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Яoom ИumbeR_55
LAST COLLECTION
[ NOIZ ] _ノイズ

[PLASTIC_CELL]の最後に少しだけ出ましたが、新章で登場する新キャラクターを紹介させていただきます。シオンさんの妹、スノウです。ちょっと生意気ですが根はいい子なので、可愛がってあげてください
イラストはスガレオンさんに協力いただきました。
スノウ立ち絵のコピー

NOIZ立ち絵のコピー

NOIZ

 佳奈が教室を開けると、充満したアルコールの臭いでむせそうになった。
 教卓にどっかりと座った男と目が合う。男はコンビニで買った安物のウイスキーを煽ると、げふっと下品な音を立てて息を吐いた。酒の臭いがさらに強くなる。男は顎ひげに付いたウイスキーの水滴を拭うと、汚く染めた短い金髪をばりばりと掻いた。鉄板で焼いた様な黒い肌に、筋肉を誇示するかの様に黒いタンクトップと切り込みの深いビキニパンツを身につけている。
 場違いな臭いと、場違いな男。
 時刻は夜八時。教室のカーテンは全て閉まっている。佳奈は学校に誰もいないことはわかっていたが、なるべく音を立てないように教室の引き戸を閉めた。
「遅せぇよ、もう少しで時間切れだぜ。時間は守れって学校で教えてくれなかったのか? あ?」
 男の乱暴な口調に佳奈の肩が震えた。
 男は舐めあげるような視線で佳奈を見る。グレーのスカートに濃紺のブレザー。肩に着く程度の長さの髪。遊んでいる風でも、生真面目すぎる感じでもなく、綺麗に整っている今風の生徒。
「す、すみません……」
「次は気をつけろ。ところで、ちゃんと着てきたんだろうな? 見せてみろ」
「……はい」
 佳奈は下唇を噛みながらブレザーを脱いだ。震える指で苦労しながらシャツのボタンを外し、スカートのホックを外して近くの机の上に置いく。しゅるり、しゅるりと布の擦れる音が教室内に響き終わると、佳奈は学校指定の体操服姿になった。男の視線を感じ、佳奈は手を組んで下を向く。
「ひひひひ……いいぜ。俺の言った通りちゃんと体操着で来やがって。イヤイヤ言いながら、やる気満々じゃねぇかよ?」
「……あ、あの」
「あ?」
「これで本当に……あのことは黙っていてくれるんですよね?」
「なんだよはっきり言ゃあいいだろうが? お前と彼氏が放課後の教室でサカってたことだろ。お互い猿みたいにヘコヘコ腰振り合いやがって、傑作だったぜ」
「……ッ」
 佳奈が耳を赤くしながら唇を噛む。
 迂闊だった。
 お互い初めての恋人同士で、先日初体験を済ませたばかりだった。放課後の教室で時間を忘れて話し込んでいるうちに、辺りはすっかり暗くなっていた。話題も自然と先日の出来事になり、お互い照れながら当時のことを遠慮がちに話しているうちに、自然と体同士が密着し始め、それから先は夢中だった。
 その翌日、教室内での一部始終を収めた写真が靴箱に入れられてた。
 佳奈は、渓谷に架かる吊橋を渡っている最中に足元の板が外れたような気持ちになった。
 写真の裏には、その日の夜に今日と同じ教室に来るように書かれていた。行かなければどうなるかわかったものではない。佳奈はその日を抜け殻の様な気持ちで過ごし、指示された通りの時間に教室に行った。
 教室にはテレビでしか見たことのないような、色黒で筋肉質の男が座っていた。夜の渋谷や新宿を徘徊していそうな雰囲気で、できれば一生関わりたくないタイプの人間だ。男は数十枚の写真をちらつかせ、学校中に知られたくなかったら身体を差し出せと要求してきた。
 断ることなどできるわけが無い。
 なぜ夜の学校にこの場違いな男がいたのかはわからないが、世間に知られたら自分や彼氏が生きていけなくなるようなものを、この男は握っているのだ。
 まだ二回しか経験の無い佳奈を男は床に押し倒し、長い時間をかけて佳奈を愛撫した。
 男の性技は凄まじかった。
 初めは嫌悪感で泣いていた佳奈だったが、身体中のあらゆるところを的確に嬲られ、十五分も経たぬうちに佳奈は学校中に響き渡るような声をあげて絶叫し、腰を痙攣させながら何回も絶頂した。男は上着すら脱いでいなかったというのに。彼氏と長い時間をかけて分け合った快感など、男の指がもたらす暴力的な絶頂の津波にすぐに上塗りされ、ゴミの様に押し流されてしまった。
