お題:JKサンドバッグ、大量の水を飲ませて吐かせる、マグロになってからも続く水袋打ち


リクエストをいただいて書いてみましたが、薄めな内容になってしまいました。
文中、意図的に空欄を設けておりますが、仕様です。
皆さんの憧れの人の名前を入れてみてください。

では、どうぞ。


追記:nnSさんのイラストを追加しました


「嫌な男な厭な話」



 僕は就職と同時に故郷を離れたから、ごく僅かながら存在した地元の知人との縁は、それで全て切れてしまった。もともと根暗で人付き合いが苦手だから、新天地では新しい友人が一人も出来なかった。当然、恋人などいた事は無い。時々、昔好きになった女性を思い出して、ありもしない妄想を繰り広げては暗く汚い部屋でのたうつことが唯一の楽しみだ。特に高校の頃に好きになった  さんとの妄想は格別だ。一目惚れの初恋。都内から転校してきた彼女は、田んぼの真ん中にある田舎の学校の、芋臭い生徒達の中でひときわ輝いて見えた。
   さんが転校してきたのは忘れもしない九月一日。夏休みが開けたばかりのまだ暑い頃だ。親の都合で時期外れの転校をしてきた  さんは、夏服の白いセーラー服を着て(僕の母校は制服の評判だけは良かった)、教壇の上で自己紹介をした。大人しそうな雰囲気だったが、体つきは都会の人らしく大人びていた。
 その日から、僕の妄想は始まった。
 妄想の中では、クラスで孤立している僕と  さんは秘密のうちに付き合っており、学校では目を合わせることも無いが、毎日下校後に秘密の場所で合流し、僕か  さんどちらかの家に行く……というストーリーが多かった。妄想の中で  さんは僕だけに微笑み、僕の話題に相槌を打ち、僕に抱かれた。  さんには実に様々なことをした。普通の性交、変態度が強いもの、奉仕、野外、殴る蹴る、殴られ蹴られ、時には暴漢に  さんが犯されている様子を僕が成す術もなく見守るという内容もあった。
 現実では結局卒業まで挨拶すらろくにしなかったというのに、  さんとの妄想は十年以上経った今でも日課になっており、いまだに強く興奮する。
 だから、高校を卒業して  さんと会うことが出来なくなってからは、単調な日々だった。
 そこそこの大学に入り、そこそこの会社に就職したが、  さんのいない生活は全く張りが無い。
 僕だけが淡々と歳を取っていく中で、妄想の中の  さんは永遠に高校生のままだった。
 平日は仕事に行き、家に帰り、妄想をしてから眠る。休日は妄想をしながら一日寝ている。
 仕事には全く身が入らず、人付き合いもせず、日々が川の流れの様にゆるゆると過ぎていった。
 そしてある時、僕は発作的に勤めていた会社を辞めた。
 年末に最後の賞与を貰い、手続きを全て終え、僅かな荷物と全盛期が過ぎた身体を引きずって数年ぶりに故郷に戻った。


