美樹の放った回し蹴りが綺麗に弧を描いて蓮斗の顔面をしたたかに打った。どろりとした鼻血がミミズの様に蓮斗の鼻から這い出る。蓮斗は鼻を押さえることもせずに美樹に向き合い、大振りの前蹴りを放った。重そうなブーツが空を切る。美樹は難無く蓮斗の蹴りを躱すと、背後に回って素早く蓮斗の首に腕を回した。
美樹の腕が蛇の様に蓮斗の首に巻き付く。綺麗に頸動脈のみを締め上げられ、蓮斗の視界に銀色のオーロラが降りてくる様な明滅が起こった。顔が徐々に膨張する様な錯覚。耳の奥できいんと耳鳴りが鳴り響いている。
あと数秒で失神すると蓮斗は思った。
蓮斗は痙攣の始まった手でカーゴパンツのポケットに手を突っ込んだ。硬い感触が指先に触れる。栄養ドリンクに似た瓶のキャップを片手で器用に開けると、中身を背後にぶちまけた。美樹が驚いて手を離す。残りの薬剤を口に含み、霧状にして美樹の顔に吹きかけた。
美樹は反射的に蓮斗の首から腕を離し顔を手で覆った。呼吸と一緒に霧状になった薬剤を吸い込んでしまい、軽く咽せる。南国の花の様な重く甘い香りが鼻腔の奥に残る。瞬間、チリッとした刺激が脳の表面を駆け巡った。美樹が顔をしかめてこめかみを押さえる。
「先輩……」
美樹の背後から久留美の声がする。振り返ると、美樹の上着の袖を久留美が掴んでいた。
「先輩……蓮斗さんを傷つけちゃ……嫌です……」久留美は甘えるような声を出すと、背後から美樹の胸のあたりに腕を回して抱き着いた。突然の事に美樹が狼狽する。
「く、久留美? 何を言っている……手を放せ!」
「大丈夫ですよ先輩……。蓮斗さん、とても良い人ですから……。それに、蓮斗さんがお腹を殴ってくれると、すごく気持ち良くなれるんです……」久留美は熱に浮かされた様に上気した顔で呟く。「こんな感情……私、初めてなんです……。先輩も早く、蓮斗さんに気持ち良くしてもらいましょう。大丈夫です、痛いのは一瞬ですから」
「馬鹿なことを言うな! 久留美! 目を醒ませ!」
美樹が身じろぎしている最中、蓮斗が音も無く近づいた。
「……ッ、貴様! 久留美に何を……」
美樹が言い終わる前に、ぐじゅっ、と水っぽい音が美樹の身体を通って鼓膜に届いた。蓮斗の拳が、美樹のレオタードに包まれた腹部に埋まっている。
「ぐぼっ!」美樹が悲鳴を上げる。不意打ちを受けた腹は蓮斗の拳を柔らかく包み、温かい粘液の様に絡み付いた。美樹の視界がぐらつき、猛烈な吐気がこみ上げる。同時に、拳を打ち込まれた場所からどくんと脈打つ様な感覚がこみ上げて来た。
「……ッくあぁっ?!」
美樹がびくりと痙攣しながら、上体を反らして仰け反った。叫んだ瞬間に粘度の増した唾液の飛沫が舞う。
下腹部の脈動は定期的に続き、まるで下腹部にもうひとつ心臓が発生した様に定期的に信号を脳に送っている。
それは温かく、柔らかくて甘い泥の中を裸でのたうつ様な信号だった。体全体を泥で汚しながら、甘い香りと優しい温かさに包まれたそれは紛れも無く背徳的で官能的な信号。
美樹は焦点のズレた目で下腹部を見下ろした。
アンダーウェアの生地を巻き込んで、蓮斗の骨張った拳が深くめり込んでいた。それを認識した瞬間、どくん……と拳のめり込んでいる腹部のあたりが脈打った。雷の様な快感が美樹の背骨を駆け上がり、頭蓋骨の中で破裂する様子がはっきりとイメージ出来た。
