遅れましたが、りょなけっと、無事に終了致しました!
そしてスペースに来ていただいた方、本当にありがとうございます。
参加者全ての皆様、お疲れさまでした。

総集編も、当初の予想を遥かに上回る方々の手にとっていただけました。
毎回高額ですみませんが、本当にありがとうござます。


下記に前日までのイベントレポを書きましたので、お時間のある時にどうぞ。
気が向けば当日編も書いてみます。






 マンションに着いたのは日付が変わる頃だった。ここ数日で爆発的に増えた業務に疲れきり、僕は親の仇の様にスーツをソファに投げつけた。仕方が無い。金を稼がなければ本が作れないのだ。カーテン替わりに下がっている茶色のブラインド。その上の壁には善意で描いていただいた自分のキャラクターの絵がフレームに入れて飾られている。
 命が吹き込まれた様なその絵に向けて親指を立てるのは僕の日課だ。明日も頑張ろう、そんな気分にさせてくれる。
 簡単にシャワーを浴び、パソコンのスイッチを入れるのと同時にビールをグラスに注ぐ。飲みながら明後日のイベントの参加要綱を見て、僕は、溜息を吐いた。
「(アフターイベント用の)景品として何かあればぜひお持ち下さい。(中略)リョナ関係の景品、リョナ関係ない景品。その他よくわからないものなどお待ちしております」
 見え見えのフリだ。
 今回の首謀者。
 ヤンデレない。
 あの男が考えそうなことだ。
 おそらく参加者を試すつもりなのだろう。
 製作に必死な奴らは全力で作品を作れ。そして時間的経済的に余裕がある奴はアフターイベント用の景品を持ってこい。ところで、貴様はイベントに参加する以上エンターテイナーの端くれなのだろうな? たった一人でも、自分以外の人間を楽しませることが出来るのだろうな? もう一度言おう……よくわからないものを持って来い……。
 僕は畜生と毒づきながら机を叩いた。壁に飾ってある絵がずれて、慌てて直した。
 九州を駆け回り「よくわからないもの」を探したはいいものの、僕には何も見つけることが出来なかった。候補に挙げていた「灰汁巻き(餅米を竹の皮で包んで不穏な黒い汁に付けたお菓子。お菓子と名乗りながらも味は無い)」や「鯖寿司」が賞味期限の関係でボツになり、必死に駆け回ったにもかかわらず結局何も見つけることが出来なかった。
 まぁいい。諦めよう。
 二本目の缶ビールを開けた所で、僕はイベントで使うポップや値札を作っていないことに気がついた。ブログで告知したとはいえ、新規の方も来る。僕は半泣きになりながら画像編集ソフトを起動した。
 時刻はすでに深夜一時を過ぎている。
 もう値段だけわかればいいや……と、投げやりな気持ちでチラシとポップを作る。酔いの為か途中操作を誤り、シオンさんの顔がえらいことになってしまった。極めて温厚な彼女も、おそらく日頃腹を殴られて続け、彼女なりにかなり不満が溜まっていたのだろう。結構本気で怖かったので慌てて消した。

02


 床に着いた時は三時を大きく過ぎていた。遅刻したらどうしよう……という不安をよそに、七時前にはすっきりと目が覚めた。これが遠足効果なのだろうか。やはり楽しいことに疲労は無縁である。途中職場に寄り、昨日残した仕事を片付けた。サービス残業ならぬサービス出勤である。社畜ここに極まれり。まぁいい。金を稼がなければ本が(略)。
 空港に着くと、早めに手荷物検査を済ませて土産屋へと向かった。景品の「アタリ」である博多通りもんを購入。だめだ。これでは主催者の御眼鏡(黄色いサングラス)に適わない。半ばヤケクソになって「あごだし(飛び魚から取った出汁。意外と高い)」でも買おうかと思った頃、陳列棚の隅で肩身の狭そうに佇んでいるあるものが目に飛び込んで来た。
 「替玉」である。
 替玉……福岡在住の人々にとって、「こんにちは」に並ぶ頻度で発言される言葉である。替玉。袋にでかでかと書かれた力強い筆跡。そして几帳面に揃えて入れられた博多細麺。素晴らしい。これぞまさに「どうしようもないもの」だ。なにせこれは「麺」ではなく「替玉」。おかわり用の麺なのだ。
 おかわり用であれば、当然一杯目に入れることは許されない。しかも博多細麺は醤油ラーメンに致命的に合わないのだ。
 当選者はりょなけっとで手に入れた替玉を握りしめて福岡に行き、店でラーメンを頼んで麺のみを平らげ、店員に東京から持参した「替玉」を差し出しながら、「あの……これ……茹でて下さい」と言わなければならないのだ(そこまで本当にするのかはともかく)。
 これはもはや景品ではなく、地獄への片道切符だ。
 せいぜい当選者はパスポートを持って福岡に向かい、飛び交う銃弾をかいくぐりながら豚小屋の様な匂いをまき散らすラーメン屋に向かうがよい。運が良ければ店主に頭を打ち抜かれずに、帰り道に薩摩芋の如く埋まっている手榴弾に片足を吹っ飛ばされるくらいで済むだろう。
 荷物と「替玉」を抱えながら無事に東京に着いた。
 前夜祭に参加するために主催のヤンデレないさんと量産型ねこさんと合流し、たいじさん行きつけのクジラ料理の店がある新宿に向かう。主催は何やら長い棒を持っていた。すわ仕込み杖かと警戒して距離を取る。主催はポスタースタンドだと誤摩化しているが、どうせ不当な手段で入手した物騒な物だろう。幸い、さすがの主催も山手線の中で抜刀(もしくは爆破)して事を起こす訳にも行かず、至極平和に新宿に着いた。
 参加者全員は前夜祭の店につつがなく合流した。リョナラーは頭の中は地獄絵図だが本人は至って真面目である。席は自分から見て左回りにたいじさん、ミストさん、量産型ねこさん、AwAさん、ヤンデレないさん、藤沢金剛町さん、あおさんであった。
 店は名物のクジラをはじめ、出て来るもの全てが美味であった。酒へのこだわりは強く、有名な酒蔵に料理に合わせたオリジナルの日本酒を依頼する気合いの入れ様である。
 気がついたらその店限定の日本酒の空瓶四本が転がっていた。日本酒を飲んでいたのは四名。一人一本ペースである。
 自称東大生のあおさんに会計を任せ、その日はお開きとなった。出来れば二次会へという気持ちもあったが、本日泊めてもらうブルジョワの友人から「眠いから早く来い」というメッセージがひっきりなしに来ていたため泣く泣く駅に向かった。
 明日はリョナラーが一度に集うりょなけっと本番である。
 果たして無事に帰ることが出来るのだろうか。