「ねぇ?」
 呼びかけられて、僕は我に返った。
 アスファルトとタイヤの擦れる音。
 十人乗りのハイエースは運転席と助手席以外の全ての座席が取り外され、大人の男三人が楽に横になれるほど広い後部座席のあった部分には、ブルーシートが被せられた薄いマットレスが床一面に敷かれている。車の振動で体が動くたびに背中にむき出しの鉄板が当たり、がさがさとビニールシートが擦れる音が尻の下から聞こえた。車は曲がりくねった傾斜のある道を登っている。どうやら山に入ったらしい。ささやかな市街地の灯りはだいぶ前に無くなり、古めかしい街灯が時折窓の外に映った。
 芳香剤の匂いがやけに強い。
「ねぇ?」返事をしなかった僕に、僕の対面に胡座をかいて座っている男が少し大きな声で言った。豊かな白髪を七三に分け、型の古い四角い眼鏡をかけている。中肉中背で、大学教授だと言われればそうかなと思う風貌だ。「このヒトと、どういう関係なの?」
 男の指が、男と僕の間に横たわる女の子を指した。男の声は穏やかだが、有無を言わさない凄みを感じて僕は押し黙ってしまった。
「……さっきから聞いてるんだけど?」
「は……いえ……全く知らない人です……」
 女の子は気を失っている。夏服のセーラー服を着て、足首と、後手に回された手首にはガムテープが巻かれていた。口にもガムテープが当てられ、目はきつく閉じられている。汗で額に貼り付いた前髪や、短めのスカートから覗く脚が嫌でも目に入った。そしてこの名前も知らない女の子は、見れば見るほど  さんとしか思えなかった。顔や髪型、身体つきも全く同じだし、着ているセーラー服も僕の母校のものだ。
 十年以上前の、僕の初恋の人が今、僕の目の前にいるのだ……。
「知らない? 名前知ってるのに、知らない訳ないよね?」
「ほ、本当に知らないんです……ただ……昔の知り合いに似ていて……」
 男は不審そうな目で僕を見ながら眼鏡を直した。
「嘘言っちゃあいけないよ。僕逹がこの子を拉致した時、『  さん!』って大声で叫んで飛び出してきたじゃない」
「ストーカーなんじゃないですか?」運転席の男がバックミラー越しに僕たちを見ながら言った。ハンドルを握っている腕が太い。バックミラーに映った目はやけに大きく、爬虫類の様にぎょろぎょろしている。この男は、目の前の教授風の男よりもひと回り程度は若いようだ。「今思い出したんですが、こいつ女の子が店を出た時に後をつける様にこそこそと出てきたんですよ。彼氏って訳でもなさそうだし、もしかしたら同業かもしれないっすよ」
「ち、違います……僕はやましいことは……」
「いいから知ってることを言いなさいよ。コトが終わったらなるべくわからないようにして棄てたいんだ。そのためには、この娘の個人情報は多ければ多いほどいい。協力しないと、屍体が増えることになるよ」
 教授風の男が静かに凄んだ。
「ほ、本当に知らないんです! たまたま店で見かけただけで、その……昔好きだった人に、あまりにもそっくりだったから、思わず後をつけてしまって……」
「……昔? 結構歳が離れているように思うけどね」
「は、初恋の人です。高校の頃の転校生に一目惚れして……以来ずっと好きなんです。だから、思わず本人が目の前に現れたのかと……」
「苦しい言い訳だね……」教授風の男は笑みを消し、腕組みしながら僕を睨んだ。あまりセンスの良くない柄のシャツの裾がぱんぱんに張っている。歳は五、六十代に見えるが、爬虫類の様な男と同様にかなり鍛えているらしい。「君がいくつだか知らないけれど、高校生の頃なら十年……もしくはそれ以上前の話だよね? どう考えてもおかしいでしょ。タイムスリップを本気で信じているのならともかく、普通はそこまで思いが続かないか、間違えるにしてもせいぜい君と同い年くらいに成長した彼女を想像するでしょ? 目の前に高校生の頃好きだった人が制服のままそっくりそのまま現れたから、思わず後をつけて、危険な目に遭いそうになったから名前を叫んで飛び出した? 僕たちをあまり馬鹿にしちゃあいけないよ」
「本当なんです……ずっと……ずっと妄想していて……」
「妄想?」
 教授風の男が腕組みをしたまま話の続きを促した。
「高校の頃から……ずっと彼女で妄想しているんです。忘れたことなんか一日もありません。僕たちが付き合っている設定で、いろんな妄想をしていました。本人は今どこで何をやっているのか全くわかりませんが、僕の頭の中では、まさに目の前のこの娘と……いやこの娘で!」
 僕が言い終わると同時に、運転手の男が笑い出した。
「つまりズリネタにしてたってこと? 十年以上も一人の女を? ふはははは! すごいよあんた、本当だったら完璧に変態だ」
 教授風の男の腕が唸りを上げて、拳骨が僕の顔に飛んできた。僕は一瞬で吹っ飛ばされ、スライドドアの内壁に頭をしたたかに打ち付けた。痛みは感じないが、視界が船酔いした様にぐらぐらしている。口の中が鉄っぽくなり、吐き出すと血にまみれた歯が二本出てきた。
「あまりふざけていると、僕も怒るよ」
 教授風の男が女の子をまたいで僕の髪の毛を掴む。腰が抜けて立てない僕の頭を、そのまま力任せに壁に叩きつけた。殺される、と僕は思った。無意識に小便を漏らしていたらしく、太ももの内側に嫌な生暖かさが広がって行く。遠くでくぐもった声が聞こえた。教授風の男が僕の頭を叩きつけるのを止める。ほとんど見えなくなった視界の隅に、頭だけ起こして目を見開いている女の子の姿が見えた。
「んー! んんー!」
 女の子は必死に首を振っている。口元は隠れれいるが、表情は恐怖に引きつっていた。教授風の男は僕の顔を女の子の前に突き出すと。女の子の口元を覆っていたガムテープを外して、「この人……知り合い?」と聞いた。女の子は僕の顔と男の顔を何回も交互に見ながら、震える声で「……いいえ」と言った。
 その声はまさに  さんの声だった。

