Яoom ИumbeR_55

Яoom ИumbeR_55は「男性→女性への腹パンチ」を主に扱う小説同人サークルです。

2018年02月

本日はりょなけっとの弊サークルスペースまでお越し下さり、ありがとうございました。
十分に刷ったつもりだったのですが、最後には数部を残すのみでほぼ完売のような状況で、本当に嬉しく思います。
何人かの方には本を手渡す時にお伝えしたのですが、今回本に収録した挿絵のカラーイラストをお求めいただいた方のみの特典として添付致しますので、よろしければお楽しみ下さい。
では、本日はありがとうございました!


お手数ですがパスワードとして
「1ページ目2段目の1〜3行目の最初の文字をローマ字にしたもの」を入力して下さい。

06
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本日無事に印刷所から受注完了の連絡が来ましたので、トラブルがなければ無事に本が出せそうです。
当日お越しいただける方はよろしくお願いいたします。


_日時
 2018年2月25日(日)

_スペース
 りょなけっと_O3
 
_新刊タイトル
 COLLECTION_017: [DOPE]

_仕様
 B5サイズ
 モノクロ22ページ(表紙4ページ含)

_内容
 先日投稿したサンプルをご覧ください

_文章
 上下2段組み

_イラスト
 5シーン(モノクロ)
 イラストレーター:スガレオン
 ※今回は印刷の関係でモノクロですが、カラー版はなんらかの形でお届けできればと思います
 
_配布価格
 800円(予定)

sampleのコピー

短いですが、りょなけっと新刊サンプルのラストです。
この後延々腹責めパートが続きますので、興味がありましたらよろしくお願い致します。
金額や詳細などは印刷所さんから入稿OKが出ましたら紹介させていただきます。





