次回

様々なものが雑然と放置されている廃工場の中は、まるで機械で出来た動物の胃袋を思わせる。電気が通っているのか、ぽつぽつと等間隔に吊るされた裸電球が弱々しい光を落としながら、鉄骨とコンクリートの影を浮かび上がらせていた。

 

「明かりが付いてる…やっぱりこの中に居るんだ…」

 

「中に入ったきり出て来て無いって言ってたから、キモオタさんもきっと居るよ…」

 

「由里、そのキモオタさんって呼び方、もしかして気に入ってる?」

 

「…」

 

2人の足音だけが響くがらんと広い空間。所々横部屋はあるものの、でたらめにモノが放り込まれておりとても生活できるようなところは無かった。しかし、しばらく進むと「仮眠室」と書かれたプレートが貼り付いた扉があり、薄く開いたドアを覗き込むとそこには万年床の布団や服などが散らかすように置かれており、生活の気配を感じられた。

 

「由羅…これって…」

 

「人妖…の…?ホームレスとかが住み着いてるだけじゃない?奥まで見えないけど…」

 

「でも、これだけ布団や服があるのに、食べ物はひとつも落ちてないよ…」

 

「ちょっと待って、懐中電灯出すから」

 

由羅は胸に刺していたペンライトを捻り、明かをつけると部屋の奥の方を向かって照らした。2人が同時に息をのむ。

 

「!!!」

 

「酷い…」

 

「間違いなさそう…。でも、こんなこと…」

 

部屋の奥には、5~6人ほどの女性がほとんど全裸で、天井から吊るされた紐で手首を固定された状態で座っていた。頼りない光からでも、全身につけられた痣が見える。全員生気の無い瞳で暗い地面を見つめていた。慌てて由里が駆け寄る。

 

「だ、大丈夫ですか?なんて酷い…今助けますから!」

 

「…も……くだ………な……」

 

「え?何ですか?どこか痛いところがあったら?」

 

「もっと…もっと体液を下さいぃ……いっぱい……奉仕……しますから……濃いの……出して…くださいぃ……」

 

縛られた女性は、由里が肩を揺すっても全く反応を示さず、ただ地面を見たままうわごとのようにつぶやくだけであった。

 

「え?……な、何言って……」

 

「由里、もうダメだよ。完全に人妖に魅せられてる…。オペレーターから聞いたけど、人妖は人を魅了する力があるみたい…多分それでこの人達も…」

 

不意に、ガタンという音と共に入り口のドアから人が去る気配があった。

 

「由羅…」

 

「うん!間違いない!追うよ、由里!」

 

2人は急いでドアから出ると、音のした方へ向けて駆け出した。しばらくすると、荒い息づかいとともに男が必死に走っている後ろ姿が見えた、その男はちらりと後ろを振り返ると、ひぃっという小さな悲鳴を漏らして近くの部屋に逃げ込んでしまった。

 

「由羅、ここに入ったよ!」

 

「うん、ボイラー室か…。由里、気をつけて。私から入るから…」

 

すっかり油の乾いた蝶番がぎぃぃという音を立てて、立て付けの悪いアルミ製のドアが開かれる。中には数個の裸電球が吊るされていたが、それでもこの部屋を照らすのには十分だった。部屋の奥の大きなボイラーに手をついて、男が苦しそうに荒い息を吐いていた。

 

「ひぃー、ひぃー、ひぃー」

 

「ちょっとアンタ!こっちを見なさいよ!」

 

「はっ!はぁ、はぁ、ち、違う…ぼぼぼぼ、僕じゃないよ」

 

「まだ何も言ってないでしょ!人妖討伐機関アンチレジストの戦闘員、木附(きづき)由羅よ!アンタがあの部屋の女性達を監禁していたことの調べは付いてるんだから。おとなしく降伏しなさい!」

 

「ひ、ひぃぃぃぃぃ…。ちちちち、ちがっ、ち、ちがぅう。ぼぼぼ、ぼく、ぼく、ぼくはぁ」

 

男は全身に汗をびっしょりかきながら、どもりの強い口調で必死に弁明していた。その姿は写真で見た通り大変醜いもので、でっぷりと太った体躯に無精髭が目立つ二重顎。眼鏡のレンズも曇って白くなっていた。肩までのびたぼさぼさの長髪はやたら量が多く、汗のために顔のあちこちには貼り付いていた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ…落ち着いて来た落ち着いて来た落ち着いて来た。も、もう、いきなり酷いじゃないか!ななな、なんで僕の家に、かかか勝手に、は、入ってくるんだよ!」

 

「キモオタさん!あなた何で女性を攫ったりしたの!?それにあんなに傷つけて」

 

珍しく由里が大きな声を出す。さっき見た光景がよほどショックだったのか、目に涙を浮かべ、握りしめられた拳は怒りに震えている。

 