「んぅッ?! くはぁぁぁッ!」美樹は訳もわからずに沸き上がって来た快感に身体を捩らせた。腹部を殴られた苦痛と同時に発生した快感。頭の中を沸騰した嵐が吹き荒れている中、二発目の鉄槌が鳩尾に撃ち込まれた。
「んぶぅッ?! んぶ……ッ……んあぁぁぁぁ!」
「あははは……頬染めちゃって、可愛いなぁ」
「ぎ……ぐぅッ……ぎざま……」美樹がびくびくと痙攣しながら、涙の溢れる目で蓮斗を睨みつける。食いしばった歯の隙間から荒い息が漏れていた。「何を……んくッ……私に……何をした……?」
「あはぁ……美樹先輩……すごく気持ち良さそう……。気持ち良いですよね? 蓮斗さんにお腹殴られると……」久留美がとろんとした笑みを浮かべながら美樹の首筋に舌を這わせると、美樹の身体がビクリと跳ねた。堪えていた息を美樹が吐き出すタイミングで、蓮斗の膝が撃ち込まれる。
「ぐぼぉっ?!」
膝を腹に打ち込まれた衝撃で美樹の目が見開かれ、舌が口から飛び出す。
美樹は戸惑っていた。
臍や鳩尾、胃の辺りを責められる度に、じんわりと熱を持った葛湯の様な甘くとろみのある液体が子宮のあたりに沸き上がるのを強烈なイメージとして感じていた。その液体のイメージは腹部周辺を責められる度に子宮の中に溜まってゆく。
ぐじゅり……ぐじゅり……と蓮斗は容赦なく美樹の腹を責めた。久留美は美樹の背後から抱き着きながら、苦痛と快感に耐える美樹の顔をうっとりと眺めている。
美樹の中で無意識な感情が芽生えていた。
子宮を殴られたい。
この子宮に溜まった液体を、どうにかして欲しい。
「くぅッ……! 蓮……斗……」美樹が泣きそうな顔になりながら蓮斗を睨んだ。「うッ……はぁ……ぐぅッ……!」
子宮を殴って欲しい。その骨張った拳で潰して欲しい。
自分の意志に反した逆らいようの無い欲求。美樹は必死に頭を振ってその甘い欲望の濁流に飲まれない様に耐えた。
「へぇ……頑張るんだな。早く久留美ちゃんみたいに堕ちちゃえばいいのに」
「そうですよ先輩……一緒に気持ち良くなりましょう? 私も最初は痛かったけど、すぐに慣れますから」
「くっ……もう一度聞くぞ……私に何をした……?」
「俺がオーダーメイドした一点物の『チャーム』を使ったのさ。人妖の分泌するチャームを培養して、腹部が性感帯になる様にカスタムした特製のね……。俺に殴られて気持ちよかったでしょ? もうすぐ美樹ちゃんも、久留美ちゃんみたいに自分からお腹を殴って下さいってお願いするようになると思うよ?」
「ふざけろッ! そんなものに……私が屈するものか!」
美樹は自分に言い聞かせる様に叫んだ。
蓮斗はその様子を鼻で笑うと、軽い動作で拳を引き絞った。
ぐぽんッ……と蓮斗の拳が、美樹の子宮を抉った。
美樹は次の瞬間、熱を持った子宮に溜まった甘い液体が、まるで水風船が破裂した様に体内にまき散らされるのを感じた。それは細胞の隙間を強烈な快感の爪で引っ掻きながら体中に広まった。爪先から脳天まで快感が広がり、美樹の視界は星が散った様に明滅した。
「ふぐあぁぁぁぁッ! はぐッ……くふッ……あああッ!」美樹は身体を仰け反らせ、絶叫しながら快感に耐えた。絶頂の波が絶えず身体を駆け巡り、痙攣する身体を歯を食いしばって必死に抑えた。「んぐぅッ……ぐ……はぁ……はぁー……」
