Яoom ИumbeR_55

Яoom ИumbeR_55は「男性→女性への腹パンチ」を主に扱う小説同人サークルです。

2010年11月

「あ……あぐ……ぐぶっ!?そ……そんな……こんな……ことって………」

 

綾は深々と自分の腹部にめり込んでいる涼の拳を、信じられないという表情で見つめていた。一瞬で窮地に立たされ、涼の嬉々とした表情とは対照的に、綾の表情には絶望の影が色濃く浮かんでいる。

 

「あ…綾ちゃんを離して!!」

 

あまりの事態に呆気にとられていたシオンがはっと我に帰り、2人の元へ駆け出す。涼はすぐに綾の身体を邪魔なものを捨てるかのように足下に放り投げると、飛んできたシオンの回し蹴りを片手で受け止めた。

 

ガシィッ!

 

「ああっ!?くぅっ…」

 

「くくく、 綺麗な蹴りだな、今は蚊が止まりそうな速さだが…。突き技が得意な綾と、蹴り技が得意なお前か。確かに言いコンビだな」

 

「な…何で…?力が…入らない…」

 

「くくくく…俺の使役する部下に特殊能力を持つ者がいてな…頭も容姿も最悪の全く役に立たない下賎な屑だったが、そいつの汗に含まれる成分は相手の筋力を弛緩させて弱らせることが出来た…。それを冷子に成分検出させて科学的に合成してみたんだが、どうやら成功のようだな…。あの屑もやっと役に立ったか…」

 

「筋肉を…弛緩…?ま…まさかあの瓶の中身ですか?この…体の怠さも…?」

 

「そうだ…濃縮して一瞬で効き目が出るようにしてある。あの液体から発生したガスを吸ってしまったら、もはや立っているだけで精一杯だろう?綾の得意なパンチも、お前の得意な蹴りも、攻撃力は全てしなやかな筋力があってこそだ。もちろん、防御力もな!」

 

涼は掴んだシオンの足首を引っぱり、シオンの身体を強引に自分の身体に引きつけると、その勢いを殺さずにむき出しの腹部に丸太のような膝を埋めた。

 

ズブゥゥッ!!

 

「う”ぅっ!?……あ……あぅ……うぐぅっ!?」

 

「ほらほら…どうだ?自分の得意技の蹴りで攻められる気分は?お前ほど綺麗ではないが、威力はそこそこだろう?」

 

ズブッ!ドズゥッ!グジュッ!ドブゥッ!!

 

「……うぐっ……!!?………う……ぐぶぅっ……うあぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

まともに悲鳴も上げられないほどの蹴りが、膝が、爪先が、次々にシオンの腹に突き刺さった。トドメとばかりに涼はほとんど無抵抗になったシオンの背中に、後ろに衝撃が逃げないように左手を置くと、シオンを抱きかかえるようにしながら渾身のボデイブローを突き込んだ。シオンの背骨が軋むほど奥深くに右の拳が埋まる。

 

ドグジィィィッ!!!

 

「うぐうぅぅぅっ!?………かはっ……う……うぶぇあぁぁぁぁ!!!」

 

完全に胃を押しつぶされ、シオンの口から大量に飲まされた男子学生の精液や涼のチャームが逆流し、床に白い水溜まりを作る。顔からは血の気が引き、腰から下がガクガクと痙攣を始め、危ない状態であることが伺える。

 

「くくくく…背骨が掴めそうなほど深く入ったな…。あのガスの中には濃縮したチャームの成分も入っている。お前達ももう終わりだ…」

 

「あぐっ……うぐえぇぇぇ………。あ…ああぁ…そ…そんな……ここまで…来て……」

 

シオンがガクリと両膝を着く。唇はガクガクと震え、口からは絶えず胃液や精液が逆流している。シオンが落ち着くのを見計らって、涼は倒れている綾の髪を掴んで無理矢理膝立ちにさせ、ギンギンに勃起したペニスを2人の前に突き出した。 涼は自分の眼下に跪いている2人を満足そうに見下ろす。