 男二人は雑木林の中に車を駐めると、  さんの足首を縛っていたロープを外して、僕と一緒に車の外に出した。両手足を縛られた僕は土の上に転がされ、夏の湿った土の匂いが強烈に鼻を突いた。
「全部話すとだね……」教授風の男が黒い手袋を嵌めながら言った。「僕たちはいわゆる強姦魔なんだ。それも、少し特殊な……ね。女性がいたぶられ、苦しむ様子に異様に興奮を覚える……。普段は同好同士がネット上のコミュニテイ内で同意の元に擬似的なプレイを楽しんでいるんだけど、たまには本物を味わいたくなるのが人間だ。今日は、いわゆるオフ会だね」
 教授風の男は爬虫類似の男に聞こえないように僕に耳打ちした。爬虫類似の男は  さんの手首を縛っていたロープを解くと、  さんの背中を自分の胸に押し付けるようにして羽交い締めにしている。白目と、剥き出しになった歯が、暗闇で異様に光っていた。
「さて……始めようか?」
 教授風の男が  さんに歩み寄る。爬虫類似の男の口角がつり上がり、  さんの歯がカチカチと鳴った。
「な……何をするんで––––」
   さんが言い終わらないうちに、教授風の男の拳がずぶりと  さんの腹部を抉った。
「––––うぶぅッ?!」
 僕は目を見開いてその光景を見ていた。背中を逸らされ、スカートとめくれ上がったセーラー服の上着の間には白くしまった生腹が見えていた。そこに男の黒い拳が一切の容赦無くつき込まれたのだ。  さんは一瞬で目を倍以上見開いたかと思うと、自分の腹部を覗き込むように首を下に折った。
「……うぇっ。『管理人』さん、ちょっと手加減してくださいよ。俺にまで衝撃が来たじゃないですか……」
 爬虫類似の男が顔をしかめながら管理人(男のハンドルネームか?)に言った。  さんは顔を下に向けたまま、びくびくと痙攣している。たった一撃で失神したのだろう。あの爬虫類似の男の身体から考えて、腹筋もかなり鍛えているはずだ。その男が華奢な  さんの身体越しに受けた衝撃に顔をしかめている。では、その衝撃をまともに受けた  さんのダメージは、どれほどだったのだろうか……。
「『ヒスイ』さん、顔を上げさせて……」管理人がヒスイに命じた。興奮しているのか、声が少し上ずっている。
「あ……ぁ……」
 ヒスイに顎を掴まれ、無理やり上を向かせられた  さんの顔は正視に耐えなかった。口は喘ぐように大きく開き、両目は大粒の涙を流しながらどこを見ているのかわからないほど虚ろになっている。口の周りは泡立った唾液でべとべとになって、ナメクジの背のように光っていた。
 どぶん……と砂袋を地面に落としたような音が響いた。
「ゔぅッ?!」
 幼さが残る  さんの悲痛な声が絞り出される。管理人がまた  さんの華奢な腹に拳をめり込ませたのだ。今回は先程に比べて大分手加減したようだが、それでも  さんは身体を仰け反らせて苦痛に身体を震わせていた。
「うッ……ッ…………うぐッ……あぁ…………」管理人は  さんの生腹から拳を引き抜かずに、嬲るような苦痛を与え続けていた。ヒスイも今回は身体への衝撃が無かったのか、  さんの反応を楽しむように覗き込んでいる。
「おッ……うぐッ…………おぶぅッ!?」
 管理人は突き込んでいた拳を、力任せに  さんの腹の奥に押し込んだ。  さんはびくりと身体を跳ねさせると、一際大きな悲鳴をあげた。だが、管理人の責め苦はそれで終わらなかった。教授が奥に突き込まれた拳を引き抜くのとほぼ同時に、  さんの鳩尾を突き上げたのだ。
「んごぉッ?!」
 先程までとは質の違う悲鳴が  さんの口から発せられたかと思うと、  さんの全身から力が抜けた。再び失神したようだ。  さんはヒスイの羽交い締めによって、皮肉にも顔から倒れ込むのを防がれている。
「うーん……かなり良いね。ちょっと交代だ。やっぱり歳だねぇ」
「何言ってるんですか。ものすごい衝撃で、俺ごとやられてるのかと思いましたよ。というか、今回はかなり良いんですか?」
「良いなんてもんじゃない。たいていは泣くわ喚くわで大騒ぎだし、酷いといろいろ垂れ流しで大変なんだ。向こうも必死だから、下手するとこっちも怪我するしね。今日みたいに綺麗なプレイは滅多に無いよ」
「そ、そうなんすか……かなり迷ったんすけど、思い切って申し込んで良かったぁ……」
 管理人がタオルで汗を拭き終わると、ヒスイと同様に女の子を羽交い締めにした。
   さんの制服は上着やスカートが汗で肌に張り付き、胸や太ももの付け根の身体のラインがしっかりと出ている。そしてその顔は、やられていることは暴力なのだが、まるで激しい性交の直後に絶頂に打ち震えている様にも見えた。
 憧れの  さんが、目の前で全身汗だくになりながら、快楽に身悶えている……。
 両手足を縛られていた僕は無意識のうちに、股間を地面に擦り付けていた。
 ヒスイの攻撃の最中、僕のその様子を目ざとく見つけた管理人は「そろそろ第一ラウンド終了だから、一発だけやらせてあげるよ」と僕に言った。
 ヒスイが満足した後、管理人の言葉通り僕は縄を解かれて  さんの前に立たされた。ヒスイに羽交い締めにされ、虚ろな目で喘いでいる  さん……。おそらくヒスイが拘束を解いたら倒れ込んでしまうだろう。その  さんの腹に、僕は恐る恐る拳を埋めた。蚊の止まる様な一撃だったと思うが、力なく弛緩した  さんの腹部に僕の拳はずぷりと吸い込まれていった。それはなんとも言え無い感触だった。他の何にも例えようの無い感触。僕の拳が湿って熱を持った腹部の皮膚にめり込み、筋繊維をかき分けて内臓に僅かながらに触れる。  さんの”中身”に、僕は一瞬触れたのだ。
 ヒスイが手を離し、  さんを乱暴に仰向けに寝かせた。失神した  さんは目を閉じ、乱れた髪を直すことも出来ずに体を投げ出している。めくれ上がったセーラー服の上着からは、痛々しく赤く腫れあがった腹部が見えていた。僕は強烈な快感を感じて、無意識のうちに  さんを殴った手で男性器をしごいていた。見ると、教授やヒスイも同じように自らの男性器をしごいている。僕たち三人はほぼ同時に達し、  さんの制服に染みを作った。

