「くっ……!」

 

このままではまずい。シオンはようやく痛みと残像の収まった目で辺りを見回し、鈍痛が残る腹を押さえながらひとまず駐車場を離れようとする。足下がアスファルトから石畳へ変わり、研究棟の方向へ移動する。幸い野球部員3人はターゲットをシオンに定めたらしく、冷子を襲うことは無く無表情でシオンを追いかけていた。

 

「よかった、3人とも私を追って来てる。このままこっちへ来て」

 

鍛えられた野球部員3人は俊足を生かし、シオンとの差をぐんぐん縮める。研究棟前の広場の前には中央広場に比べると小振りではあるが同じようなデザインの噴水があり、シオンは噴水を背にして3人と対峙する。

 

「はは…日本のことわざで言えば背水の陣ってやつですかね。でも、先ほどは不意をつかれましたけど、今度は本当におとなしくしてもらいます!」

 

シオンの声は相変わらず3人には届いていないようだった。しきりにぶつぶつとうわ言を呟きながら、シオンに攻撃をしようとじりじりと近づいてくる。

 

「この3人、明らかに様子がおかしいですね…。人妖だったら何らかのコンタクトをとってくるはずですが、私の声も聞こえてないみたいですし…。もしかして、誰かに操られてる?」

 

シオンが考えを巡らせていると、3人はそれぞれ雄叫びをあげながらシオンに襲いかかってきた。しかし、3人同時の攻撃とはいえ、単調でストレートな攻撃はシオンに軽々と捌かれてしまう。

 

「さっきのようには…いきません!」

 

「ぐがぁぁぁぁ!」

 

シオンのすらりと伸びた足から放たれた回し蹴りはそのまま眼鏡の脇腹にヒットし、よろめいた所へ膝蹴りを追撃する。眼鏡はうめき声を上げて倒れ、同時に後ろから羽交い締めにしようと近づいたひげ面の腹へ後ろ蹴りを放った。

 

「ぐぼぉおおおっ!!」

 

シオンの履いている靴のヒールが根元までひげ面の鳩尾に吸い込まれ、前方に倒れ込む勢いを殺さずに空気投げを放つ。ひげ面はゆっくりしたモーションで前方に一回転し、背中から石畳へ落下した。

 

「はぁ…はぁ…残るは、あなただけですよ。無駄な抵抗はせずに、おとなしくしていただければ、危害は加えません」

 

さすがのシオンも全力疾走後の3人同時の相手に幾分息が上がっているが、それでも残りの1人を倒すことくらいは雑作も無いことだった。極力生徒に危害を加えたくないシオンは説得を試みるものの、やはりその声は届くことは無かった。

 

「ああああぁ…会長ぉ……俺……こんなに……会長が好きなのに……なんで分かってくれないんだぁ………俺のものにしてぇ……してぇよぉ……」

 

「くっ……だ、ダメですか……仕方ないけどここは…」

 

シオンが意を決して構えるが、同時にシオンの真後ろ、噴水の影から柔らかい声が響いた。

 

「あらあら…まったく…情けないったらないわねぇ……」

 

そこにいたのは、シオンが先ほど車に隠れるように頼んだ篠崎冷子だった。ゆっくりとした動作で噴水を半周周り、シオンに数メートルの距離まで近づく。

 

「え…?し、篠崎先生!?」

 

「まったく…鍛えてるからあなた1人くらいどうにでもなると思ったんだけど、てんで使えないのね。それともあなたが強すぎるのかしら?」

 

「うそ…本当に篠崎先生?え…なんで?この人たちに何をしたんですか…?」

 

「簡単よ。脳の大脳新皮質の働きを鈍くする薬を作って注射しただけ。この子達があまりにもあなたのことが好きみたいだったから、邪魔な理性を無くして素直にしてあげただけよ。うふふ…」

 

目の前に居る冷子の信じられない言葉に、シオンは酷く混乱した。薬?注射?理性を無くす?何を言ってるのか分からない。なぜ篠崎先生がこんな真似を?中央広場で言われた「悪ふざけ」にしては度が過ぎている。

 

「あまりにも使えないからこんな玩具まで使って手助けしてあげたのに、結局逃げられるしね」

 

冷子はそういうとポケットからレーザーポインターを取り出し、噴水の中へ投げ入れた。プレゼンテーションの時に指し棒の変わりに使うものだが、その光線は強力で人体の網膜に多大な影響を及ぼし、最悪失明に至るほどの威力があり一時期社会問題になったほどだ。先ほど急にシオンの目を襲った激痛は、おそらく車の中から冷子がこれを使ったためだろう。

 

「……篠崎先生…あなた…本当に篠崎先生ですか…?」

 

信じたくないという気持ちがシオンの唇を震わせる。しかし、冷子の口から出た言葉はシオンに残酷な現実を突きつけつものだった。

 

「嫌だわ、名前を忘れちゃったの?篠崎冷子よ。冷たい子供で冷子。人妖は冷たさを感じる名前を付けることが決まりなの」

 

シオンの顔が絶望に染まる。疑惑が確信へ。一般市民が人妖の存在を知るわけが無い。冷子が人妖であることはこれで確定した。しかし、オペレーターは確かに男性型の人妖と言っていなかったか?それに中央公園でシオンと冷子が会話しているときも、オペレーターからは何の連絡も無かった。

 

「うふふ…こんなにのんびり会話をしていていいのかしら?そこの男の子があなたに告白したいらしいわよ?」

 

「えっ?なっ!?」

 

シオンが振り向く一瞬前に、帽子はシオンを羽交い締めにしていた。一瞬だけ顔が見えたが、焦点の合っていない目と、はぁはぁと荒い息を吐き続ける口からは絶えず涎が垂れていた。

 

「あああああ…会長ぉぉぉぉぉ……好きだぁぁぁ……」

 

「いやっ…!ちょ……離して下さ……んはぁっ!!」

 

