5月3日の腹パで出品する「ERROR CODE:AYA完全版」のオマケテキストが出来上がりました。
いつも通り文章はこちらで全て公開します。
時系列的には綾がクラスメイトに輪姦され、少し時間が経ってシオンが綾の元に来る間の、外伝的な内容です。
では、どうぞ
魚は、溺れるのだろうか?
溺れるという事は、水に嫌われるという事だ。
魚は水の中でしか呼吸が出来ず、餌もとれず、子孫も残せない水に依存した生物だ。仮に何らかの理由で魚と水の関係が悪化でもしたら、魚は水に対して媚び諂い、靴の裏を舐めてでも水の機嫌を取らなければならない。そうでなければ、死ぬしかないのだから……。
今にも目の前に落ちてきそうな重々しい曇天から降り注ぐ雨を見つめながら、衣笠 紬(きぬがさ つむぎ)は溜息を吐くと、組織へと通じる隠し扉を開けて薄暗い階段を降りて行った。
今朝方から降り始めた雨は一層勢いを増して、紬のローファーやソックスを濡らした。リノリウムの床と濡れた靴底が擦れ合って、甲高い音を響かせる。
重い雨だった。
決して強くはないが、その雨は無数の人々に踏みつけられた都会のアスファルトにこびり付いた汚れを、まるで海洋生物が身体から分泌する粘液の様に絡め取って舞い上がらせ、熱気と湿気を孕んだ初夏の気候を一層不快なものにした。
アンチレジストの会議室の雰囲気もその不快極まりない外の気候と同様に重いものだった。程よく効いた空調も、部屋の隅に置かれたプランターも、無垢材で出来た高価なテーブルも、その粘り気のある空気を洗い流してはくれなかった。漂白された様な蛍光灯の灯りだけが、テーブルを囲む十数名の人間を悲し気に照らしている。
綾が負けた。
このセンセーショナルな事実はすぐには公表されず、数日が経過した後に一部の戦闘員、オペレーターが集められた合同会議の場で発表された。
一番上座に位置する一角には人ではなく大型のモニターが置かれ、アンチレジストのトップ、ファーザーの側近が声のみで参加していた。
報告を聞いて最初に声を荒げたのは綾専属のオペレーターである紬だった。会議室の中にいる全員の視線が、一様にその小柄な身体に集中する。紬はその視線をはね除ける様に言葉を続けた。
「私は納得出来ません! あれほどの実力がある人を、たった一回の失敗で処分するなんて!」
モニターの向こうにいる人間に対して矢を放つ様に睨みつけながら紬は言い放ったが、ブラックアウトしたモニターはそんな紬の姿を嘲笑うかの様に、歯を食いしばってい紬の顔を反射させていた。
「処分とは人聞きの悪い。これは正当な下命の元の行動。いわば任務です」
機械で加工された女性の声がモニターから聞こえる。
「実力の無い者にいつまでも優位的立場を与えていては、いずれは周囲にも影響を及ぼします。悪貨は良貨を駆逐すると言うように、あなたや私を含め、常に厳しい目で周囲から見られている事をお忘れなく」
「綾さんがいつ、その優位的立場を利用したんですか?!」
「ましてや今回の事は命令無視の単独行動。神崎綾には初戦での敗北の後、組織の指示が出るまでは自宅待機を命じていました。それを勝手に夜の学園に侵入し、挙句ふたたび敗北して敵の手に堕ちるとは、これを暴走を呼ばずに何と呼ぶのですか? 一般戦闘員の規範となるべき上級戦闘員にはあるまじき失態にファーザーも失望しています。皆さんのお手元にある下命書も、ファーザー直々のものです」
紬は全員に配られた書類のコピーに視線を落とした。今では珍しい日本語のタイプライターで打たれ、太めの万年筆で「F」のサインが書かれている。紛れも無くファーザーからの下命書だ。
下記の者、本日○年○月○日を持って階級を変更する。
・神崎 綾
旧階級 上級戦闘員
新階級 補助戦闘員
特記
上記は神崎綾があくまでも任務続行可能な状態であった場合に限る。チャームによる重篤な精神汚染が進行していた場合は処分も検討する
補助戦闘員とは一般戦闘員の任務の遂行をサポートする後方支援部隊だ。具体的には事前に地理や周辺状況を把握してオペレーターへ報告、時にはターゲットの人妖、賤妖に接近し行動を監視することもある。入隊したばかりの隊員が配属される事が多いが、オペレーターとは違いターゲットと接触する危険性が高いため、この段階でミスをして普通の生活を送れなくなった隊員も多い。
しかも降格以前に精神汚染が進んでいた場合は最悪殺すとも書いてある。紬の心は暗い井戸の中に放り込まれたように暗澹としていた。
「でも……でも!」
紬は悔しさから下唇を噛む。何かを言おうとしても、肺からせり上がってきた様々言葉が喉の辺りで形を成さず、ぐずぐずに溶けてしまった様に消えててしまう。
「もうあの人は無理よ……」
一般戦闘員担当のオペレーターが口を開いた。紬は顔を知っている程度だった。
「神崎さんに実力があるのは認めるけど、今回の事はフォローのしようが無いと思う……。戻ってきてもらっても、またいつ同じ様に単独行動して問題起こすかわからないし、既に精神汚染が進行しているかもしれないじゃない? 機密を喋られる前に対処するのも方法のひつとだと思うけど」
狭い空間に、同調する声がひそひそと響く。紬は自分自身が否定されている気分になった。
「だからって、綾さんの代わりなんて早々見つかるわけ……!」
「一般戦闘員の中にも優秀な人材はたくさんいるわ。その芽を摘んでまで神崎さんを残す理由は無い。あなたが神崎さんにこだわるのは個人的な感情だけでしょう? これは組織の問題なのよ」
「何かあったら割を食うのは私達なのよ。神崎さんがこの組織の場所を喋って人妖達がなだれ込んできたら、あなた責任取れるの?」
「仲が良いのは結構だけど、公私混同は止めてほしいわ」
「そもそも神崎さんってそんなに実力あったの? 訓練での成績は良くても、実戦で負けたら意味ないじゃない」
「衣笠さんのよく言ってる『あの人は性格が良い』ってのも、何かあったらこういう風にフォローしてもらおうって考えが神崎さんにあったからなんじゃない?」
「いつもニコニコして、何か裏がありそうって思ってたのよね」
会議室内の空気の粘度が高まり、コールタールの様な重く黒い雰囲気が会議室を満たす。枯れ葉同士が擦れる様なひそひそとした批判の音はまだ鳴り止まない。
綾を蔑む声が、まるで数百匹の蟻が脳の皺一本一本を引っ掻く様に紬の頭の中を這い回る。気持ち悪い。吐き気がこみ上げる。強く噛み過ぎて、紬の下唇から血が滴る。ざわざわとした黒い感情が臍の辺りからせり上がってきた。