 佳奈は前戯だけで何回も失神させられ、虫の息の中で彼氏よりもふた回り以上大きな男根を挿入された。
 彼氏のものでは届かなかった場所を簡単に抉られ、押しつぶす様なピストンに頭の中が真っ白になり、佳奈は今までしたことがない様な表情を男に晒しながら狂い果てた。日付が変わる頃にようやく男は佳奈を解放したが、佳奈は身体中を様々な分泌物や男の放出した白濁にぐちゃぐちゃになりながら朝日が昇るまで起き上がることができなかった。
「……あ」
 男は教卓を降り、床を踏み鳴らすように佳奈の元に近づくと、佳奈の履いているブルマーを掴むように下腹部を撫でた。ぐじゅっ……という音を立てて男の指が沈み込む。
「……ひうッ?!」
「なんだこりゃあ? もうぐちゃぐちゃじゃねぇか。どうせこの前のことを思い出してたんだろ? 勝手に濡らしてんじゃねぇぞボケが!」
「ひっ……ふ……す、すみませ……んむっ!?」
 震える佳奈の唇を男が強引に吸うと、近くの机に佳奈を押し倒した。


 東京を出発してから一時間も経っていないというのに、窓の外に見える灯りの数はかなり少なくなった。
 おそらく田園地帯に入ったのだろう。
 真冬に比べて日が延びたとはいえ、夜に見る田んぼは光を吸収する黒い沼の様で、その中にまばらに浮かぶ家の灯りはさながら沼に浮かぶ船を思わせた。その船の間をくぐり抜けるように、マイクロバスほどの大きさの車両が静かな音を立てて走っている。
 組織の所有する戦闘員専用の輸送車だ。
 大きさに反して、輸送する戦闘員は車両一台につき基本的に一人。なぜならそれは移動できる控え室だからだ。運転席と戦闘員用の後部は完全に仕切られ、中は小さめのプライベートジムの様に改造されている。床は柔らかい樹脂張りで、エアロバイクやロッカーの他に各種計測器具もある。
 その中で上代友香は入念に身体をほぐしていた。
 床に尻をついた状態で足を限界まで広げ、ふうっ……と長く息を吐きながらゆっくりと上体を倒す。胸が押し潰され、顎が床に着くか着かないかというところで、運転席と繋がっているスピーカーから若い男の声が響いた。
「到着しました。現在、二十一時十三分。周囲に人影はありません。問題が無ければ任務開始願います」
「了解……ですっ」
 友香は開脚前屈の体勢から勢いをつけて上体を起こすと、そのまま後方にごろんと転がってから跳ね起きた。とんとんとその場で軽く跳び、身体の状態を確認する。異常はない。身体は軽く汗ばむ程度に温まっているし、関節の可動も良い。脳の出す指令を筋肉が忠実に遂行する準備は万全だ。
 友香は体操服の様な上着の裾や、レーシングショーツに似たショートパンツを直すと、オープンフィンガーグローブを嵌めて自分の頬を両手で叩いた。
「ウォーミングアップ終了しました。上代友香、すぐにでも任務開始可能です」
「わかりました。現在他のチームも予定通り現場に到着、順次作戦開始しています。今作戦の確認ですが、この近辺に複数生息していると思われる人妖の調査と、発見した場合は掃討。こちらのターゲットは下位タイプ……賎妖と思われますが、油断は禁物です。下位タイプは上位タイプと違い、チャームに加えてなんらかの特殊能力を持つ場合が多いので……」
 人妖……人類を栄養源とする未知の生命体。
 見た目は人間と区別できず、男性型と女性型がおり、特殊能力や驚異的な力を持つ。詳しいことはわかっていないが、食事は必要なく、それぞれ異性の粘膜から養分を吸収して活動する。また、捕食を効率的にするために分泌液……通称チャームには人間の異性を魅了する特殊な効果があるという。
「チャームに加えて特殊能力……そんなに抗えないのかしら。チャームって……」
「人間は弱い生き物ですからね。普通に市販されているタバコやアルコールですら、一度依存症を発症してしまうと解脱することは恐ろしく難しい。それが麻薬や覚醒剤をはじめとした薬物依存になるとさらに悲惨です。チャームにそれを上回る依存効果があるとすれば」
「考えたくもないわね……人妖の被害者からの通報は極端に少ないって聞くし、できれば一生味わいたくないものね」友香は双眼鏡を覗きながら言った。輸送車の窓からターゲットが棲むと言われる高校を見る。三階の教室の一つ。厚いカーテンの隙間から光が漏れている。「調査は必要無さそう……学校に棲むなんて、物好きな人妖もいたものね」