帽子がシオンの豊満な胸をデタラメに揉みし抱く。必死に身体をよじって抵抗するが、不利な体勢で力任せに抱きつかれていることと、基礎的な筋力の差でなかなか振りほどくことができない。

その間も帽子はシオンをがっしりと抱きすくめながらも、乱暴に胸をこね回すのをやめず、さらには髪の毛の香りを嗅いだり首筋を舐め回したりと欲望の限りを尽くした。

 

「やらぁっ…!ほ、ほんとうにやめ…あうぅっ……離して…!!」

 

「あらあら、若いっていいわねぇ…ずいぶん積極的でストレートな愛情表現だこと。でもあなた、全然美しくないわ。愛の表現はもっと美しくしなきゃダメよ」

 

一瞬ナイフのように風を切る音が聞こえ、シオンの右頬を何かがかすめたかと思うと、無我夢中でシオンの首筋を舐め回していた帽子の身体が猛スピードで後方に吹っ飛んでいた。

 

「え…?あっ……何、今の…?」

 

「うふふ、見えなかったかしら?あまりにも見るに耐えないものだから消えてもらったの」

 

シオンが後方を振り返ると、帽子は鼻から血を流しながらビクビクと小刻みに痙攣していた。目にも留まらない何かが冷子から放たれ、一瞬で帽子の顔面にヒットしたのだろう。しかし次の瞬間、再び風を切る音とともにシオンの腹部を中心に激痛が走った。

 

ヒュッ……ズギュウッ!!

 

「あぅっ……ぐっ!?げぶうぅぅぅ!!」

 

「こんな風にね…少し強すぎたかしら?」

 

冷子の両手は腰に当てられたまま微動だにしていない。しかもシオンとの距離は2メートルほどあるので手の届きようが無いのだが、シオンの下腹部のあたりにははっきりと拳の形が残り、その奥にあるシオンの小さい胃は無惨に潰されていた。

 

「ぐむっ!!…ううぅ……」

 

必死に両手で口を押さえ身体の中から逆流してくるものを堪えるが、再び独特の空気音を聞いたときには既に攻撃が終わっていた。

 

ヒュヒュッ……ズギュッ!グチュウッ!!

 

「!!??ぐふっ!?ぐぇあぁぁぁ!!!」

 

鳩尾と臍、人体急所である正中線への同時攻撃。あまりの攻撃にシオンはたまらず堪えていた逆流を吐き出し、透明な胃液が勢い良く飛び出した。

 

「がふっ!?……あ…あうぅ……」

 

「あらあら…あなたみたいな可愛いコでも嘔吐したりするのねぇ…。でも素敵よ。その苦しんでる顔は何物にも代え難く美しいわ…」

 

冷子は両方の手のひらを自分の頬に当て、両腕で腹をかばいながらも倒れずにいるシオンをうっとりした表情で見つめる。表情こそ穏やかなものの、その目は既に瞳孔が縦に裂け、冷酷な赤い光を放つ人妖のものに変わっていた。

早めに帰って続きを更新しようと思ったらまた急な接待が…。また午前様確定です。

トイレからの更新多いな笑

相互リンクしていただいてるKさんも同じ内容を書いていましたが、私の文章は、下世話な話「使えるのか?」ということが最近気になってます。

それぞれのキャラは個人的にはみんな大好きなのですが、他の人から見たらどうなのかと。
また、攻め描写は単調ではないかとか、もっと激しく(たとえばキャラが絶命するほど)攻めた方がいいのかとか、ストーリー部分が長すぎないかとか。


ほとんど初めてで手探りのもの書き作業は考えることが多いです。

まぁそれが楽しいんですけどね

心臓が早鐘のように打ち、 全身の血液がはげしく身体を巡る。もう少しで職員用駐車場が見えるが、冷子の悲鳴は断続的に続いていた。

 

「お願い…間に合って…」

 

シオンが駐車場に到着する。肩で息をしながら辺りを見回すと、奥の方にもつれ合うような人影が数人見えた。駆け寄ると、冷子の赤いアルファ・ロメオの前で、3人の男子生徒に詰め寄られている冷子の姿があった。

 

 

「ちょっと…何なのあなな達は?やめ…やめなさい!」

 

「篠崎先生!大丈夫ですか!?」

 

「き、如月さん!?あなた、なんでここに?」

 

「説明は後です!それより…」

 

3人の男子生徒はアナスタシアの野球部のユニフォームを着ており、2人は坊主頭で1人は帽子をかぶっていた。シオンも名前こそ知らないものの、壮行会や生徒会の視察で何度か見たことのある顔だった。しかし、その顔は酷くうつろな顔をしており、3人ともぶつぶつとうわ言のようなことを呟いていた。

 

「あなた達、何やってるんですか?もうとっくに部活も終わっているでしょう?早く帰宅してください」

 

シオンが静かに男子学生達に呼びかけるものの、その声は全く耳に入っていない様子だった。

 

「あぁ………会長だぁ………」

 

「やべぇ…………マジで………可愛い………」

 

「………すげぇ……なんだ……あの格好………」

 

それぞれひげ面だったり眼鏡をかけていたり帽子をかぶっていたりと特徴はあったが、3人とも同じような表情でじりじりとシオン達に近づいて来た。異様な雰囲気を察し、シオンが冷子に声をかける。

 

「こ、これは一体…男性型の人妖って、まさかこの3人のこと…?篠崎先生はすぐにこの場を離れてください。この場は私がなんとかしますので。あと、このことは内密にしてください」

 

「な、何を言っているの!?如月さんを置いて行くなんて、そんなことできるわけ無いでしょう!私も説得してみる!」

 

2人がやり取りをしている間に、帽子をかぶった生徒がいきなり奇声を上げて2人に突進して来た。シオンが冷子を突き飛ばし、男子学生が振り下ろした右腕の手首を両手で掴んで受け止める。

 

「がぁぁ……がぁぁぁ……」

 