 いくら広いハイエースの後部座席とはいえ、四人も入ればかなり狭い。隅には未開封のミネラルウォーターのペットボトルが五本置かれている。その脇には漏斗と、大量のタオル。そして中央には、失神した  さんが寝かされていた。  さんは仰向けの状態で丸めた布団を腰の下に入れられている。自然と背中を反らされてた格好になる。そして両手は丸めた布団の中に入れられ、手首には手錠を嵌められていた。
 その手錠は、僕が嵌めたものだ……。
「水ってのは不思議だね……」管理人がボルヴィックを飲みながら言った。「無くなっちゃうと動物も植物も生きてはいけないけれど、大量にありすぎると洪水やら長雨やらでみんなダメにしてしまう。命を育んだり奪ったり……気まぐれなやつなんだよ、水ってやつは」
「僕は……」僕は異様に喉が渇き、渡された水を一気に飲み干していた。股の間がぬるぬるして気持ち悪い。「僕は……どうなるんですか?」
「どうもしないさ。ここまで来たら僕たちはもはや同類だ。仲良くしよう。君はあの娘が苦しむ様を見て興奮しただろう?」
「それは……」
「恥ずかしがるなよ。わかるさ。自分が異常だって認めるのは辛いよな」ヒスイが携帯をいじりながら言った。「でも、同じように異常なやつらが百人もいれば、それは異常じゃあない。俺も管理人さんが運営してるコミュニテイサイトに出会うまでは独りで悶々としてたもんさ。それからは、人生が随分と楽になったよ。今までは生きているのか死んでいるのかわからないような人生だったけれど、仕事にも精が出るし、半年かけて 今回のオフ会の参加費を稼ぐこともできた。管理人さんは俺の命の恩人さ」
 管理人は満足そうに頷いた。
 狂っている……と僕は思った。
 なにが命の恩人だ。
 やっていることは拉致監禁暴行の立派な犯罪じゃないか。確かに僕はあの時強い興奮を覚えたが、今では強く後悔している。なんでこいつらは薄ら笑いを浮かべているんだ。
「逃げたければ逃げればいいさ」管理人が言った。「それで通報でもなんでもすればいい。でも、よく覚えておくことだ。君はあの娘の制服に大量に射精している。鑑識が調べれば、僕達以外に君の体液も間違いなく検出される。言い逃れはできないよ。よく考えることだ。さっきも言った通り、君が望むにしろ望まないにしろ、君は僕達と同類だ」
 空が白み始めていた。
 管理人が目配せをすると、ヒスイがペットボトルの水を  さんの顔にかけた。  さんはむせながら目をさますと、仰向けに拘束された自分の姿に驚いていた。管理人が  さんの口に蛇のような速さでプラスチック製の漏斗を押し込む。それと同時にヒスイが水を一気に漏斗に流し込んだ。
「んぐッ……?! んんんんんん?! がぼッ?!」
 水責め。
 強制飲水。
 水と、簡単に拘束できる道具があれば、相手に死の恐怖を感じさせるほど猛烈な苦痛を与えることが出来る凄惨な拷問だ。
 ごぼごぼと音を立てながら、何度も  さんの喉が蠢いた。意思に関係無く、無理やり水が飲まされている。  さんは目を大きく見開いて足をばたつかせながら、必死に漏斗を外そうとしている。
 二リットルの水が数十秒で空になった。  さんの胃のあたりがわずかに膨らんでいる。
「げほっ! げほっ! は……うえっ……あ……ああぁ……」  さんは漏斗を外されると、焦点の定まらない目で虚空を見回した。
 ぼじゅん……という水袋を殴るような音が、ハイエースの車内に響いた。
 管理人がハンマーで杭を叩くように、  さんのわずかに膨らんだ腹部に拳を叩き込んだのだ。
「ひゅぐッ?! うぶえぇぇぇぇぇ!!」
   さんは殴られた瞬間、かっと目を見開くと、喉を蠢かせたまま噴水のように水を吐き出した。管理人は何度も何度も、最後の一滴まで絞り出すように  さんの腹に杭打ちを続けている。その度に  さんは痙攣しながら吹き出させた。呼吸ができていないのだろう。目を覚ましたばかりの  さんの瞳はすでに裏返っている。
「がっ……あっ……あぁ……ああぁ…………」
   さんは全身を濡らしたまま、声にならない声を発している。ばちゅん……ばちゅん……と湿った袋を打つような音が一定の間隔で響いた。  さんは空っぽになった胃を責められ続け、虚ろな顔を晒している。