紬が椅子を蹴って立ち上がる。白いイームズのシェルチェアが墨色の絨毯に倒れ、鈍い音を立てる。全員の視線が自分に集まる。樹脂で出来た椅子が倒れる軽い音までもが綾と自分を嘲笑っている様に聞こえた。
部屋を出ようとした所、背後から射抜く様な視線を感じ、紬はびくりと足を止めた。
振り返ると戦闘員の座っている席の上座から、上級戦闘員の鷹宮美樹が射抜く様な視線を自分に向けていた。最高級の日本人形の様に、腰まで届きそうなほど長く艶のある真っ直ぐな黒髪を手櫛で一度だけ梳くと、静かだがよく通る声を発した。
「そのくらいにしないか? ここで綾の人間性を批判しても何も始まらない。大事な事は綾の処遇をどうするかではなく、綾自身をどうするかだ。助けるのか助けないのか。助けるとしたら誰が行くのか? 見捨てるにしてもこのまま放っておくのか……最悪口封じをするのか。どうなんだ?」
会議室内が静まり返る。美樹は会議室内の人間を左から右にゆっくりと見回す。
「ちなみに綾は身体こそ小さいが、運動能力が高い上に精神力はもの凄く強い。まぁ、今回はそれが空回りしてしまったが……。どちらにせよ、建設的な意見を頼む。私は助ける方向なら全力で支援するが、口封じは遠慮したい。個人的な意見を言わせてもらえば、精神汚染が進んでいるのかどうかはまずは救出してみなければ判断がつかないだろう? まずは綾の身柄を人妖から奪還する。その後検査でも何でもすればいい」
その落ち着いた静かな声は、冷たく澄んだ綺麗な水が川の淀みに流れ込んで来る様に、徐々に会議室の空気を洗い流した。紬も黒い感情がいつの間にか小さくなっている事に気付く。
「賛成です。だから紬ちゃんも落ち着いて座って……」
甘い香りがふわっと漂ったかと思うと、不意に耳元で声がした。
いつの間にか美樹の隣に座っていたはずの、美樹と同じ上級戦闘員の如月シオンがまるで瞬間移動をしたかの様に紬の隣に立っていた。
戦闘時や実戦訓練では戦闘用にカスタムしたメイド服を着て、美樹と同じく腰まで届く長い金髪をツインテールに纏めているが、今日は学校の制服を着て髪型をストレートに下ろしているため普段よりも大人びて見える。
倒れた椅子を丁寧に起こして紬に座る様に促すと、シオンも自分の椅子を持ってきて横に座り、そっと紬の手を握った。
「綾ちゃんの処遇が決定したという事は、上層部の方々はそれなりの確証を掴んでいるという事ですよね。どのような手を使って確証を得たのかは大体想像出来ますけど……。ただ、物事を想像だけで仮定し、それに基づいて行動を起こそうとすると悪い結果しか産まれないと思います。もし機密を口外するほどチャームに汚染されていないのであれば、私も美樹さんと同じく救出するべきだと思います。処遇を決定するのはそれからでも遅くはないのでは?」
シオンがモニターに向かって静かに語りかけると、美樹はふっと笑いながら「そんなに怒るな」と呟いた。紬はぎくりとしてシオンの顔を覗き込んだ。
「で、どうなんだ。シオンの言う通り、綾がどの程度チャームに汚染されているかわかる資料はあるんだろう? 助かる見込みはどの程度あるんだ?」
「そうですね……。如月さんの仰る通り、我々は神崎さんがかなり汚染が進んでいる状態である資料をいくつか入手しています。説明するよりもご覧頂いた方が早い様ですので、モニターをご覧下さい。誠心学園の体育倉庫で撮られた映像です」
「盗撮した、の言い間違いだろう?」と美樹は言った。
会議室内の十数人の視線がモニターに集中する。
ブラックアウトしていたモニターには体育倉庫内で男性型の人妖と対峙する神崎綾の姿が映し出された。
紬の手を握っているシオンの手の力が、僅かに強まった。
「今日こそ……あんたを倒すから……」
言い終わると同時に、綾が男性に突進した。綾の声はいくぶん震えているように感じた。部屋の端から中央で直立している男性へ距離を詰める。動きも明らかに精彩を欠いている。普段であれば水の中を泳ぐ魚の様に滑らかに移動する綾であったが、映像の中の綾は必死に飛ぼうと羽ばたく鶏の様にぎこちなく見えた。
綾の放った拳はことごとく空を切り、軽々と躱される。普段は見慣れない蹴りも放っているが、いずれも男性に最小限の動きで避けられ、十分も経たないうちに綾は肩で息をして顎からは汗が滴っていた。
「はぁ……はぁ……な……何で……何で当たらないのよ……」
「自分でも気付いているでしょう? あなたは既にチャームに毒され、本能的に私に敗北する事を望んでいる。そしてその先も……。大人しくこのような茶番は止めて、友香の様に素直になればいいものを……」
「うるさいっ!」
綾が拳を握りしめながら叫んだ。
「私は……アンチレジストの戦闘員なの! あんたを倒す事が私の任務で、私がここにいる意味なのよ! それすら無くなったら、私が私でいられなくなる!」
絞り出す様な綾の叫びを聞いて、男性はやれやれと首を振る。カメラは男性の背中からのアングルのため、その表情は窺い知れない。
「自分の存在意義を他人に依存するとは愚かな……。今のあなたは生きているのではなく寄生している。しかも餌を貰うために叫ぶ雛鳥の様にうるさく喚きながら……」
「うるさいって言ってるのよ!」
綾は叫びながら拳を繰り出すが、大振りの正面からの攻撃のために男性に軽く躱され、代わりに鳩尾を突き上げられた。
どぽん、という重い音が響き、綾の足が地面から浮く。
「ぐぷっ?! ごぽッ……」
「しかしあなたの様に強情な人も珍しい。本来ならとうに身も心も私に差し出しているものを……。まぁ、それも今日までだ。今日は最後までするつもりなので、覚悟しておきなさい」
男が綾の胸ぐらを掴むと、膝を腹部に突き入れた。
映像を見ていたオペレーター数人から悲鳴が上がる。
「ごぶぅっ! ご……おごぇっ……」
「ほら、どうしました? このままではまた負けてしまいますよ?」
ぐちゅり、と男性の拳が綾の鳩尾を抉った。モニターには一瞬で白目を剥く綾の顔が大映しになる。口からはだらしなく涎を垂らし、口からは力の抜けた舌が飛び出している。
「あがッ……あ……ゔぁぁ……」
綾が力なく崩れ落ち、男性にしがみつく様に膝から崩れ落ちる。力なく男性のカッターシャツを掴んで体勢を保っているが、それを離した瞬間に崩れ落ちてしまいそうなほど危うく見えた。男性がスラックスのファスナーをゆっくりと下ろし、男根を解放する。
「ほら、これが欲しかったのでしょう? 素直にならないと、いつまでも苦しいままですよ?」
「あ……だ……誰が……こんなものッ……」
言葉では否定しても視線は無意識に顔の前で揺れるそれを追ってしまう。画面越しに見ているオペレーターや戦闘員も、綾の表情が徐々に艶かしい色が浮かんでいる事に気付く。息遣いは深くゆっくりとしたものになり、だらしなく半開きになった口には唾液が溢れている。