蓮斗が美樹に近づき、再び拳を引き絞った。拳が腹部に当たる瞬間、美樹は自分が無意識に腹筋を緩めたことに気がついた。自分は、快感に負けてしまったのかと、美樹は底の無い暗い穴に落ちる様な気持ちになった。
美樹の腕が蛇の様に蓮斗の首に巻き付く。綺麗に頸動脈のみを締め上げられ、蓮斗の視界に銀色のオーロラが降りてくる様な明滅が起こった。顔が徐々に膨張する様な錯覚。耳の奥できいんと耳鳴りが鳴り響いている。
あと数秒で失神すると蓮斗は思った。
蓮斗は痙攣の始まった手でカーゴパンツのポケットに手を突っ込んだ。硬い感触が指先に触れる。栄養ドリンクに似た瓶のキャップを片手で器用に開けると、中身を背後にぶちまけた。美樹が驚いて手を離す。残りの薬剤を口に含み、霧状にして美樹の顔に吹きかけた。
美樹は反射的に蓮斗の首から腕を離し顔を手で覆った。呼吸と一緒に霧状になった薬剤を吸い込んでしまい、軽く咽せる。南国の花の様な重く甘い香りが鼻腔の奥に残る。瞬間、チリッとした刺激が脳の表面を駆け巡った。美樹が顔をしかめてこめかみを押さえる。
「先輩……」
美樹の背後から久留美の声がする。振り返ると、美樹の上着の袖を久留美が掴んでいた。
「先輩……蓮斗さんを傷つけちゃ……嫌です……」久留美は甘えるような声を出すと、背後から美樹の胸のあたりに腕を回して抱き着いた。突然の事に美樹が狼狽する。
「く、久留美? 何を言っている……手を放せ!」
「大丈夫ですよ先輩……。蓮斗さん、とても良い人ですから……。それに、蓮斗さんがお腹を殴ってくれると、すごく気持ち良くなれるんです……」久留美は熱に浮かされた様に上気した顔で呟く。「こんな感情……私、初めてなんです……。先輩も早く、蓮斗さんに気持ち良くしてもらいましょう。大丈夫です、痛いのは一瞬ですから」
「馬鹿なことを言うな! 久留美! 目を醒ませ!」
美樹が身じろぎしている最中、蓮斗が音も無く近づいた。
「……ッ、貴様! 久留美に何を……」
美樹が言い終わる前に、ぐじゅっ、と水っぽい音が美樹の身体を通って鼓膜に届いた。蓮斗の拳が、美樹のレオタードに包まれた腹部に埋まっている。
「ぐぼっ!」美樹が悲鳴を上げる。不意打ちを受けた腹は蓮斗の拳を柔らかく包み、温かい粘液の様に絡み付いた。美樹の視界がぐらつき、猛烈な吐気がこみ上げる。同時に、拳を打ち込まれた場所からどくんと脈打つ様な感覚がこみ上げて来た。
「……ッくあぁっ?!」
美樹がびくりと痙攣しながら、上体を反らして仰け反った。叫んだ瞬間に粘度の増した唾液の飛沫が舞う。
下腹部の脈動は定期的に続き、まるで下腹部にもうひとつ心臓が発生した様に定期的に信号を脳に送っている。
それは温かく、柔らかくて甘い泥の中を裸でのたうつ様な信号だった。体全体を泥で汚しながら、甘い香りと優しい温かさに包まれたそれは紛れも無く背徳的で官能的な信号。
美樹は焦点のズレた目で下腹部を見下ろした。
アンダーウェアの生地を巻き込んで、蓮斗の骨張った拳が深くめり込んでいた。それを認識した瞬間、どくん……と拳のめり込んでいる腹部のあたりが脈打った。雷の様な快感が美樹の背骨を駆け上がり、頭蓋骨の中で破裂する様子がはっきりとイメージ出来た。
「んぅッ?! くはぁぁぁッ!」美樹は訳もわからずに沸き上がって来た快感に身体を捩らせた。腹部を殴られた苦痛と同時に発生した快感。頭の中を沸騰した嵐が吹き荒れている中、二発目の鉄槌が鳩尾に撃ち込まれた。