「被害者がいないわけないでしょ! 養分を吸収したり、そんな怪しい薬を使ったりなんかしたら影響があるに決まってるじゃない!」と、綾が叫ぶ。アリスは鼻で笑いながら、バカにしたように首を振る。
「だからそれも了承済みだって言ってんの。もちろん私が養分を吸収したらこいつらの活力や生命力は無くなっていく。薬だって必要以上の男性機能を無理やり引き出しているんだから、反動も副作用もある。でもそれも含めて私は説明したし、全部こいつらは理解しているってわけ」
「その通りさ」と、りっぴーが笑顔を貼り付けた顔で言った。「さっきも言ったけど、僕達は全てを了承している。月に一度のこのオフ会の後は一週間はベッドから起き上がれないし、それが過ぎた後もやる気や活力は戻らない。肌は荒れて髪は抜けて、一日の大半は寝て、起きていても頭がぼーっとして何も考えられなくなる。ようやく体調が戻ってきた頃にはまたこのオフ会だ。そんな状態だから僕は大学を退学になったし、一匹蛙さんは教師の、紅の探求者さんは大手企業で研究の職を失った。でも、それの何が問題だっていうんだい? こんなに素晴らしい体験が月に一度約束されていることに比べれば、仕事や家族を失ったり家を追い出されたりすることなんて些細な問題じゃないか。そうですよね?」
 りっぴーが振り返りながら聞くと、他の男二人が頷いた。狂っている、と綾は思った。一時の欲望や快楽を満足させるために一生を台無しにするなんて考えられない。この男達に他の選択肢は無かったのだろうか。
「ま、そう言うわけだから。これ以上痛い目を見ないうちに帰った方が身のためだと思うけど?」
「アリス! それは無いだろう」一匹蛙がアリスの話を遮った。「帰すわけないじゃないか。女子高生はストライクゾーンだ。それにこんな上玉なかなかおらんぞ。心配せんでも、アリスは真っ先に犯してやる。だがこの娘ともやらせてほしい。薬を二本三本と打てば、一日と言わず、二日でも三日でも動けるだろう? その後に死んだって儂は満足だ」
 他の二人から賛同の声が上がる。
「……別にいいけど、これ以上は無理だから。上限は二本。三本以上の量を吸収したら効果が切れなくなって、何が起こるかわからないわよ」と、アリスは呆れた顔をしながら三本の注射器を取り出して手渡した。
 綾が反射的に飛び出す。背後の入り口から逃げる手もあったが、人妖を前にして逃亡することは自分自身が許さなかった。せめて注射器を破壊してから組織に通報して応援を呼びたい。飛び出した綾に対して、りっぴーと紅の探求者が覆いかぶさるように襲いかかる。多勢に無勢とは言うが、綾はなんとか二人の腕をかいくぐり、りっぴーと紅の探求者の注射器を奪って壁に叩きつけて破壊した。まだ筋弛緩剤の効果が残っているが、即効性なだけあって抜けも早いらしく、先ほどに比べて身体はかなり動くようになった。男達へのダメージも通るようになり、りっぴーと紅の探求者の顎先を狙って殴り倒す。
「ぶっふ!?」と、綾に鳩尾を突かれた一匹蛙が呻いて、膝を折って崩れた。その隙に最後の注射器を奪って床に叩きつけた。
 綾はふらふらと襲いかかってきた紅の探求者を後ろ蹴りで蹴り飛ばし、立ち上がろうとしたりっぴーの顎にフックを放った。アリスをどうしようか迷ったが、感情のない表情で睨んでいるだけで襲ってくる様子は無い。綾はうずくまる男達に背中を向けて入り口まで走り、気合いと共にドアノブを殴ってひしゃげさせた。これでドアは壊さなければ開かない。自分も一緒に閉じ込められることになるが、今の状態であれば救援が来るまでもつだろう。綾がリビングに戻る。男達は殴られた苦痛からか、呻きながらのたうっている。りっぴーと紅の探求者は殴られた箇所を押さえながら部屋の中心あたりで仰向きに、一匹蛙は自分の腹を抱えて土下座をする様に壁際に倒れていた。アリスは相変わらずベッドルームの中に立ったまま綾を睨みつけている。
「こちら綾、人妖と戦闘中──」と、綾がイヤホンを耳にはめて話す。相手からの返事を待たずに用件を言う。「ちょっと複雑な状況で、人妖が一体と、一般人の協力者が三人。応援を要請し……」
 綾が目を見開き、言葉が詰まった。
 壁際にうずくまっていた一匹蛙の身体が、更に膨らんだのだ。
「……え?」
 綾が呟くと同時に、一匹蛙が体を起こす。
 手と口の周りが血で汚れている。
 ぶふっ、と一匹蛙が咳をすると、鮮血が壁に散った。ぱらぱらと音がして、ガラス片が床に落ちる。
 綾の顔が青くなった。一匹蛙が何をしたのか気がついたのだ。床と壁に血の跡がある。
 飲んだのだ。
 おそらく舐め啜る様にして。
 あの薬液を。
 破壊された注射器ごと。
 三人分も──。
 ズンッ! と、自動車と衝突した様な衝撃が綾の体に走った。
「──えっ?」
 何が起きたかわからなかった。
 目の前が暗い。視界を一匹蛙の膨れ上がった巨体が塞いでいた。一瞬のうちに距離を詰められ、綾の鼻が一匹蛙の胸に付くくらいまで接近を許していた。綾は目だけを動かして、衝撃のあった自分の腹部を見下ろした。
 一匹蛙の太い腕が、自分の剥き出しの腹に手首まで埋まっていた。
「──え? あ……ぐぷッ……ゔッ……ぶぐッ?! ぐぇあぁぁぁぁああッ!!」
 自分の体に何が起きたのかを理解した瞬間、凄まじい苦痛が綾の脳の中で弾けた。内臓を吐き出してしまいそうな苦痛に綾は濁った悲鳴をあげながらえずく。
「ぶふふふふ……か、帰さんと言っただろう?」
 崩れ落ちる綾の身体を、一匹蛙がセーラー服の奥襟を掴んで支える。がくんと綾の頭が振れた衝撃で、イヤホンが耳から外れて落ちた。イヤホンの中からオペレーターが何かを言った気がしたが、今の綾にはそれを理解するほどの余裕が無い。一匹蛙が目ざとくそれを見つけて踏み潰した。
「ゔぁッ……がはっ……」
 ガクガクと痙攣する綾の身体を満足そうに見下ろしながら、一匹蛙が綾の腹を露出させるようにセーラー服の裾を掴んでまくり上げた。綾は強引に身体を起こされ、頭ががくんと後ろに倒れる。綾はくの字から一気に仰け反る様な姿勢にされ、腹部から胸までが大きく露出して滑らかな肌色が一匹蛙に曝された。
「ほほぅ……やはり美味そうな身体をしているな。年増女が君みたいな身体をしていても下品なだけだが、若い娘のそれはギャップがあって堪らん。そんないやらしい身体で大人を誑かしおって実にけしからん。先生がたっぷりと個人指導をしてやらんといかんな……」
 顔や身体の大部分に血管が浮き出た一匹蛙が歯を見せて笑う様はまさに怪物だった。
 ぼぢゅん! と湿った音が部屋に響いた。