「くっ……凄い力……一体…何があったんですか…?」

 

「き、如月さん!?」

 

思わぬ事態に冷子が声をかけるが、その声に反応し、残りの眼鏡とひげ面が冷子の方向に向きを変えた。元々厳しいトレーニングを積んで鍛えている野球部員相手では、おそらく冷子が逃げたところで追いつかれて襲われてしまうだろう。

 

「先生…早く…車の中に入ってください!私は…大丈夫ですから…」

 

ギリギリとシオンの腕が力で圧されはじめる。白い手袋が悲鳴を上げ、ぎちぎちと嫌な音が鳴り始める。

 

「先生…早く!」

 

その声に冷子は自分の車へ駆け出し、中に入ってドアをロックした。それを見届けるとシオンは腕の力を抜くと同時に足払いをかけて帽子を転倒させた。

 

「がぎゃあぁぁぁ!!」

 

帽子にとっては一瞬の出来事で、急に目の前からシオンの姿が消え、勢い余って前方につんのめった所に足払いをかけられて顔面をしたたかに地面に打ち付けた。その悲鳴を聞いて、残りの2人もシオンに方向に向きを変えた。

 

「よし、このままこっちに来て。可哀想だけど、しばらく眠ってもらいます」

 

シオンが白手袋をはめた拳をパシッと合わせ、身構える。1対3と圧倒的に不利な状況だが、専門的な訓練を受けているシオンと、鍛えてはいるが戦闘には素人の野球部員ではまだ自分に分があると思った。

 

「しぃぃぃぃぃっ!!」

 

「うおぉぉぉぉぉぉ!!」

 

眼鏡とひげ面が同時に駆け寄る。シオンに対し突きや蹴りを繰り出してくるが、やはり素人の動き。鮮やかにシオンに捌かれてしまう。

 

「くっ…やあっ!」

 

眼鏡がシオンの顔面に向けて拳を繰り出すが、シオンはそれを左手で受け流すと右手で顎を押しながら、右足で眼鏡の右足を後ろに払う。柔道の大外刈りのような技をかけられ、眼鏡は悲鳴を上げながら後頭部を地面に打ち付けた。

 

「おおおおお!!」

 

ひげ面もシオンの腹をめがけ膝蹴りを繰り出すが、バックステップでそれをかわすと逆にひげ面の腹に膝蹴りを見舞った。

 

「はぁっ!」

 

「ぐぶげぇぇぇぇぇ!!」

 

一撃を見舞うとすぐに離れる。相手が人妖の可能性もあるが、生徒である以上深手は負わせたくない。なんとか昏倒させてアンチレジストに3人を保護してもらうのが一番だろうとシオンは考えた。

 

「あなた達、何があったかは知りませんけど、もうすぐ私の仲間が来てくれるはずですからおとなしくしてください。あなた達を傷つけたくはありません」

 

ひげ面はわずかに苦しそうな表情を浮かべているが倒れることは無く、先に倒した2人もよろよろと立ち上がる。3人はシオンの呼びかけには反応を見せず、再び何事かを呟きながらシオンに近づき始めた。

 

「お願い、あなた達とは戦いたくないの!おとなしく…」


「会長ぉ…やべぇ……こんなに近くで見れるなんて……」


「やっぱ……すげぇ身体してんなぁ………ヤリてぇ……」

 

「あああ……犯してぇ……」

 

見れば、3人の股間部分は既に大きく隆起しており、うつろな視線はシオンの身体を舐めるように見ていた。何があったかは知らないが、獣のように欲望をむき出しにしてシオンに近づく3人に改めて身の危険を感じた。

 

「な…何言ってるんですか…?申し訳ないけど、本気で気絶させて…」

 

3人が同時に駆け寄る。帽子とひげ面が真っ先に襲ってくる。シオンはすぐに身構え、攻撃を受け流そうとするが、2人が攻撃する一瞬早く、シオンの視界が真っ赤に染まった。

 

「!!??…やっ……ああっ!?何…これ!?」

 

一瞬のことで何が起こったか分からずシオンは慌てて両手で目を押さえるが、すぐに激しい痛みがシオンを遅い、目を開けていられなくなった。赤色の残像がまだまぶたの裏で明滅する。獣のような声と衝撃がシオンに届いたのはその直後だった。

 

「がぁぁぁぁ!!」

 

「おおおおおおお!!」

 

ズギュッ!!

 

ドムゥッ!!!

 

「あ……かはっ……うぅあぁぁぁ!!」

 

両手で目を押さえ、がら空きになっているシオンの腹部に左右から帽子とひげ面の膝がめり込んだ。力任せの蹴りだったが、それは正確にシオンの下腹部と鳩尾を襲い、凄まじい苦痛がシオンを襲った。

 

「あ…ぐううっ…」

 

視界はなんとか見えるようになり始めたが、まだどちらが前後かも分からない。よろけながら向きを変え、この場を離れようとするが、シオンが向きを変えた先は眼鏡の正面だった。

 

「しぃぃぃぃ!!」

 

ズムゥッ!!