 

「ほら、死ぬ前に俺のチンポに奉仕をしろ。何ならお前らの処女を奪ってやってもいいが、生憎時間がないものでな…。綾、まずはお前からだ。せいぜい気合いを入れてしゃぶれ」

 

涼が勃起したペニスをぐいと綾に向かって突き出す。綾は青ざめた顔で涼の顔とペニスを交互にに見ながら、震える声で抗議した。

 

「な…何言ってるのよ…。そんなこと…で…出来る訳ないでしょ?す…好きでもないアンタなんかの……こんなものを……」

 

「コチャゴチャ言ってないでとっととしゃぶれ!」


「ふざけないで!誰がアンタのなんかの……ああっ…!?むぐっ!?んぐぅぅぅぅ!?う…うむっ……んむぅぅぅぅっ!?」

 

 

 

涼が綾の頭を鷲掴みにすると、強引にその小さい口の中に収まりきらないほどの極太を突き入れた。綾の口が限界にまで開かれ、あまりのことに目には自然と涙が浮かぶ。

 

「ははははっ!そう言えばお前はしゃぶるのも初めてだったな!くくく…どうだ?初めての男の味は…?くぅぅっ……綾が…綾が俺のを…」

 

「むぐっ!?んむぅぅっ!!ぷはっ!!はぁ…はぁ…な…す…すごぃ…ふ…太いぃ…」

 

綾はたまらず涼のペニスを吐き出すが、すぐさま涼に口内を再度犯される。さらにはシオンの頭を掴み、まるで自分のペニス越しに綾に口づけをさせるように2人の唇を合わせた。

 

「あ…やぁっ!?んむぅぅぅっ…!?ん…ちゅっ…あ…綾…ちゃん……」

 

「んむぅぅぅっ……シ…シオンさ……ちゅぶっ…んむっ……あふぅっ…」

 

綾とシオンの2人が自分の性器にフェラチオをしている。夢の様な光景が眼下に広がり、涼は限界を突破しそうな射精感を歯を食いしばって耐える。2人はチャームの影響もあるのか、上気した顔でまるでお互いの舌を求め合うように涼のペニスに奉仕を続けた。

 

「ちゅぶっ…はぁ…はぁん…んむっ…あはぁ………シオンさん……」

 

「綾ちゃ……はぅぅっ……あ…はぁぁ…ちゅっ…れろぉぉっ……」

 

繰り広げられる極上の美女2人の痴態に涼はとうとう我慢の限界を迎え、奥底からせり上がってくるマグマを感じると、2人の唇にサンドされていた限界まで膨張したペニスを綾の口内に押し込み、狭い唇でペニスをしごかせた。

 

「んぐぅっ!?んっ…んっ…んっ…んふぅぅっ…」

 

「くぅぅぅっ…!!限界だ…。窒息するほど出してやるぞ綾ぁ…!舌全体で味わった後、一滴残らず飲み込め!!」

 

どびゅうぅぅぅぅっ!!ぶぢゅっ!ぶびゅぅぅぅぅぅっ!!

 

「んっ…んふっ……むぐうっ!?ぐむっ…!?ぐ……んふぅぅぅぅぅぅっ!!?」

 

涼は一旦ペニスを綾の口元まで引き抜くと、考えられないほどの大量の体液を躊躇無く綾の口内に噴出した。綾の頬は一瞬で風船のように膨らみ、口内から食道、胃までを白濁で満たし、飲み込めない分は口元からこぼれ落ちた。

 

「うぶっ…んんぅ……うぶぅっ……う……うぐ……」

 

「はははは……いい眺めだな…。まだ止まらんぞ…。ほら、俺を見上げながら飲み込むんだ、音を立ててな…。くくくく…お前が俺のチンポにいやらしくしゃぶりついて、その奉仕が俺を満足させたという証をくれてやってるんだ…。嬉しかろう?」