「はぁ……はぁ……こ……こんなの……欲しくなんて……」
「その蕩けきった顔で言っても説得力はありませんよ。まったく、素直になればいいものを」
「や……やっ……むぐっ?! んむぅぅぅっ!」
男性にとって脱力した綾の口に男根をねじ込む事は雑作もない事だった。男根を突き入れられた綾もタガが外れたのか、頬をすぼめ必死に男根を吸引する。
「んむぅぅっ……じゅるっ……ちゅっ……んはぁぁぁっ……」
「くくくっ……ほら、我慢していた分、遠慮なく味わいなさい」
「いやぁっ……何で……こんなこと厭なのに……何で我慢出来ないのよぉッ……うあっ……はむっ……んぐっ……んふぅっ!」
男性の背後から綾を覗き込んでいるカメラは、その痴態をまるで男性の目線から捕えたかの様に生々しく伝える。綾は目に涙を溜めながら男根を喉奥まで頬張り、許しを請う様な視線を男性と、その背後にあるカメラに向かって送っていた。時折男性が強引に綾の頭を掴んで激しく前後に揺さぶると、綾の喉から苦しそうにくぐもった声が漏れる。呼吸を無理矢理乱され、口の端から透明な唾液が顎を伝わってセーラー服を汚す。
「ゔゔっ……ゔえぇぇぇっ! ゔああああぁっ……おうっ……ぷはあっ! あ……ああぁ……」
窒息寸前で男性が綾の口から男根を引き抜くと、綾の唾液と男性の先走りが混じった液体がにちゃあっと糸を引く。酸欠寸前になった綾は慌てて酸素を取り込もうと咳き込むが、すぐに口内に男根をねじ込まれて喉奥を犯される。
「おごおおっ?! ごぶっ……ぐあああっ……」
「ああぁ……気持ち良いですよ……喉の粘膜が絡み付いて……。窒息しそうになって痙攣するほどぎゅうぎゅうと私を締め付けてきますよ……」
男は綾の苦しみなど意に介さずに、ただ快楽を貪るために綾の喉を激しいストロークで抉る。時折ストロークする場所を変えてぷりぷりする頬の粘膜を擦り上げるたび、綾の頬はあめ玉を舐めている様にぽこぽこと膨らむ。喉奥へ男根を突き込み食道や気管の入り口を容赦なく擦る。
「おごぶっ……おうぇぇ! ゔえぇぇぇぇぇ!」
意識が切れ切れになりながらも失神せずに耐えながらも内蔵を吐き出してしまいたいほどの衝動に襲われ、綾がたまらずに男根を吐き出し、同時に胃液をコンクリートの床にぶちまけた。びちゃびちゃという汚い音が室内に響く。男は綾の嘔吐が終わるか終わらないかのうちに左手で綾の頭を掴んで強引に顔を上げさせると、男根を喉奥まで突き込んだ。
「ぐっ?! うぶぅっ?! ごおぉぉぉっ!」
「くおおおっ……気持ちよすぎるな……。吐いたお陰で滑りが良くなりましたよ……」
「ぐぶっ……ぐぶぅぅぅっ……ふ……太いぃぃ……」
男は綾の味わっている苦痛等意に介さず、夢中で綾の顔を前後に揺する。普段は強気な表情の綾が涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、自分の男根をくわえ込んで弱々しく上目遣いで見つめてくる。
「いい顔に……なってきましたね……。うっ……出る……出るぞ……おおおっ!」
「むぐっ……うぐぅぅぅっ……むぐっ?! んむぅぅぅっ! ぶはあっ! あ……ああっ! あああぁぁ……」
綾は男の放出量に堪え兼ねて男根を吐き出したが、男の放出は止まることなく弧を描いて綾の顔や髪を汚して行った。だらしなく露出した舌には糊の様に濃厚な粘液が落ちることなく留まってゆく。
「くっ……おおぉ……」
「あはあああっ……あああぁ……こ……こんなに……出すなんて…………うあぁ……」
「……何を惚けているのですか? 言ったでしょう……今日は最後まですると……」
「え……? あ……きゃあっ!」
男は膝立ちになって放心じている綾に覆い被さる様に、強引にマットに押し倒した。オフホワイトのマットに染み込んだ汗の匂いが埃と共に舞い上がる。粘液で所々染みの付いたセーラー服の上着を捲り上げると、その小柄な身体には不釣り合いなほど豊満な胸が、皿に落としたプリンの様にふるふるとこぼれ落ちる。
「ほぉぉ……これは……」
男が泡立てたばかりのメレンゲの様に滑らかな綾の胸を鷲掴みにすると、節ばった指の間から突きたての餅の様な柔肉がはみ出した。心地いい弾力を持った僅かに汗ばんだ肌はしっとりと指に吸い付き、円を描く様にその胸をこね回す。
「くはっ?! あっ……胸はッ……だめぇッ!」
綾は力なく男の手首を握って僅かに抵抗の意志を見せるが、臍のあたりに馬乗りになられた体勢では僅かに身体を捻るくらいしか抵抗が出来ず、男の愛撫をただ一方的に受け入れるしか術は無かった。
脇のあたりから乳首に向かってゆっくりと搾乳する様に絞り上げられ、わずかに伸びた爪の先で胸全体を触れるか触れないかの力で撫で回され、時に潰れるくらいの力で握られる。蛇の様に執拗でねちっこく、それでいて多彩な男の責めに綾はただ声を堪えて抵抗したが、男が綾の充血してすっかり固くなった乳首を抓り上げると、綾の背中が電気ショックを受けたかの様にビクリと跳ね上がる。
「あひッ! うああぁ! ぅあ……もう……だめぇ……。変に……なる……頭の中……変になるぅ……」
「この大きさでも……感度は抜群ですね? そろそろ私も楽しませてもらいましょうか……」
男は綾の顔に付着している乾きはじめた粘液を指で掬い上げて胸の谷間に塗りたくると、はち切れそうに勃起している男根をねじ込んだ。粘液と温かい柔肉に圧迫され、背骨のあたりを快楽の電気信号が脳に駆け上がる。
「おおおおっ……これは……私でも気を抜くとすぐに果ててしまいそうだ……。ゆっくりと堪能させてもらいますよ」
男は両手で綾の胸を寄せると、ゆっくりと腰を前後に揺すりはじめる。極上の摩擦が男根を包み、自然と尻に力が入る。
「あっ……やっ……やだ……何して……む、胸でこんな……」
「おおおおっ……これは……すごいな……。温めたマシュマロに挟まれている様だ。まるで胸と肉棒が溶け合って、快楽神経を直接擦られているみたいですよ……」
熱せられた歪な形の鉄の棒が自分の胸の間で蠢き、時折自分の顔を貫こうとするかの様に亀頭が顔を出す。
「い……嫌っ……こんなの……おかしい……変態……」
「パイズリは出来る人の方が少ないのですよ。くうっ……しかもここまで気持ちよく悦ばせられるのは……」
男の腰を動かすスピードが徐々に加速して、綾の下乳に男の腰が当たる度に肉同士がぶつかり合う湿った音が響く。亀頭は真っ赤に充血して自分の吐き出した透明な汁を綾の胸の谷間で泡立てながら、天井の白熱灯の光を反射してぬめぬめと不気味に光っていた。