 

「ぐふぅぅっ!?あ…あぐ……」

 

眼鏡のボディブローがシオンのむき出しの腹にクリーンヒットし、シオンの美しい金髪が揺れる。一瞬目の前が暗くなるが、直後に背中に蹴りを受け前のめりに地面に倒れる。

 

「あ…きゃあぁぁぁ!」

 

アスファルトの上に倒れ込み、肘まである白手袋の数カ所が破れる。やっと視界が戻り、倒れたままの姿勢で振り返ると3人はすぐ後ろまで近づいて来ていた。

 

「はぁ…はぁ……やべぇ……犯してぇ……」

 

「ああぁ……や……やっちまうかぁ……」

 

「鎮めてくれよぉ……会長ぉ……」

 

シオンの顔に初めて恐怖の色が浮かんだ。

「そこにいるのは誰かしら!?」

 

いきなり背後から声をかけられ、シオンが30?ほど飛び上がる。

 

「は、はひっ!?あ、あの…私は…あ…篠崎先生?」

 

「あら?あなた如月さん?あなたこんな時間に何をしているの?」

 

声をかけて来たのは、アナスタシアの保健室勤務の教師、篠崎冷子だった。端正で知的な顔立ちとスレンダーな身体をフォーマルスーツに包み、コツコツとハイヒールを鳴らして近づいてくる。

保健室と言ってもアナスタシアのそれは小さめの病院と言っても過言ではない設備と広さを持ち、勤務している彼女は医師免許も取得している、その気になれば手術すらもこなせる正真正銘の医師であった。

 

「門限はとっくに過ぎてるわよ。それに…あなた…ハロウィンはまだ先よ…?」

 

冷子はあきれたようにシオンの格好を見る。いくら夏とはいえ、深夜に露出度の高いメイド服に身を包み門限を破って噴水に腰をかけていたシオンの状況は説明のしようがない。

 

「最近女生徒の失踪が続いているのは生徒会長のあなたの耳にも入っているでしょう?私が言うのもはばかられるけど、おそらく性的な暴行目的の犯行だと思うの。そんな格好は襲ってくれと言っているようなものじゃないかしら?」

 

冷子は眼鏡の奥から知的な視線をシオンに向けている。一部も隙のなく背筋をピンと伸ばした姿勢からは自信と気品があふれていた。それに加え、まだ30歳を過ぎたばかりの年齢にも関わらず冷子は大人の魅力にあふれ、男子生徒のファンもかなり多かった。しかし、その生真面目で近寄りがたい雰囲気から直接行動に移す男性は少なかったと聞いている。また、冷子自身はそういう色恋沙汰にはてんで興味が無く、仮に行動に移したとしても適当にはぐらかされてしまい、いつしか冷子に男女関係に関する話題は御法度という噂が出たほどだった。

 

「同じ女性として忠告しておくわ。あなた、自分では知らないかもしれないけど、学校中に凄い数のファンがいるのよ?あなたがそんな格好でうろついていたら理性を保てなくなる男子生徒や教師がいてもおかしくないわ。それとも、見せびらかしたいのかしら?」

 

「い、いえ。そんなつもりは…」

 

なんだろう。今日の篠崎先生はいたくフランクだなとシオンは思った。


「 男子生徒は元より、教師ですらあなたで自分を慰めていることを知っているかしら?私だってそれなりに自分に自信はあるけれど、如月さんの前では情けなくなってくるわね。 如月さんの盗撮写真が結構高値で取引されてるみたいよ。撮影者は色々みたいだけど、この前保健室に来た男子生徒が持っていたあなたのプールの時の写真は、明らかに体育教官室からしか撮れないものだったわ」

 

 

 

 

おかしい、絶対におかしい。こんなことを言う先生ではないのに。まさか…人妖?でも、オペレーターさんは間違いなく今回の人妖は男性だって言ってたし…。

 

「あなたは…」

 

シオン意を決して訪ねる。

 

「あなたは…誰ですか…?」

 

2人の距離はほんの数十センチ。しかし、シオンはいつでも戦闘態勢に入れるように身構えていた。冷子はゆっくりと射るような視線をシオンに向ける。

 

数秒の沈黙の後、ぷっと冷子が吹き出してケラケラと笑い出した。

 

「あははは!ごめんなさい、冗談でも悪趣味が過ぎたわね。如月さんがあんまり可愛い格好しているものだから、少しからかってみただけよ。普段はあまり気が抜けないから、時々こうして生徒をからかってるのよ」

 

一通り笑った後、冷子は呆気にとられているシオンに背を向けて教師の車が停めてある駐車場に向かって歩き出した。

 

「それじゃあ気をつけてね。あなたの趣味に意見するつもりは無いけど、寮長に気付かれる前に帰るのよ」

 

「あ、ちょ、ちょっと待て下さい!この格好は私の趣味と言うか…いえ、趣味でもあるんですが…別に露出が趣味とかそういうわけじゃ…」

 

必死に取り繕うとするシオンにを尻目に、冷子は手をヒラヒラと振って去ってしまった。後には片手で「待って」の体勢のまま固まったシオンが取り残されていた。

 

 

「はぅぅ…な、なんか変な誤解されちゃった…。どうしよう…」

 

『シオンさん!聞こえますか!?』

 

「は、はひっ!?オ、オペレーターさん?」

 

突然シオンのイヤホンにオペレーターから通話が入った。緊急時しか使用しない受信側が許可ボタンを押さない強制通話での通信だった。

 

『今、人妖の反応をキャッチしました!アナスタシアの職員用駐車場の付近です!』

 

「ほ、本当ですか!?今そこには篠崎先生が向かっているんですよ!?」

 

『民間人が付近にいるのですか?危険です!シオンさ……す………現場………急こ………』

 

「オ、オペレーターさん!?よく聞こえないんですが?オペレーターさん!?」

 

『シ………綾さ…の時……………妨が…………気をつ……………』

 

その後シオンの呼びかけにも関わらず、イヤホンからオペレーターの声が聞こえてくることは無かった。シオンは通話している最中から駐車場に向かって歩き出していたが、通信が不可能となるとあきらめてイヤホンを仕舞い走り出していた。駐車場に人妖が?だってそこには今篠崎先生が…。

 

シオンの耳に冷子の悲鳴が届いたのは、駐車場への最後の角を曲がったときだった。


アナスタシア聖書学院都市駅を降りると、そこは学校というよりひとつの街と表現した方が正しいような、中世ヨーロッパ調の空間が広がっていた。 広大な敷地には様々な施設。巨大な本校を中心に、各種研究施設や専門教室棟。売店や美容院、レストランやブティックまである。夜も11時も回れば門限の厳しい生徒達はすぐに男子寮、女子寮へと帰った後で、石畳や噴水が、昼間の多くの生徒達の喧騒とは対照的な静寂を吐き出していた。

