※過去作を読んでいなくても楽しめます。
※ラフの状態ですので、製本時には内容が変わっている可能性があります。
1話から読む
光沢のある黒いレオタードに、黒い猫耳のような小さなヘッドパーツ。
一般戦闘員用のバトルスーツを身にまとった七森春香(ななもり はるか)は、廃墟になった市民プールの底に立たされていた。両手首はロープでスタート台に固定されて身動きが取れない。背中に感じる冷たくざらついたコンクリートの感触が不快だったが、それ以上に自分をこのように拘束した目の前の男の存在が猛烈に不快だった。
「まったく、今日はなんてラッキーな日だ。まさか春香ちゃんみたいな可愛い女の子と出会えるなんてね」
その男は見た目同様に不快な声で言うと、春香の黒髪を恋人の様にくしゃっと撫でた。春香は悔し涙を浮かべながら男を睨み上げる。男はその視線を気にせずに、バトルスーツに浮き出た突起のひとつひとつを鼻が触れるほど顔を近づけて観察した。
男の鼻息が春香の肌に触れ、全身が粟立つ。
「マジでキモいんだけど……今すぐ死んでくれる?」
春香が吐き捨てるように言った。
本当に嫌悪感の塊のような男だ。
見た目も全く気にしていないのだろう。ぼさぼさの髪に無精髭を生やし、でっぷりと突き出た腹の肉は溶けた餅のようだ。唯一身につけている黒いビキニパンツの中央が高く隆起していることに気がつき、春香は汚物を直視した時のように反射的に目を逸らした。
「死んでくれなんて酷いじゃないか……せっかくボクの彼女にしてあげようと思ったのに」
ぶぢゅっ……と音を立てて、男は蛇のような素早さで春香の唇を吸った。
「んむぅッ?!」
一瞬何が起きたのかわからず、春香は大きく目を見開いた。そして自分が何をされたのかを理解すると、必死に身体を捩って抵抗した。男は春香の顔を両手で挟み込むように押さえると、膨れて死んだナマコのような舌を春香の口内にねじ込んだ。同時に勃起した男根を春香の腹部にぐりぐりと押しつけてくる。
「んむぅーッ!! んッ?! んんんんーッ!! んぐぇッ?!」
ズグンッ……という音がプールの壁に反響し、激しく抵抗していた春香の動きがピタリと静止した。
身体に貼り付くようなバトルスーツの生地を巻き込んで、春香の引き締まった腹にずんぐりと太った男の拳が手首までめり込んでいる。
男は春香の腹に拳を埋めたまま、ゆっくりと春香の唇を解放した。あまりの衝撃に春香の瞳孔は完全に収縮しており、口は男に吸われていた時そのままに大きく開けた状態で固まっている。男の唇と春香の舌の間で糸を引いた唾液がプールの底に点々と落ちた。
「あ……あが……あ……」
「ぐひひひ……キスされながら腹パンされたのは初めてかい? もしかして、キスも初めてだったのかな?」
男は再び素早く春香の口を吸い、舌を吸ったまま春香の引き締まった腹に何発も拳を埋めた。
「んぶッ?! んごぉッ?! んぶぅッ!! ぶぐぉッ? んぶぇッ!? んおおおおおッ!!」
腹を殴られるたびに、春香の身体は電気ショックを受けたようにビクビクと跳ねた。
背中が壁に密着しているため衝撃の逃げ場がなく、口も塞がれているため呼吸もままならない。男はようやく春香の唇を離すと、春香の鳩尾を鋭く突いた。
「ぷはッ! お゙ッ?!」
突然急所を突かれ、ふっと春香の意識が遠ざかる。だが男は構わずに春香の下腹部、胃、鳩尾をランダムに殴り始めた。
「ゔぇぁッ!! お゙ッ?! ゔぐッ!! んぶッ?! ぐああああッ!」
「ぶふふふ……可愛い反応だねぇ。好き勝手に殴ってくれたお礼をたっぷりしてから、朝までレイプしてあげるからね」
ぶぢゅん……という水っぽい音が響き、春香の子宮が潰れた。
「んお゙ッ?!」
春香の口から濁った悲鳴が漏れる。
男はそのまま正中線を上へとなぞるように春香の胃、鳩尾をピンポイントに殴り、すぐさま胃、子宮と下降しながら殴った。まるでエレベーターが各階に止まるように鳩尾、胃、子宮の三箇所をリズミカルに殴られ、拷問のような苦痛に春香は悶えた。