サンプルは以上となります。
こちらで全体の半分ちょいでしょうか。
この後も結構腹責めが続くので、興味のある方はイベントでお買い求めください。
※推敲前なので製本版とは内容が異なる場合があります。

詳細は入稿後にあらためて発表させていただきます。




 男達は路地の奥にあるラブホテルに入って行った。
 入口のそばの小さな看板には周囲の同種のホテルに比べ三割ほど高い料金の他に「予約可」「撮影OK」「パーティールームあり」と書いてあった。綾はどうしたものかと思い、オペレーターを呼び出した。
「こちら綾。男達は『プレジデント』というホテルに入って行ったわ」
「はい、確認しました。その辺りでは高級なホテルみたいですね」
「どうしよう……この手のホテルって、一般のホテルに比べてセキュリティが厳しいって聞いたことがあるんだけど」
「そうですね、事件や事故が起きないように監視カメラは一般のホテルに比べて多いです。特に入室と退室はモニターでしっかり監視されています」
「何か方法はありそう?」
「……ホテルのパソコンに侵入して確認したら、男達はパーティールームに入ったみたいですね。フロントには追加で呼び出されたと伝えて下さい。そこはアダルトビデオの撮影でもよく使用されているので、綾さんが出演する女性のフリをすれば入れると思います」
「全く自信無いけど頑張る……」
「そうして下さい。合鍵がもらえればいいのですが、ダメな場合は一度出て下さい。他に方法を考えます」
「了解、フロントと話した後にまた連絡するから」