 

「んふふ~♪ふんふん~♪」

 

暗闇にひらひらと足取り軽く進む影、ツインテールに纏められた長く美しい金髪に月の光が反射し、髪がなびくたびにキラキラと幻想的な光を放っていた。静寂の中にシオンの上機嫌な鼻歌が響く。

 

「んふふ。メイドさん♪メイドさん~♪」

 

シオンはメイド服を基調としたセパレートタイプのゴスロリ服を身に纏っていた。試供品として渡された戦闘服はかなり際どいもので、シオンの豊満な胸を白いフリルの装飾の付いた黒いブラジャーのようなトップが辛うじて隠し、同じく白いフリルエプロンの付いた黒いミニスカートからすらりと伸びた健康的な足を同じデザインの黒いニーソックスが締め上げていた。余分な贅肉が一切無いくびれた白い腹部は惜しげも無く露出され、手には二の腕まである長い白手袋がはまり、頭にはご丁寧にヘッドドレスまで装着してある。

 

先日行われた会議の後、戦闘服に着替えたシオンを見た他の戦闘員やオペレータは開いた口が塞がらず、思わず綾も

 

「あの…ファーザー…いくら何でもこれは戦闘向きでは…」

 

と、進言したほどだったが、肝心のシオンは鏡の前で目をキラキラさせながら

 

「うわぁーかわいいー!本物のメイドさんだぁ…。こっ、これ、本当に次の戦闘で着ていいんですか!?」

 

と、早くも1人で色んなポーズを取り出し、周りはそれ以上何も言えなくなった。確かに日本人離れしたシオンの容姿とプロポーションにはその際どいメイド服がかなり似合っており、逆にシオンの魅力を引き立てていた。なにより本人が至極ご満悦で今更違う戦闘服を渡せる雰囲気でもなかったので、綾も仕方なく

 

「頑張ってね…」

 

と声をかけるだけであった。

 

シオンは学園都市内の店舗のガラスに自分の姿が写るたびに、思わず顔がにやけそうになった。幼い頃から名門家としての教養、作法、立ち居振る舞いの他、人の上に立つものとしての教育を叩き込まれて来たシオンは、なぜ自分が人の上に立たなければならないのか、みんな平等で仲良く出来ればいいのではないかと常に疑問を感じていた。

そのような中、ある時観たフランス映画の中に出てくるメイドの姿に釘付けになった。「この人はだれか他の人のために仕事をしている」

人を使うことのみを教えてこられたシオンにとって、メイドは憧れと理想の存在になった。当然そのようなことは両親は許すはずも無いが、いつかは自分の夢として「誰かの上に立つのではなく、誰かの役に立ちたい」という気持ちを打ち明けようと考えている。

生徒会長に立候補したのも、両親が長期海外赴任中に届いたアンチレジストへのスカウト状に飛びついたのも純粋に人の役に立ちたいと思ったからであった。

 

 

「オペレーターさん!聞こえますか?」

 

明るい声でシオンがイヤホン型のインカムに向かって喋る。

 

「はい、聞こえます。良好です」

 

「今アナスタシアの中に入れました。改めて見ると広いですね~」

 

「そうですね。こちらでも確認していますが、敷地はかなり広大で人妖の反応を探るのに苦労しています。シオンさんが到着する数時間前までは研究棟の中から反応があったのですが、今は反応が消えています」

 

「研究棟ですか?あそこは理科室や実験室もありますが、上層の研究室へは学校の関係者でも一部の人しか入れなくて、生徒はもちろん一般の教師でも入れないんですよ。今のような夜間なら特別なパスが必要なはずですが、なぜ人妖がそんなところに…」

 

「わかりませんが、前回の綾さんのケースから考えると、今回の人妖もそれなりの立場の人である場合が考えられます」

 

人妖の反応が出たら連絡すると言い残し、オペレーターは通信を切った。

 

「理科室にでもいたのでしょうか…?でもこんな時間に?研究室なんかは私でも入れてもらったこと無いですし…」

 

アナスタシア聖書学院の研究棟は下層が生徒が使う特別室、上層は学校側が表向きは社会貢献の名目で最新の設備を有償で企業や大学に貸し出してる。当然企業のトップシークレットの研究も行われている所であり、入室は特別に発行されたIDカードと暗証番号が必要だった。

 

「ふーむ…デタラメに歩き回っても体力を消耗するだけですね~。本校なんかに入ったら全部の教室を見て回る前に朝になっちゃいますし、ここはオペレーターさんからの連絡を待ちますか」

 

左手を胸の下に回し、右手で軽く顎をさすりながら考えを巡らすシオン。その一挙手一投足が絵になり、全く嫌味にならない。美術品のような容姿と抜群のプロポーションもさることながら、名門家の令嬢で生徒会長という立場でありながら誰とも分け隔てなく接する態度と、温和でのんびりした性格は男子生徒は元より女性とからも憧れの的だった。

近くの自動販売機でミネラルウォーターを買い、アナスタシアの敷地の中央にある噴水に腰をかける。美味しそうに水を飲むシオンに近づく影に、まだ彼女は気付いていなかった。

「アナスタシア…聖書学院…」

 

シオンがつぶやくようにファーザーの言葉を反芻する。困惑したような、理解不能のものを見せられたような、そんな表情だった。

 

アナスタシア聖書学院。

入学には家柄や性格判断、基礎学力や身体能力まで多岐にわたる試験や検査、5回以上の面接を経て選ばれたものだけが入学できるミッション系のエリート進学校である。アナスタシア卒というだけで箔が付き、一流企業や大学も入学時からある程度生徒に目星をつけるという。特に選挙で選ばれた生徒会役員や各部活の部長、優秀選手は卒業と同時に各方面から声がかかるケースも珍しくない。