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 反応が完全に無くなった頃、ヒスイが漏斗を  さんの口に押し込んだ。されるがままだった  さんの顔が恐怖に引きつる。先ほど受けた苦痛がトラウマになっていたらしい。必死の抵抗も虚しく、ふたたび二リットルのペットボトルは空になり、水袋打ちが始まった。ペットボトルは、あと三本あった……。

 管理人とヒスイが交代で仮眠を取った後、僕たち四人は車の外に出た。  さんは呼吸はしているものの自分の力では動くことも出来ず、管理人に抱えられるようにして車内に出ると地面に寝かされた。顔色は、そこまで悪くないようだ。
 管理人とヒスイはコンビニで買ったらしいパンを齧っている。
 二人は僕にも一つくれようとしたが、断った。物を食べられる心境ではなかったし、こいつらの僕に対して馴れ合うような気持ちを受け入れることが出来なかったからだ。
 じわじわと気温が上がっている。
 木々を見上げると、昨日の夜から今までのことが幻のように感じられた。だが、視線を下に戻すと、現実の  さんが倒れていた。
 絶対に通報してやる。
   さんをこんな目に遭わせたた男どもに制裁してやる。
 もう捕まろうがどうだっていい。
 おそらくどこかの場所で、僕と  さんは解放されるだろう。そしたら二人で警察に行くんだ。全て正直に話をして、さらなる被害者が出ないようにしなければ。
 ヒスイがどうしても眠いと言い、その場に座り込んでしまった。
 管理人は  さんを起こしている。
 ふらふらだが、なんとか立つことが出来るまでには回復したらしい。
   さんは管理人に腰と手首を持たれて、僕に背中を向けて抱えられるようにして立っていた。
 頭をはっきりさせようとしているのか、嫌々をするように首を振っている。
 嫌ぁ! という声がはっきりと僕の耳に届いたと同時に、ぱんと破裂音が木々の間に響いた。
 ヒスイの身体がビクリと跳ね、ガクガクと痙攣した後に動かなくなった。
 なんだ……何が起きているんだ……?
 管理人と  さんが僕の方を振り向いた。
 背後にはヒスイが頭から血を流して、身体を地面に投げ出している。
   さんは歯を食いしばり、両目からは大量の涙を流していた。
 その右手には……管理人が掴んでいる手首の先には、ピストルが握らされていた。
「通報するならすればいい……この人殺しが……」管理人が言った。引き金に乗っている  さんの人差し指に、管理人の指が重なる。「次はあの男だ……」