「水道や電気が通っていますし、使おうと思えばガスもあります。浮浪者の様な生活をしている賎妖に比べれば、ある意味快適なのかもしれません」
「おまけに栄養源である人間は向こうから集まってくる……か。昼間さえやり過ごせれば確かに潜伏場所としては悪くないのかもしれないわね」
 友香が輸送車を降りると、冷たい夜風が頬を撫でた。
 振り返って運転手に合図を送ると、輸送車は来た時と同様に静かな音を立てて走り去った。こちらから連絡するまで近くの目立たない場所で待機する手はずになっている。
 グラウンドを囲っているフェンスを軽々と越え、そのまま身を隠すようにフェンスに沿ってゆっくりと歩く。プールの脇を抜け、昇降口の近くまで来る。予想通り警備会社のロゴが入ったのセキュリティのランプが緑色になっている。通常、最後に帰宅する職員が操作して、ランプを赤色の警備中に切り替えるはずだ。おそらく栄養源である人間を招き入れるために、人妖内部から切ったのだろう。ということは、ターゲットは今まさに「食事中」か……。
 扉の大きさに反して簡易的な鍵をキーピックで開け、わずかに開いた隙間に身体を潜り込ませるように中に入る。人妖は一体とは限らない。ドミノの様に置かれている靴箱の間を足音を立てないように抜けると、廊下はしんと静まり返っていた。非常口を示す緑色のランプと、火災報知器の赤い光が床や壁を照らしている。普段は活気あふれる場所であるだけに、死に絶えたような今の様子は不気味さに拍車をかけた。
 友香は目を閉じ、耳を澄ます。
 ──音。
 遠くから──くぐもった声のようなものが聞こえる。
 おそらく輸送車から見た三階の教室からだろう。友香はグローブの装着具合を確認すると、緊張した表情で正面の階段を上った。しゃがんだ状態で、階段の内側の壁に沿うようにして一段一段登る。とっさの回避には不向きだが、この方が上階からは死角になりやすい。
 二階を過ぎたあたりから、音は次第にはっきりと聞こえるようになった。
 女性の──嬌声だ。
 むしろ叫び声に近い。
 校舎内が静まり返っている上に、コンクリート製の壁は音をよく響かせる。
 三階に到着すると、廊下の左奥の教室から明かりが漏れていた。
 今や嬌声ははっきりと聞こえ、男の唸るような息遣いや声も聞こえてくる。
 友香はできる限り急いで廊下を進んだ。
 途中、左側に渡り廊下があった。渡り廊下の先は体育館だ。
 教室まで近づくと、友香はスライド式のドアにはめ込まれたガラス窓から中を覗いた。
「ああああッ! も、もうダメッ! もう、い……イッで……イッでるがらぁッ! じぬっ! 死んじゃうッ!」
「オラッ! オラッ! 俺が出すまで止めねえって言ったろうが! 勝手に死んでろクソアマ!」
 友香は反射的にドアに背中を着けた。
 教室の向かいは女子トイレだ。
 緊張と衝撃で早くなった自分の息遣いが聞こえる。
 教室から漏れる光を背負い、トイレの奥の暗がりがやけに濃く感じる。何かが這い出てきそうで不気味だった。
 友香は息を整えると、振り返ってガラス窓から中を覗いた。窓は湿気で曇っていたが、かろうじて中の様子がうかがえる。
 教室の中央あたりで、黒く日焼けした肌の男が腰を振っていた。男はタンクトップだけを身につけ、友香に背を向けている。丸太のような太腿や引き締まった尻が見えた。男の正面の机には学校の体操服を着た女性──おそらくこの学校の女子生徒が半裸で仰向けに寝かされ、男が激しく腰を打ち付けられている。皮膚同士がぶつかる破裂音を立てて男が腰を振るたびに、机と床ががたがたと大きな音を立てた。そしてそれ以上に大きな声で、女子生徒は自分の髪の毛を掻きむしりながら白目を剥いて嬌声をあげている。普通にしていればおそらく美人なのだろうが、涙や涎で顔をぐちゃぐちゃに汚しながら半狂乱に叫ぶその姿は、男に力で屈服させられた一匹の無様な雌にしか見えなかった。
「おがじくなるッ! おがじぐなるぅッ! も……許じ……んぶぁぁッ!」
「おらっ……! 出すぞッ!」
「んあぁぁぁッ! あ……うぶッ!? あぎっ──」
 男は肩を震わせて痙攣すると、それと同時に女子生徒の身体もびくんと跳ねた。
 ──あ……射精……したのかな?