また、聖書学院とは言っても規律はそこまで厳格ではなく、全寮制と日に数回の礼拝、服装規則以外は男女交際も「結婚を前提としていれば可」とミッション系の中ではかなり自由な校風になっている。もっとも、入学までの厳しい審査項目を見れば、「問題のある学生は1人もいない」という学校側の自信の現れとも取れる。

 

「ちょ、ちょっと待ってください!アナスタシア聖書学院って言ったらシオンさんの…」

 

「はい…私の母校です…。綾ちゃんにはさっき少し話ししたよね。実は、3ヶ月ほど前から生徒が5人ほど失踪しているんです。まぁ、全寮制なので稀に共同生活に馴染めずに逃げ出す人もいるのですが、それでも数年に1人いるかいないか…3ヶ月で5人というのは異常な数なんです」

 

『ふむ…人妖の仕業と見てほぼ間違いないだろう…』

 

「でも、そんなに失踪者がいたら学園でも騒ぎになるんじゃ?」

 

「今は生徒会の力で情報の漏洩は抑えています。生徒達には一時的な帰省と…。私ももしかしたらと思っていたので、役員の皆には私から指示して動いてもらっています」

 

「役員に指示って…シオンさんってまさか?」

 

「ええ、アナスタシア聖書学院の生徒会長です。今回の件は、私に行かせてください。学校内の地理も把握していますし、何よりも学校の皆を守りたいんです!」

 

シオンの強い意志に圧され、会議室には口を開くものはいなかった。当初は次の任務にも志願しようとしていた綾も、自分の母校を人妖に好き勝手に荒らされる気持ちは痛いほど分かるため、手を挙げようとはしなかった。

 

『わかった。今回の件はシオンに一任しよう。いざという時は身の安全を最優先するように。戦闘服の用意はできている。では作戦は………」


簡潔な文章だった。

 

 

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アンチレジスト上級戦闘員召集会議の件

 

以下の者は、アンチレジスト上級戦闘員召集会議への出席を命ずる。

 

・神崎 綾

・シオン イワーノヴナ 如月

・鷹宮 美樹

・…

・…

・…

 

日時:2010年8月24日

21:00より

 

場所:アンチレジスト地下訓練場 第9会議室

 

以上

 

 

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「 迷うかもと思って余裕もって出て来たけど、一本道だったから結構時間あるなぁ。 というか上級戦闘員なんてランク付けあったんだ…当たり前だけど全員知らないし…」

 

A4用紙に書かれた無機質な文書を読みながら、街を歩けば誰もが振り返るであろう美少女が長い廊下をこつこつと足音を立てながら歩く。ショート丈のセーラー服。ミニスカートから伸びた健康的な足。手のひらには革製の指だしグローブ。

神崎 綾。

1ヶ月前に母校にて人妖、涼と対峙し、辛くも引き分けたアンチレジストの上級戦闘員。人妖討伐へ送り込まれた戦闘員のほぼ全員が行方不明となる中、彼女とその友人、友香は帰還に成功した。つい先日退院した綾は、涼との再戦に向け退院後すぐに通常通りのトレーニングを再開していた。

 

「今までこんな会議なんてしたこと無いし、もしかして何か進展が…。だったらすぐにでも!」

 

招集の紙をくしゃっと丸めると、そのまま胸の前で拳をバシッと合わせる。意気込みは十分だった。ファーザーに掛け合い、不良品の対人妖グローブも交換してもらった。
すぐにでも戦いたい。綾は場合によっては会議中にファーザーに次の戦闘も自分に任せてもらうように進言するつもりだった。

もうすぐ第9会議室に着く。ドアが見えてくる頃、廊下の向こう側からも歩いてくる女性がいた。

 

「あ…うわぁ…」

 

女性の綾ですら息をのむほどの美少女が歩いて来た。すらりと伸びた手足。一本一本が絡まることの無い絹糸のような金髪のロングヘアをツインテールで纏め、透き通った緑色の瞳からは知性が感じられた。 綾の隣の区の名門校の制服を来ていたので、歳はおそらく自分とそう変わらないだろう。しかし、うつむき加減で自分の足下を見て歩く彼女の表情はやや暗く、何か作り物のような雰囲気を醸し出していた。

しかしその女性は、近寄りがたい…と一瞬思った綾を見つけるとにこりと笑って話しかけて来た。

 

「こんにちは。あの、もしかして会議に?」

 

「えっ?あっ?は、はい!そうです。あの…上級戦闘員の…」

 

「ああ!私もなんですよー!はぅー、よかったー。1人で入るの心細かったんです」

 

その雰囲気からは想像がつかない喋り方と、コロコロと表情を変え、親しみやすい笑顔を向けてくる女性に綾はすぐに好感を持った。

 

「あの、私、神崎綾って言います。よろしくおねがいします」

 

「ええっ?あなたが綾さん!?はわー。噂は聞いてます。成績は殆ど1位ですよね?しかも1ヶ月前に人妖と戦闘して生還したとか。あの、お怪我はもう?」

 

彼女の身長が10㎝くらい縮んだ気がした。綾が、なんだか可愛い人だなと思って見とれていると、彼女ははっとして付け加えた。

 

「す、すみません。私自己紹介してなかったですね。私は、如月シオンと言います。父がロシア人で、母が日本人なんです。といっても、ロシア語は全く話せませんけどね~」

 

と言ってシオンは「んふふ」と笑った。綾も人懐っこい性格をしているので、2人はすぐに打ち解けることができた。シオンは実戦経験こそ無いものの、シミュレーション訓練では綾に迫る成績をたたき出していた。学校の成績も優秀でスポーツも得意だが、将来はどこかの家のメイドになりたいと、どこかずれた夢を語り綾は思わずコケそうになった。

 

 

 

会議は綾とシオンを含む上級戦闘員5名とオペレーターの幹部が3名。ファーザーは例によって音声のみでの参加となった。円卓に座った8人全員、正面のスクリーンとスピーカーから聞こえてくるファーザーの声に耳を傾けた。

