大海原の真ん中で、屈強な男達が互いの入墨を自慢し合うかのように上半身裸になり、両手にラム酒や串に刺さった肉を食いながら、大声で笑い合っている。
リィナが船の上で火を起こす光景を見たのは初めてであったが、この男達は慣れているのか、粗末な鉄板を甲板に敷いただけで延焼の可能性を全く考えずに次々に薪を放り込んでいる、その火の上で一匹の大きな豚が丸焼きになり、男達は思い思いに肉に串を突き立て、ナイフでそぎ落としては大きな音を立てて咀嚼していた。
暗い夜にオレンジ色の日が、男達の汗ばんだ身体を生々しく浮かび上がらせている。
「へへへへっ…お前も食うか?」
脂ぎった太った男が所々歯の欠けた口でへらへら笑いながら、自分の歯形の突いた豚の脂身をリィナに差し出してくる。
何日風呂に入っていないのだろうか?もの凄い匂いがする。リィナは無言で顔を逸らした。
「おいおい…腹減ってんだろぉ?旨いぞぉ!貴族達の食卓に出る肉だからなぁ」
いつの間にか周りの男達もリィナの近くに集まり、それぞれが下品な笑みを浮かべながらリィナを凝視している。 リィナは身体の奥から沸々と怒りが込み上げてくるのを必死に押さえた。今はよけいなことでエネルギーを使っても無駄だ。
「……いらないわよ。アンタ達みたいな下衆に施しを受けるくらいなら、飢え死にした方がマシだわ…」
「……プッ!ガハハハハハ!!おいおい聞いたかぁ!?こいつまだ自分の立場をわかってねぇ!」
笑い声はすぐさま伝染し、周囲の男達まで一斉に笑い出した。ヒュゥと口笛を吹く男まで居る。自分が完全に玩具にされていることを感じ、リィナは奥歯をギリリと噛み締めた。
これも、あんなことが無ければ…。
2年前に国家は、強奪や虐殺の原因である海賊の数を少しでも減らそうと、騎士の称号を持つ家系から腕の立つ者を選抜し、各々をリーダーとして組織した騎士団を作り、海賊達から一般市民を守る命を与えた。
リィナもその中の1人で、今年18歳という若さでありながら男勝りな性格と剣術、武術の腕前で数々の武勲を上げ、今では自ら海に出て海賊を討伐し、上陸を未然に防ぐリィナ海騎士団のリーダーになった。
リィナとその海騎士団の活躍により、一時は周辺海域の海賊達は減少したのだが、今日近海の海賊を討伐した後、帰港中に突如として現れた見たことも無い海賊と鉢合わせになった。
先の海戦での疲労のためか、いつもは統制の取れている海騎士団が思うようにまとまらず、次々と新手の海賊達に倒されて行った。
最後まで孤軍奮闘していたリィナも、最後には敵船のリーダーである熊の様な大男から腹に一撃を食らい、失神した所を敵船へ運ばれ今に至っている。
(騎士団の皆は大丈夫かしら…?なんとかしてこの拘束を解いて脱出して、このことを本部に報告しないと…。浮き袋1つでも奪えれば、後は海に飛び込んで…)
「おい!何ぼんやりしてやがる!」
考えを巡らせていた所で突然、奥の上座に座っていたこの船のリーダーが近づいてくる。
頭のはげ上がった髭面の大男で、ゴツい指でリィナの顎をくいと持ち上げる。酒臭い息が顔にかかって酷く不快だった。
「こっちはわざわざオメェを生かしてやってるんだぜ!?本当ならすぐにでもバラして鮫の餌にしてやる所をよぉ…。何で生かされてるか…わかるだろ…?」
リーダーがニヤリと笑う、歯茎まで露出したいやらしい笑いだ。タバコのヤニで歯は本来どのような色だったか分からない位汚れている。
リィナの背中にぞわりと寒気が走ったが、こんな下衆な男共に弱気な所を見せるのは死んでも嫌だった。リィナはつり目気味な目をさらにつり上げ、まるで犬の死体にたかる蠅を見る様な目で男に言い放つ。
「さぁね?アンタ達の低能な頭の中なんて想像したくもないわ。そんなことより、歯磨きしてから話しかけてくれる? アンタの口からまるで生ゴミみたいな匂いが漂って気持ち悪いのよ」
「ひひひひひ…言ってくれるじゃねぇか…わからねぇなら教えてやるよ。お前は今、薄い水着ひとつしか身につけてねぇんだよ。いつも頭を守っている兜も、その華奢でくびれた腹を守っている甲冑も今頃海の底で魚の寝床になってるさ…。しかもお前は両手足をマストに縛られてて身動きが取れねぇ…。ひひひひ…この後何されるか、わかるな?」
男の言わんとしていることはもちろん想像がつく。屈強な男達が船の上で何ヶ月も生活して女日照りが続いている中に、自分がこんな状態で佇んでいることは、飢えたライオンの檻の中に手足を縛った子鹿を放り込む様なものだ。
自分は「殺されなかった」のではなく「楽しんでから殺される」だけなのだ。しかし、リィナは強気な態度を崩さず、男を馬鹿にした様な笑みまで浮かべて言い放った。
「だからアンタ達の下衆な考えなんてわかりたくもないって言ってるでしょ?言わせてもらうけど、下品なことしか考えてないから頭がそんな風に禿げちゃうのよ。それに食べることしか考えてないから髭ばっかり伸びちゃって…ふふっ、可笑しい…。少しは頭を使うことを考え……ぐぶぅあぁぁぁぁぁ!!?」
グジュリという水っぽい音と共に、男の骨張った石の様な拳がリィナのむき出しの腹部に深々と突き刺さっていた。リーダーは怒りでブルブルと震えながら、リィナに向けて荒い息を吐いている。
「このクソアマがぁ…!頭のことを言いやがって、ただじゃすまさねぇ!! 普通に犯すだけにしてやろうかと思ったが、たっぷり痛ぶってからにしてやるぜ!」
「あ…ぶぐっ…!?ごふっ……」
リィナは突如身体を駆け抜けた激痛に、一瞬目の前が暗くなった。腹に突き刺さったままのリーダーの拳が、怒りでブルブルと震えている。
「おい…あのアマ、お頭に頭のこと言っちまったぜ…」
「やべぇよな…お楽しみの前に殺さなきゃいいが…」
いつの間にか、わらわらとリィナの周りには男達が集まっていた。不安そうな顔をしているものもるが、ほとんどはニヤニヤと下品な笑みを浮かべ、リィナからでも股間が大きく隆起しているのが見えた。
「おらぁ…泣き叫ぶまで止めねぇぞ…。顔をやっちまうと後で萎えるからな…ここだ!!」
ドグッ!グジュツ!ズブッ!ボグゥッ!!