 友香はハッと我に返った。
 獣の様な激しい行為に思わず息を飲んで、時間も忘れて一部始終を見てしまった。結合部こそ見えなかったが、実際の性交を見たのは初めてだった。事が終わった女子生徒は大きく胸を上下させている。頭が机の縁から落ちて、仰け反るように顎を天井に向けたまま失神していた。男が移動すると、女性器から白く濁った液体がゴボリと溢れて床に落ちた。男は捲れ上がった女子生徒の上着を雑巾のように引っ張り、自分の股間の辺りを雑に拭っているらしい。
 男は突然振り返って友香のいるドアの方に向かって歩き出した。色黒の肌に短い金髪、自信と欲望に満ち溢れたような眼光が友香の目に映る。
 咄嗟に友香はドアから離れ、背後の女子トイレに身を隠した。
 呼吸が乱れている。
 手洗い場の鏡には両手で口を押さえる自分の姿が映っていた。
 ──ガラリ。
 ドアが開いた。
 息を止める。
 ライターを擦る音。
 タバコの匂い。
「シャワー浴びたらもう一発するからな。まだ伸びてんじゃねぇぞ」
 男の籠った声が聞こえる。廊下から教室内に向けて言い放ったのだろう。
 友香は男が十分に遠ざかると、そっとトイレから顔を出す。男は体育館の方へ行くらしく、渡り廊下を曲がって消えていった。友香はタイミングを見て足音を立てずに教室に入ると、うっと呻いた。汗と脂が混ざったような甘酸っぱい匂いと、窓が曇るほどの湿気に少し目眩がした。女子生徒は机に仰向けに寝そべったまま、脱力したようにだらしなく脚を開いている。衣服が汗を吸って身体に張り付き、女性器からは白く濁った液体が溢れて机に溜まり、糸を引いて床に垂れている。
「大丈夫? しっかりして」
 友香が女子生徒の肩を軽く叩く。
「あ……きゃあっ!」
「落ち着いて。私は上代友香。あなたを助けにきたの」
「……え?」
「名前……聞いてもいい?」
「……佳奈。木村佳奈……です」
「佳奈ちゃんか……同い年くらいだよね?」
 ゆっくりと話す友香に、女子生徒は徐々に落ち着きを取り戻してきた。友香は手近にあったタオルで佳奈の身体を拭きながら、男のことを聞く。佳奈は涙ぐみながら、男に脅され身体を求められていることを告白した。男は昼間は街中をぶらついたり人を脅して金品を巻き上げたりしており、夜に職員を含めて全員が学校から帰宅すると、戻ってきて空き教室や保健室などで寝ているという。また、弱みを握られ身体を提供している女性は複数おり、毎晩のように行為に及んでいるらしい。
「酷い……」
「私も嫌なの……でも、逆らって写真をネットに上げられでもしたら私も彼氏も生きていけない……。でも、それ以上に許せないのは──」佳奈は目を伏せながら言った。「最近は……自分でも少し期待てて……」
「……期待?」
「き、今日は呼ばれるのかなって……時々。あの人、本当に凄くて……ごめんなさい、こんな自分が許せないの……彼氏がいるのに、最低だよね……」
「大丈夫、佳奈ちゃんは悪くない。それはあいつの持っている能力みたいなものだから」
「……能力?」
「詳しくは言えないけれど、あいつには人を魅了する力があるの。そして、私はあいつを倒す訓練を受けているから、もう安心して。あとは私に任せて。絶対に助けてあげるから……」


 友香と佳奈は渡り廊下で別れた。
 佳奈は汚れた格好のまま、制服とタオルを持って階段へと向かった。友香の一刻も早くこの場所を離れたほうがいいという提案で、着替えはグラウンドの隅で行うことにした。プールのそばであれば背の高い茂みや水道もある。