「あっ……ああっ……やあっ……もう……こんなの……」
自分の想像を超えた変態的な行為に、綾が目に涙を溜めて首を横に振る。必死に男の手を掴んで抵抗するが、男の腰を打ち付けるスピードは増々速まり、呼吸も短く荒くなっていった。男根が胸の間を前後するにちゃにちゃという音は室内全体に響くほど大きなものになり、綾の鼓膜を突き抜けて脳を犯した。
「…………口を開けなさい」
男が短く言葉を発すると、綾が必死に首を振る。チャームの麻薬的な中毒性よりも、精神的なショックの方が大きかったらしい。
「うぁ……ま、まさか……やだ……やだぁっ……」
「口を開けないと……目の中に出しますよ……」
綾の身体がビクッと震える。何だ? 自分は何をされるのだという恐怖が、まるでムカデがその無数の足でぞわぞわと肌を引っ掻いている様に、爪先から脳天へ這い上がってきた。
「ひうっ?! 目? 目って……?」
「口を開けないのなら、無理矢理目をこじ開けてその中に出すという意味ですよ……。それよりも、眼窩ファックというものを教えてあげましょうか? 早くしないと……時間が無いですよ」
「あっ……あぁ……んぁ……」
男の口調から、本当に余裕が無いことを察する。目の中に粘液を出されるなんて想像したことも無いし、眼窩ファックなんてものも知りたくもない。
「そのまま……舌を出して……。おっ……おおっ……おおおおっ!」
「あ……ぇあ……ふあっ?! あ……えあぁぁぁっ!?」
「くぅぅぅっ! 口を閉じるなよ……おおっ……ッ……!」
「あああっ……はぐぁっ……あ……かはッ……あああっ……」
赤黒く鬱血した亀頭が胸の間からちゅぽんと跳ね上がると同時に、ビクビクと痙攣しながら綾の顔目掛けて大量の白濁を吐き出した。おずおずと開けられた口の中や震える舌の上にも容赦なく粘液がぶち撒けられ、先ほどのイラマチオで男が放出した乾きかけた粘液の上に、さらに白で厚塗りを施す。
綾は涙を流しながら白い飛沫を顔中で受け止め、男の放出が収まった後でもしばらく舌を出したまま放心していた。その表情や姿は見ている者に更なる劣情を抱かせるには十分魅力的なもので、放出したばかりでやや硬度の下がった男の分身にも血が集まり、再び綾を脅す様に反り返って行った。
「あぁっ……もう……こんな……許して……お願い……」
「何を言ってるんです? これからが本番でしょう?」
「あ……やっ! ダメっ……それは……嫌ああっ!」
男が放心している綾のスカートをゆっくりと足から引き抜いて、近くのボールカゴの中に放った。すぐに白いショーツに手をかけて引き摺り下ろそうとするのを、綾が必死に抵抗する。
「ダメ! お願い! それだけは嫌あっ! 許して……」
「ほう……まだ抵抗するとは……。軽い汚染を繰り返したせいで、かえってチャームに耐性が付いたか……。予定なら既に自分から股を開いているはずだったが……。まぁ、どちらにしろすることには変わりない。中で注げば嫌でもチャームに汚染されるだろう」
男が綾の手を払いのけてショーツのクロッチ部分を無理矢理引っ張ると、乾いた音を立ててショーツが破れた。断末魔の様な綾の悲鳴が室内に響く。
「止めろ……」
静まり返る会議室内で美樹が声を発した。画面の中では必死に抵抗する綾の上に男が覆い被さろうとしている。綾の口に男根がねじ込まれたあたりで数人のオペレーターがハンカチで口を抑えながら部屋を出て行く中、紬は流れる涙を拭おうともせず、パートナーの綾が画面の中で嬲られる様を目を逸らさずに見つめていた。珍しく悔しさを噛み締めているような表情を浮かべながらシオンが手を握っていない方の手で紬の肩の辺りを撫でている。
「早く止めろ」
美樹の声に驚いた様に画面が再びブラックアウトした。叫び続けていた綾の悲鳴が唐突に途切れる。その悲痛な声は会議室に残っていた全員の内耳の中で、荒れる海の中で群れからはぐれた一匹の魚が必死に自分の群れを探しながら、悲痛にあても無く彷徨う様にいつまでも鳴り響いていた。
「綾さんは……まだ大丈夫です……」と、紬が震える声で言った。美樹がゆっくり頷いた。
「あの人妖の言葉を信じる訳ではないが、抵抗の様子を見る限り綾はチャームに耐性が出来ているらしい。まだ希望はある」
「望みは薄いと思いますが。これは二種間前の映像ですので、その間に汚染は進行しているとすると……」
「その二週間の間にどうにでも動き様があったのに、放っておいたのはお前達だ。それに、まだ二週間しか経ってないのだろう? 大丈夫かそうじゃないかはいずれわかる。まずは救出させてもらう」
美樹が画面の中の人間の言葉を遮って言い放つと、紬がようやくハンカチを取り出して涙を拭った。シオンが紬の頭を軽く撫でると、ゆっくりと立ち上がる。
「そう言えば昨日、カンヤム・カンニャムが手に入ったんです」
「何だそれ?」と美樹が聞くと「リラックス効果が高くて、もの凄く綺麗なオレンジ色の紅茶なんですよ」とシオンが答えた。
「綾ちゃんはチェスで言えばナイトなんです……。独特な動きで相手の懐に切り込んで行ける優秀な駒なんですが、一歩間違うと敵陣の中で孤立してしまう……。まるで窒息した魚の様に藻掻いても藻掻いても、水はどんどん押し寄せて独りでは何も出来なくなってしまう。だから、ビショップやルークがフォローして実力を発揮させてあげないといけない。もちろんビショップやルークだってナイトに助けられることも多々あります」
美樹は「お前の話は何が言いたいのかはわかるが、回りくどい」と言って静かに笑った。
「私は綾ちゃんとまたお茶が飲みたいんです。もうそろそろ綾ちゃんの学校が終わる時間ですし、早速お茶に誘ってみます」
オペレーターが慌てて止めようとしたが、シオンは構わず部屋を出て行ってしまった。綾と直接会う気であることは明らかだ。危険ではないかという声があちこちから上がる。
「あいつはあれで意外と頑固なんだ。下手に止めると蹴られるかもしれないぞ? あいつの蹴りは結構痛いからな」と美樹は楽しそうに、本当に楽しそうに言った。席を立って紬の横に来ると、髪の毛を乱暴にくしゃくしゃと撫でる。紬は困り笑いの様な表情を浮かべて小さく悲鳴を上げた。
「作戦は救出で決まりだ。その後にあの人妖を倒す」
全員の視線が美樹に注目した。モニターの電源は、向こう側からの操作で既に落ちていた。
いつも通り文章はこちらで全て公開します。
時系列的には綾がクラスメイトに輪姦され、少し時間が経ってシオンが綾の元に来る間の、外伝的な内容です。
では、どうぞ
魚は、溺れるのだろうか?