「ぼぼぼ、僕だって、い、い、生きるためには仕方が、ななな、無いんだ。ききききき、君たち、アンチレジストだろ?ってことは、もう僕が賤妖だって、し、し、知ってるんだろ?」

 

「せん…?」

 

「よう…?」

 

2人の頭の上に、同時に?マークが浮かぶ。初めて耳にした言葉に、2人は顔を見合わせた。

 

「げ、下賎の賤に、妖怪の、よ、よ、妖だよ。ぼ、僕たちは、人妖の、お、お、落ちこぼれなんだ。人妖は、あ、あ、あいつらみたいに、全員が格好良くなんか、ないぞ!中には、ぼぼぼ、僕みたいに醜くて名前も無い出来損ないだっているんだ。あいつらは僕らを、め、め、召使いみたいに扱うか、それでもダメなら、すすすす、捨てられる。ぼ、僕がそうさ。僕は、り、り、涼っていう人妖に使われてたけど、す、捨てられたんだ」

 

「涼…確か以前隣の市の学校で校長先生をしていた人妖がそんな名前だったわね。レポートで読んだわ。悪いけど、アンタの生い立ちなんて興味無い。おとなしく捕まりなさい!」

 

由羅が前に出て男に近づく、しかし、男はバタバタと走ってもうひとつのボイラーまで逃げる。

 

「い、いやだ!ぼぼ、僕だって生きたいんだ!それに…そ、それに…」

 

「それに…なに…?」

 

由里も男に一歩歩み寄る。由羅とは違い、その目にはかすかに同情の色が見えるが、次の男の言葉で打ち砕かれることとなる。

 

「せ、せっかくこんなに可愛い、ししし、食料が、ふ、ふ、2人も来てくれたんだ。ぐふふふ…こ、このままおとなしく捕まるなんて……し、死んでも嫌だね!」

 

「キモオタさん…」

 

「お前……。由里、かまわないわ。こいつ少し痛めつけてやろうよ。捕まえるならその後でも出来るし」

 

「そそ、そんなに簡単に、い、い、いくかな。ぐふふ…み、見てよ…こ、これを」

 

男が正面を向くと、腰をぐいと前に突き出した。スラックスの上からでも分かるほど股間が大きく勃起している。

 

「さ、さっきから、ずずず、ずっとこのままなんだ。ぐふふ。な、なんて、いやらしい格好をしてるんだい?しかも、ふふ、2人とも凄く可愛いし…似てるから、ふ、双子かな?まとめて、まとめて、色々してあげるからねぇ」

 

にたぁと男がこれ以上無いくらいの下品な笑みを浮かべた。さすがの由里も顔がこわばるが、それより先に由羅の方から「ブチッ!」と音が聞こえ、男に突進して行った。

 

「お前ぇぇぇぇ!!!」

 

バキッ!ドガッ!ガッ!ガキィィィ!

 

「ぐびぃぃぃ!ぶふっ!!ぶっ!?ぼぎゅぅぅぅぅ!!」

 

頭への左回し蹴りから腹部へ右の前蹴り、下がった顎を膝で跳ね上げ、がら空きの腹へ後ろ蹴りを流れるように食らわせていった。ごろごろと男が地面を転がる。

 

「おぶっ!おぶぅぅ!、つ、強いぃ…」

 

「ふーん、報告通りちゃんとダメージあるじゃん?どう?今なら謝れば許してあげるけど?」

 

由羅はの目の前に近づき、腕を組んだ仁王立ちで見下しながら聞いた。男は由羅の顔と膝上まであるロングタイツに包まれたむっちりした太もも、レオタードとタイツの合間の肌を交互に見ながらにたぁと再び笑った。

 

「な、何よ?」

 

「も…もっと蹴ってくださぃぃぃ…」

 

男が言い終わると同時に再び由羅から「ブチィッ!」という音が聞こえ、男に見事なまでの右回し蹴りを食らわせてた。

 

「ひぎっ!!ひぎぃぃぃ!ぶぐぅ!」

 

「ほらほらほらぁ!!これで満足なの!!?」

 

ぶぎゃぁ!という大きな悲鳴を残し、男が吹っ飛ばされてボイラーにしたたかに背中を打ち付けた。そのままずるずると尻餅をつく。

 

「ほら…もっと蹴ってあげるからこっち来なさいよ!」

 

「ひ、ひぃぃぃ…」

 

男は這うようにして逃げ出すが、そこには由里の姿があった。

 

「キモオタさん…少し頭冷やした方がいいみたいですね」

 

ボイラー室の中に男の悲鳴がこだました。


「由里もかぁ…」

 

「うん…なんか、恥ずかしいかな…」

 

黒い絨毯に白い壁。どこかの会議室の用な部屋の一面は大きなモニターになっていた。2人はファーザーの指示通りそれぞれ控え室でオペレーターから手渡されたコスチュームに着替えるとこの部屋で合流し、お互いを見つめ合った。