 

「う…うぅん……ごぎゅ…ごきゅ…ごきゅ……んふぅぅぅ……ぷはぁっ!!あ……はぁ…はぁ…はぁ…あ…あぁっ!?か…顔に……」

 

綾は涙を溜めた上目遣いで、喉を鳴らして涼の体液を飲み込んでいたが、その量の多さにたまらず涼が放出し切る直前にペニスを吐き出した。残った残滓が綾の顔に振りかかり、あどけない童顔を背徳的ないやらしさに染め上げてった。

ただいま空港から書いてます。


先日2chに読み切りを投稿して、いくつかお言葉をいただきました。嬉しかったです。
個人的にはもう少し大切に練ってから投稿してもよかったかなと思いました。頭に浮かんだイメージをうまく伝えきれなかったといいますか、早さを求めていろいろおろそかになったり…。

改行もブログと違って文節ごとなのに投稿中に気づき、投稿中に書き直したりと実際てんてこ舞いになりながらの投稿でした。

今日見てみたらリンクを貼らせていただいているK氏も投稿されており、続きが気になります。また機会があれば投稿したいですね。

仕事では先週末から福岡、鹿児島、名古屋、宮崎、東京と移動が重なっています。土曜日に休めればブログの更新もしたいですね。

ではまた

今日か明日、2chに書き下ろしを1本投稿してみようと思います。

毛色を変えて海賊ものなんかどうでしょう?

まずはキャラを作らないと…。 

「な…何をしたの…何なのこの甘い匂いは…?」

 

「綾ちゃん気をつけて…絶対に何かある!」

 

2人は咄嗟に涼に対して身構える。涼はゆっくりと立ち上がると、一歩ずつ2人に向かって歩き出した。

 

「…俺にここまでの屈辱を与えたことを後悔させてやるぞ…死ぬまで嬲り尽くしてやる…!」

 

涼は2人に対して突進を開始する。標的は…シオンだった。

 

「おおおっ!!」

 

「またそれですか?………!?なっ…!?くぅっ…!」

 

先ほどと同様の大振りな右ストレート。シオンは警戒しながらもチャンスと思い、再び涼の死角へ潜り込もうとステップと取るが、突如脚がゼリーに覆われた様な重苦しさに襲われる。

脚が一瞬もつれたと思った頃には、既に拳はシオンの鼻先に迫っていた。一瞬の判断でかがみ込んで何とかそれを避ける。拳が自分の頭上をかすめたかと思うと、数本の金髪がはらはらと目の前に落ちてきた。あれをそのまま食らっていたら…。

 

「シ、シオンさん!?」

 

「くっ…やあっ!」

 

しゃがんだ体勢で、涼に脚払いを書ける。当たり所がよく、転びはしなかったものの衝撃は先ほど涼が負傷した肋骨に響いたようだ。呻きながらよろめいた所を、綾がさらに追い討ちをかける。

 

グギィッ!

 

「があっ!?ぐぅぅっ…」

 

よろめく勢いを利用したレバーブローがしたたかにヒットし、涼の口からくぐもった声が漏れる。その声が途切れないうちに、シオンの滑らかな脚線が鞭のようにしなりながら綾の頭上を高速で通り過ぎ、涼の顔のほぼ正面に見事な回し蹴りを叩き付けていた。

 

バギィッ!!

 

「がぶっ!?ぶぐぅっ!!」

 

レバーブローを撃たれ、憎々しげに綾をにらんでいた涼の顔は、一瞬でシオンのエナメルで出来たハイヒールの裏側に隠れてしまった。

 

「おおぉ…やるぅシオンさん!私達結構良いコンビかもね!」

 

「ふふ…光栄ですね…」

 

「ぐがぁぁぁあああ!!」

 

涼は声にならない咆哮を上げ、2人から離れる。鼻からは血が滴り、上唇も一部裂けているものの、思ったほどダメージは無いらしい。

 

「くぅぅ…まだこれほど動けるとはな…だが、もう少しだ…」

 

