と、それを見下す涼の姿があった。
「あ…、あぅ……ああぁぁぁ……」
「ふぅ…よく頑張りましたね。これだけ痛めつけられても失神しなかった女性は初めてですよ。普段ならものの数分で泣きながら弱音を吐くものですが」
綾は苦しげな表情ながらも、強さを失っていない瞳でにらみ返した。
「当たり前でしょ…げほっ…。お前みたいな最低な奴に、屈するわけないじゃない…」
「くくくく…いいですね。その強気な表情。いつ屈服するかと思うとゾクゾクしますよ」
「生憎アンチレジストにはそんなヤワな戦闘員はいないわよ。皆、どんな攻撃だって耐えるんだから」
「ほぅ…綾ちゃんの同じクラスの友香ちゃんをご存知ですか?あなたと同じ戦闘員だったはずですが、すぐに屈服しましたがね」
「なっ!?ゆ、友香をどうしたの?」
綾と友香は、横のつながりの殆どないアンチレジストの中では珍しく、友人同士で組織に入隊した同期だった。お互いに切磋琢磨したが、組織で友香は持って生まれた綾の才能の陰に隠れて目立たない存在になっていた。しかし、そのことに卑屈になることなく努力を続ける有香を綾は尊敬し、友香も綾の才能を素直に認めていた。
しかし、1週間ほど前に人妖捜査に向かったきり、行方不明になっていた。当然クラスメイト達は騒然となったが、ファーザーの手引きで急病のため入院したことになっている。このような事態を考慮し、戦闘員には一人暮らしを義務づけられており家族との連絡も制限されていた。
失踪した友香を発見することも綾の任務だった。そして十中八九、友香は人妖討伐に失敗し連れ去られたものと考え、綾は今回の任務に自ら志願したのだった。
「あなたと同じように私を捜していたもので、自己紹介をしたらいきなり攻撃してきましてね。返り討ちにしたまでですよ。じっくりと時間をかけてね。もっとも、綾ちゃんと違いすぐに弱音を吐きましたが」
「友香は…友香はそんなことしない!」
「お友達を信じたい気持ちはわかりますが、事実ですよ。心が折れたと同時にチャームを使ったので、今ではすっかり素直になりましたが」
「チャーム…?」
「私たち人妖の分泌する体液には人間を魅了する力があるのですよ。体液によってその効果の強さは違いますがね。まずはあなた達人間が唾液と呼んでいるものを使い、最後には…くくくく、まぁそれは自分で体験してのお楽しみとしましょうか」
「どこまで下衆なのあなた達は!?そんな卑怯な手を使って友香を…」
「卑怯とは人聞きの悪い。私は友香ちゃんにキスをしただけですよ。今では自分から望んで私の男根をしゃぶってきますがね」
「!!? このぉぉぉぉぉぉ!!」
綾は怒りに我を忘れ、猛然と涼に突進した。近づきながら突きを繰り出すも悠然と涼にかわされ、腕を捕まえられたまま抱きかかえられる格好になった。
「なっ…この…離せ…んむぅぅぅ!?」
男は強引に綾の唇を奪った。唾液を流し込もうとするが、綾が咄嗟に口を閉じ、歯を食いしばってそれを拒む。先ほど聞かされたチャームを自分もされるのかと思うと全身に鳥肌が立つほどの嫌悪感を覚える。
「んんん、なかなか強情ですね。おとなしく口を開けなさい」
ズドッ!
「ぐはっ!!んぅ!?んんんんんん!!」
涼は押さえつけていない方の手で綾の腹部を殴り、えずいて口が開いた瞬間に強引に舌を侵入させた。綾のファーストキスは奪われた。
「んむっ!?んんん!!んんんんぅ…むふぅ…」
男の唾液が流し込まれると、綾の頭は次第に痺れるような感覚に教われ、徐々に熱くなっていった。目はとろんと蕩け。頬はだんだんに桜色に染まっていく。
「ん……ん……んあうっ!?」
不意に涼は綾の豊満な乳房を揉みしだいた。右腕をつかまれ、左の乳房をこね回され、唇をすわれ続ける。はじめて体験する感覚の連続に綾の頭は混乱し、何も考えられなくなる。
「んふぅぅぅっ……あ…あぅぅん。だめ、そこ…んむっ…んん…ぷはっ…はぁ…はぁ…」
涼は綾の唇を解放すると、月の光に照らされた銀色の橋が2人の唇の間に架かった。
「さすがは私の見込んだ女だ。友香ちゃんの何倍も楽しめそうですよ。さて、場所を変えましょうか?」
ズキュッ!!グリィィッ!!!
「ごぶっ!!ぐぇぁあああ!!………ああぁぁ……」
涼は綾の腹部に拳を埋め、そのまま無理矢理鳩尾まで拳を突き上げた。強烈な衝撃に綾はこの日初めて気を失い、涼の身体に倒れこんだ。
「今日は最高の夜になりそうですよ。そう簡単に落ちられても面白くないので、もう少し痛めつけてあげましょう」
ひょいと肩に綾を担ぎ上げ、涼は体育倉庫に向かって歩き出した。