 途中、佳奈は何度も振り返って友香に頭を下げた。
 友香は片手を振って返すと、グローブを締め直して渡り廊下の中央に立った。おそらくもうすぐ男が帰ってくるだろう。佳奈をもう一度犯すために。実戦を前に、友香は足の底から熱のようなものが這い上がってくるのを感じた。
 それにしても……と友香は思った。自分と同い年くらいの子があそこまで乱れるほど、チャームというものは強烈なのだろうか。白目を剥き、舌を限界まで出して喘ぐ佳奈の顔が脳裏に浮かぶ。そして、恋人がいるのに心の隅では男に犯されることを期待してしまうとも言っていた。
 ──人間は弱い生き物ですからね。
 ──一度依存症を発症してしまうと解脱することは恐ろしく難しい。
 オペレーターの言葉が蘇る。
 もし自分がチャームに冒されたら、あのようになってしまうのだろうか。
 寒くはなかったが、背中が微かに粟立つのを友香は感じた。
 

 渡り廊下を半分ほど渡ったところで、男は足を止めた。
 蛍光灯の下には体操服を着た見慣れない女が腕組みをして立っている。一瞬佳奈かと思ったが、佳奈の自信なさげな顔とは違う。少し幼さが残っているところを見ると、歳は佳奈と同じ十七、八くらいだろう。男はシャワーの後でまだ少し湿っている短く刈り上げた後頭部を掻いた。
「なんだぁ……てめぇ?」男は首をかしげながら目を細めた。男の低い声にも友香は微動だにしない。「居残り練習してた陸上部……ってわけじゃあねぇよな?」
「上代友香──あなた達人妖の敵よ」
 友香は男をまっすぐに見ながら、静かに言った。腕組みを解くと、足を肩幅に開いて床の感触を確かめるようにゆっくりと構える。
「ケッ! 例の組織か……アンチレジストとか言ったな? 俺はこの通り昔のツレとは縁切って独りで楽しくやってんだ。見逃してくれよ」
「そうはいかないわ。佳奈ちゃんをはじめ、複数の女の子に暴行しているんでしょう? 弱みに付けいるなんて、随分と卑怯な手段ね」
「あつらも楽しんでるんだぜ? 俺はメシを食うよりも楽に栄養補給が出来て、女達はぶち込まれてよがりまくる。佳奈だって彼氏がどうのって口ではイヤイヤ言いながら、ちょっとばかし焦らしてやると早く入れてくれって股開きやがるぜ。ウィンウィンの関係ってやつだ……お前には関係ねぇだろうが」
「それだってあなた達人妖のチャームの効果でしょう? 佳奈ちゃんだって本心じゃないわ」
「本心だったらどうするんだ? 自分の意思で俺の元に来ているとすれば」
「そんなはずは無いわ」
「そんなはずはあるんだよ……俺にチャームの能力はねぇ」
「……えっ?」
 友香が驚いた顔をする。男は一瞬天井を見ると、友香を見て笑った。
「出来損ないってやつさ……お前らの組織は賎妖って呼んでいるらしいな。まぁ、俺みたいにチャームが全くねぇ奴は珍しいみたいだがな──」
「でも、きっかけは弱みを……」
「きっかけなんて何だっていいんだよ。薬や酒に溺れている奴らは何だってあんなに被害者ヅラしてんだ? 他の人妖から爪弾きにされて以来、色々やって生きてきたぜ。ヤクの売人やってる頃、中毒者たちは最後には決まって俺を非難してきやがった。あいつから買わなければ、こんなことにはならなかったってな。泣きながら売ってくれって頼み込んできたと思ったら、最後には全員俺のせいだと手の平を返しやがる。無理やり勧められたとか騙されたとか言いながら、快感に抗えずに手ぇ出し続けてるのは紛れもねぇ自分自身の選択だろうが。ヤッってる最中の女どもの顔を見せてやりたいぜ。それとも、自分で体験してみるか? あ?」友香は一歩下がって身構えた。男がじりじりと距離を詰める。「よく見りゃあ、なかなかエロい身体つきしてんじゃねぇか。お前もヒィヒィ言わせて、明日には俺のチンポのことしか考えられないようにしてやるよ」