 フロントには仕切りがあり直接顔が見えないことが幸いしたのか(監視カメラでは見られているのかもしれないが)、それともこの様なケースが多いのか、フロントの男は綾が撮影の都合で急遽追加で呼び出されたと言うと、ほとんど疑わずにホテル内に綾を入れてくれた。最初はノックして中から鍵を開けてもらうようにと言われたが、もう撮影が始まっているからと咄嗟に嘘をつくと、あっさりと合鍵を渡された。
 綾はオペレーターに侵入成功の報告をし、通信を切った。
 これからおそらく戦闘になる。
 相手は三人だが、見た目や発言からして賎妖……人妖よりも劣る部類だろう。人妖であればわざわざ群れる必要もなく、餌が取れないなどど発言することも無いからだ。力や戦闘能力も文字通り怪物並みの人妖と比べ低く、一般戦闘員でも倒すことは十分に可能だ。ましてや上級戦闘員になれた自分なら三体でも倒すことは出来るだろうと、綾は自分を鼓舞した。
 エレベーターを上がり、一番奥の部屋に向かう。
 徐々に心拍数が上がる。
 防音が行き届いているのか、各部屋に人の気配はするのものの、声や音は全く聞こえなかった。
 おそらく廊下にも設置されているであろう監視カメラを気にしながら、綾は不自然にならない様に静かに部屋の鍵を開ける。
 男の調子外れな歌声と、やたらと明るい音楽が廊下に流れ出た。靴を脱ぐための入口と部屋は引き戸で仕切られている。ドアを開けたらいきなり部屋で男達と鉢合わせすることも考えていたので、綾は溜めていた息を吐き出した。脱ぎ散らかされた汚いコンバースやノーブランドのワークブーツの中に、小さいサイズのエナメルの靴があった。靴を踏まないようにして、綾は素早く部屋の中に入ると、引き戸の側で身を隠しながら部屋の様子をうかがった。
 部屋は思ったよりもかなり広い。
 手前の部屋はリビングになっており、その奥はベッドルームになっている。リビングの中央にガラス製の大きなテーブル。それを扇状に囲む真っ赤なソファ。そこに三人の男達が座っている。ソファーの正面に設えたモニターにはアニメの映像が流れ、りっぴーと呼ばれる男がカラオケに興じていた。癇癪を起こして叫んでいる子供の様な酷い歌声だが、綾の立てる音が消えるので好都合だ。他の二人は携帯電話をいじりながらビールを飲んでいた。三人で飲み直したのか、空き缶が乾き物と一緒にテーブルの上に雑然と並んでいる。アリスはどこに行ったのだろう。
 歌が終わり、ぱらぱらと取って付けた様な拍手が起こった。
「いやぁ、いつ聞いてもすごい声量だな」と、一匹蛙が半ば呆れる様に言ったが、りっぴーは満足げだ。
「ははは、やはり身体がスッキリすると、声の出も良くなりますよ」
「そりゃあスッキリしただろう。入るや否やアリスに玄関で即尺なんてさせれば」と、一匹蛙が汚い歯を見せて笑った。
「ものすごい征服感だったでしょう? 三人の真ん中に跪かせて、洗っていないチンポで取り囲む……。思い出しただけでまた勃起してきましたよ」
 綾は急激に気分が悪くなった。自分が今いる場所で既に行為に及んだらしい。
「それにしても……」と一匹蛙がゲップをしながら言った。「あの女子高生は惜しかったなぁ……生意気そうだが美人だったし。もう少しで胸が揉めるところだったのに、意外と力が強くて抵抗されてしまったが……」
「本当に一匹蛙さんがダッシュした時はマジかよって思いましたよ。酔っ払うと見境が無くなるの、少しは自覚してくださいよ。あれ絶対あの娘にワザとだってバレてますからね」
 三人が笑い合う。一匹蛙は美味そうにビールを飲みながら続けた。
「ちんちくりんな割に胸は結構デカかったし──もう一度会ったら絶対にどこかに連れ込んで、チンポ突っ込んでヒィヒィ言わせて、あの強気そうな顔にたっぷりと精子ぶっかけてやる……」
「わ、私もしたいですよ……。じじ、実はさっきアリスとしてる時に、あ、あの女子高生のことを思い出しながら、だだ、出したんですよ。む、むしゃぶりつきたくなる様な、ふふ、太ももしやがって……くそッ……」
 綾は自分のことまで話題になるとは思わず、本当ならすぐにでも飛び出して男達のにやけた横っ面をぶん殴りたかった。男達は聞くに耐えない下衆な内容の会話を続けているが、アリスの姿を確認するまでは我慢しようと思い耐えた。
 ふと、男達が色めき立つ。
 部屋の奥のバスルームからアリスが姿を表した。男達の視線がそれに集まる。綾もそれにつられて部屋の奥を見て、目を疑った。