基調としている色が由里がピンク、由羅がオレンジということを除けば全く同じデザインのコスチューム。レオタードのような身体にぴったりした服を基本にしながら、肩には羽根飾りのようなデザインが施され、同色の膝上のタイツを太ももの付け根からガーターベルトのようなもので繋いでいた。否応にも身体のラインが強調され、控えめな胸やキュウッとくびれた腹部の中心にある可愛いヘソ。むちむちの太ももを挑発的なまでに引き立てていた。2人の格好はさながら双子の魔法少女の様であった。

 

「噂には聞いてたけど、キワドいわねぇ。なんかアニメとかに出てきそうだし。まぁ蹴り技主体の私にとっては動きやすいけどさ」

 

「うん、私も袖が無いからパンチは出しやすいかな…。あぅ…でも恥ずかしい…」

 

「由里はプロポーションいいんだから自信持ちなって!まぁ双子の私も同じ体型だけどね~」

 

由羅はモニターの反射を鏡代わりにして思い思いにポーズをとっては満足そうに笑っている。由羅にとってこの格好はまんざらでもないらしい。

 

「由羅…顔がえっちな本見てるオジサンみたいになってるよ…」

 

「!?な、なんですってー!由里!あんた姉だからって調子に乗るんじゃないわよ!」

 

「ひゃあ!いらい(痛い)!いらいいらい!!」

 

由羅が由里のほっぺたをつねり、左右に引っ張る。由里が涙目になりながら手をパタパタさせていると、突然モニターが付いた。

 

「本当に仲がいいな?」

 

「「!!?? ファ、ファーザー!?」」

 

2人はあわてて敬礼をする。もちろん由里は涙目のまま。ファーザーの声には様々な種類があり、今回は抑揚が無いものの、よく通る若い男性の声だった。

「楽しんでいるところ悪いが、早速任務について説明させてもらう…」

 

話によると、2人の住んでいる町の外れにある廃工場付近で、最近女性の失踪事件が増えているとのことだった。若い女性が男に廃工場の中に連れ込まれたという目撃情報もあり、警察も調査に向かったがその警官も帰ってこなかった。人妖事件としてファーザーが情報を握り潰し、調査員のオペレーターを派遣しある程度調査をした上で、今回の2人の派遣に至ったという。しかも、オペレーターの調査によれば、今までの人妖とは容姿や波長が異なるという。

 

「今までの人妖は、男性タイプでも女性タイプでも、俗に言う容姿が端麗で社会活動もしており地位も上なケースが多かったが、今回のはやや違う。まぁ、見てもらった方が早い」

 

モニターに荒い画像だったが1枚の写真が写った。2人の顔が同時に引きつる。

 

「うぇー…」

 

「あぅ…キモオタさん…」

 

「由里…あんた意外と毒吐くわね…」

 

でっぷりと太った体躯にぼさぼさの頭髪、よれよれのポロシャツに汚れたジーンズの男性が、こそこそと廃工場に入って行く写真だった。確かに今までの人妖とは雰囲気が違った。

 

「あのー、コイツ本当に人妖なんですか?えと、その、男性タイプの人妖ってイケメンばかりだってデータを見たんですが」

 

「ふむ…確かに由羅の言う通り、今までの人妖にはそういうタイプが多かったが、今回の人妖は社会活動も一切していないらしい。しかも奇妙なことに、今回は人妖特有のバリヤーも検出されていない」

 

「…生身の人間と同じ耐久力ってことですか?」

 

「その通りだ由里。今までは対人妖グローブやレッグサポーターをしなければダメージを与えられなかったが、今回は大丈夫だろう」

 

「楽勝ってこと?なぁんだ、せっかく由里との初仕事だと思ったのに張り合いないなぁ。仮想エネミーの方がよっぽど強いんじゃない?」

 

「由羅…油断は禁物だよ~」

 

「その通りだ。もしものことがあったら身の安全を第一に考えてほしい。では、今夜23時に突入を開始する。手順は…」

 

 

 

 

 

「で、来てみたわけですが」

 

「あぅー、こんな格好してるところ近所の皆さんに見られないかなぁ…」

 

「だからチャッチャとやっつけて片付けちゃおうよ。それにね、由里」

 

「なに?」

 

「私達、同時に産まれて…まぁ由里の方が少し先だったけど、同時にアンチレジストにも入ってさ、やっと一緒に仕事ができるんだから、精一杯頑張ろうよ。いつまでも一緒だからね!由里姉さん!」

 

「う…うん!そうだね。忘れられない夜にしようね!」

 

2人は廃工場に向かって駆け出した。2人にとってはある意味忘れられない夜になるとも知らずに…。


廃墟のような空間に間隔を置いて響く肉と肉がぶつかる音。崩れ落ちそうな柱を縫う追うように俊敏に駆ける影が2つと、それを追う大柄な影が1つ。広場に吊るされた裸電球の下に3つの影がくると、それぞれのシルエットが浮かび上がった。