溺れるという事は、水に嫌われるという事だ。
魚は水の中でしか呼吸が出来ず、餌もとれず、子孫も残せない水に依存した生物だ。仮に何らかの理由で魚と水の関係が悪化でもしたら、魚は水に対して媚び諂い、靴の裏を舐めてでも水の機嫌を取らなければならない。そうでなければ、死ぬしかないのだから……。
今にも目の前に落ちてきそうな重々しい曇天から降り注ぐ雨を見つめながら、衣笠 紬(きぬがさ つむぎ)は溜息を吐くと、組織へと通じる隠し扉を開けて薄暗い階段を降りて行った。
今朝方から降り始めた雨は一層勢いを増して、紬のローファーやソックスを濡らした。リノリウムの床と濡れた靴底が擦れ合って、甲高い音を響かせる。
重い雨だった。
決して強くはないが、その雨は無数の人々に踏みつけられた都会のアスファルトにこびり付いた汚れを、まるで海洋生物が身体から分泌する粘液の様に絡め取って舞い上がらせ、熱気と湿気を孕んだ初夏の気候を一層不快なものにした。
アンチレジストの会議室の雰囲気もその不快極まりない外の気候と同様に重いものだった。程よく効いた空調も、部屋の隅に置かれたプランターも、無垢材で出来た高価なテーブルも、その粘り気のある空気を洗い流してはくれなかった。漂白された様な蛍光灯の灯りだけが、テーブルを囲む十数名の人間を悲し気に照らしている。
綾が負けた。
このセンセーショナルな事実はすぐには公表されず、数日が経過した後に一部の戦闘員、オペレーターが集められた合同会議の場で発表された。
一番上座に位置する一角には人ではなく大型のモニターが置かれ、アンチレジストのトップ、ファーザーの側近が声のみで参加していた。
報告を聞いて最初に声を荒げたのは綾専属のオペレーターである紬だった。会議室の中にいる全員の視線が、一様にその小柄な身体に集中する。紬はその視線をはね除ける様に言葉を続けた。
「私は納得出来ません! あれほどの実力がある人を、たった一回の失敗で処分するなんて!」
モニターの向こうにいる人間に対して矢を放つ様に睨みつけながら紬は言い放ったが、ブラックアウトしたモニターはそんな紬の姿を嘲笑うかの様に、歯を食いしばってい紬の顔を反射させていた。
「処分とは人聞きの悪い。これは正当な下命の元の行動。いわば任務です」
機械で加工された女性の声がモニターから聞こえる。
「実力の無い者にいつまでも優位的立場を与えていては、いずれは周囲にも影響を及ぼします。悪貨は良貨を駆逐すると言うように、あなたや私を含め、常に厳しい目で周囲から見られている事をお忘れなく」
「綾さんがいつ、その優位的立場を利用したんですか?!」
「ましてや今回の事は命令無視の単独行動。神崎綾には初戦での敗北の後、組織の指示が出るまでは自宅待機を命じていました。それを勝手に夜の学園に侵入し、挙句ふたたび敗北して敵の手に堕ちるとは、これを暴走を呼ばずに何と呼ぶのですか? 一般戦闘員の規範となるべき上級戦闘員にはあるまじき失態にファーザーも失望しています。皆さんのお手元にある下命書も、ファーザー直々のものです」
紬は全員に配られた書類のコピーに視線を落とした。今では珍しい日本語のタイプライターで打たれ、太めの万年筆で「F」のサインが書かれている。紛れも無くファーザーからの下命書だ。
下記の者、本日○年○月○日を持って階級を変更する。
・神崎 綾
旧階級 上級戦闘員
新階級 補助戦闘員
特記
上記は神崎綾があくまでも任務続行可能な状態であった場合に限る。チャームによる重篤な精神汚染が進行していた場合は処分も検討する
補助戦闘員とは一般戦闘員の任務の遂行をサポートする後方支援部隊だ。具体的には事前に地理や周辺状況を把握してオペレーターへ報告、時にはターゲットの人妖、賤妖に接近し行動を監視することもある。入隊したばかりの隊員が配属される事が多いが、オペレーターとは違いターゲットと接触する危険性が高いため、この段階でミスをして普通の生活を送れなくなった隊員も多い。
しかも降格以前に精神汚染が進んでいた場合は最悪殺すとも書いてある。紬の心は暗い井戸の中に放り込まれたように暗澹としていた。
「でも……でも!」
紬は悔しさから下唇を噛む。何かを言おうとしても、肺からせり上がってきた様々言葉が喉の辺りで形を成さず、ぐずぐずに溶けてしまった様に消えててしまう。
「もうあの人は無理よ……」
一般戦闘員担当のオペレーターが口を開いた。紬は顔を知っている程度だった。
「神崎さんに実力があるのは認めるけど、今回の事はフォローのしようが無いと思う……。戻ってきてもらっても、またいつ同じ様に単独行動して問題起こすかわからないし、既に精神汚染が進行しているかもしれないじゃない? 機密を喋られる前に対処するのも方法のひつとだと思うけど」
狭い空間に、同調する声がひそひそと響く。紬は自分自身が否定されている気分になった。
「だからって、綾さんの代わりなんて早々見つかるわけ……!」
「一般戦闘員の中にも優秀な人材はたくさんいるわ。その芽を摘んでまで神崎さんを残す理由は無い。あなたが神崎さんにこだわるのは個人的な感情だけでしょう? これは組織の問題なのよ」
「何かあったら割を食うのは私達なのよ。神崎さんがこの組織の場所を喋って人妖達がなだれ込んできたら、あなた責任取れるの?」
「仲が良いのは結構だけど、公私混同は止めてほしいわ」
「そもそも神崎さんってそんなに実力あったの? 訓練での成績は良くても、実戦で負けたら意味ないじゃない」
「衣笠さんのよく言ってる『あの人は性格が良い』ってのも、何かあったらこういう風にフォローしてもらおうって考えが神崎さんにあったからなんじゃない?」
「いつもニコニコして、何か裏がありそうって思ってたのよね」
会議室内の空気の粘度が高まり、コールタールの様な重く黒い雰囲気が会議室を満たす。枯れ葉同士が擦れる様なひそひそとした批判の音はまだ鳴り止まない。
綾を蔑む声が、まるで数百匹の蟻が脳の皺一本一本を引っ掻く様に紬の頭の中を這い回る。気持ち悪い。吐き気がこみ上げる。強く噛み過ぎて、紬の下唇から血が滴る。ざわざわとした黒い感情が臍の辺りからせり上がってきた。
紬が椅子を蹴って立ち上がる。白いイームズのシェルチェアが墨色の絨毯に倒れ、鈍い音を立てる。全員の視線が自分に集まる。樹脂で出来た椅子が倒れる軽い音までもが綾と自分を嘲笑っている様に聞こえた。
部屋を出ようとした所、背後から射抜く様な視線を感じ、紬はびくりと足を止めた。