「ごぶっ!?ぐぶぅぅっ!!がふっ!!ああぐっ!!……う…うぐ……うぐえぇぁぁぁ………」
連続して丸太の様な腕がリィナの腹に突き刺さり、やわらかな内蔵が無惨に押しつぶされる。リィナの喉からごぼっと音が鳴ると共に、黄色い胃液をびちゃびちゃと吐き出された。
人前で嘔吐するなど、貴族としては最大限の屈辱と恥であったが、背中に当たっているマストから時折ミシッと音が聞こえるほどの拳の衝撃は、リィナの腹筋や内蔵を貫通し、背骨にまで達していた。
「へへへへ…俺としたことが、すこぉし力が入っちまった…。だらしなく舌なんか垂らしやがって、せっかくの可愛い顔が台無しだぜ…」
「ごっ…ごぶっ!うぇぇっ…!こ…こんな…下衆な男に……私が……」
「ほぉ…まだ頑張るか?ならこれはどうだ?」
リーダーはリィナの子宮目掛けて拳を放つと、埋まった拳をそのまま強引に鳩尾まで引き上げた。内蔵全体がかき回され、リィナの身体が悲鳴を上げる。
ズブッ!!……グッ……グリィィィィッ!!!
「ぎゅぶあぁぁぁぁっ!!!あ……あがあぁぁぁぁぁぁ!!!?」
内蔵全体を一気に胸の辺りまで突き上げられた凄まじい衝撃に、リィナはたまらずこの世のものとは思えない悲鳴を上げる。白目を剥き、口から垂れ下がった舌を伝って唾液や胃液が混ざったものが垂れ流しになり、貴族として本土で生活してる家族が見たら失神しそうなほどの姿になる。
その姿を見たリーダーは膨れ上がった自らの分身を取り出すと、それを下腹部を覆っている布越しにリィナの亀裂をめくり開くように擦り付けた。
「うぐぅぅぅぅっ……!!久しぶりの女だから興奮しちまったぜ!!おら!気持ち良いか!? 俺ももうすぐイクぜぇ…!?」
リィナは苦痛の最高潮を漂っている最中、熱く熱せられた鈍器の様な男性器を自分の敏感な亀裂に擦り付けられ、苦痛と快楽の渦に飲み込まれて行った。
「うぐっ!?あ…あへぁぁ!?な…なにこれぇ…!?」
「おおおっ…!久しぶりだなこの感触は…」
薄い布を隔てて、くちゅくちゅと淫らな水音が響く。それはリーダーの先走りの音だけではないことは確かだった。初めて感じる性的な快楽にリィナは混乱しながらも、凄まじい苦痛に鈍化した意識は少しでも身体の苦痛を和らげようと貪るように快楽を求め続けた。
「あっ……あぁふ……な…何この…感じ…?わ…私……へ……変になってる…」
「へへへ…感じてるみてぇだな?だんだんお前のも固くなってきたぜ…。ぐぅぅっ!? と…とりあえず1発出してやる!!」
リーダーが限界を感じ叫ぶと同時にペニスが爆ぜ、ダークグリーンの三角の布を真っ白に染めて行った。
「あ…ああぁ…き…気持ちいぃ……あ……あ…熱っ!!?…やぁぁ!…ぬ…布に染みて……熱いのが……入ってくる…!?」
数十秒にも渡る長い射精が終わり、リーダーが肩で息をしながらリィナから離れると、すぐさま他の子分達がリィナを取り囲んだ。全員服の上からでも分かるほど勃起している。
苦痛と快楽の入り交じった混濁した意識の中、リィナの霞む目に映ったものは手下が放ったパンチが自分の腹に吸い込まれて行く瞬間だった。