 アリスはほとんど紐と言える様な水着を着ていた。
 凹凸の乏しい薄い身体に、かろうじて胸の先端と局部を隠す黒い布。同じ素材でできた二の腕までを覆う長手袋と編み込みの入ったニーソックスが卑猥さに拍車をかけている。男達は興奮した様子でソファを立ち、アリスの元に向かった。
「いやぁ眼に毒だねこれは!」と、一匹蛙がわざとらしく目頭を抑えながら言った。「まったく、そんなけしからん格好をして大人を誘うとは! アリスには徹底的な教育的指導が必要みたいだな!」
「一匹蛙先生の言う通りだよ。アリスみたいないやらしい子供には、正しい大人が矯正してあげないとね」
「わわ、悪い子だなあり、アリスは! みみみみ、見てごらん? ぼぼ、僕のおちんちんが、こ、こんなになっちゃったじゃないか!」
 男達の声は興奮のために震えている。紅の探求者は早くも下半身を露出していた。
 アリスは虚ろな目で男達を見上げている。
 一匹蛙が膝立ちになって醜く唇を突き出し、アリスにキスをしようとしたところで、綾が猛然としたスピードで飛び出した。
 突然床を蹴る大きな音が聞こえ、男達とアリスが入り口の方を見る。次の瞬間、一匹蛙がリビングの奥のベッドルームにまで吹っ飛んだ。綾はアリスを巻き込まないように一匹蛙の左頬を殴り飛ばしていた。一匹蛙の巨体がベッドに落ちる。綾は床と摩擦音を響かせながら止まり、男達と対峙するようにベッドルームに背中を向けて片膝と片手を床に着くようにして構えた。
「な……なんだ?」
 突然のことにりっぴーが綾とアリスを交互に見る。ふッ、と綾が鋭く息を吐きながら床を蹴り、呆気にとられている紅の探求者との距離を一気に縮めて腹に拳を埋めた。紅の探求者はまったく動けず、「おぶッ?!」と濁った悲鳴をあげながらその場にうずくまる。
「……え? ち、ちょっと待って! ちょっと待ってよ!」と、りっぴーが手の平を見せながら叫んだ。突然侵入してきたセーラー服の女子高生に仲間が殴り倒されるという事態に思考が追いついていないのだろう、その顔は今にも泣き崩れそうだった。「一体なんなんだよ! ぼ、僕達が君に何をしたんだ?! け、警察を呼ぶぞ!」
「呼べるもんなら呼んでみなさいよ! さっきの会話全部聞いてたから。わざと人に抱きついてきた挙句、こんな小さな女の子を集団で襲っておいて、よくそんなことが言えるわね!」
 綾がありすを背後に隠すように庇いながら叫んだ。りっぴーは一瞬身体から力が抜けたような表情になり、すぐに激しくかぶりを振った。
「き、君はさっきの……? ち、違う! 誤解だ! その子は──」
「何が誤解なのよ! 詳しくは連行してから組織で聞かせてもらうから」
 綾が胸の前で自分の指の関節を鳴らしながら距離を詰める。りっぴーは壁際まで追い詰められ、どすんと尻餅をついた。綾は反撃を警戒しながら、男の顎先に正確に狙いをつける。賤妖とはいえなるべく最小のダメージで捕獲したい。綾は息を吸いながら腰を捻って拳を引き絞った。
 どん、と背中に軽い衝撃があった。同時に、チクリと腰のあたりに痛みが走る。
「んッ?! な、何?」
 綾が振り返る。
 アリスの整った顔が見えた。
 体当たりをしたらしい。
 そっとアリスの身体が離れる。
 手に光るもの……注射器だ。
「……てめぇ、余計なことしてんじゃねぇぞ」
 小さいがドスの効いた声が、アリスの薄く開かれた唇から溢れた。
 次の瞬間、ありすの左手が残像が残るほどのスピードでうねった。
「ぐぅッ?!」
 衝撃が綾の脇腹を貫いた。綾の歯の隙間から鋭い悲鳴が漏れる。それはアリスの小さい身体と細い腕からは想像できないほど重い衝撃だった。綾は思わず膝を着いてうずくまる。
「補給の邪魔しないでよ……こっちは命かかってんだからさ」
 アリスが空になった注射器を背後に放り投げながら言った。膝立ちになったため、アリスの顔と綾の顔が同じ高さになる。正面から見たアリスの顔は表情がほとんど無く、唇もほとんど動かない。まるで人形が体の中に埋め込んだスピーカーから話しているみたいだ。
「ほらぁ……だから誤解だって言ったじゃないか」
 りっぴーが立ち上がり、うずくまっている綾を見下ろしながら言った。綾は体に力が入らず、視界がわずかに歪むのを感じる。脇腹を殴られた衝撃と、打ち込まれた薬液のせいだろう。吐き気やめまいは無いが、身体が酷くだるい。即効性の筋弛緩剤的なものだろうか。
 りっぴーが綾のセーラー服の裾を掴み、強引に綾を立ち上がらせた。