「んぶぅッ?! んぶ……ッ……んあぁぁぁぁ!」
「あははは……頬染めちゃって、可愛いなぁ」
「ぎ……ぐぅッ……ぎざま……」美樹がびくびくと痙攣しながら、涙の溢れる目で蓮斗を睨みつける。食いしばった歯の隙間から荒い息が漏れていた。「何を……んくッ……私に……何をした……?」
「あはぁ……美樹先輩……すごく気持ち良さそう……。気持ち良いですよね? 蓮斗さんにお腹殴られると……」久留美がとろんとした笑みを浮かべながら美樹の首筋に舌を這わせると、美樹の身体がビクリと跳ねた。堪えていた息を美樹が吐き出すタイミングで、蓮斗の膝が撃ち込まれる。
「ぐぼぉっ?!」
膝を腹に打ち込まれた衝撃で美樹の目が見開かれ、舌が口から飛び出す。
美樹は戸惑っていた。
臍や鳩尾、胃の辺りを責められる度に、じんわりと熱を持った葛湯の様な甘くとろみのある液体が子宮のあたりに沸き上がるのを強烈なイメージとして感じていた。その液体のイメージは腹部周辺を責められる度に子宮の中に溜まってゆく。
ぐじゅり……ぐじゅり……と蓮斗は容赦なく美樹の腹を責めた。久留美は美樹の背後から抱き着きながら、苦痛と快感に耐える美樹の顔をうっとりと眺めている。
美樹の中で無意識な感情が芽生えていた。
子宮を殴られたい。
この子宮に溜まった液体を、どうにかして欲しい。
「くぅッ……! 蓮……斗……」美樹が泣きそうな顔になりながら蓮斗を睨んだ。「うッ……はぁ……ぐぅッ……!」
子宮を殴って欲しい。その骨張った拳で潰して欲しい。
自分の意志に反した逆らいようの無い欲求。美樹は必死に頭を振ってその甘い欲望の濁流に飲まれない様に耐えた。
「へぇ……頑張るんだな。早く久留美ちゃんみたいに堕ちちゃえばいいのに」
「そうですよ先輩……一緒に気持ち良くなりましょう? 私も最初は痛かったけど、すぐに慣れますから」
「くっ……もう一度聞くぞ……私に何をした……?」
「俺がオーダーメイドした一点物の『チャーム』を使ったのさ。人妖の分泌するチャームを培養して、腹部が性感帯になる様にカスタムした特製のね……。俺に殴られて気持ちよかったでしょ? もうすぐ美樹ちゃんも、久留美ちゃんみたいに自分からお腹を殴って下さいってお願いするようになると思うよ?」
「ふざけろッ! そんなものに……私が屈するものか!」
美樹は自分に言い聞かせる様に叫んだ。
蓮斗はその様子を鼻で笑うと、軽い動作で拳を引き絞った。
ぐぽんッ……と蓮斗の拳が、美樹の子宮を抉った。
美樹は次の瞬間、熱を持った子宮に溜まった甘い液体が、まるで水風船が破裂した様に体内にまき散らされるのを感じた。それは細胞の隙間を強烈な快感の爪で引っ掻きながら体中に広まった。爪先から脳天まで快感が広がり、美樹の視界は星が散った様に明滅した。
「ふぐあぁぁぁぁッ! はぐッ……くふッ……あああッ!」美樹は身体を仰け反らせ、絶叫しながら快感に耐えた。絶頂の波が絶えず身体を駆け巡り、痙攣する身体を歯を食いしばって必死に抑えた。「んぐぅッ……ぐ……はぁ……はぁー……」
蓮斗が美樹に近づき、再び拳を引き絞った。拳が腹部に当たる瞬間、美樹は自分が無意識に腹筋を緩めたことに気がついた。自分は、快感に負けてしまったのかと、美樹は底の無い暗い穴に落ちる様な気持ちになった。