振り返ると戦闘員の座っている席の上座から、上級戦闘員の鷹宮美樹が射抜く様な視線を自分に向けていた。最高級の日本人形の様に、腰まで届きそうなほど長く艶のある真っ直ぐな黒髪を手櫛で一度だけ梳くと、静かだがよく通る声を発した。
「そのくらいにしないか? ここで綾の人間性を批判しても何も始まらない。大事な事は綾の処遇をどうするかではなく、綾自身をどうするかだ。助けるのか助けないのか。助けるとしたら誰が行くのか? 見捨てるにしてもこのまま放っておくのか……最悪口封じをするのか。どうなんだ?」
会議室内が静まり返る。美樹は会議室内の人間を左から右にゆっくりと見回す。
「ちなみに綾は身体こそ小さいが、運動能力が高い上に精神力はもの凄く強い。まぁ、今回はそれが空回りしてしまったが……。どちらにせよ、建設的な意見を頼む。私は助ける方向なら全力で支援するが、口封じは遠慮したい。個人的な意見を言わせてもらえば、精神汚染が進んでいるのかどうかはまずは救出してみなければ判断がつかないだろう? まずは綾の身柄を人妖から奪還する。その後検査でも何でもすればいい」
その落ち着いた静かな声は、冷たく澄んだ綺麗な水が川の淀みに流れ込んで来る様に、徐々に会議室の空気を洗い流した。紬も黒い感情がいつの間にか小さくなっている事に気付く。
「賛成です。だから紬ちゃんも落ち着いて座って……」
甘い香りがふわっと漂ったかと思うと、不意に耳元で声がした。
いつの間にか美樹の隣に座っていたはずの、美樹と同じ上級戦闘員の如月シオンがまるで瞬間移動をしたかの様に紬の隣に立っていた。
戦闘時や実戦訓練では戦闘用にカスタムしたメイド服を着て、美樹と同じく腰まで届く長い金髪をツインテールに纏めているが、今日は学校の制服を着て髪型をストレートに下ろしているため普段よりも大人びて見える。
倒れた椅子を丁寧に起こして紬に座る様に促すと、シオンも自分の椅子を持ってきて横に座り、そっと紬の手を握った。
「綾ちゃんの処遇が決定したという事は、上層部の方々はそれなりの確証を掴んでいるという事ですよね。どのような手を使って確証を得たのかは大体想像出来ますけど……。ただ、物事を想像だけで仮定し、それに基づいて行動を起こそうとすると悪い結果しか産まれないと思います。もし機密を口外するほどチャームに汚染されていないのであれば、私も美樹さんと同じく救出するべきだと思います。処遇を決定するのはそれからでも遅くはないのでは?」
シオンがモニターに向かって静かに語りかけると、美樹はふっと笑いながら「そんなに怒るな」と呟いた。紬はぎくりとしてシオンの顔を覗き込んだ。
「で、どうなんだ。シオンの言う通り、綾がどの程度チャームに汚染されているかわかる資料はあるんだろう? 助かる見込みはどの程度あるんだ?」
「そうですね……。如月さんの仰る通り、我々は神崎さんがかなり汚染が進んでいる状態である資料をいくつか入手しています。説明するよりもご覧頂いた方が早い様ですので、モニターをご覧下さい。誠心学園の体育倉庫で撮られた映像です」
「盗撮した、の言い間違いだろう?」と美樹は言った。
会議室内の十数人の視線がモニターに集中する。
ブラックアウトしていたモニターには体育倉庫内で男性型の人妖と対峙する神崎綾の姿が映し出された。
紬の手を握っているシオンの手の力が、僅かに強まった。
「今日こそ……あんたを倒すから……」
言い終わると同時に、綾が男性に突進した。綾の声はいくぶん震えているように感じた。部屋の端から中央で直立している男性へ距離を詰める。動きも明らかに精彩を欠いている。普段であれば水の中を泳ぐ魚の様に滑らかに移動する綾であったが、映像の中の綾は必死に飛ぼうと羽ばたく鶏の様にぎこちなく見えた。
綾の放った拳はことごとく空を切り、軽々と躱される。普段は見慣れない蹴りも放っているが、いずれも男性に最小限の動きで避けられ、十分も経たないうちに綾は肩で息をして顎からは汗が滴っていた。
「はぁ……はぁ……な……何で……何で当たらないのよ……」
「自分でも気付いているでしょう? あなたは既にチャームに毒され、本能的に私に敗北する事を望んでいる。そしてその先も……。大人しくこのような茶番は止めて、友香の様に素直になればいいものを……」
「うるさいっ!」
綾が拳を握りしめながら叫んだ。
「私は……アンチレジストの戦闘員なの! あんたを倒す事が私の任務で、私がここにいる意味なのよ! それすら無くなったら、私が私でいられなくなる!」
絞り出す様な綾の叫びを聞いて、男性はやれやれと首を振る。カメラは男性の背中からのアングルのため、その表情は窺い知れない。
「自分の存在意義を他人に依存するとは愚かな……。今のあなたは生きているのではなく寄生している。しかも餌を貰うために叫ぶ雛鳥の様にうるさく喚きながら……」
「うるさいって言ってるのよ!」
綾は叫びながら拳を繰り出すが、大振りの正面からの攻撃のために男性に軽く躱され、代わりに鳩尾を突き上げられた。
どぽん、という重い音が響き、綾の足が地面から浮く。
「ぐぷっ?! ごぽッ……」
「しかしあなたの様に強情な人も珍しい。本来ならとうに身も心も私に差し出しているものを……。まぁ、それも今日までだ。今日は最後までするつもりなので、覚悟しておきなさい」
男が綾の胸ぐらを掴むと、膝を腹部に突き入れた。
映像を見ていたオペレーター数人から悲鳴が上がる。
「ごぶぅっ! ご……おごぇっ……」
「ほら、どうしました? このままではまた負けてしまいますよ?」
ぐちゅり、と男性の拳が綾の鳩尾を抉った。モニターには一瞬で白目を剥く綾の顔が大映しになる。口からはだらしなく涎を垂らし、口からは力の抜けた舌が飛び出している。
「あがッ……あ……ゔぁぁ……」
綾が力なく崩れ落ち、男性にしがみつく様に膝から崩れ落ちる。力なく男性のカッターシャツを掴んで体勢を保っているが、それを離した瞬間に崩れ落ちてしまいそうなほど危うく見えた。男性がスラックスのファスナーをゆっくりと下ろし、男根を解放する。
「ほら、これが欲しかったのでしょう? 素直にならないと、いつまでも苦しいままですよ?」
「あ……だ……誰が……こんなものッ……」
言葉では否定しても視線は無意識に顔の前で揺れるそれを追ってしまう。画面越しに見ているオペレーターや戦闘員も、綾の表情が徐々に艶かしい色が浮かんでいる事に気付く。息遣いは深くゆっくりとしたものになり、だらしなく半開きになった口には唾液が溢れている。