 

「グギィィィィィィィ!!!」

 

爬虫類と人間を融合させたような姿の大男。灰色の肌に太い尻尾、耳まで裂けた口からは先の割れた太い舌が、粘液にぬれて怪しい光を放っている。

 

「ギガァァァァァァァァ!!!」

 

「あーもう、うるさいわねぇ、ねぇ由里(ゆり)?そう思わない?」

 

「そ、そうだね、由羅(ゆら)。ちょっと…声大きいよね…」

 

「もうー、いつもハッキリしないんだから由里は!こんな奴ちゃっちゃとやっつけて早くシャワー浴びよ!」

 

「そ、そうだね由羅、じゃあ、やろうか?」

 

短い会話を交わす2人の少女。顔つきは幼く可愛らしい顔をしているが、会話を交わす間も怪物から目を離すことは無かった。由里と呼ばれた少女は薄いピンク色の、由羅と呼ばれた少女はオレンジ色のレオタードのような衣装を着ており、2人の可愛らしさを引き立てていた。

 

「しゅぅぅぅぅぅぅぅ…しゅぅぅぅぅぅぅぅ……しゅうっ!!」

 

怪物が2人をめがけて突進するが、2人は弾かれたように別々の方向へ走り出し、すぐに怪物の背後をとった。

 

「はぁぁぁぁぁ!!」

 

「ええええええい!」

 

ガッ!グギィッ!!

 

「グギヤァァァァ!!」

 

由羅の蹴りが怪物の首筋を強打し、由里の突きが脇腹をえぐった。流れるように由羅が飛び膝蹴りを背中に見舞い、怪物が倒れかかったところに前に回り込んだ由里がボディーブローを決めた。怒濤のような連携攻撃に、怪物が倒れ込む

 

「ご、ごめんなさい…大丈夫?」

 

「こら由里!何そんな奴に同情してんの!?とっととトドメを刺すわよ!」

 

由里のとぼけた言動に一瞬緊張感が消えた瞬間、空気を裂くような音が響いた。

 

ヒュッ!!ドグッ!!

 

「え?…う…ぐふっ!?あ…えぐぅぅ!!」

 

怪物の尻尾が独立した生き物のように動き、目にも留まらぬスピードで由羅の腹部にめり込んでいた。

 

「ゆ、由羅ぁぁ!」

 

「くっ…油断した…由里…次で決めて…たぶん、一撃しか持たないから…」

 

「由羅!ダメだって!」

 

「…ほら、何してんの?全然効かないんだけど?もう少しカンジるの頂戴よ」

 

「ぐるるるるるるる…」

 

あからさまに不機嫌になった怪物が由羅の前に立ちふさがる。由羅は強がった態度を取っているが、その手は明らかに震えていた。

 

「…ほ、ほら…少しはカンジさせてよね…」

 

「シュアッ!!」

 

グリィィィィ!!

 

「げっ!?げぇうぅぅぅぅ!!?」

 

怪物は手のひらを無理矢理由羅の腹にめり込ませると、力任せに握った。

 

グチィィィィィ!!

 

「ぐうっ!?うげぁぁぁぁぁ!!!」

 

強烈に内蔵を圧迫されたためか、ボタボタと由羅の口から胃液がこぼれ、怪物の腕にかかる。しかし由羅は自分の腹部にめり込んだその腕を掴むと、無理矢理笑みを浮かべた。

 

「あ…ああ…。や、やる…じゃない…。でも、あんたも…終わりよ…」

 

「グゥゥ…?グギィィィ!!??」

 

後ろから駆け出してきた由里が、怪物の首に強烈な一撃を放っていた。

 

「由羅に…由羅に酷いことしないで!」

 

怪物の身体が白く光りながら、粒子になって消えていく。同時に空間が歪み始め、無機質な広い空間に2人だけけが残っていた。がくりと由羅が由里に倒れかかる。

 

「由羅!由羅ぁぁ!」

 

「もう…何であんたは私がやられないと本気出せないのよ?訓練用の仮想エネミーだって結構キツいんだから…」

 

「フタリトモ、ゴ苦労ダッタナ」

 

突如、部屋の中に機械が喋るような声が響き、2人が直立不動の姿勢になる。

 

「は、はい!ありがとうございます。ファーザー」

 

由羅が空中に向かって返事をする。ファーザーという名前意外は全くと言っていいほど情報が無い人物。相当な権力者という意外は、正直性別すらも定かではない。

 

「マダ問題モ多々アルガ、フタリノ連携技ハカナリ有効ナ武器ニナル。実ハ新シイたいぷノ人妖が出現シタ。早急ニ討伐シテ欲シイ」

 

「了解しました!」

 