「もう少し…?どういうことよ?」

 

綾が拳を握りしめながら、ゆっくりと涼に近づく。

 

「ハッタリ言うのもいいけど、こっちはあまり殴りたくないってさっき言ったでしょう?そろそろ終わりにしてあげるわ!」

 

綾がダッシュし、涼の顔面へ拳を放つ。しかし次の瞬間、綾は腕全体に強烈な怠さを感じた。先ほどレバーブローを放ったときにもわずかに感じた感覚だったが、今回は腕全体にまるで無数の穴が空いて、そこから水がこぼれるように力が流れ出した様な、強烈な脱力感だった。

それはとてもパンチとは言えない勢いで、ただ惰性で腕が涼に向かって伸ばされただけだった。一瞬の軽いめまいから気付いたときには、自分の右手はがっしりと涼に掴まれていた。そして…

 

グジュリィッ!!

 

「あ…綾…ちゃん…?」

 

「え…?」

 

綾が自分の腹部を見下ろすと、涼の拳が手首まで隠れるほど深く、自分の華奢な腹部に突き刺さっていた。

 

「あ……う……ぐぶっ!?うぶあぁぁぁぁ!!」

 

「う…嘘…綾ちゃん!?」

 

あまりの衝撃の強さからか、綾が状況を把握してから苦痛を感じるまで数秒のタイムラグがあったが、その後に襲ってきた苦痛は想像を絶するものだった。涼が拳を抜き取った後も、綾の腹部には拳の後がくっきりと残っていた。

 

「あぶっ…!げぼぉっ!?な…なに……今の……?」

 

綾は口の端から唾液を垂らしながら、かすむ目で涼の表情を見る。涼はこれ以上無いほど嬉しそうな顔をして、再び拳を握りしめていた。

 

「くくく…やっと効いたか…。もう一発くれてやるから、自分で確かめたらどうだ?」

 

ふたたび拳が唸りを上げて綾の腹部を襲う。一瞬腹筋に力を入れるが、今度は腕ではなく腹筋から力が抜け落ち、完全に弛緩したへそ周辺に拳が吸い込まれて行った。

 

ズブゥゥッ!!

 

「げぶぅぅぅっ!!?うぐっ……ごぼぁああああ!!」

 

涼の拳は何の抵抗も無く綾のくびれた腹に吸い込まれ、内蔵をかき回した。両足が地面から離れるほどの衝撃に、綾の瞳孔が一気に収縮し、黒目の半分がまぶたの裏に隠れる。

 

「ははははっ!いい顔だな!それに、相変わらず良い声で鳴くじゃないか?さっきまでの勢いはどうした?」

 

涼は失神寸前の綾の顔を覗き込みながら、冷酷な笑みを浮かべる。そして口の端から垂れている透き通った唾液を舌で掬い取ると、強引に綾の口の中へ舌をねじ込ませた。

 

「うぶうっ…!?んむっ……んんぅ!?」

 

綾は半ば混濁した意識の中で、口の中を這い回る粘液にまみれた軟体動物の感触に身の毛がよだった。焦点の定まらない目で涼を見下ろすが、全身の力が抜け抵抗が全く出来ない。

 

「んんむ…ちゅばぁっ…。くく…美味しい唾液だ…。お前とは2回目だな。さぁ、もっと出してもらおう…」

 

グリィィッ…!!

