ちょっと長くなり過ぎたので、2回に分けて「ERROR CODE AYA」の残りを更新します。
エピローグを除いて、あと1回で終了の予定です。

前回更新より時間が空いておりますので、過去のERROR CODE AYAを読んでいただいた方がいいかと思います。


また、雰囲気を盛り上げるためラストに挿絵の一部(表情部分のみカット、正規品はカラーです)を公開しております。
過去作品より凄惨な感じになっておりますので、苦手な方はご注意下さい。


では、よろしくお願いします。




 ぐぢゅり、という厭な音が綾の体中に響き、鼓膜に届いた。心臓のリズミカルな動きを衝撃で無理矢理歪められる。
 めり込んだままの拳が周辺の組織を巻き込んで抉る様にかき回されると、まるで心臓を直接鷲掴みにされた様な不気味な感覚が綾を襲った。
「ゔっ……ッ……?!……うぐぅっ!?」
 横隔膜が引き千切られた様な感覚。重篤な呼吸困難と、絶え間なく襲って来る、世界が反転する様な苦痛と吐き気。手足が痙攣し、身体がバラバラになりそうになる。
 反射的に後方に下がって涼の腕を抜こうとするが、一瞬早く涼の手が綾の背中に回された。涼はそのまま自分の身体に綾を引き付けると、素早く鳩尾から拳を抜き、すぐさま綾の下腹部を突き上げた。
「げぽっ!? か……がぶっ!」
 鳩尾へのダメージがほとんど残った状態で胃を射抜かれる。おそらく自分の胃は内壁同士がくっつくほどぺしゃんこに潰れているだろう。
 拳が抜かれ腹部の陥没が戻らないうちに、どぽんという重い音と共に膝が撃ち込まれた。筋肉が弛緩した腹部が広範囲で陥没し、むき出しの皮膚がミシミシと音を立てる。
「ぐぼぉっ?! ごぶ……うあああっ!」
「くく……やわらかいな……」
 綾は急に腰から下の感覚が無くなった様な感覚に襲われ、崩れ落ちる様に両膝を付いた。両腕で腹を庇う様にしてうずくまり、口からあふれた唾液がセーラー服を押し上げている胸のあたりに染みを作る。
 涼は綾の髪を掴んで顔を上げさせると、苦しむ綾の表情を満足げに見下ろした。
「あっ……あぅぅ……あ……」
「もう終わりですか? まだ始まったばかりですが……」
「ぐっ……うああああああっ!」
 思考よりも先に、身体が行動を起こした。綾は力を振り絞り、涼の両足を抱え込む様にしながら、肩で涼の腰の辺りに体当たりした。
 無我夢中で放ったタックルに涼は受け身を取れず、したたかに後頭部を打ち、くぐもった呻き声を上げる。
 すぐさま綾が涼の腰に馬乗りになり、涼の顎を拳で打ち抜いた。地道に鍛錬を積んだ上、アンチレジスト特製のグローブで固められた綾の一撃は、その小さな小さな拳からは想像出来ない程重い。
 ガードの隙間を狙って立て続けに連打を浴びせる。数発は確実に顔面に入り、ごつ、ごつ、という骨と骨がぶつかる音がコンクリートの壁に囲まれた倉庫内に反響した。
「ぷはっ! はぁ……はぁ……はぁ……」
 綾は涼の手首を掴んで封じると、溜まった息を吐き出した。
 ほぼ無呼吸で連打を放ち続けたために体力の消耗が著しく、肩を大きく上下させながら息を整える。
 涼は口内を切ったのか、唇の端から僅かに血が垂れていた。
「ほう……すごいな。まだこれほど動けるとは。君を動かしているのは友人への想いかな? それとも仕事への責任感かね?」
「んくっ……はぁ……はぁ……ずいぶん余裕じゃない? 体勢的に私の方が有利なのよ。マウント取られてるんだから、そろそろ抜け出す努力をした方が良いんじゃない?」
「そうですか? 私は君の魅力的な身体が近くで見られるので、もうしばらくこのままでもと思うのですが」
「まだそんなくだらないことを……。このままノックアウトされても知らないわよ」
「それはありません。君のスタイルは素直過ぎる」
 涼は手を捻って綾の手首を掴み返すと同時に腰を跳ね上げ、綾の身体を一瞬浮かせた。そのまま両腕を引いて上半身を引きつけると、綾の額に自分の頭をぶつけた。
「あうッ?!」
 不意をついた頭突きを喰らい、綾の目の前に星が飛ぶ。
 綾が無意識に両手で額を押さえたために涼の手が自由になり、無防備になった綾の腹に強烈な一撃が埋まる。
「ぐぶッ?! うぁ……」