「はぁ……はぁ……こ……こんなの……欲しくなんて……」
「その蕩けきった顔で言っても説得力はありませんよ。まったく、素直になればいいものを」
「や……やっ……むぐっ?! んむぅぅぅっ!」
男性にとって脱力した綾の口に男根をねじ込む事は雑作もない事だった。男根を突き入れられた綾もタガが外れたのか、頬をすぼめ必死に男根を吸引する。
「んむぅぅっ……じゅるっ……ちゅっ……んはぁぁぁっ……」
「くくくっ……ほら、我慢していた分、遠慮なく味わいなさい」
「いやぁっ……何で……こんなこと厭なのに……何で我慢出来ないのよぉッ……うあっ……はむっ……んぐっ……んふぅっ!」
男性の背後から綾を覗き込んでいるカメラは、その痴態をまるで男性の目線から捕えたかの様に生々しく伝える。綾は目に涙を溜めながら男根を喉奥まで頬張り、許しを請う様な視線を男性と、その背後にあるカメラに向かって送っていた。時折男性が強引に綾の頭を掴んで激しく前後に揺さぶると、綾の喉から苦しそうにくぐもった声が漏れる。呼吸を無理矢理乱され、口の端から透明な唾液が顎を伝わってセーラー服を汚す。
「ゔゔっ……ゔえぇぇぇっ! ゔああああぁっ……おうっ……ぷはあっ! あ……ああぁ……」
窒息寸前で男性が綾の口から男根を引き抜くと、綾の唾液と男性の先走りが混じった液体がにちゃあっと糸を引く。酸欠寸前になった綾は慌てて酸素を取り込もうと咳き込むが、すぐに口内に男根をねじ込まれて喉奥を犯される。
「おごおおっ?! ごぶっ……ぐあああっ……」
「ああぁ……気持ち良いですよ……喉の粘膜が絡み付いて……。窒息しそうになって痙攣するほどぎゅうぎゅうと私を締め付けてきますよ……」
男は綾の苦しみなど意に介さずに、ただ快楽を貪るために綾の喉を激しいストロークで抉る。時折ストロークする場所を変えてぷりぷりする頬の粘膜を擦り上げるたび、綾の頬はあめ玉を舐めている様にぽこぽこと膨らむ。喉奥へ男根を突き込み食道や気管の入り口を容赦なく擦る。
「おごぶっ……おうぇぇ! ゔえぇぇぇぇぇ!」
意識が切れ切れになりながらも失神せずに耐えながらも内蔵を吐き出してしまいたいほどの衝動に襲われ、綾がたまらずに男根を吐き出し、同時に胃液をコンクリートの床にぶちまけた。びちゃびちゃという汚い音が室内に響く。男は綾の嘔吐が終わるか終わらないかのうちに左手で綾の頭を掴んで強引に顔を上げさせると、男根を喉奥まで突き込んだ。
「ぐっ?! うぶぅっ?! ごおぉぉぉっ!」
「くおおおっ……気持ちよすぎるな……。吐いたお陰で滑りが良くなりましたよ……」
「ぐぶっ……ぐぶぅぅぅっ……ふ……太いぃぃ……」
男は綾の味わっている苦痛等意に介さず、夢中で綾の顔を前後に揺する。普段は強気な表情の綾が涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、自分の男根をくわえ込んで弱々しく上目遣いで見つめてくる。
「いい顔に……なってきましたね……。うっ……出る……出るぞ……おおおっ!」
「むぐっ……うぐぅぅぅっ……むぐっ?! んむぅぅぅっ! ぶはあっ! あ……ああっ! あああぁぁ……」
綾は男の放出量に堪え兼ねて男根を吐き出したが、男の放出は止まることなく弧を描いて綾の顔や髪を汚して行った。だらしなく露出した舌には糊の様に濃厚な粘液が落ちることなく留まってゆく。
「くっ……おおぉ……」
「あはあああっ……あああぁ……こ……こんなに……出すなんて…………うあぁ……」
「……何を惚けているのですか? 言ったでしょう……今日は最後まですると……」
「え……? あ……きゃあっ!」
男は膝立ちになって放心じている綾に覆い被さる様に、強引にマットに押し倒した。オフホワイトのマットに染み込んだ汗の匂いが埃と共に舞い上がる。粘液で所々染みの付いたセーラー服の上着を捲り上げると、その小柄な身体には不釣り合いなほど豊満な胸が、皿に落としたプリンの様にふるふるとこぼれ落ちる。
「ほぉぉ……これは……」
男が泡立てたばかりのメレンゲの様に滑らかな綾の胸を鷲掴みにすると、節ばった指の間から突きたての餅の様な柔肉がはみ出した。心地いい弾力を持った僅かに汗ばんだ肌はしっとりと指に吸い付き、円を描く様にその胸をこね回す。
「くはっ?! あっ……胸はッ……だめぇッ!」
綾は力なく男の手首を握って僅かに抵抗の意志を見せるが、臍のあたりに馬乗りになられた体勢では僅かに身体を捻るくらいしか抵抗が出来ず、男の愛撫をただ一方的に受け入れるしか術は無かった。
脇のあたりから乳首に向かってゆっくりと搾乳する様に絞り上げられ、わずかに伸びた爪の先で胸全体を触れるか触れないかの力で撫で回され、時に潰れるくらいの力で握られる。蛇の様に執拗でねちっこく、それでいて多彩な男の責めに綾はただ声を堪えて抵抗したが、男が綾の充血してすっかり固くなった乳首を抓り上げると、綾の背中が電気ショックを受けたかの様にビクリと跳ね上がる。
「あひッ! うああぁ! ぅあ……もう……だめぇ……。変に……なる……頭の中……変になるぅ……」
「この大きさでも……感度は抜群ですね? そろそろ私も楽しませてもらいましょうか……」
男は綾の顔に付着している乾きはじめた粘液を指で掬い上げて胸の谷間に塗りたくると、はち切れそうに勃起している男根をねじ込んだ。粘液と温かい柔肉に圧迫され、背骨のあたりを快楽の電気信号が脳に駆け上がる。
「おおおおっ……これは……私でも気を抜くとすぐに果ててしまいそうだ……。ゆっくりと堪能させてもらいますよ」
男は両手で綾の胸を寄せると、ゆっくりと腰を前後に揺すりはじめる。極上の摩擦が男根を包み、自然と尻に力が入る。
「あっ……やっ……やだ……何して……む、胸でこんな……」
「おおおおっ……これは……すごいな……。温めたマシュマロに挟まれている様だ。まるで胸と肉棒が溶け合って、快楽神経を直接擦られているみたいですよ……」
熱せられた歪な形の鉄の棒が自分の胸の間で蠢き、時折自分の顔を貫こうとするかの様に亀頭が顔を出す。
「い……嫌っ……こんなの……おかしい……変態……」
「パイズリは出来る人の方が少ないのですよ。くうっ……しかもここまで気持ちよく悦ばせられるのは……」