2人が同時に敬礼をする。2人にとっては初めての実戦で正直怖さもあるが、それ以上に今までの訓練の成果を試せると思うと自然と気持ちが昂ってくる。早く戦いたい。もともと好戦的な由羅はもとより、由里も同じ気持ちを味わっていた。

 

「期待シテイルゾフタリトモ。こすちゅーむハ用意シテオイタ。場所ハ…」

居酒屋のトイレから携帯で更新してます。


会社の飲み会中に次回の構想が固まりました。



レジスタンス 第二章
case:TWINS



ご期待下さい

ご機嫌いかがでしょうか?

number_55です。

レジスタンスシリーズの冒頭に当たるcase:AYA、何とか書き上げることが出来ました。

最後まで拙い文章でしたが、4話くらいからキャラクターがひとりでに動き出してくれて、書いている方も楽しめました。特にラストはブログ開設前に書いたプロットとは全く違う形となり、私自身驚いています(友香の登場などは全くの予定外でした)。

メインの綾には最初からかなりひどい目に遭わせてしまった挙句、ほとんど活躍らしい活躍をさせてあげられませんでしたが、まぁ腹パンチ小説においては腹パンチを受けることがある意味活躍なので我慢してもらいました。
個人的に思い入れの強いキャラクターですので、皆さんに気に入っていただければ嬉しいです。



さて、「レジスタンス」は結構前から私の頭の中に構想はあったのですが、説明しきれてない用語とかを少し解説していきたいと思います。


・人妖
「じんよう」と読みます。レジスタンスシリーズの核ですね。彼らにとって人間は養分です。苦痛や快感という人間の感情の変化を、直接触れることによって養分として吸収しています。人間を殴ったり性交したりすることは彼らにとって食事と同等です。
そして一定の養分が溜まると老廃物を排出します。彼らの分泌液や老廃物には人間を魅了する力があります(チャーム)。生きていくために備えた技ですね。
様々な種類が存在し、今後は違う種類の人妖も登場します。


・アンチレジスト
綾や友香たちの所属する人妖討伐機関。トップは「ファーザー」と呼ばれ人物。格闘に特化した戦闘員と、戦闘員をバックアップするオペレーターがいるが、構成員の横のつながりはほとんど無い。綾と友香はかなり珍しい例。



今後も読みきりをはさみながらレジスタンスシリーズを続けていこうと思います。今後ともよろしくお願いします。

涼の放出は数十秒続き、綾の髪や顔中、口内や上半身までもどろどろに染め上げていった。

「えぅ・・・ああぁ・・・はっ・・・はぁあ・・・」

「ううっ・・・く・・・。こんなに大量に出るとは・・・。どうですか?一番強力な特濃チャームの味は?たとえあなたでも、もう身体の制御が効かないはずだ」

「あ・・・あぅ・・・あ・・・」

綾はとても男性一人で放出したとは思えない量の白濁を顔で受け止めた後も、真っ白にコーティングされた舌を出しながら光を失った目で男を見上げ続けた。

「さぁ、口に溜まったものを飲みなさい」

「うぅん……ごくっ…ん…んふぅぅぅ」

「くくくく、素直で良いですよ。さぁ、これを舐めて綺麗にしなさい」

「はぁっ……はぁぁ、う……あぁ……」

涼は一歩前に出ると、放出したばかりだというのに硬度を保ったままの男根を突き出した。綾は左腕で腹部をかばうようにおさえながら、吸い寄せられるように涼の男根を咥えようとする。しかし、寸でのところで目にわずかに光が戻り、動きが止まる。

「だめ……友香……友香を……助けるまで……負けられない……」

「こいつ……ここまで強情とは…。まぁいい、なら死ぬ寸前まで痛めつけてやる」

涼は新しい縄跳びを取り出すと、元の体制に綾を縛り直した。

「まだまだ…これからですよ。組織の場所を喋りたくなればいつでもどうぞ」

喋れば、楽になれる。このままでは殺されるかもしれない。恐怖と苦痛と悔しさで目からは自然と涙があふれる。もう喋ってしまおうか。組織の本部と訓練場の場所を喋り、この場を凌いで家族の元へ返ろうか。なぜ自分が顔も知らないファーザーの為にここまでしなければならないのか?
一瞬のうちに様々な考えが浮かんでは消えていったが、綾は決して喋らなかった。頭の片隅に常に浮かぶ友香の顔。一緒に頑張ってきた友香がこの男に弄ばれたかもしれないのだ。絶対に敵を討ちたい、いや、討てなくても屈服だけは絶対したくない。

「……絶対に…お前なんかに…屈しないから……」

「………すばらしい。死ぬまでいたぶってあげますよ」

涼の拳がギチギチと音を立てるほど強く握られ、弓を引き絞るような動作で綾の腹部に狙いを定める。

「次は……強力ですよ。これで……ぐぅっ!!??」

急に涼の顔つきが変わり、握られた拳がゆっくりと開かれていく。一瞬のことに、綾は何が起こったか分からなかった。涼がゆっくりと綾に背を向ける。後ろには綾の親友、友香が立っていた。