「ほらほらほらほら、こうやってお腹の違う場所を素早く殴られると、まるでお腹全体が潰れていくように感じるだろう?」
「お゙ッ?! ゔッ!? んぶッ! がッ!! ゔぇッ! お゙ぐッ?! ぶふッ! ゔあッ?! ゔぇッ! がッ! あッ! あがッ! あがああああッ!!」
衝撃が強すぎてもはやどこを殴られているのか理解できず、春香はただ身体をガクガクと痙攣させながら天井を向いて唾液と悲鳴を吹き上げた。脳がパニックを起こしており、壊れた玩具のように頭を振りながら苦痛に悶える。
男がようやく攻撃を止めると、春香は全身を脱力させて項垂れた。男が春香を拘束しているロープを解くと、もはや自力で立つことすら出来ずプールの底にぺたんと尻餅を着いた。
「ぶふふふ……春香ちゃんは本当に可愛いねぇ。ご褒美をあげようかな」
男は春香の髪の毛を掴むと、春香の顔の前でビキニパンツをずり下げた。
限界まで膨張した男根が跳ね上がり、べちっ……という音と立てて男の腹を打つ。朦朧とした春香は目の前のそれが何なのか一瞬理解できなかった。
「あ……え……? ひ、ひぃッ!?」
「ほら、大好きな彼氏のチンポだよ。好きなだけしゃぶっていいからね?」
「やっ……や……やだッ! やだぁッ! あ……んぐぅッ!? ん……んぐぉぉぉぉぉッ?!」
「おふぅ……喉が締まって気持ち良いよ春香ちゃん……」
男が恍惚とした声を上げる傍らで、無理やり男根を捩じ込まれた春香は地獄のような嗚咽を漏らし続けた。張り出したカリ首が喉の粘膜を何の躊躇もなく擦り上げ、死を感じるほどの苦痛を与えている。
男の昂りと反比例して、春香の意識が途切れかける。しかし春香が失神する直前、喉の奥深くまで捩じ込まれていた男根が忽然と消えた。新鮮な空気が肺を満たし、春香は激しく咽せながら顔を上げた。
そこには春香と同じくらいの背丈の小柄な女の子が立っていた。年齢も同じくらいだろうか。女の子は白い差し色が入ったピンクのプリーツスカートとショートジャケットを羽織り、編み上げのスニーカーを履いている。一見チアリーダーの格好に見えたが、中にはセパレート型のスポーティなインナーを着ている。
春香の着ている汎用型のレオタードタイプではない、上級戦闘員のみが着ることを許される特別仕様のバトルスーツだ。
上級戦闘員の女の子は睨むような視線を春香に向けると、無言で手を伸ばした。春香は恐る恐るその手を掴む。
「も、申し訳ありません、賎妖だと思って油断しており……」
不甲斐ない自分に怒っているのだと思い、春香はその手を握ったまま恐縮したように敬礼した。
「だ、だ……」女の子は睨むような視線はそのままに口を開いた。「だ……だい……だ、大丈夫……?」
春香は女の子の手が震えていることにようやく気がついた。
「……は、はい。唾液は飲まされましたが、体液はまだです。意識ははっきりしていますので、チャームの影響は皆無か軽微だと思います」
女の子は頷くと、プールサイドに設置されている梯子を指差した。
「わ、私、い、一ノ瀬……葵。や、休んでて……」
春香はしばらく呆けたように葵を見つめていたが、やがて慌てた様子で葵の両肩を掴んだ。
「あ、葵さん。早くこのプールから出てください! このプールには──」
春香が言い終わる前に、男が二人に突進してきた。葵は春香を突き飛ばし、男を手四つで受け止めた。
「ひひひひ……また可愛い子が出てきたな……。おおおっ?!」
葵は鋭く息を吐くと、体をさばいて素早く男のバランスを崩した。前のめりに転びそうになる男の腕を極め、同時に足払いをかける。脇固めの体勢でプールの底に倒れ込むと同時に、ごきん……という音が男の肩のあたりから聞こえた。
「がああああああッ!?」
男が肩を押さえながら悲鳴を上げてのたうちまわる。
葵はすかさず手錠のようなものを取り出すが、男は強引に暴れて葵を突き飛ばした。
「くそっ……春香ちゃんとは大違いじゃないか……」男は抜けた肩を強引に嵌めると、葵を指差した。「だがな……君ももう手遅れだぞ。このプールに入って三分経ったからな」