「んー? ブラしてないの? なんだ、もしかして期待してたのかな? 心配しなくてもたっぷり可愛がってあげるから安心していい……よっ!」
 ぐずり、と綾の腹部に衝撃が走った。
「ゔぶぅッ?!」
 りっぴーのごつい拳が、綾の脱力した腹部にめり込んだ。ごつい拳が剥き出しの腹に埋まり、綾の滑らかな皮膚を巻き込んで痛々しく陥没する。
「ほらほら、なに倒れようとしてるの? あんな大立ち回りしたんだから、反撃されても文句言えないよね?」
 どずん……どずん……とりっぴーは全く手加減せずに容赦無く綾の腹部に拳を打ち込んだ。りっぴーは体格が大きいため筋力もあり、小柄な綾は腹部を突き上げられるたび身体が浮き上がる。
「あ……んぶッ?! ごぶッ?! ゔッ! ゔぐッ! ぐあッ!?」
 無抵抗な綾を散々嬲り、りっぴーが満足そうに溜息を吐いてセーラー服から手を離す。綾はたまらず糸の切られた操り人形の様に床に崩れ落ちた。通常であればこんな雑な攻撃などまったく問題ではないのだが、体が思う様に動かないため全てまともに食らってしまう。
 綾は膝立ちになり、呼吸がままならずに腹部を押さえたまま、苦しさと悔しさが混じった表情でりっぴーとありすを見上げる。
「そうだ。アリスちゃん、ちょっと予定と違うけれど、今日はもうアレちょうだい」と、りっぴーが綾を見下しながら言った。
 アリスはふんと鼻を鳴らすと注射器を取り出し、りっぴーに投げてよこす。りっぴーは慣れた手つきでそれを腕に刺した。血液が注射器内に逆流し、薬液と混ざり合ってどす黒く変色する。りっぴーは「ほーっ」と間抜けな声を出しながら、薬液と混じった血液を自分の体内に注入した。
「あ……ああぁ……あはぁ……」りっぴーが虚空を見上げながら口を開け、不明瞭なことをもごもごと言い出した。「お……おおぉ……きたきたきた……」
 綾は背筋が寒くなるのを感じ、思わず身体を後ろに引きながら「な……何を打ったの……?」と独り言の様に言った。
「あぁ……男性ホルモンを超強化するやつ……みたい」と言いながら、りっぴーは片手で口を押さえ、呻いた。両方の鼻の穴から血が吹き出している。額の血管も浮き立ち、吐き気に耐えている様に見えた。
 ふん、と、りっぴーが吠える様に唸った。身体が一回りほど膨らんだ様に見える。いや、事実膨らんだのだろう。汚いフリースの袖や胸、ジーンズの太腿部分がパンパンに張っている。りっぴーは毟り取る様に身につけている衣服を全て脱いで、下着のみになった。異様に筋肉が膨れ上がった身体の中心に、勃起した男性器が下着の布を押し上げて天井に向かって脈を打っている。
 あまりの光景に、綾は自分の背中にムカデが這い上がっている様な悪寒を感じ、「ひっ」と小さい悲鳴を上げる。だが、それも一瞬だった。綾は頭を振り、気持ちを奮い立たせる様に地面を蹴った。身体の動きが鈍くても、これ以上状況を悪化させるわけにはいかない。
 右手に出来る限り渾身の力を込めてりっぴーの鳩尾を撃ち抜く。だが、りっぴーはほとんど効いていないらしい。
「ダメダメ、女子高生がこんな乱暴なことしちゃあ……」りっぴーが自分に打ち込まれている綾の右手を掴む。「不良JKには、大人がお仕置きをしなきゃね」
 どぎゅる……というすさまじい音と共に、りっぴーの鈍器の様な拳が綾の鳩尾に突き込まれた。
「ゔぶッ! ん……んぐおぉぉぉぉぉおお!!?」
 悪夢の様な衝撃に、綾は限界まで目を見開き、口から唾液を吹きながら地獄の様な悲鳴を上げた。あまりの威力に綾の身体は背中が天井に付くくらいまで跳ね上げられ、全く受け身が取れない状態で床にうつ伏せに落下した。りっぴーがしゃがみ込み、綾の髪の毛を掴んで無理やり顔を上げさせる。
「わかったかい? 殴られる方はこんなに痛いんだよ? ま、僕はあまり痛くなかったけれど」
「ゔぁッ……がふっ……くっは……」
 鳩尾を強かに射抜かれたため、綾はまともに呼吸ができず、涙と涎を垂れ流しながらりっぴーの顔を焦点の合わない瞳で見つめた。その顔を見たりっぴーは興奮度を益々高めたらしい。
「ぐっ……ふぅッ!」綾は力を振り絞り、りっぴーの顔を平手打ちにした。乾いた破裂音が響き、りっぴーの身体が僅かにぐらつく。その隙に転がる様にしてりっぴーから離れ、リビングへ移動して体制を立て直す。「くはッ! はぁ……はぁ……」