「ゆ…友香……なぜここに?わ…私に何をした…?」

「綾をひどい目に合わせたからよ。目を覚ましたら先生が居なかったから、探したらここから声が聞こえて…。よくも綾に酷いことを!」

涼の背中には調理室にあった包丁が突き刺さっていた。グレーのスーツがみるみる赤く染まっていく。涼は包丁をつかみ引き抜くとその先をまじまじと見つめた。

「馬鹿な…私達人妖の身体は刃物ごときで傷つけられるはずが……。!?、こ、これは、対人妖グローブか…」

「あなたの身体にグローブを当てて、その上から刺したわ。実戦では一撃も当てられなかったけど、やっと役に立った…」

「こんな、こんなもの…まさか本物か?ファーザーめ、実力の劣る友香には本物を渡したな…」

涼の手から包丁が落ち、大きな音を立ててコンクリートの床に落ちた。

「綾ならともかく、お前みたいな出来損ないが…一番強力なチャームに打ち勝っただと?おとなしく私のチャームを求めるだけの存在になっていればいいものを…」

「友香…本当に友香なの?」

「綾、待ってて。すぐに助けるから」

友香の中で人妖の強力なチャームの力よりも、綾との友情の力の方が勝ったのだ。もう少しで涼の言う通り思考もすべて停止し、人妖の体液のみを求める存在にまで堕ちるところだったが、綾の苦しむ声が聞こえ、邪悪な力に打ち勝つことが出来た。
涼は先ほどまでの余裕の表情が消え、憎悪の表情でゆっくりと友香に近づく。

「出来損ない出来損ない出来損ない…お前のような落ちこぼれに私が負けるはずが無い…せめてお前だけでもあの世に送ってやる!」

「たとえ出来損ないだって、ちゃんと生きて存在しているのよ!あなたこそ忘れないでよ、グローブはもうひとつあるんだから!」

「な、なんだと!?ぐがぁぁぁぁ!!」

友香は先にグローブが刺さっている包丁をもう1本取り出し、涼に突進するとそれを左胸に突き刺した。包丁は滑るように涼の身体に吸い込まれていった。

「が……馬鹿…馬鹿な…。私が…私がこんな奴らに…」

涼はよろよろと友香の脇をすりぬけ、扉に向かって歩き出す。友香はかまわず綾に駆け寄り、拘束している縄跳びを床に落ちていた包丁で切った。綾は友香に崩れるように倒れるが、しっかりと友香を抱きしめた。

「友香…ありがとう…。怖かった…。それに、友香も無事で良かった…」

2人の瞳からは自然と涙があふれ、友香も綾の頭をなでながらうなずいたところで、背後から涼の声が聞こえた。

「お、お前ら2人とも、覚えておけ…。ゴボッ…。これくらいでは私は死なんぞ…。近いうちに絶対に殺してやる。散々痛めつけてからな…。首を洗っておけ…」

涼はそれだけ言うと扉の前から消えた。あわてて友香が追いかけるが、体育館の中には既に涼の姿はなかった。床に落ちた血の跡を追うも、明らかに人が通れるはずも無い排気口の前で消えていた。

この後、綾は組織の息がかかった病院に入院するも命に別状は無く、1週間ほどで退院できた。その間も毎日のように友香が見舞いに訪れてくれた。1週間後に綾が学校を訪れると、涼は海外の教育研究機関に派遣されたことになっており、所々で悔しがっている女生徒の姿が見受けられた。数日後に赴任して来た後任の校長はどう見ても人妖には見えない平凡そうな年配の男で、女生徒はますます悔しがっていた。
しかし、綾と友香はどこかで涼が生きていることを確信している。もちろん海外になど行っておらず、自分たちの近くに潜んでいることを。「絶対に殺してやる」という涼の吐き出すような呪詛の言葉が2人の間から消えることは無かった。



レジスタンス 第一章  「case:AYA」


「ん……んん……、こ、ここは…?」

 綾が目を覚ますと、そこは所狭しと様々な用具が置かれた体育倉庫だった。まだはっきりしない頭で今までのことを思い出す。人妖捜査の命を受けて自分の母校に赴き、校長が人妖だったことをつかんだまでは良かったが、その後の格闘で圧倒的な力の差を見せつけられ、失神してしまった。

「やっとお目醒めですか?待ちくたびれましたよ」

 目の前にはこの学校の校長、人妖の涼が積み上げられた白いマットの上に座っていた。綾が目を覚ましたのを確認すると、ゆっくりとした動作でマットから降り、近づいてくる。

「あんた…ずっと待ってたの?こんなことして……え?…な、何これ?」

 意識がはっきりすると同時に、綾は自分の置かれている状態に気がついた。綾の身体は体育倉庫の壁に背中をつけられ、両腕は頭の上で交差させた体勢で縄跳びで固定されていた。足首にもそれぞれ縄跳びがきつく結ばれ、壁のむき出しの鉄骨と結ばれていた。
 否応無しに無防備に身体を開いた状態になり、ショート丈のセーラー服はもう少しで胸が見えそうなくらいまくれ上がっていた。