 男が友香に突進するように飛びかかると、友香は軽い身のこなしで躱して距離をとる。男はゆっくりと友香の足元から脳天までを舐めるように見た。動きやすそうな靴に健康そうな太腿。鋭角なラインのレーシングショーツにセパレートになっている上着。肩に着かない程度のスポーティーな長さにカットされた黒髪に、整った顔つき。男は唇を舐めると、口の端に溜まった唾液を音を立てて啜った。
「……あなたの相手なんて、絶対に嫌」
 友香はぎりっと歯を食いしばると、男と距離を詰めながら右足で床を蹴った。そのまま窓枠に左足をかけて飛んだ。友香の身体は床と平行になりながら錐揉み状に回転し、男の頭に打ち下ろすような回し蹴りを放った。男は対処しきれず、友香の足の甲が男の脳天をしたたかに叩くいた。男は、ぐぎっ……という悲鳴をあげる。おそらく自分でも初めて発した声なのだろう。首を押さえながら驚いたような表情を浮かべた。友香は着地と同時に、流れるように男の顎を蹴り上る。そして男が仰け反ると同時に後ろ蹴りを放った。
 男は低い悲鳴をあげながら、ベルトコンベヤーで運ばれるように後方に転がっていった。友香はふっと溜めていた息を鋭く吐く。
「うぐ……ガキがぁ……ッ!」
「……さすが人妖、ずいぶんと丈夫ね」上体だけ起こして睨みつける男に対し、友香がゆっくりと歩きながら距離を詰める。「アンチレジストの戦闘員と戦うのは初めて? ちなみに一般戦闘員の私なんかよりも、上級戦闘員はもっとすごいわよ」
 男は唸り声を上げながら友香に抱きつく様に飛びかかった。友香は難なく横に躱すと、男の鳩尾に膝を突き込んだ。ぐにゃり……と柔らかいゴムの様な頼り無い感触。
「なっ?!」
「ハッ! まさかこんなに早く使わせるとはな!」
 友香は膝蹴りを放っている足を引き、勢いをつけて回し蹴りを放つ。男は避けようともせずにそのまま蹴りを頬に受けた。男の首はスプリングの付いた人形の様に勢い良く左右に揺れる。友香が距離を取ると、男は両手で自分の頭を挟んで振動を止めた。
「……なんなの?」
「へへへ……驚いたか? 俺は自分の身体をゴムの様に柔軟にできるのさ。漫画みてぇに伸ばしたりはできねぇが、攻撃を無力化しているうちにいずれ相手は体力の限界を迎える。攻撃が効かないんなら負けることはねぇ」
「能力をベラベラと……口も柔らかくなったみたいね」
「うるせぇよ……余裕ぶってられんのも今のうちだ!」
 正面から突進して来る男を横に躱し、男の膝を真横から蹴る。通常では折れる角度で男の膝が曲がるが、跳ね返る様にすぐに元の形に戻った。男はバランスを崩したものの、ダメージはほとんど無いらしい。友香は何回も掴みかかろうとする男を躱しながら、関節を狙って攻撃を当てる。まるで蒟蒻を蹴っているような感触だった。友香が顎に伝う汗を拭うと、男は勝利を確信したような笑みを浮かべた。
「消耗してきてるなぁ……大人しくした方が身のためだぜ?」
「確かに厄介な能力ね……打撃系が全く効かないなんて」
「厄介じゃなくて無敵なんだよ。俺は一度も負けたことはねぇ」
「でも戦闘に関しては全くの素人みたいね。攻撃もさっきから掴みかかるばかりだし、本当に相手が消耗するのを待つだけ。技術の習得や努力は全くしてこなかったんでしょう?」
「当たり前だろ? 無敵は努力しても何の意味もねぇ」
