「ん……んぅ……うぅ……」

 

どのくらい時間が経っただろうか。

先ほどと同じ部屋。シオンは固い床の上に目を覚ました。まだ目の前がハッキリしないが、本能的に身体のあちこちを点検した。幸い、 腹部に疼痛が残る以外は、手足や首に致命的なダメージは負っていない。いつの間にか汚された身体もある程度綺麗に清拭され、 衣服に白くこびり付いた残滓と口の中に残る精液特有の後味がわずかに不快なだけだった。

 

「くっ…」

 

横座りのまま両手で身体を支え、わずかに上体を起こす。何だろう、拘束などはされていないが異様に身体が重い。それに、なぜか身体の中がじんわりと熱い。

 

「あらあら、目が覚めたかしらぁ?」

 

びくりとして後ろを振り向くと、冷子がモデルのような姿勢で椅子の上に座ってシオンを見下ろしていた。拳の上にその鋭い顎を乗せ、すらりと伸びた足を妖艶に組んでいる。

 

「うふふふ…ずいぶんと派手に汚されたわねぇ…。愛されててうらやましいわぁ…。一応身体は拭いといてあげたけど、なかなか落ちない所は我慢してね」

 

「篠崎先生…」

 

ハッキリしない意識の中、ぼうっとした様子で冷子を見つめていたシオンだったが、ハッと気付いてあわてて声を上げる。

 

「あ、あのっ!み、皆さんは…、皆さんはどこへ行かれたのですか!?」

 

「はぁ…?皆さんってあの男子部員達のこと?あっきれた…。あなたあいつらに滅茶苦茶にされたのよ?今更生きてようが死んでようがあなたには関係ないでしょう?」

 

吐き捨てるようにそう言うと、軽蔑の視線を隠そうともせずにシオンを見つめる。しかし、シオンは必死だった。

 

「か…彼らは、篠崎先生の作った薬で一時的に前後不明になっただけです!無事なんですか?後遺症とかは無いんですか?」

 

「………吐き気がするほどのお人好しね。本当にむかつくわ。安物のチョコレートじゃあるまいし、ゲロ甘なのも大概にしなさいよ。虫酸が走るのよ。アンタみたいなのを見てるとね……」

 

薄暗い部屋の中、冷子の声は氷で出来たナイフのように冷たく響いた。椅子から立ち上がるとカツカツと高い靴音を立ててシオンに近づき、髪の毛を掴み無理矢理立たせる。

 

「あうっ!?痛っ!!」

 

「なんでアンタはそんなに他人を信用出来るのよ…?アンタ達人間なんて他人を平気で裏切るし、すぐに殺し合いを始める屑以下の存在じゃない。共食いする生き物なんて蜘蛛やカマキリみたいな虫ケラとアンタ達人間だけよ…。もっとも、同族同士で憎み合うだけならまだしも、他の生き物にまで迷惑をかけている分、アンタ達の方がタチが悪いわねぇ…?」

 

「な…何でそんなに…人間を憎むんですか…?」

 

シオンは冷子の手首を掴んでこれ以上髪の毛を引っ張られないように押さえつける。しかし、冷子の握力は凄まじく、シオンの力ではとてもほどけそうも無かった。冷子は一瞬真剣な表情になり何かを言いかけたが、すぐに元のあざ笑う様な表情に戻った。

 

「…………さぁてねぇ…どうかしら?」

 

「な…何か訳があるなら聞かせて下さい…!私達も…もしかしたら分かり合えるか…うぐうっ!?」

 

言葉をすべて発する前に、冷子の左手がシオンの下腹部に鋭くめり込んでいた。女性の急所である子宮へのピンポイントの打撃。シオンの顔がみるみる青ざめていく。

 

「あんまり舐めたこと言ってると本気で殺すわよ?人の心配より自分の心配でもしたら?ふふふっ…あなたの若さで子供が出来ない身体になるのも辛いでしょう?」

 

「あ……あふっ…!?あ……あああ……」

 

「ふふ…せめてもの情けよ…。しばらく黙ってなさい…」
 

 

グヂィッ!!!!

 

「ぎゅぶぅっ!?…うぐあぁぁぁ!!」

 

シオンの口から今まで聞いたことの無いような悲鳴が吐き出された。あれほど重かったボクシング部のパンチの威力を軽く凌駕する冷子の一撃が、鳩尾に捻り込むように突き刺さった。冷子の言葉通り、この一撃がシオンの子宮に向けられていたら確実に後遺症が残っただろう。

冷子がシオンの髪を解放すると同時に、シオンは膝を折って崩れ落ちた。失神こそしなかったものの、その顔は完全に血の気が引き、普通の日本人より遥かに白いシオンの肌は、もはや青いと言っていいほど真っ白になっていた。

 

「いつかその仮面が剥がれて醜い素顔が出てくると思ったけど、ここまで分厚い仮面もなかなか無いわね。人間なんて所詮は上辺だけで最後には自分さえ良ければそれで良いのよ。あなただってその気になればあいつらを皆殺しにして逃げることだって出来たでしょうに、無抵抗にされるがままで…。ふん…まぁいいわ。無事よ。能無し共は下の回でぐっすり寝てるわ」

 

そのこ言葉に、いまだ青ざめているシオンの表情がわずかに緩んだ。もはや教師の頃の面影は無いが、今でも少なくとも冷子は嘘は言わないだろう。彼らだってそれなりに鍛えられた部員だ。たいした怪我も負っていないのなら、どうにかして逃げ出すチャンスだってある。

シオンが鳩尾を両手でかばいながらほっとため息をつくと、冷子の背後にあるカプセルの裏から人影が現れた。高身長で引き締まった筋肉質の身体、脇腹に残るナイフの刺し傷。何も身に付けていない涼が頭を振りながら現れた。

