あわよくば学生服か体操服の一着でも手に入れられるのではないかと思い、俺は都内の誠心学院に忍び込んだ。
 大量に湿気をはらんだ夏の生ぬるい空気は夜十一時を回っても体にまとわりつくようにぬめっており、俺は時折ハンドタオルで額の汗を拭きながら暗い廊下を音を立てないように進んだ。不法侵入も慣れたものだと、自嘲気味に思う。女子学生が身につけている物への執着を自覚してから、もう何十年経つだろうか。今まで学舎に忍び込んだ回数は三桁を超えているだろう。自分でも病気の域に達しているとは思うが、人間の欲望を止めることは難しい。ましてやそれが三大欲求の一つであるで性欲であれば尚更だ。
 今、俺が忍び込んでいる誠心学院は、都内でも人気の私立学校だ。ガチガチの進学校というわけではないが、それなりに入試難易度や有名大学への進学率も高く、校風も自由で明るい。制服も私立らしく凝ったものであり、俺のような制服マニアの間での評判もかなり良い。そして何より、通っている女子生徒の容姿レベルがかなり高いのだ。マニア達が集まるインターネット上の掲示板に、時折隠し取りされた誠心学院の女子生徒の写真が貼り出される。投稿者は「神」として崇められ、俺達閲覧者は貼り出された女子生徒のレベルの高さに驚き、生唾を飲むのだ。
 だから、忍び込んだ。
 居ても立ってもいられなかったのだ。
 正面玄関の鍵が開いていたのは僥倖だった。守衛か、当番の教員が閉め忘れたのかはわからないが、運が良い。きっと今日は大物が得られるに違いないと思い、自然に口角が上がるのがわかった。
 だが、甘かった。教室や特別教室のドアは全てが施錠されていた。一応ピッキングの道具も持ってきたが、公立学校とは違い特殊な鍵を使っているため役に立たなかった。ドアを壊すわけにもいかない俺は数メートル先の教室内、ロッカーの中にしまってあるジャージや体操服を歯噛みしながら睨んだ。あきらめた俺はせめて体育倉庫で自慰でもしようかと思い、仕方なく体育館へと向かうことにした。体育館で着替える生徒などいるはずがないから、獲物が落ちている確率は限りなくゼロに近い。広い校舎内を迷いながら進み、なんとか体育館までたどり着いた俺は入口の前で足を止めた。
 体育館の一角の灯りが点いているのだ。
 一瞬、心が躍った。あわよくばカップルの生徒が一戦交えているかもと期待したからだ。俺は息を弾ませたまま、はやる気持ちを抑えてゆっくりと入口から中を覗き込んだ。そして、その信じられない光景を目にした。

 体育館の壁に設置してある肋木(ろくぼく)に、女子生徒が縛り付けられていた。その周囲には男が二、三人、女子生徒を取り囲む様にして立っている。一人はスーツを着ていて、残る二人は何も着ていないように見えた。女子生徒は悔しそうに歯を食いしばりながら、体をよじって両手足に巻かれた布を外そうとしている。その布は女子生徒の左右の手首と足首を肋木に固定し、女子生徒を直立させた状態で拘束していた。
「くくく……いい顔ですね……綾?」とスーツを着た男が言った。男の言葉に、綾と呼ばれた女子生徒を取り囲んでいる裸の男たちも低く笑っている。
 俺は目の前の光景が理解できず、しばし思考が止まっていた。
 綾と呼ばれた女子生徒は誠心学院の制服によく似たセーラー服を身につけていたが、上着の裾が大胆にカットされており、下腹部からヘソの上あたりまでが大きく露出していた。両手には革製のグローブのようなものを嵌めているし、ローファーもよく見れば底が厚く、ブーツとの中間の様な靴を履いていた。
 一瞬、アダルトビデオの撮影か集団レイプの現場に居合わせてしまったのだろうかと考えた。だが、綾と呼ばれた生徒は大げさに泣き叫んだり喚いたりすることなく、怯えと悔しさが入り混じった様な表情でスーツの男を睨み付けている。そこには何か使命感の様なものを感じ取ることができた。
「素直になった方が、身のためだとは思いますが」スーツの男はそう言うと、綾の露出した腹部を手のひらで撫でた。「の」の字を描く様にゆっくりと焦らす様に撫でさすっている。
「くっ……この、変態……!」