 

「あ”あ”あ”あ”あ”っ…!?かはっ……!う……うぶっ……」

 

痛々しいほどに綾の腹に深く突き刺さった拳を、さらに奥へねじ込む。綾はもはや溢れる唾液を飲み込むことも出来ずに、ただ白目を剥きながらだらしなく舌を垂らして喘ぐしか無かった。

「……私も本当にナメられたものですね…私に対して1人で挑むとは…。面倒なので2人同時にお相手していただけませんか?病み上がりの私相手に強気になるのも分かりますが、正直面倒なもので…」

 

「その必要は無いわ…。あと、とりあえず私が勝ったらすぐにでも服を着て欲しいわね…。見たくもないものが目の前にあるのは結構不快なのよ」

 

「見たくもないものですか…くくく…もう少してこれをしゃぶりそうになっていた人のセリフとは思えませんね…」

 

「…少し黙りなさいよ!」

 

綾が涼に対して駆け出す。それを合図に涼も綾に向かって突進し、お互いの射程圏内で拳が機関銃のように飛び交う。

 

「やっ!はぁっ!」

 

「ぐうっ…こ、こいつ…!」

 

お互い多少の攻撃は受けていたが、綾の方が優勢であった。綾は来るべきこの日に備え、なお一層の修練を積んでいた。手堅く涼の攻撃をガードすると確実にカウンターを当て、相手の反撃が来る前に距離を取る。一撃が重い人妖に対しては最も有効な戦法だ。
涼の攻撃は徐々に大振りになり、なおかつほとんどガードをせずに綾の攻撃を食らっていた。

 

メキリッ!

 

「ぐおぉっ!?」

 

綾の右フックが涼の左脇腹に当たり、肋骨から嫌の音が響いた。相手が両手で脇腹を押さえたところで、すかさず左膝でむき出しの金的を蹴り上げた。人間の男性ならその一撃で失神してもおかしくない衝撃、急所の存在しない人妖でもダメージは相当なものであるらしかった。

 

「がっ!?があぁぁぁ!!」

 

涼は脇腹と股間を押さえ、脂汗を流しながら歯を剥き出しにして荒い息を吐いている。普段の人を食った様な表情からは一変して、獣の様な顔になっていた。

 

「間抜けな格好ね。身体能力の高さに思い上がって防御を疎かにするからこんなことになるのよ。もう勝負は見えたんじゃない?」

 

綾はゆっくりと片膝を付いている涼に近づくと、両手の拳を腰に当て、仁王立ちで見下ろす。涼はしばらく肩で息をしていたが、ニヤリと笑うと綾に言った。

 

「はぁ…はぁ…ふふふ…相変わらず着丈の短いセーラー服だ。下乳が見えていますよ?動きやすいのは分かりますが、下着くらいは付けたらいかがですか?」

 

「な…なっ!?」

 

綾の同年代のそれより結構大きい部類に入る胸は、下から覗けるほどショート丈のセーター服を押し上げていた。また、普段は我慢出来ても戦闘時は締め付けられる感覚が嫌で下着を外している。

綾は真っ赤になり、あわててセーラー服の裾を両手で下げる。その隙をついて、涼はきびすを返して走り出した。涼の走るその先には、シオンが壁にもたれて休んでいた。

 

「あっ!?ひ…卑怯者!」

 

綾も慌てて走り出すが、既に涼はシオンに対し唸りを上げて拳を放っていた。

 

「油断するからだ!この女を人質に取れば、お前も手は出せまい!」

 

しかし、拳がシオンの顔面に当たる一瞬前、涼の前からシオンの姿が消えた。涼の目が大きく見開かれる。一瞬のうちにシオンは涼の右隣に移動し、涼の右腕を自分の右手で掴んでいた。音も無く、あまりにも鮮やかな移動は端から見たら瞬間移動のように見えた。

 

「…綾ちゃんのおかげでもう十分休めました。それに、私だってアンチレジストの戦闘員なんですよ。鑑君の仇くらい、自分で取れます!」

 

シオンの放った右膝が、涼の腹部に吸い込まれて行った。予想外の展開に涼は腹筋を固めることもままならず、ずぶりという音と共に涼の胃がシオンの膝の形にひしゃげた。

 

「シオンさんナイス!そして、これで終わりよ!!」

 

ごぎりっ!!