「こ…これは…?」

「やっと自分の状態に気付きましたか。ふふふ…いい格好ですよ」

「うそ…これじゃ…抵抗できない…」

「あなたが苦しむ顔があまりにもそそるモノでしたから、もう少し苦しめてあげたくなったのですよ。さっきまではまだ自由に抵抗できましたが、これからはどうでしょうかね…せいぜい楽しませてくださいよ…」

 綾の表情から血の気が引いてゆく。男の言う通り、先ほどまでは自由に抵抗でき、いざとなれば逃げ出すことも出来た。しかし今はわずかに身体をひねるくらいしか出来ないほどきつく壁に固定され、たとえナイフで刺されそうになっても逃げ出すことが出来ない状態になっている。先ほどまでの苦痛に対する恐怖ではなく、命の危険に対する恐怖が綾を襲っていた。

「さて、それじゃあ早速始めましょうか。痛めつけるだけじゃ芸がないので…そうですね、尋問でもしましょうか。アンチレジストの本部や訓練場の場所でも喋っていただけますか?そうすればすぐに解放しますが…」

「い…言う訳ないでしょ…こんなことしても無駄ごぼぉおっ!!?」

 綾が言い終わらないうちに、涼の拳が綾の腹部にめり込んでいた。

「そうそう、言わないでもらった方がこちらも楽しめますよ。頑張ってくださいね」

ズブッ!ドスッ!ボグッ!ズンッ!!

「がっ!?ごほっ!うぐっ!ぐああっ!!…ああぁ…」

「どうですか?背中を壁につけられているせいで威力がそのまま伝わるでしょう?こんなことも出来るんですよ?」

ズッ!!グリィィィ!!

「ぐぅっ!?おぐああぁぁぁ!!……うぐ…うぇぇぇぇ………」

 綾の口から透明な胃液がこぼれ、びちゃびちゃと床に落ちる。

「くくくく…壁と拳の間に胃を挟んて捻り上げて差し上げましたが…。大きな胸の割にウエストが細いのでやりやすかったですよ。効果は抜群というとこですか」

「あ……うぇ……苦しぃ……」

「これはどうですか?」

ズギュウゥッ!!

「ぐ!?ぐあぁぁぁぁぁ!!!」

「膝です。拳とは比にならない威力だと思いますが」

「や…やめ……赤ちゃん……出来なくなっちゃぅぅ……」

 綾は口の端から逆流してきた涎をこぼしながら、目に涙を浮かべる。凄まじい攻撃にさすがの綾も心が折れそうになるが、強い使命感と友香を助けたいという気持ちがぎりぎりで屈服しそうな心を支えていた

「ふふふ…その表情ですよ…私の求めていたものは…さぁ、もっと苦しみなさい」

ドスッ!ズギュッ!!ドグッ!ズブゥッ!!

「ごぶっ!!ぐはぁぁっ!!あぐっ!うぐうっ!!」

「うぅぅぅぅ……たまらん……一回出すぞ……」

 涼は文字通り人間離れした力で綾の腕を拘束していた縄跳びを引きちぎり、目の前にひざまづかせた。そしておもむろにスラックスのファスナーを下ろすと一般男性の2周りほど大きい男根を取り出し、綾の顔を目がけ勢いよくしごきたてた。体勢的に真正面からそれを直視してしまった綾は、一瞬で何が起こるか、自分が何をされようとしているのかを理解する。

「えっ…?うそ…いや、いやぁぁ」

「くぅぅ…そそりますよ…その顔…。ほら、受け止めなさいっ!」

「あぶっ!?なっ…ああっ!?」

 涼は何のためらいも無く綾の顔に白い体液を浴びせかけた。綾は本能的に嫌悪感を感じ顔を逸らそうとするが、涼は一瞬早く綾の頭を掴み正面を向かせたまま固定すると、異常なほど大量な白濁を浴びせ続けた。