 ショート丈のセーラー服から覗くむき出しになった腹部に痛々しく拳が埋まり、口から溢れた唾液が涼のダークグレーのスーツに落ちて染みを作る。不利な姿勢からも涼は二発、三発と拳を埋め、軽い脳震盪を起こしていた綾は腹筋を固めることもままならずに全てを身体の奥で受け止めた。
「ひぐッッ! ゔあっ! ぐうっ! ごぇっ……ぅあ……」
 綾はたまらず涼の身体に覆い被さる様に倒れ込む。呼吸が不安定になり、身体が小刻みに痙攣しているのが涼にも伝わる。涼の耳元にある綾のうなじからは甘い汗の匂いが鼻腔をくすぐり、押し付けられた同年代のそれより発育の良い胸は否応無しに劣情をかき立てた。
「んくっ……はぅ……ふぅっ……はぁ……はぁ……うぁ……え? あ……んむっ……むぅ……んんんっ!」
 涼は自分の耳元で喘いでいる綾の顔を持ち上げると、半開きになっている綾の唇に自分の舌をねじ込んだ。強引に綾の舌を吸いながら甘噛みする。
「んむぅ! ん……くぅぅっ……じゅるっ……んんぅ……」
 ぴちゃぴちゃと卑猥な音が響く。脳震盪と、打撃により内蔵をかき回された衝撃で朦朧とする意識の中、口の中を温かい軟体動物が徐々にその身体を溶かしながら這い回る様な感触だけが妙にリアルに感じる。
 涼は舌を吸ったまま体勢を入れ替えて綾を下に組み伏せると、混ざり合った唾液を流し込んだ。
「んぅ?! んんんんんっ!」
 チャームだ。綾は飲んではいけないと理解しながらも、涼の舌が自分の上あごを絶妙にくすぐると、ごくりと大きく喉を鳴らして口の中のものを嚥下した。
 綾はなんとか涼の身体を押しのけようとするが、身体が上手く言うことを聞かずに力なく肩や腕を触る程度しか抵抗が出来なかった。徐々に頭の中に薄靄がかかってくる様な感覚と、身体の中心が熱を帯びてくるのを感じる。目が蕩け、呼吸が深くゆっくりしたものに変わってくる。
 涼が唇を離すと、興奮で粘度を増した唾液が糸を引きながら垂れ、綾の唇の周りを汚した。
「やはり君は特別だ、神崎綾。君の全てが欲しい……。けじめだ、完全に敗北させてあげよう」
 涼は綾のセーラー服のスカーフと、スカートの腰の辺りを掴むと、軽々と自分の頭の上まで抱え上げ、跳び箱の上に仰向けになる様に叩き付けた。
「あ……きゃあっ! あぐっ……ぁ……」
 申し訳程度の緩衝剤はほとんど意味をなさず、強烈に背中を打った衝撃に目の前がチカチカと明滅する。
「君が私に勝てるはずが無い。そういう風に出来ているんです」
「あぐっ……ッ……うあっ?! ああぁ!」
 涼が綾の腹部を撫でさすりながら問いかける。度重なる腹部への攻撃を喰らい続け、軽く触れられただけでも内蔵を直接弄ばれている様な不気味な感触が綾を襲う。
「脆い……。こんなに苦しい思いをして、君に何の得があるというのです? 責任を押し付けられた挙句、結局は我々の糧になるだけなのに」
「何で……そんなこと……私に言うのよ……? それに……けほっ……責任って……何のことよ……?」
 涼は問いかけには答えず、跳び箱の上に仰向けになっている綾のセーラー服を捲り上げると、腹部全体を押し潰す様にぐちゅりと拳を埋めた。
「げぼぉぉぉぉっ!? がっ! ああぁ!」
 涼はジャケットの右袖を捲ると、全体重をかけて拳を打ち下ろした。綾の柔らかな腹部は涼の拳と跳び箱のマットに挟まれ、打ち込まれるたびに無惨に形を変えていった。
「うぐぅっ!? ぐううううっ! こ……この……」
 綾は必死に歯を食いしばって涼の攻撃に耐えたが、重力を利用して人間離れした力で振り下ろす鉄槌を、ガードする暇もないほどの連打で撃ち込まれ、次第に脳に酸素が供給されなくなった。次第に意識は切れ切れになり、ただ、微塵の慈悲も無く無惨に潰されていく自分の腹部を朦朧と眺める様になった。
「げっ!? ぐうッ! がぶっ……ぐああああぁ! ゔっ……ぐぅっ……ごぶっ……うぇっ……」
 涼は攻撃のペースを一切緩めず、苦しみもがく綾の顔を覗き込みながら息も継げないほどの拳の砲弾を放ち続けた。
 跳び箱に寝かされた逃げ場の無い綾の腹部の、布の無い素肌をピンポイントに狙い、ゴツく骨張った涼の拳が、まるで杵で柔らかい餅をつく様に、何度も何度も綾の滑らかな腹部を痛々しく陥没させた。
「ほらほら、どうしました? 早くガードしないと大変なことになりますよ?」
 涼は穏やかに呼びかけながらも、拳の乱打は更に勢いを増して容赦なく綾を襲い続けた。既に綾の瞳孔は点の様に収縮し、焦点の合わない視線は泳ぎ続けた。



名称未設定