「それはどうかしら? あなたの能力の特性はだいたい理解したわ」
「理解したからなんだってんだよ! 攻撃が効かなきゃ意味ねぇだろうが!」
 男が友香に突進する。ワンパターンの攻撃に友香は落ち着いた表情でそれを躱し、男が伸ばした腕を取って肘を膝で蹴り上げた。通常であれば肘が粉々に砕けているだろうが、肘はありえない方向にぐにゃりと曲がっただけだ。男のニヤついた表情。友香は男の腕を取ったまま、裏拳で男の後頭部を叩いた。男の首がぐにゃりと前に折れ、バネ仕掛けのおもちゃの様に後頭部と背中が着く。その瞬間に友香は男の背後に回り、首に腕をまわして一気に締め上げた。
「ぐッ?!」
「やっぱり呼吸は必要なのね……」
「がッ……がァッ!」
 男は手を振り回しながら背後の友香を掴もうとするが、完全に男の死角に入り込んでいるため届かず、その手はでたらめに空を切るだけだった。
「色々わかったわ。軟体化は確かに厄介な能力ではあるけれど、軟体化させている最中は身動きが取れないんでしょう? あなたは私の攻撃を察すると人形の様に動くのを止めて、全くガードをしなかった。もっとも、ガードする必要も今までは無かったのでしょうけれど……」友香が男の首を絞める腕に力を込める。「だから攻撃し続けて軟体化させていれば、あなたは動けずに私は簡単にバックを取れる。あなたがしっかりと防御や攻撃の手段を身につけて、軟体化はあくまでもいざという時の補助にしていれば、私も苦戦したかもしれない」
「げぶッ……」
 男の身体が痙攣し始める。友香は男が落ちてからの対応を考えていた。まずは待機させているオペレーターに連絡を入れ、回収班の到着前に手近なもので拘束を……。
「ま、待って!」
 渡り廊下に声が反響する。
 友香が怪訝そうな表情で男の影から覗くと、佳奈が思いつめた表情で渡り廊下の先に立っていた。
「佳奈……ちゃん?」
「お、お願い……その人を連れて行かないで……」佳奈が小走りで近付いてくる。そばまで来ると男と友香の様子をどぎまぎとしながら交互に見つめた。男が薄く目を開けて呻く。「ご、ごめんなさい……。い、一度は帰ろうとしたんだけど……私もう……その人がいないとダメで……」
「佳奈ちゃん……なんで……?」
「彼氏じゃ……もうダメなの……。満足できないの……何回かしたんだけど……その人と比べると全然ダメで……。さっき帰りながら、もうその人に抱かれることがないって考えたら……頭がおかしくなりそうで……」
「でも、佳奈ちゃんは弱みを……」
「わかってる! でも、もう弱みなんて関係無いの……身体が……きゃあッ!」
 男が力を振り絞って佳奈に手を伸ばす。佳奈を背後から抱き込むようにして細い喉に腕を回し、ギリギリと締め上げる。
「ごいづ……ごろずぞ……」
 男の絞り出すような声。
 友香はくっと息を漏らしながら、男の首を締め上げる力を緩めた。
「ゲボッ! ゲホッ! ウェッ! はぁ……はぁ……てめぇ……」男は佳奈を抱きかかえたまま倒れ込み、激しく嘔吐きながら友香を睨み上げた。佳奈は戦慄した表情で震えている。「許さねぇぞ……俺をここまでコケにしやがって……犯すだけじゃ足りねぇ……ボロボロになるまでいたぶってから、死ぬまでイかせ続けてやるよ」
 男は鬼のような形相で涎を垂らしながら立ち上がる。佳奈を引きずるようにして友香の前に立ち、歯の隙間から肉食獣のような呼吸をしながら友香を見下ろす。友香も悔しそうに男を睨み上げるが、佳奈を救出しない限り迂闊な行動はできない。
「おい、わかってんな。少しでも変な気起こしたらこいつの首の骨をへし折るぞ」