 芯のしっかりした声で、綾が抗議した。見ると、横に立っていた裸の男も綾の太ももの辺りを揉みしだいている。短めのスカートが僅かに捲れ上がり、白い下着がちらりと見えた。肉付きの良さそうな綾の太ももに男が指を立てると、弾力のある肌が男の指を押し返した。スーツの男が、綾の腹を撫で回している手をゆっくりと上へと移動させた。その手はセーラー服の上着の中に入り、綾の大きめな右胸を鷲掴みにする様にこね回している。綾は「んっ」と軽く声を発した後、下唇を噛んでスーツの男を睨んだ。男の手の動きはセーラー服の布地越しでもはっきりとわかった。やや乱暴に胸をこね回していたと思ったら、親指と人差し指の腹で乳首をしごきあげる様な動きに変わる。
「んっ……ふッ……こ……この……ッ!」
 綾は羞恥のためか頬を染め、目に涙を溜めながら身体をくねらせてわずかな抵抗を続けている。だが、手足の拘束は解ける気配を見せなかった。俺はあまりの状況に驚きながらも、ドアの陰に隠れながら硬くなった逸物を取り出してしごいていた。この状況がどのようなものなのか……例えばある種のプレイなのか、本当にレイプされかけているのかはどうでもよかった。なぜなら目の前にいる綾と呼ばれた女子生徒は、髪は茶髪で顔つきも活発そうに見えるが遊んでいる雰囲気ではないし、体つきはむちむちした胸や太ももにきゅっと締まった腰周りなど、同年代の女子生徒に比べかなりそそるものがある。要するに、とびきりの上モノだ。その上モノが、器具に拘束された状態で男達に囲まれ、身体を好き勝手に弄ばれている。俺はカメラを持ってきていないことを心底後悔しながら、次の展開を固唾を飲んで見守った……。

 男達は二十分ほど挑発するように綾の胸や太ももを撫で回した。スーツの男は顎をしゃくり、裸の男二人をやや遠巻きに下がらせる。スーツの男がどうやらリーダー格らしい。裸の男達の顔は暗くてよく見えないが、体つきは三人とも同じように見えた。
「さて……どうしたものか……?」スーツの男が綾の顎を撫でながら言った。「あまり手荒な真似はしたくないんですよ……効率の悪いことは嫌いでして……素直になっていただけるのなら、すぐにでも解放するのですが」
「ふ……ふざけないでよ。何をされたって、私は絶対に言いなりになんてならないから……」
「ほぉ……何をされても……ですか?」
「あ、当たり前でしょ? 女の子一人相手に複数で……それも拘束しないと強気に出られないなんて、そんな情けない弱虫に屈するわけないじゃない!」
「……なるほど」スーツの男は綾の顎ををさすっていた手をゆっくりと降ろし、指先で綾のむき出しの腹部を撫でた。「ではその情けない弱虫としては、貴女の身体にお願いしてみるしかなさそうですね……顔に傷が付くと後々楽しめなくなりますから……このお腹に……」
 俺はよく目を凝らして綾の表情を見た。強気に振舞っているが、よく見れば目にはうっすらと涙が溜まっており、歯は小刻みに震えているように見える。
 これはガチだな……と俺は思った。
 経緯は分からないが、これは何かの撮影やプレイなんかじゃなく、本当に綾という女子生徒が男達に尋問か、それに近いことをされているのだろう。綾の怯え方からも、それが演技ではないことが理解できた。
「……す、好きにすればいいでしょ! 何をしても無駄だってこと、わからせてあげるか……ぐあぁッ?!」
 どぎゅっ……という音が俺の耳に届いた。見ると、スーツの男の拳が、綾の腹部に埋まっている。
「んぐッ……ゲホッ! ケホッ……」綾は咳き込みながらスーツの男を睨み付けた。口の端から唾液が一筋、胸に向かって垂れている。

「ゔあっ! うぐッ! ぐぶッ! んあぁッ!」
 ずぐん……ずぐん……という肉を打つ音が体育館に反響している。男が綾の腹に拳を打ち込むたびに、綾の身体は大きく跳ねた。
「……どうでしょう? かなり手加減していますが、少しは協力していただける気持ちになりましたか?」
「うぐ……ッ……ゲホッ……あ……はぁ……な、何言ってるの? こんなことしても無駄だって言ったでしょ…………ゔあぁッ?!」
 ずぶり……と嫌な音がした。今までヘソのあたりを殴っていた男の拳が、綾の鳩尾に深々とめり込んでいる。俺は喉の奥が締まってくるような息苦しさを感じた。鳩尾は自分で軽く押しただけでも心臓を掴まれる様な感覚がするというのに、あそこまで深く拳を打ち込まれたらどれだけの苦痛だろうか……。
「ぐあッ!? んぎぃッ!? あああッ!!」
「少しは自分の立場を理解したほうがいい……。無防備に女性の弱点である腹を晒した状態で、防御もできない体勢で拘束されているという事実を」