葵は怪訝な顔をして首を傾げる。その隣に春香が駆けてきて小声で話しかけた。
「葵さん、助けてくれてありがとうございます。私が少しでも時間を稼ぎますので、すぐにこのプールから出てください」
葵は目を丸くして春香を見た。
「あの賎妖の汗には筋弛緩効果があります。その能力自体は珍しくはないのですが、あいつはこのプールの中で生活することで成分を濃縮していたんです。普通なら近距離で十五分以上浴びなければ効果が出ないのですが、このプールに入ると三分程度で効果が出てしまいます」
「だ、だ、大丈夫」と言いながら、葵は春香に親指を立てた。「私……力、あまり、か、関係ないから」
葵は止める春香を制して、一人で男に近づいていった。男は下衆な笑みを浮かべ、再び葵に手四つを挑んだ。先ほどとは違い、組んだ瞬間葵の身体が一気に後方に押し下げられる。
「葵さんダメです! 逃げてください!」
春香が叫ぶ。
葵の身体がぐらりと後方に倒れた。
だが次の瞬間、男の身体が空中で一回転した。
巴投げが見事に決まり、プールの底に背中を強打した男が潰れた蛙のような悲鳴を上げる。男はなんとか起き上がり、すでに立ち上がって構えていた葵に再び掴みかかった。葵は掴みかかろうと伸ばした男の腕を取り、自分の身体を巻き付けるようにして男の下に潜り込んだ。
男の両足が地面から浮いた。
教科書に出てくるような綺麗な背負い投げだった。
男は再び背中をコンクリートに強打し、過呼吸を起こして悶えた。葵は素早く男の片腕と頭を掴むと、男の頭に枕をするように自分の片足を滑り込ませ、そのまま首の上にまたがって体重を落とした。
マウントポジションでの三角絞めを極められ、男はくぐもった悲鳴を漏らす。
体重を利用しているため、筋力は重要ではない。体勢的に葵のスカートの中に男の顔が完全に隠れる形になったが、もちろん男にその状況を楽しむ余裕も無かった。
一瞬で極められた男はしばらくバタバタと暴れたが、すぐに意識を手放した。
※ラフの状態ですので、製本時には内容が変わっている可能性があります。
1話から読む
光沢のある黒いレオタードに、黒い猫耳のような小さなヘッドパーツ。
一般戦闘員用のバトルスーツを身にまとった七森春香(ななもり はるか)は、廃墟になった市民プールの底に立たされていた。両手首はロープでスタート台に固定されて身動きが取れない。背中に感じる冷たくざらついたコンクリートの感触が不快だったが、それ以上に自分をこのように拘束した目の前の男の存在が猛烈に不快だった。
「まったく、今日はなんてラッキーな日だ。まさか春香ちゃんみたいな可愛い女の子と出会えるなんてね」
その男は見た目同様に不快な声で言うと、春香の黒髪を恋人の様にくしゃっと撫でた。春香は悔し涙を浮かべながら男を睨み上げる。男はその視線を気にせずに、バトルスーツに浮き出た突起のひとつひとつを鼻が触れるほど顔を近づけて観察した。
男の鼻息が春香の肌に触れ、全身が粟立つ。
「マジでキモいんだけど……今すぐ死んでくれる?」
春香が吐き捨てるように言った。
本当に嫌悪感の塊のような男だ。
見た目も全く気にしていないのだろう。ぼさぼさの髪に無精髭を生やし、でっぷりと突き出た腹の肉は溶けた餅のようだ。唯一身につけている黒いビキニパンツの中央が高く隆起していることに気がつき、春香は汚物を直視した時のように反射的に目を逸らした。
「死んでくれなんて酷いじゃないか……せっかくボクの彼女にしてあげようと思ったのに」
ぶぢゅっ……と音を立てて、男は蛇のような素早さで春香の唇を吸った。
「んむぅッ?!」
一瞬何が起きたのかわからず、春香は大きく目を見開いた。そして自分が何をされたのかを理解すると、必死に身体を捩って抵抗した。男は春香の顔を両手で挟み込むように押さえると、膨れて死んだナマコのような舌を春香の口内にねじ込んだ。同時に勃起した男根を春香の腹部にぐりぐりと押しつけてくる。