 

『今日集まってもらったのは他でもない。今後の人妖討伐作戦についてだ。正直に言って、作戦において戦闘員が帰還できる確率は低い。だが、ここにいる神崎綾が1ヶ月前の人妖討伐任務からの帰還に成功した。今日はその体験を全員に話してほしい」

 

「あ、は、はい」

 

いきなり話を振られ、若干戸惑ったものの、綾は思い出せるだけのことを全員に話した。

 

『綾、ご苦労だった。人妖の生態についてはかなり貴重な情報だ。次は悪いニュースだが、先日廃工場に人妖討伐に向かった由里と由羅の2人は、3日経った今でも連絡がつかない…。おそらく、奴らの手に落ちたものと思われる。だが、彼女らの作戦の前にオペレーターが工場内の数カ所にカメラを付けることに成功していた。ボイラー室のカメラに映っていた映像なんだが…まずは見てもらおう…』

 

その映像に、会議室にいた全員が息をのんだ。最初こそ優勢だった由里と由羅だが、次第に技のキレやスピードが無くなり、徐々に劣勢に追い込まれて行った。後半はほぼ一方的に2人が交互にいたぶられるのみとなり、男の拳がボイラーに縛り付けられた2人の腹部にめり込むたび、オペレーターから小さな悲鳴が上がった。最後は由里と由羅の2人が男の性器に奉仕を開始したところで映像が終わった。

 

『綾の証言から、人妖は人を魅了するチャームと呼ばれる体液…人間で言えば唾液や精液のようなものだが、それで人間の精神を操ることが分かった。しかし、この映像では人妖の動きや特徴、2人の急激な戦力低下から、おそらく汗にも何らかの効果があると考えられる。気化した汗や体臭に、人間の筋力を低下させる効果があってもおかしくない』

 

「ひどい……こんなことって……」

 

シオンが複雑な表情を浮かべながら、祈るように机の上で手を組む。綾も複雑な心境だった。自分も友香がいなければ、あの2人のように人妖の手に堕ちていたことは自分が一番良く知っていたからだ。

 

『2人には気の毒だが、我々は先に進まなねばならない』

 

重い空気の会議室に、ファーザー声が響いた。

 

『次の人妖の居場所が分かった。アナスタシア聖書学院。ここでも男性型の人妖の反応があった』

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Яoom ИumbeЯ_55もサイト化するべきでしょうか?

いずれは…と思っておりますが、メリット、デメリットそれぞれ検討して考えたいと思います。 

「げふっ…うあぁ…」

 

何度もお腹に突き刺さる、金属バットの冷たく無慈悲な感触。マッチョはサディスティックな表情を浮かべながら、まるでゲームを楽しむように私のお腹を嬲り続けた。

やがて、私がぐったりとうなだれると、お腹に向けられた金属バットを急に私の股間に当て、ぐりぐりと押し付け始めた。

 

「あ!?ああんっ!?うぁ…や、だ、ダメ…」

 

「ぶふふふふ…へぇぇ、10代にしては結構敏感なんだねぇ…?」

 

「おいおい、当たり前なこと言うなよ。こういうのは慣れてない方がいいんだぜ?」

 

金属バットの先の角の部分が、ジャージの上から私のクレヴァスを押し広げ、中心の突起を執拗に攻め続ける。先ほど感じた苦痛と、現在感じている快感がない交ぜになり、自分の身体のあちこちが熱くなってくる。

 

「くぅん…あっ…あぁん……も、もう……あああっ!?」

 

散々私の股間をイジめていた金属バットが急に胸に移動し、同世代のクラスの子に比べると大きめな私の胸を押し潰した。左の胸をぐりぐりと押しつぶした後は、先端で私の乳首を転がすようにこね回し、すぐに右の胸を同じように攻め始めた。下着を付けず、体操服の化学繊維越しに敏感な部分を擦られ、私の胸はたちまち服の上からでも分かるくらいエッチな形へと姿を変えて行った。

 

「うひひひ…乳首がコリコリに立っちゃってるよ。ほぐしてあげないとねぇ…」

 

「え…?ちょ…今…触られたら…んはぁあああ!!」

 

急に私を後ろから羽交い締めにしていた太っちょが、両手で私の胸を揉みし抱きながら乳首を親指と人差し指で転がしたり、押しつぶしたりしはじめた。マッチョの金属バットは再び私の股間へと攻める箇所を変え、私は屈辱に耐えながらも2人の執拗な攻めに屈し、だらしない声を上げ続けるしかなかった。

 

ズムッ!!

 

「ごふっ!?…うぁ…なんで……」

 

目を瞑り、官能的な快感の浮遊感に身を任せていた私を、マッチョの丸太のような拳が私の腹部を押し潰し、一気に苦痛の底へたたき落とす。

 

「うげぇっ……そ、そんな…なんでいきなり……」

 

「けっ。一人でよがってんじゃねぇよ。お前が生かされている理由を考えるんだな」

 

「い…生かされている理由…?」

 

「ぶふふふ、そうだよ。君は僕たちの餌さ。僕たち人妖に生気を提供するだけのね。君はただ僕たちに好きなように嬲られて、老廃物を浴つづけていればいいんだよ」

 

「なんで自分がここにいるかもわからねぇだろ?まぁ記憶を一部消されてるから覚えてなくても当然だがな。まぁ、要はお前は用無しだったってこった。安心しな、あっちでは捨てられても、俺たちは優しいから壊れるまで使ってやるからよ…」

 

何?何を言っているの?あっちってどこのこと?捨てられた?私が?餌?私が?用無し?私が?わからない。わからないよ。どうなってるの?ここはどこなの?私はアンチレジストの訓練所にいて、実戦シミュレーションを受けて、それから……それから?

 

ズムゥッ!!