 

「がっ!?がごぉぉ!!」

 

シオンの膝の真裏に、綾が渾身の突きを放った。涼の胃は完全に潰れ、弾かれるように2人から離れると、両手で口元を押さえてのたうつ。

 

「ごっ…ごぶぅ…うぶぉぉぉぉ……」

 

シオンと綾はお互い顔を見合わせ、お互いの拳を合わせると再び涼に視線を戻す。綾が涼に近づき、のたうつ様を見下ろしている。今度は胸が見えないように、両方の腕で胸を持ち上げるように隠している。

 

「どう…?もう終わりにしない?これ以上やっても苦痛が増えるだけよ?私達はあなたみたいに相手を痛めつけて喜ぶ趣味は無いから…おとなしく捕まってくれるのならこれ以上攻撃はしないわ」

 

「ぐぅぅぅぅっ…げろぉっ!!」

 

涼は綾をちらりと見上げた後、何かの黒い塊を吐き出した。一瞬血かと思い、綾はうっと顔をしかめ、目を細める。

 

「はっ…!?な、何を持っているんですか!?」

 

しかし次の瞬間、涼の手には小さめの茶色い薬瓶が握られているのにシオンは気付いた。涼は厳重に封をされた薬瓶を握りしめて立ち上がると、力いっぱい地面に叩き付けた。
小さなパァンという音と共に瓶が砕け、不思議な甘い匂いが当たりに漂い始める。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…。まさかこれを使うとはな…。俺としたことが、貴様らみたいなゴミ虫相手に何という屈辱だ…。だが、これで俺の勝ちだ…。貴様ら…たっぷりと時間をかけて嬲ってから殺してやる…」

 

涼はもはや普段の話し方ではなくなっており、端正な顔立ちは元の表情が伺えないほど怒りを表す深い皺が刻まれていた。瞳は妖しい紅い光をいっそう強め、唾液を垂れ流しながら歯をむき出しにして、今にも折れそうな力で食いしばっていた。 

「くくく…許さないのはこちらも同じですよ…」

 

涼が脇腹の刺し傷を撫でながら綾に微笑みかける。しかし、それは「これが自分のスタンスだ」と言いたげに、ただ口元だけで微笑みを表現しただけで、目は決して笑ってはいなかった。

 

「こちらはあなた方のおかげで結構大変な目に遭いましてね…。ここへ向かう途中に行き倒れて、使役している賤妖に助けられるなどと無様な醜態を晒し、挙句の果てに蘇生までの間胸くそ悪い人間の身体を借りなければならないとは…いやはや、生き恥を晒すとはこういうことを言うのでしょうね…」

 

「自分で撒いた種でしょう?なに人のせいにしてるのよ。こっちだってあなたに…その…色々されたんだから…お互い様でしょう?」

 

「いえいえ…あなた方下賎な人間が、高貴な存在の人妖に良いようにされるのは自然の摂理でしょう?」

 

涼がゆっくりと綾とシオンに歩み寄る。綾はわずかに身体をシオンの前に移動して、庇うように涼に対峙する。

 

「どこまで思い上がっているの?生き物に優劣なんて無いわよ!」

 

「ははははっ!あなた方はいつもそうだ。自分のしていることは棚に上げて、他の人が同じことをすれば我慢が出来ない。時々ニュースで見ませんか?例えば人里に熊が出た場合、観光地に猿が出た場合。たいてい結末は決まっているでしょう?」

 

「そ…それは…」

 

「違います!」

 

突如響いた声に、一瞬場の空気が動かなくなった。綾の足下に座り込んでいたシオンがゆっくりと立ち上がって涼に向かい合う。

 

「確かに私達は自分勝手に動く生き物かもしれませんが、それでも様々な生き物と共存をしようという動きも少なからずあります!浜辺に打ち上げられたイルカやクジラを助けたり、さっき貴方がおっしゃった人里に出た動物だって、麻酔で眠らせて山に返すことだってあるんです!全てが最悪の選択ではないんです!」

 