「んむぅーッ!! んッ?! んんんんーッ!! んぐぇッ?!」
ズグンッ……という音がプールの壁に反響し、激しく抵抗していた春香の動きがピタリと静止した。
身体に貼り付くようなバトルスーツの生地を巻き込んで、春香の引き締まった腹にずんぐりと太った男の拳が手首までめり込んでいる。
男は春香の腹に拳を埋めたまま、ゆっくりと春香の唇を解放した。あまりの衝撃に春香の瞳孔は完全に収縮しており、口は男に吸われていた時そのままに大きく開けた状態で固まっている。男の唇と春香の舌の間で糸を引いた唾液がプールの底に点々と落ちた。
「あ……あが……あ……」
「ぐひひひ……キスされながら腹パンされたのは初めてかい? もしかして、キスも初めてだったのかな?」
男は再び素早く春香の口を吸い、舌を吸ったまま春香の引き締まった腹に何発も拳を埋めた。
「んぶッ?! んごぉッ?! んぶぅッ!! ぶぐぉッ? んぶぇッ!? んおおおおおッ!!」
腹を殴られるたびに、春香の身体は電気ショックを受けたようにビクビクと跳ねた。
背中が壁に密着しているため衝撃の逃げ場がなく、口も塞がれているため呼吸もままならない。男はようやく春香の唇を離すと、春香の鳩尾を鋭く突いた。
「ぷはッ! お゙ッ?!」
突然急所を突かれ、ふっと春香の意識が遠ざかる。だが男は構わずに春香の下腹部、胃、鳩尾をランダムに殴り始めた。
「ゔぇぁッ!! お゙ッ?! ゔぐッ!! んぶッ?! ぐああああッ!」
「ぶふふふ……可愛い反応だねぇ。好き勝手に殴ってくれたお礼をたっぷりしてから、朝までレイプしてあげるからね」
ぶぢゅん……という水っぽい音が響き、春香の子宮が潰れた。
「んお゙ッ?!」
春香の口から濁った悲鳴が漏れる。
男はそのまま正中線を上へとなぞるように春香の胃、鳩尾をピンポイントに殴り、すぐさま胃、子宮と下降しながら殴った。まるでエレベーターが各階に止まるように鳩尾、胃、子宮の三箇所をリズミカルに殴られ、拷問のような苦痛に春香は悶えた。
「ほらほらほらほら、こうやってお腹の違う場所を素早く殴られると、まるでお腹全体が潰れていくように感じるだろう?」
「お゙ッ?! ゔッ!? んぶッ! がッ!! ゔぇッ! お゙ぐッ?! ぶふッ! ゔあッ?! ゔぇッ! がッ! あッ! あがッ! あがああああッ!!」
衝撃が強すぎてもはやどこを殴られているのか理解できず、春香はただ身体をガクガクと痙攣させながら天井を向いて唾液と悲鳴を吹き上げた。脳がパニックを起こしており、壊れた玩具のように頭を振りながら苦痛に悶える。
男がようやく攻撃を止めると、春香は全身を脱力させて項垂れた。男が春香を拘束しているロープを解くと、もはや自力で立つことすら出来ずプールの底にぺたんと尻餅を着いた。
「ぶふふふ……春香ちゃんは本当に可愛いねぇ。ご褒美をあげようかな」
男は春香の髪の毛を掴むと、春香の顔の前でビキニパンツをずり下げた。
限界まで膨張した男根が跳ね上がり、べちっ……という音と立てて男の腹を打つ。朦朧とした春香は目の前のそれが何なのか一瞬理解できなかった。
「あ……え……? ひ、ひぃッ!?」
「ほら、大好きな彼氏のチンポだよ。好きなだけしゃぶっていいからね?」
「やっ……や……やだッ! やだぁッ! あ……んぐぅッ!? ん……んぐぉぉぉぉぉッ?!」
「おふぅ……喉が締まって気持ち良いよ春香ちゃん……」
男が恍惚とした声を上げる傍らで、無理やり男根を捩じ込まれた春香は地獄のような嗚咽を漏らし続けた。張り出したカリ首が喉の粘膜を何の躊躇もなく擦り上げ、死を感じるほどの苦痛を与えている。
男の昂りと反比例して、春香の意識が途切れかける。しかし春香が失神する直前、喉の奥深くまで捩じ込まれていた男根が忽然と消えた。新鮮な空気が肺を満たし、春香は激しく咽せながら顔を上げた。
そこには春香と同じくらいの背丈の小柄な女の子が立っていた。年齢も同じくらいだろうか。女の子は白い差し色が入ったピンクのプリーツスカートとショートジャケットを羽織り、編み上げのスニーカーを履いている。一見チアリーダーの格好に見えたが、中にはセパレート型のスポーティなインナーを着ている。
