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2018年06月

こちらの続きです。
間が開いてしまい申し訳ありません。
ラフの状態で読みにくいと思いますが、製本の段階で清書します。


 美樹の突進に蓮斗は一瞬早く反応し、久留美のシャツの襟をつかで真横に跳んだ。蓮斗の異様な素早さに美樹は少しだけ目を見開いた。美樹の手甲をはめた拳が鋭い音を立てて空を切る。視界の隅で蓮斗と目が合った。蓮斗は軽く口角を上げると、久留美の背中を押す。自分の胸に飛び込んできた久留美を美樹はとっさに受け止める。
「久留美!」と、美樹が久留美の顔を覗き込みながら叫んだ。
「えっ? あ……? は、蓮斗さん、なんで……?」
 久留美は熱病に冒された様なぼうっとした視線で蓮斗を追う。
「時間だ……」と、美樹を見ながら蓮斗が言った。口だけで笑っている様な表情をしている。「ようやく、夢が叶うんだ……」
 蓮斗は美樹の方を向いたままジリジリと扉の方へ移動しながら、ポケットから茶色い瓶を取り出して静かに床に置いた。
「……チャームの解毒剤だ。久留美ちゃんに使ってあげてくれ」
「なっ? そんなもの誰が信じるか!」と、美樹が吠える。
「だったらそのまま放っておけよ……。久留美ちゃんが今後まともな人生を送れなくなってもいいならな」と、蓮斗が言った。「俺は俺を好きになってくれるものが好きなんだ……。こいつは経口摂取で大丈夫だ。すぐに効く」
 蓮斗は薬瓶を蹴って美樹の方に転がすと、扉から素早く出ていった。部屋には美樹と久留美だけが忘れ物の様に残された。
「久留美! しっかりしろ!」
 美樹はハッと気がつき、久留美に再度声をかける。
「あ……先輩?」と、久留美がゆっくりと美樹の顔を見ながら言った。定まらなかった瞳の焦点がようやく美樹の顔で定まる。「先輩……蓮斗さんは……? もっとお腹……苦しくしてほしいんです。先輩でもいいです……私のお腹……ぐぽぐぽして虐めて下さい……」
 さっと顔に寒気が走った美樹の太ももに、かつん……と薬瓶が当たった。ラベルが貼られていない栄養ドリンクの様な茶色い小瓶。
 美樹は迷ったが、意を決して瓶を手に取った。
「久留美……これを飲め……」と、美樹は瓶のキャップを開けて久留美に差し出した。もう迷ってはいられなかった。今まで人妖に敗北した戦闘員やオペレーターが後遺症に苦しむ様子を何人も見てきた。後遺症は薬物である程度は抑えられるとはいえ、対症療法でしかなく、身体への負担も少なくはない。久留美にあの様な辛い思いはさせられないし、仮にもしこの解毒剤が本物であれば、分析すれば後遺症に苦しんでいる人々も助かるかもしれない。
 美樹はキャップに少しだけ中身を移し、瓶を久留美に差し出した。久留美は素直にこくこくと中身を少しずつ飲み込んでゆく。飲み終えたところで美樹は瓶の口を拭き、キャップに注いだ薬液をビンに戻して蓋を閉めた。
「……あ」
 久留美の瞳に光が戻ってくる。寝ぼけた子供の目が完全に醒める様に、不思議そうに美樹の姿を見た。
「久留美?」と美樹が聞いた。
「あ……先輩? 私……何を……? 私……病院で……それから……私……先輩……先輩!」
 久留美が美樹の首に腕を回す。胸に顔を付けて泣いている久留美の頭を、美樹がゆっくりと撫でた。
「大丈夫だ……落ち着け……」
「私……何してたんですか……? 怖い……」
「説明は後だ……とにかく今は避難するぞ」と、美樹が言いながら久留美の手を引いて二人で立ち上がる。久留美がぎょっとした様に美樹の全身……正確には戦闘服姿の美樹を見た。
「……先輩……あの……何ですかその格好?」
「……その説明も後だ」
「いえ、かっこいいです……なんだかすごく強そうで……」
 久留美がうっとりと溜息をつきながら言った。どうやら本心から言っているらしい。どうやって状況や戦闘服について説明しようかと悩みのタネは増えたが、少なくとも戦闘服のシオンがここにいなくて良かったと美樹は思った。
 久留美の手を引いて地下室を出て一階に上がる。
 玄関ホールに蓮斗の姿は見えない。
 開けっ放しの玄関からは雪が吹き込んでいた。
 二階に人の気配がして、美樹は身を屈めながら壁伝いに出入り口の扉へと向かった。久留美を連れて再び戦闘になるのはまずい。滑り込ませる様にして出入り口を出て、石畳を走った。正面には背の高い剣先の様な門が見える。
 ふと、門の外に小さな灯りが見えた。
 車のポジションランプだ。
 警戒しながら近づくと、黒塗りのレクサスから初老の男性が降りてきた。
「鷹宮様?」
 初老の男性は驚いた様に声をかけた。美樹も知った顔で、シオンの運転手をしている男性だ。
「……山岡さん? なぜここに?」と、美樹が聞いた。
「お嬢様をここまでお送りしたのです。ちょうど二時間ほど前になりますが……お嬢様からは帰るように言われたのですが、心配で居ても立っても居られず……」
「シオンも……」来ている、と美樹は思った。自分がここに来ることは伝えてはいないが、シオンの異様に鋭い勘はごまかせなかったらしい。美樹が建物を振り返る。この中のどこかにシオンもいるのだ。
「山岡さん……すみませんが、久留美を預かっていただけませんか? あと、これを……」美樹は久留美に飲ませた薬瓶を山岡に手渡した。「もし私が戻らなかったら、組織の人間に渡してください。その際に『チャームの解毒剤』と伝えていただければ」
「……承知しました。さ、こちらに……」
 山岡が後部座席のドアを開けて久留美を促す。久留美は戸惑いながらも「先輩」と美樹を振り返って声をかけた。「あの……私、何もわからないですけど……先輩たちのこと、本当に好きですから! シオン会長も、美樹先輩も!」
 久留美は泣いていた。
 強いな……と美樹は思った。訳のわからない事件に巻き込まれ、本来であれば全てを恨んでもいいはずなのに。いつの間にか後輩は大きく成長していたらしい。美樹はポケットからショートホープとジッポーライターを取り出して一本に火をつけた。
「預かっておいてくれ……」と、美樹はタバコの箱とライターを久留美に渡して、二人に煙がかからない様に雪の降る空を見上げて煙を吐き出した。「戻ったら吸う」と言って、美樹は建物に向かって走った。

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