 

「あらあら…こっちもお目醒めね。気分はどう」

 

「ううむ……まだ少しぼんやりしていますが、なかなか良好ですよ。やはり自分の身体はいい…」

 

「そう、よかった。ところで、補給はどうするの?」

 

「補給もしたいですが、まずは仮死状態だった頃の老廃物を出したいですね。出来るだけ多くを吸収したいので」

 

涼は全裸のまま、一切隠そうともせずにうずくまるシオンに近づく。

 

「一応あなたのチャームを分析して、科学的に合成したものを注射しておいたんだけど、まずかったかしら?」

 

「はっはっはっは!これはこれは…相変わらず準備が良いですね。いやいや、助かりましたよ。まだ本調子ではない中、アンチレジストの相手はいささか疲れますからね」

 

(合成したチャームを注射…?私に…?)

 

シオンがハッとして顔を上げると、涼は既に目の前で仁王立ちになっていた。腰の位置が高い涼の股間が丁度シオンの目の前に来ている。だいぶ表情に血の気が戻ったシオンは、涼の男性器を見た瞬間身体の中に電気が走った。目を逸らそうとしても、不思議と心臓の鼓動が早くなり、視線はそれに釘付けになる。

 

(な…何…?何で私…こんなにドキドキしてるの?あ…身体が…熱い…)

 

「うふふふ…しっかりチャームが効いているみたいね。いつものあなたなら悲鳴のひとつでも上げているはずなのに、そんなに熱い視線で涼のを見つめちゃって…」

 

「あ…あぁ……あ……」

 

目を逸らしたいが、身体が言うことを聞かない。これはチャームのせいだと冷静な自分が頭の中で言う反面、別の自分が触りたいとさえ思っている。シオンが生唾を飲み込む音が大きく部屋に響いた。

 

「くっくっく…そんなに見つめられると興奮しますね。さて…それにしても本当に可愛い娘だ…。しかもこんなにエッチな格好をして…。くくく…今からあなたで自慰をしますから、しっかり見ていて下さいね」

 

「えっ…?じ…自慰って…あっ…!?」

 

自慰という単語を呟いた後、ぼっと顔が赤くなる。それを合図に涼は自分の男性器をしごき始めた。まるでシオンに見せつけるようにゆっくりとした動きだったが、男根はすぐに硬度を増し天を仰ぐ。

 

「あっ…あああっ……す…すごい………もう…こんなに……」

 

「ふふふ……ほら、見て下さい…。ガチガチになっているでしょう?私の頭の中であなたは今、滅茶苦茶に犯されているのですよ?」

 

「お、犯されてる…?わ…私が…あなたに犯されてるんですか…?あ……ダメ……そんな…大きいので……犯さないで下さい……」

 

シオンはうわ言のように呟くが、涼の自慰を見て興奮しているのは誰が見ても明らかだった。涼の手の動きはどんどん速くなり、硬度や大きさも最高潮に達する。先は既に透明な粘液で濡れ、シオンの鼻先に突きつけられた性器からは強烈な臭いが放たれ始める。

 

「すごい……こんなに大きく……。先から透明なのが…ああぁ……」

 

「くぅぅ……エッチな顔になってきましたね…。オナニーのネタにされている気分はいかがですか?私もそろそろ限界ですよ」

 

涼の呼吸から余裕が無くなり、男根の先がシオンの顔を目掛けて構えられる。既にピクピクと痙攣がはじまり、限界が近いことをシオンも悟る。

 

「お……犯しちゃやぁっ…。だ…ダメ……こんなに太くて…逞しいので…想像の中の私にエッチなことしないで…。あ…ああっ…ビクビクしてる……」

 

言葉とは裏腹に、増々熱い視線で涼の性器を見つめるシオン。そのまましゃぶりつきそうなほど自らも身を乗り出し、緑色の瞳で切なそうに先走りが出てくる様を見つめる。

 

「もうすぐ、たっぷりチャームを出してあげますからね。その可愛くてエッチな顔中にぶちまけてあげますよ…」

 

「え……?あ…あの白くて熱いの出しちゃうの…?すごく濃いの…いっぱい出るの…? やぁ… ゆ…許して…許して下さい…。か…かけちゃだめ…し…白いの…いっぱい出しちゃだめぇっ…。こ…これ以上かけられたら……私…私ぃ……」

 

口では拒絶の言葉を呟きながらも、 まるでここに出してくれと言うようにわずかに開いた口から舌を覗かせる。涼はすぐに限界を迎えた。

 

「くぉぉぉぉっ…!!出るっ!!このエロ娘が…!そんなに私のが欲しいのか…?望み通りぶちまけてやるッ!!!」

 

ぶびゅうっ!!どびゅるるるるっ!!

 

そう言うと同時に、涼の性器から白い粘液がまるで堰を切ったダムのようにシオンの顔に降り注いだ。量も濃さも常人の数倍はあり、シオンの顔は一瞬で粘液まみれになった。

 

「あ…で…出る……もうすぐ…出るぅ……。あっ……うぶっ!?あああぁぁ!?あ……すごっ……あふぅっ!!ま…まだ出て……こ…濃いぃ……」

 

あまりの勢いに一瞬目を細めるものの、シオンは顔を背けようともせず、出した舌もしまわずに素直に涼の放出を受け止めた。それどころか、まるで清らかな泉の水を掬う聖女の様に、手を自分の胸の前で受け皿のようにかまえ、こぼれた粘液を受け止めた。手には聖水の代わりに邪悪な人妖のチャームが溜まっていった。