男の腰を動かすスピードが徐々に加速して、綾の下乳に男の腰が当たる度に肉同士がぶつかり合う湿った音が響く。亀頭は真っ赤に充血して自分の吐き出した透明な汁を綾の胸の谷間で泡立てながら、天井の白熱灯の光を反射してぬめぬめと不気味に光っていた。
「あっ……ああっ……やあっ……もう……こんなの……」
自分の想像を超えた変態的な行為に、綾が目に涙を溜めて首を横に振る。必死に男の手を掴んで抵抗するが、男の腰を打ち付けるスピードは増々速まり、呼吸も短く荒くなっていった。男根が胸の間を前後するにちゃにちゃという音は室内全体に響くほど大きなものになり、綾の鼓膜を突き抜けて脳を犯した。
「…………口を開けなさい」
男が短く言葉を発すると、綾が必死に首を振る。チャームの麻薬的な中毒性よりも、精神的なショックの方が大きかったらしい。
「うぁ……ま、まさか……やだ……やだぁっ……」
「口を開けないと……目の中に出しますよ……」
綾の身体がビクッと震える。何だ? 自分は何をされるのだという恐怖が、まるでムカデがその無数の足でぞわぞわと肌を引っ掻いている様に、爪先から脳天へ這い上がってきた。
「ひうっ?! 目? 目って……?」
「口を開けないのなら、無理矢理目をこじ開けてその中に出すという意味ですよ……。それよりも、眼窩ファックというものを教えてあげましょうか? 早くしないと……時間が無いですよ」
「あっ……あぁ……んぁ……」
男の口調から、本当に余裕が無いことを察する。目の中に粘液を出されるなんて想像したことも無いし、眼窩ファックなんてものも知りたくもない。
「そのまま……舌を出して……。おっ……おおっ……おおおおっ!」
「あ……ぇあ……ふあっ?! あ……えあぁぁぁっ!?」
「くぅぅぅっ! 口を閉じるなよ……おおっ……ッ……!」
「あああっ……はぐぁっ……あ……かはッ……あああっ……」
赤黒く鬱血した亀頭が胸の間からちゅぽんと跳ね上がると同時に、ビクビクと痙攣しながら綾の顔目掛けて大量の白濁を吐き出した。おずおずと開けられた口の中や震える舌の上にも容赦なく粘液がぶち撒けられ、先ほどのイラマチオで男が放出した乾きかけた粘液の上に、さらに白で厚塗りを施す。
綾は涙を流しながら白い飛沫を顔中で受け止め、男の放出が収まった後でもしばらく舌を出したまま放心していた。その表情や姿は見ている者に更なる劣情を抱かせるには十分魅力的なもので、放出したばかりでやや硬度の下がった男の分身にも血が集まり、再び綾を脅す様に反り返って行った。
「あぁっ……もう……こんな……許して……お願い……」
「何を言ってるんです? これからが本番でしょう?」
「あ……やっ! ダメっ……それは……嫌ああっ!」
男が放心している綾のスカートをゆっくりと足から引き抜いて、近くのボールカゴの中に放った。すぐに白いショーツに手をかけて引き摺り下ろそうとするのを、綾が必死に抵抗する。
「ダメ! お願い! それだけは嫌あっ! 許して……」
「ほう……まだ抵抗するとは……。軽い汚染を繰り返したせいで、かえってチャームに耐性が付いたか……。予定なら既に自分から股を開いているはずだったが……。まぁ、どちらにしろすることには変わりない。中で注げば嫌でもチャームに汚染されるだろう」
男が綾の手を払いのけてショーツのクロッチ部分を無理矢理引っ張ると、乾いた音を立ててショーツが破れた。断末魔の様な綾の悲鳴が室内に響く。
「止めろ……」
静まり返る会議室内で美樹が声を発した。画面の中では必死に抵抗する綾の上に男が覆い被さろうとしている。綾の口に男根がねじ込まれたあたりで数人のオペレーターがハンカチで口を抑えながら部屋を出て行く中、紬は流れる涙を拭おうともせず、パートナーの綾が画面の中で嬲られる様を目を逸らさずに見つめていた。珍しく悔しさを噛み締めているような表情を浮かべながらシオンが手を握っていない方の手で紬の肩の辺りを撫でている。
「早く止めろ」
美樹の声に驚いた様に画面が再びブラックアウトした。叫び続けていた綾の悲鳴が唐突に途切れる。その悲痛な声は会議室に残っていた全員の内耳の中で、荒れる海の中で群れからはぐれた一匹の魚が必死に自分の群れを探しながら、悲痛にあても無く彷徨う様にいつまでも鳴り響いていた。
「綾さんは……まだ大丈夫です……」と、紬が震える声で言った。美樹がゆっくり頷いた。
「あの人妖の言葉を信じる訳ではないが、抵抗の様子を見る限り綾はチャームに耐性が出来ているらしい。まだ希望はある」
「望みは薄いと思いますが。これは二種間前の映像ですので、その間に汚染は進行しているとすると……」
「その二週間の間にどうにでも動き様があったのに、放っておいたのはお前達だ。それに、まだ二週間しか経ってないのだろう? 大丈夫かそうじゃないかはいずれわかる。まずは救出させてもらう」
美樹が画面の中の人間の言葉を遮って言い放つと、紬がようやくハンカチを取り出して涙を拭った。シオンが紬の頭を軽く撫でると、ゆっくりと立ち上がる。
「そう言えば昨日、カンヤム・カンニャムが手に入ったんです」
「何だそれ?」と美樹が聞くと「リラックス効果が高くて、もの凄く綺麗なオレンジ色の紅茶なんですよ」とシオンが答えた。
「綾ちゃんはチェスで言えばナイトなんです……。独特な動きで相手の懐に切り込んで行ける優秀な駒なんですが、一歩間違うと敵陣の中で孤立してしまう……。まるで窒息した魚の様に藻掻いても藻掻いても、水はどんどん押し寄せて独りでは何も出来なくなってしまう。だから、ビショップやルークがフォローして実力を発揮させてあげないといけない。もちろんビショップやルークだってナイトに助けられることも多々あります」
美樹は「お前の話は何が言いたいのかはわかるが、回りくどい」と言って静かに笑った。
「私は綾ちゃんとまたお茶が飲みたいんです。もうそろそろ綾ちゃんの学校が終わる時間ですし、早速お茶に誘ってみます」
オペレーターが慌てて止めようとしたが、シオンは構わず部屋を出て行ってしまった。綾と直接会う気であることは明らかだ。危険ではないかという声があちこちから上がる。
「あいつはあれで意外と頑固なんだ。下手に止めると蹴られるかもしれないぞ? あいつの蹴りは結構痛いからな」と美樹は楽しそうに、本当に楽しそうに言った。席を立って紬の横に来ると、髪の毛を乱暴にくしゃくしゃと撫でる。紬は困り笑いの様な表情を浮かべて小さく悲鳴を上げた。
「作戦は救出で決まりだ。その後にあの人妖を倒す」
全員の視線が美樹に注目した。モニターの電源は、向こう側からの操作で既に落ちていた。