春香の着ている汎用型のレオタードタイプではない、上級戦闘員のみが着ることを許される特別仕様のバトルスーツだ。
上級戦闘員の女の子は睨むような視線を春香に向けると、無言で手を伸ばした。春香は恐る恐るその手を掴む。
「も、申し訳ありません、賎妖だと思って油断しており……」
不甲斐ない自分に怒っているのだと思い、春香はその手を握ったまま恐縮したように敬礼した。
「だ、だ……」女の子は睨むような視線はそのままに口を開いた。「だ……だい……だ、大丈夫……?」
春香は女の子の手が震えていることにようやく気がついた。
「……は、はい。唾液は飲まされましたが、体液はまだです。意識ははっきりしていますので、チャームの影響は皆無か軽微だと思います」
女の子は頷くと、プールサイドに設置されている梯子を指差した。
「わ、私、い、一ノ瀬……葵。や、休んでて……」
春香はしばらく呆けたように葵を見つめていたが、やがて慌てた様子で葵の両肩を掴んだ。
「あ、葵さん。早くこのプールから出てください! このプールには──」
春香が言い終わる前に、男が二人に突進してきた。葵は春香を突き飛ばし、男を手四つで受け止めた。
「ひひひひ……また可愛い子が出てきたな……。おおおっ?!」
葵は鋭く息を吐くと、体をさばいて素早く男のバランスを崩した。前のめりに転びそうになる男の腕を極め、同時に足払いをかける。脇固めの体勢でプールの底に倒れ込むと同時に、ごきん……という音が男の肩のあたりから聞こえた。
「がああああああッ!?」
男が肩を押さえながら悲鳴を上げてのたうちまわる。
葵はすかさず手錠のようなものを取り出すが、男は強引に暴れて葵を突き飛ばした。
「くそっ……春香ちゃんとは大違いじゃないか……」男は抜けた肩を強引に嵌めると、葵を指差した。「だがな……君ももう手遅れだぞ。このプールに入って三分経ったからな」
葵は怪訝な顔をして首を傾げる。その隣に春香が駆けてきて小声で話しかけた。
「葵さん、助けてくれてありがとうございます。私が少しでも時間を稼ぎますので、すぐにこのプールから出てください」
葵は目を丸くして春香を見た。
「あの賎妖の汗には筋弛緩効果があります。その能力自体は珍しくはないのですが、あいつはこのプールの中で生活することで成分を濃縮していたんです。普通なら近距離で十五分以上浴びなければ効果が出ないのですが、このプールに入ると三分程度で効果が出てしまいます」
「だ、だ、大丈夫」と言いながら、葵は春香に親指を立てた。「私……力、あまり、か、関係ないから」
葵は止める春香を制して、一人で男に近づいていった。男は下衆な笑みを浮かべ、再び葵に手四つを挑んだ。先ほどとは違い、組んだ瞬間葵の身体が一気に後方に押し下げられる。
「葵さんダメです! 逃げてください!」
春香が叫ぶ。
葵の身体がぐらりと後方に倒れた。
だが次の瞬間、男の身体が空中で一回転した。
巴投げが見事に決まり、プールの底に背中を強打した男が潰れた蛙のような悲鳴を上げる。男はなんとか起き上がり、すでに立ち上がって構えていた葵に再び掴みかかった。葵は掴みかかろうと伸ばした男の腕を取り、自分の身体を巻き付けるようにして男の下に潜り込んだ。
男の両足が地面から浮いた。
教科書に出てくるような綺麗な背負い投げだった。
男は再び背中をコンクリートに強打し、過呼吸を起こして悶えた。葵は素早く男の片腕と頭を掴むと、男の頭に枕をするように自分の片足を滑り込ませ、そのまま首の上にまたがって体重を落とした。
マウントポジションでの三角絞めを極められ、男はくぐもった悲鳴を漏らす。
体重を利用しているため、筋力は重要ではない。体勢的に葵のスカートの中に男の顔が完全に隠れる形になったが、もちろん男にその状況を楽しむ余裕も無かった。
一瞬で極められた男はしばらくバタバタと暴れたが、すぐに意識を手放した。