 

「げぇぶっ!?……あぁ……」

 

思考を一瞬で真っ白にするほどの衝撃。また、何もかもがどうでもよくなてくる。2人は何か囁き合うと、太っちょが私を解放し、2人に対し正面を向かされる。

 

「さて、そろそろフィニッシュだ。イッちまいな」

 

「ぶふふ…僕たちもイクよぉ!!」

 

ズギュッ!!

 

ドギュゥッ!!

 

「がふっ!!ごぶあぁぁぁ!!」

 

マッチョは鳩尾、太っちょは胃をそれぞれ押しつぶした。そして、マッチョはさらに強引に拳を奥に埋め、太っちょは胃を握りつぶすようにえぐった。

 

「ぐぶっ!!??ごぶぇあぁぁぁぁ!!」

 

ビクビクと身体が痙攣し、胃液が逆流して床に水たまりを作る。両手で腹部を抱えてうずくまると、マッチョが私の髪を掴み顔を天井に向けさせた。裸電球が頼りない光を放っている。そして男2人は私を見ながら自分の性器を一心不乱にしごいていた。

 

「はぁ…はぁ…たまんねぇな…エロい顔しやがって……」

 

「ああああぁ…あぁ…イク…イクよぉ…いっぱい出るよぉ…」

 

左右から太い肉棒が私に向けられ、男達の呼吸に余裕がなくなってくる。出るんだ…あの白くて凄い臭いのする液が…またたくさんかられちゃうんだ…たしかチャームとか言ってたっけ…。

 

「くぅぅぅ!!限界だ!!おら!口開けて舌出しな!!」

 

「え?こ…こうですか…んぁ…」

 

「ああ!ああああ!!イク!イクよぉ!!ドロドロに濃くて洗っても落ちないくらいのをその可愛い舌にたっぷりかけてあげるからね!!」

 

どびゅっ!!ぶびゅるるるるうぅぅぅぅl!!

 

ぶびゅううううう!!どぷっ!!どぷっ!!どぷっ!!

 

「あぶうっ!んあああぁぁぁぁぁ!!!えぅぅぅ………ろ、ろまらないぃ……」

 

2人は容赦なく私の口や舌、顔をめがけ大量の体液を放出した。私だって友達とエッチなビデオ位は見たことがあるけれど、精液って言うの?こんなに大量に出る男の人はいなかった。私は溺れそうなほど大量の液体を受け止めていた。不思議な幸福感を感じながら…。

捕らわれてから、もう何日が経過したのだろうか?この光が全く差さない地下室では、徐々に時間の感覚が失われ、今はもう昼なのか夜なのかもわからない。もっとも、「捕らわれた」といっても、ここはそこそこの広さがあり、トイレやシャワー室の他、食事や着替えもいつの間にか置かれているため生活にはほとんど不自由していない。数時間前に出された食事はミネストローネと冷製のパスタ、着替えは私の高校で使うような体操服の上着と、えんじ色のジャージだった。問題は無かった。あるとすれば、ここがどこなのか?なぜ自分はここに居るのかまったくわからないということだ。

ガチャリ…と、ドアが開く音がして私はここに来てから幾度と無く味わった絶望に苛まれる。今日は…2人。1人は筋肉質のマッチョな男。もう1人は脂肪が蓄積しすぎた太っちょだ。2人は小声で何事か話し合うと、真っ直ぐに私に向かってきた。

当然、全速力で逃げる。しかし、いつもは広いこの地下室も、なぜか「相手」が入ってくると同時にあちこちの壁が閉まり、広さはたちまち10畳ほどの広さしかなくなった。

 また、はじまる…。

何度目かの抵抗を試み、訓練で習った体術を繰り出すも、太っちょの異常に厚い脂肪には私の攻撃が全く利いていなかった。

ズギュウッ!!

一瞬のうちに、私の腹部に太っちょの拳が埋まる。数瞬間をおいて、すさまじい衝撃と鈍痛が私を襲った。

「う…うぐえあああぁぁぁぁぁ!!!」

自然と口から悲鳴とも叫びともつかない声が漏れる。腹部を中心に苦痛が広がり、膝が笑い出し、口からは大量に分泌された唾液があふれる。太っちょは私の反応に満足そうな笑みを浮かべると、体操服を胸が見えるくらいまで引き上げ、むき出しの私の腹部にまた強烈な一撃を見舞った。

「あぶっ!?ぐぅえあああぁぁぁ!!」

胃液があふれ、床にビシャリと落ちる。一瞬目の前が暗くなり、男にもたれかかるように倒れたところをを狙って、鳩尾を突き上げられた。

「うぐぅっ!!あ……あああぁ……」

「ぐぶふふふふ…もうイッちゃいそうなのかい?もっと頑張ってくれないと全然満足できないよ?」

奥襟をつかまれ、地面に倒れることも許されない。私はただ口からだらしなく涎をたらしながら太っちょを見上げるしかなかった。

「おっと、俺もいることを忘れるなよ?」

ズムウッ!!

気がつくと、マッチョの丸太のような膝が私のお腹に突き刺さっていた。呼吸困難に陥り、悲鳴すら上げることもできない。

「おい、お前勝手に楽しんでるんじゃねぇよ。俺にも楽しませろ」

「へへへへ、わかってるよ」

太っちょが私を背後から羽交い絞めにすると同時に、いつの間にかマッチョは金属バットを取り出し、いたぶるように私のお腹を嬲った。

ズンッ!

「うぐうっ!」

ズンッ!

「ぐふっ!…あぁ…」

ズンッ!

「あうっ!?…や、やめ…」

ズンッ!

「うぅあぁぁ!!」

等間隔の無慈悲な攻撃。私はただそれを受け、男の望むとおりの反応を示すしかない。しばらくすると、太っちょは自分の股間を私の腰に当ててきた。大きくなってる…。見れば、マッチョの穿いているジーンズも股間部分が大きく隆起している。

…興奮してるの?

私は苦しみと同時に、自分の中の女としての悦びを感じていた。

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