 ベッドルームの暗がりの奥から男二人がのっそりと歩いてきた。一匹蛙と紅の探求者だ。二人ともりっぴーと同じ薬を打ったのだろう。すでに服を脱ぎ捨て、垂直に勃起させた男根を見せつけるようにしている。二人とも筋肉が一回りほど膨れ、血走った目で綾を睨みつけていた。
「おお! これは驚いた!」一匹蛙が大げさに両手を広げて言った。だらしなく垂れ下がった腹に薬液で筋肉が膨らんだ手足のその姿は本当に蛙のように見えた。「すわ警察が殴り込んできたのかと思ったら、君はさっきの女子高生じゃないか。こんなに早く再会できるとは思わなかったよ。わざわざ儂にブチ犯されに来たのか? 今なら明日の朝まで抜かずに腰を振り続けてやるぞ! ぐははははは!」
「な……なんなの……?」と、綾が腹を押さえながら言った。男達三人の背後からありすが姿を表す。「どういうこと……? あんた達、人妖じゃないの?」
「ジンヨウ……? 何だいそれは?」と、りっぴーが不思議そうに言った。
「なんだ……お前あの組織の戦闘員か」と、アリスが言った。男達と綾の視線がアリスに集まる。「本当にムカつく組織だな。こっちはこっちで好きにやってんだから放っておいてくれない?」
「じじじ、ジンヨウって言うんだ。に、人間じゃないってことは前に聞いたけれど」と、紅の探求者が言った。「ア、アリスがまだ『アイス』って名乗っていた頃……じ、冗談だと思っていたよ」
「おお、そういえば言っていたな。なんでも寿命が縮むとか、英気が失われるとかいうやつだろ?」
 一匹蛙の言葉に、りっぴーが手を叩いて「思い出した」と言った。
「『アイス』時代の頃か。そう言えばそんなこと言ってたな。セックスして養分を得るだとかなんとか……あまり気にしていなかったからすっかり忘れてた」
 綾が信じられないという様子で首を横に振る。人妖と知りながら、この男達は関係していたというのだろうか。
「僕達、あるアングラサイトでね……いわゆるロリコン掲示板で知り合ったんだよ」と、綾の引きつった表情に気が付いたりっぴーが手を広げながら語り出した。「最初は持っている写真や動画をその掲示板にアップして仲間内で見せ合うのが主な活動でね。だいたいは規制がそんなに厳しくなかった頃の写真集やビデオの一部だったり、海外のものだったりするんだけど、そういうのって既にみんな持っていたり見飽きたりしているものばかりでね。供給が極端に少ないから仕方がないんだけど、みんな新ネタに飢えていたんだよ。だからそのうち、ネタを自分でこしらえる奴が出てきた。学校の運動会を盗撮したり、更衣室にカメラを仕掛けたりしてね。生々しい新ネタに興奮したし、悔しかったよ。リアルでもパッとしないし、ロリコン掲示板でも乞食みたいな存在だなんて我慢できなかった。だから僕も色々やった。バイト代をはたいて中学生と援助交際してハメ撮りをアップした時は、神だ、なんて呼ばれて崇められたよ。あれは気持ちいいもんさ。自分が特別な存在になったみたいだ。普段の生活では後ろ暗い思いをしているロリコン野郎が、勇者だの神様だのってね……。一度やると止められないし、他の神と競うようになる。その当時競い合っていた神々が、一匹蛙さんと紅の探求者さんさ」
「そ、そんな時に管理人からメールが来たんだよ。いいい、良い話があるから直接会わないか? お、オフ会しようってね」と、紅の探求者がどもりながら言った。一匹蛙が話に割って入る。
「少し遅れて待ち合わせ場所に行ったら、いやぁ驚いたね。この御二方の他に、天使みたいな女の子がいるじゃないか。高校生や中学生までなら金か脅しでどうにかなるが、小学生となるとさすがに難しくてな。誰かどうやって調達したのかと思ったら、管理人の『アイス』だって名乗られてひっくり返ったわ! まさかロリコン掲示板の管理人がロリだったなんて夢にも思わんだろう。しかも自分を抱いてくれる男を探すために掲示板を立ち上げたって言うじゃないか。まさに願ったり叶ったりだ。その後はこの男性機能を強化するとかいう薬を打ってもらって、朝までぶっ続けでやりまくりよ。いやぁ、儂の人生はこの為にあったと言っても過言ではないな。アリスとの出会い以外のことは、人生のオマケみたいなもんだ」
「そういうこと」と、アリスが面倒臭そうに言った。「つまり、ここには被害者はいないってわけ。私はこの男達から養分を得られて、こいつらは私とセックスできて満足してる。誰も困っていないの。だから邪魔しないでくれる?」

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