 男は容赦なく綾の鳩尾に連続して拳を埋めた。綾の悲鳴の質も苦しげなものから、断末魔の様な危機感のあるものへ変化している。綾に余裕がなくなってきているのが手に取るようにわかった。綾の着ているセーラー服は腹部や脚が大きく露出しているから、綾の身体つきは初めて見た俺にもよくわかった。綾は出ているところは出ているが、身体自体は決して大きくはない。腰回りや脚はそれなりに鍛えているらしいが、それでも平均を超えてはおらず、まだまだスポーツ少女という範疇だ。要するに、年相応の女の子なのだ。男の酷い殴打に耐えられるようには出来ていない。
「んぐあぁッ! おゔッ!? ゔうぅッ! があぁッ!」
 男は鳩尾一点への攻撃を止め、鳩尾やヘソの周辺、そして子宮のある下腹部のあたりと、一発ごとに位置を変えながら綾の細い腹を責めた。そのたびに綾の身体は電気で打たれたように跳ね上がったり、身体を丸めるように縮こまったりと様々な反応を見せる。むき出しの腹を執拗に責められ、その肌にはうっすらと痣が浮かんでいた。
 綾の上体が力が抜けて前かがみになるたびに、横に控えている裸の男がセーラー服の襟を掴んで上体を起こした。無防備な綾の白い腹部がスーツの男に晒される。
 ずぷり……と低い音がした。男は綾の下腹部に拳を埋めたまま、抜かずにぐりぐりと掻き回している。
「おゔッ!? あ……だ……だめ…………そこ……は……」
「子宮だ……女性のみの急所なので、私にはその痛みがどの程度か想像ができませんが、かなり効いているみたいですね」
 綾は苦しそうな金魚のように口をぱくぱくと動かしながら、自分に突きこまれている拳を見つめた。男はまるで女性器を愛撫するかのように、綾の腹に埋めた拳を抜き差ししたり前後にピストンのように動かしたりして綾の反応を楽しんでいた。拳が奥に付き込まれるたびに綾は悲鳴を上げ、身体を仰け反らせて苦痛に耐えている。
 男はひとしきり綾の子宮を責めると、思い切り拳を脇に引き絞り、今まで以上の強さで綾の腹部を殴った。どずん……という、重い砂袋が地面に落ちたような音がした。綾の腹部は男の拳が手首まで隠れてしまうほど深く陥没している。
「ひゅぐぅッ!?」綾は舌を限界まで突き出し、瞳孔が収縮した目を泳がせながら小刻みに痙攣している。苦痛が限界を超えたのか、膝が笑ってまともに立つこともできない様子だが、手首を固定されているため倒れこむこともできない。「あ……うぶッ……ぅぁ……」
「おっと……かなり効いてしまったみたいですね」男は拳を綾の腹にめり込ませたまま、綾の耳元で囁くように言った。綾は……おそらく聞こえてはいないだろう。「これと同じ力で鳩尾を抉られたら、どうなってしまうのか……」
 綾の身体がぴくりと反応した。小さい動作で首を振る。綾が初めて見せた、完全に怯えた表情だった。男がギリギリと音がしそうなほど拳を引き絞る。綾は歯を食いしばって顔を逸らすように恐怖に耐えているようだった。
 どぼぉっ……という、とても人体が発した音とは思えない音が響いた。
 綾の鳩尾は、目を逸らしたくなるほど悲劇的な深さで、男の拳が痛々しく埋まっていた。
 綾はほんのコンマ数秒、自分に突き込まれた男の拳を信じられないという表情で見つめた後、電気椅子にかけられた死刑囚の様に身体を跳ねさせた。
「ふぅッ?! う……うぐあぁぁぁッ!!」耳を塞ぎたくなる様な悲鳴が体育館内に反響する。綾はしばらくびくびくと断続的に身体を痙攣させた後、糸の切れた人形の様に完全に脱力した。男は綾の髪の毛を掴んで顔を持ち上げる。軽く目が閉じられ、涙や汗や唾液が体育館の灯りに反射してテラテラと光っていた。
 俺はかつてないほどの量を射精していた。俺はてっきりあのまま綾が輪姦されるものと期待していたが、まさか執拗に腹を殴る拷問が始まるとは……完全に予想外だった。しかも、その様子はかなり股間にきた。殴られるたびに跳ねる身体や、苦痛に耐えたり舌を出して弛緩している表情は、俺に激しく絶頂する女を思い起こさせた。もっと殴ってくれ……と念じながら、俺は次の展開を待った。
「さて、これからどうするか……朝まで犯し続けるのもいいが」スーツの男は失神した綾の右胸の柔らかさを堪能しながら、考えを巡らせている。「まずは、邪魔者の始末からですね……」
 かすかに、背後から物音がした。振り返る。先ほどまでスーツの男のそばに立っていた裸の男が、俺の背後に立っていた。