整然と片付けられてた体育館にも青白い月明かりが入り込み、がらんと広い空間の静けさを一層引き立てていた。昼間の部活動や授業中の活気のある雰囲気とは対照的で、自分のブーツの足音がいやに大きく響いた。綾はひとまず体育館を対角線上に歩き、キョロキョロと周りを見るも、その中に動くものの気配は無かった。中央で立ち止まり、気持ちを落ち着かせるために深呼吸する。

「とりあえずここには居ないか・・・。それにしてもどうしてウチの戦闘服ってこんななんだろ?丈が短いからお腹は丸見えだし、スカートも・・・少し動いたらパンツ見えちゃうし・・・。そういえば友香のもブルマにニーソックスだったな。動きやすさのためとか言ってたけど、どう考えても上の趣味よね」

 若々しいむっちりした太ももにくびれた腹部。若くて張りのある巨乳がセーラー服を押し上げ、最高のプロポーションをフェティッシュな戦闘服が引き立てていた。「んー」と伸びをする綾をステージの袖から男が生唾を飲みながら凝視しているとも知らずに。


 自分とは違う足音に気づいたのは、綾が諦めて体育館の入り口の扉に手をかけたときだった。見ると、スーツ姿で長身のがっしりとした男が、体育館中央をこちらに向かって歩いてきているところだった。

「え?校長先生!?」

「ええ、綾ちゃん。こんな時間に会うとは珍しいこともあるものですね」

 男の名は桂木 涼。35歳という異例の若さでこの誠心学園の校長に就任してきた。当初は創業者の縁故かと噂されていたが、どうやら教育委員会からの直々の推薦らしい。長いこと外国の大学で教育の研究をしていたらしく、あらゆる物事に詳しかった。当然頭の回転も速くリーダーシップもあり、最初は反感を持っていた年配の教師たちが彼に従うのにそう時間はかからなかった。おまけに理知的な中に野生的な鋭さを持った容姿はたちまち女生徒達の憧れとなった。

「珍しい・・・ですか?」

「ん?」

「先生、こんな時間に何をされているんですか?」

 両手でこぶしを作り腰にあて、首を傾げてたずねる。そのかわいい仕草もさることながら、若さに裏打ちされた張りのある巨乳がセーラー服を押し上げ、ショート丈にカットされた上着からくびれた腹部とかわいいヘソが覗いている。男は思わず生唾を飲み込み、血液が股間に集まるのを感じた。

「それはこっちのセリフでしょう?」

男が綾に歩み寄る。

「校長という仕事は暇そうに見えますが、意外と忙しいのですよ。すべての生徒はもちろん教師も管理しなければならないですからね。やっと教育委員会への報告書の作成を終えたので、校内の見回りをして帰るところでしたよ。綾ちゃんこそ、こんな時間になぜここにいるのですか?」

 そう言われればその通りだった。常識的に考えて、今は綾のほうがこの空間には異質だ。

「あ、いえ、それは・・・探し物を・・・」

「何を探しているのですか?」

「いえ・・・友人に頼まれて・・・その・・・」

 咄嗟に嘘がつけない性格のためか、しどろもどろになっていると男はすでに綾の目の前に迫っていた

「え・・・校長先生?」

「ひとこと、言えるのはですね」

ズグッ!!

「・・・あ」

 男が笑みを浮かべる同時に、ノーモーションで男のこぶしが深々と綾の腹部に突き刺さっていた

「あなたの探している人妖は、もう目の前にいるということです」

「う・・・ぐっ!?・・・あぐあぁぁぁ!!

 不意打ちを受け、数秒置いて襲ってきた猛烈な苦痛に、綾はその場に崩れ落ちるしかなかった。

「あ・・・がっ!?・・・な・・・んで・・・嘘・・・?」

 男はひざまづいている真綾のセーラー服のスカーフをつかみ無理やり立たせると、容赦無くむき出しの腹部に向かってこぶしを突き刺した。

ドボォッ!

「うぐっ!?・・・ぐあぁぁぁ!!」

 綾は、その華奢な身体がくの字に折れ、両足が地面から浮くほどの衝撃を受け止めた。