「ほら、まだ止まらないですよ。ちゃんと舌を出してたっぷりと受け止めなさい」

「あ…あうっ…ぅぁ……えぅ……まら…れてる…」

 度重なったダメージで朦朧とした意識の中、綾は素直に舌を出して恍惚とした上目遣いで涼の射精に似た行為を受け止めた。

 数時間後。暗い体育館のほぼ中央で両膝を突きうずくまる綾
と、それを見下す涼の姿があった。

「あ…、あぅ……ああぁぁぁ……」

「ふぅ…よく頑張りましたね。これだけ痛めつけられても失神しなかった女性は初めてですよ。普段ならものの数分で泣きながら弱音を吐くものですが」

 綾は苦しげな表情ながらも、強さを失っていない瞳でにらみ返した。

「当たり前でしょ…げほっ…。お前みたいな最低な奴に、屈するわけないじゃない…」

「くくくく…いいですね。その強気な表情。いつ屈服するかと思うとゾクゾクしますよ」

「生憎アンチレジストにはそんなヤワな戦闘員はいないわよ。皆、どんな攻撃だって耐えるんだから」

「ほぅ…綾ちゃんの同じクラスの友香ちゃんをご存知ですか?あなたと同じ戦闘員だったはずですが、すぐに屈服しましたがね」

「なっ!?ゆ、友香をどうしたの?」

 綾と友香は、横のつながりの殆どないアンチレジストの中では珍しく、友人同士で組織に入隊した同期だった。お互いに切磋琢磨したが、組織で友香は持って生まれた綾の才能の陰に隠れて目立たない存在になっていた。しかし、そのことに卑屈になることなく努力を続ける有香を綾は尊敬し、友香も綾の才能を素直に認めていた。
 しかし、1週間ほど前に人妖捜査に向かったきり、行方不明になっていた。当然クラスメイト達は騒然となったが、ファーザーの手引きで急病のため入院したことになっている。このような事態を考慮し、戦闘員には一人暮らしを義務づけられており家族との連絡も制限されていた。
 失踪した友香を発見することも綾の任務だった。そして十中八九、友香は人妖討伐に失敗し連れ去られたものと考え、綾は今回の任務に自ら志願したのだった。

「あなたと同じように私を捜していたもので、自己紹介をしたらいきなり攻撃してきましてね。返り討ちにしたまでですよ。じっくりと時間をかけてね。もっとも、綾ちゃんと違いすぐに弱音を吐きましたが」

「友香は…友香はそんなことしない!」

「お友達を信じたい気持ちはわかりますが、事実ですよ。心が折れたと同時にチャームを使ったので、今ではすっかり素直になりましたが」

「チャーム…?」

「私たち人妖の分泌する体液には人間を魅了する力があるのですよ。体液によってその効果の強さは違いますがね。まずはあなた達人間が唾液と呼んでいるものを使い、最後には…くくくく、まぁそれは自分で体験してのお楽しみとしましょうか」

「どこまで下衆なのあなた達は!?そんな卑怯な手を使って友香を…」

「卑怯とは人聞きの悪い。私は友香ちゃんにキスをしただけですよ。今では自分から望んで私の男根をしゃぶってきますがね」

「!!? このぉぉぉぉぉぉ!!」

 綾は怒りに我を忘れ、猛然と涼に突進した。近づきながら突きを繰り出すも悠然と涼にかわされ、腕を捕まえられたまま抱きかかえられる格好になった。

「なっ…この…離せ…んむぅぅぅ!?」

 男は強引に綾の唇を奪った。唾液を流し込もうとするが、綾が咄嗟に口を閉じ、歯を食いしばってそれを拒む。先ほど聞かされたチャームを自分もされるのかと思うと全身に鳥肌が立つほどの嫌悪感を覚える。

「んんん、なかなか強情ですね。おとなしく口を開けなさい」

ズドッ!

「ぐはっ!!んぅ!?んんんんんん!!」

 涼は押さえつけていない方の手で綾の腹部を殴り、えずいて口が開いた瞬間に強引に舌を侵入させた。綾のファーストキスは奪われた。

「んむっ!?んんん!!んんんんぅ…むふぅ…」

 男の唾液が流し込まれると、綾の頭は次第に痺れるような感覚に教われ、徐々に熱くなっていった。目はとろんと蕩け。頬はだんだんに桜色に染まっていく。

「ん……ん……んあうっ!?」

 不意に涼は綾の豊満な乳房を揉みしだいた。右腕をつかまれ、左の乳房をこね回され、唇をすわれ続ける。はじめて体験する感覚の連続に綾の頭は混乱し、何も考えられなくなる。

「んふぅぅぅっ……あ…あぅぅん。だめ、そこ…んむっ…んん…ぷはっ…はぁ…はぁ…」

 涼は綾の唇を解放すると、月の光に照らされた銀色の橋が2人の唇の間に架かった。

「さすがは私の見込んだ女だ。友香ちゃんの何倍も楽しめそうですよ。さて、場所を変えましょうか?」

ズキュッ!!グリィィッ!!!

「ごぶっ!!ぐぇぁあああ!!………ああぁぁ……」

 涼は綾の腹部に拳を埋め、そのまま無理矢理鳩尾まで拳を突き上げた。強烈な衝撃に綾はこの日初めて気を失い、涼の身体に倒れこんだ。

「今日は最高の夜になりそうですよ。そう簡単に落ちられても面白くないので、もう少し痛めつけてあげましょう」

 ひょいと肩に綾を担ぎ上げ、涼は体育倉庫に向かって歩き出した。

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