シオンの頭の中に、隣の部屋のケージに入れられた、ぼろぼろになった動物達の死体が浮かび、涙がこみ上げてきた。それを振り払うかのように強く頭を振る。金髪のツインテールが揺れ、弱々しい蛍光灯の光を浴びてキラキラと輝いた。

 

「……まぁいいでしょう。こちらの計画も順調に進んでいます。今はあなたにお礼をすることに集中しましょうか?」

 

涼の目がギラリと光を放つと、2人に向かって、いや、綾に向かって突進を始めた。一気に距離が縮まり、綾の顔面を目掛け拳を放つ。

 

「あ、綾ちゃん!?危ない!!」

 

「うぁっ!?」

 

紙一重でよけるが、風圧で綾の右頬がヒリヒリと痛んだ。まともに食らっていれば、鼻の骨どころか頬骨や眼底の骨にまで深刻なダメージがあっただろう。綾は涼は一切手加減をする気がないことを、この一撃で悟った。

 

「くっ…このっ!!」

 

空いた涼の腹部を狙い、裏拳を放つ。ごぎゅりという音がして、オープンフィンガーグローブを付けた綾の拳が埋まる。

 

「ぐぶっ!?」

 

「やあああっ!!」

 

裏拳が入ると同時に、降りてきた顔面に向かってストレートを放つ。綾は考えるより先に身体が最善の選択をして相手に攻撃する。その選択が間違うことはほとんど無い。綾をアンチレジストの上級戦闘員たらしめる素質だ。

 

ガシッ!!

 

「くぅっ!」

 

綾の右手首を、涼ががっしりと掴んだ。綾の細い手首に、両の手はあまりに暴力的に見えた。

 

「ふぅ…ふぅ…効きましたよ…今の一撃は…。やはりまだ身体の能力は完全には戻っていないようだ…。しかし、貴女ごときに負けるはずが無い!」

 

ドグッ!!

 

「うぐっ!?ぐぅぅ……」

 

「綾ちゃん!?」

 

涼の右の拳が、綾のショート丈のセーラー服からむき出しになった腹部目掛けて放たれる。綾は咄嗟に腹筋を固めてダメージを堪えるが、全くのノーダメージという訳ではない。

 

「ほぅ…強くなりましたね…。よろけながら打ったとはいえ、私の一撃を耐えるとは…」

 

「うくっ…あ…当たり前でしょ?アンタと違って…黙って寝てた訳じゃないんだから…」

 

  涼は綾の手首を解放し、一旦距離を取って構える。

 

「くくく…これはお言葉ですねぇ…。強がっているようですが、もともとあなた達人間の身体とはスペックが違うというのに…。そう言えばシオンさんのお相手をした時も、私は鑑とかいう人間の身体を借りていましたね。いやはや、あの時はまるで身体が鉛になったみたいで、歯がゆい思いをしましたよ。早く私自信の攻撃でのたうち回るあなた達が見てみたいですね…」

 

鑑の名を聞いて、シオンがピクリと反応する。後ろからわずかに拳を握る気配が綾にも伝わった。鑑という名は綾にとって初耳だったが、シオンとは何らかの関係があることは分かった。

 

「シオンさん、悪いけど、ここは私に任せてくれる…?」

 

「えっ…?で、でも…」

 

「こいつとの決着は私自身でつけたいの。それに、残念だけどシオンさんは今までの戦闘で疲労がたまってるから、無理しても結果は見えてるわ…。詳しくは知らないけど、鑑さんの分も、あいつには身体で払ってもらう。もちろんシオンさんの分もね!」

 

そう言うと綾はシオンにニッと歯を見せて笑い、拳と手のひらをパシッと合わせた。

 

「100パーセントあり得ないけど、もし私があいつに負けそうになったら助けにきて。だから、今は休んで私に任せて欲しいの。気持ちを無視するようだけど、どうかお願い…」

 

「綾ちゃん…分かったわ。その代わり、危なくなったらすぐに助けに入るから。それは了承して」

 

綾は力強くうなずくと、涼に向き合い再び拳と手のひらをパシッと合わせた。


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