「……卑怯者」
「はっ! こいつに言えよ。おい、まずは棒立ちになれ。両腕も垂らすんだ。防御したり避けたりしたらわかってんだろうな?」男が見せつけるように右手の拳に力を込める。友香は悔しそうな表情のまま、肩の高さで構えていた両拳をゆっくりと下ろした。「──腹にも力入れんじゃねぇぞ!」
 ずぷんッ……! という水っぽい音が渡り廊下に響く。
「ゔぐぅッ?!」
 上着とショーツの隙間、ちょうどヘソのあたりを殴られ友香は呻いた。佳奈はひぃっ……と引き攣った様な悲鳴をあげる。友香は男の指示通りにノーガードで腹筋も固めないでいたため、男の鈍器の様な拳は友香の腹部に深々と埋まり、内臓にダイレクトに衝撃を伝えた。
「へへへ……やはり女の身体だな。随分と華奢じゃねぇか」
 ぐぼっ……と音を立てて男は友香の腹から拳を抜くと、すぐさま二撃目、三撃目を同じ箇所に突き込んだ。ずぷん……ずぷん……と腹を殴られるたびに、友香の身体は男の拳を支点にくの字に折れる。
「ゔぅッ! ぐぶッ!? くっ……は……はぁ……ゔぶッ!」
「ひひ……いい顔するじゃねぇか。さっきまでの余裕はどうした? 抵抗するならしてもいいんだぜ? こいつがどうなってもいいならな!」
「うぅ……くッ……」
 友香が無言で男を睨みつける。明確な侮蔑の視線に男の顔から笑みが消えた。
「なんだその目は? 自分の立場わかってんのかよ!?」
 ぐりゅッ……という音と共に、友香の鳩尾の男の拳が付き込まれた。友香の体は電気が走ったようにビクッと跳ね、今までとは異質の苦痛が足元から駆け上がった。
「がぁッ?!」
「おらおら! ナメてんじゃねぇぞコラ!」
「ゔぅッ! がふッ! うぐッ! あぐッ! げぼッ! おぅッ!」
 友香は腹と鳩尾を交互に連続で殴られ、その度に友香の身体は跳ね上がったり折れたりを繰り返した。膝はすでにガクガクと痙攣し、最後に鳩尾を突き上げられた瞬間一気に力が抜けて崩れ落ちた。尻を床に着けた状態でしゃがみ込み、そのまま両手で腹を抱える様にして前かがみにうずくまる。
「へへへへ……ちょっとばかしキレちまったぜ」
「うぐっ……はぁ……せ、正々堂々と……したらどうなの?」
「うるせぇ、どんな手使っても勝ちゃあいいんだよ。おら、いつまでミノムシみてぇにへばってんだ? まだ俺の気は済んでねぇぞ」
「あぐっ……くっ……あ……?」
 男が友香の髪を掴んで強引に引き起こす。友香が膝立ちの姿勢になると、ちょうど目線の位置に男のビキニパンツがあった。前部が槍の様に隆起している。知識として男の反応を理解している友香は息を飲んだ。
「あ? なんだ、こいつが気になるのか? へへ……スケベめ。仕方ねぇな、見せてやるよ」
 男がパンツを下にずり下げると、赤黒い男根が勢いよく跳ね上がって男の腹を打った。それは何本もの太い血管に覆われた上に何かを埋め込んだような不自然な凹凸があり、まるで男に寄生したグロテスクな芋虫のように見えた。
「ひ……ひぅっ!?」
 初めて見た臨戦態勢の男性器はあまりにも暴力的で、たまらず友香は悲鳴をあげた。同時に、佳奈がうっとりとしたようなため息を漏らす。
「お? なんだチンポ見るの初めてかよ? 俺のは特別スゲェからな。満足するまでいたぶったらたっぷりとコイツの凄さを味わわせてやるよ。処女にはキツイかもしれねぇがな」
 男は友香の奥襟を掴んで無理矢理立たせると友香が力が入らないうちに鳩尾を突き上げた。
「うあ゙ッ?!」
「へへへ……ここが特に効くみてぇだな?」
 ドブン……ドブンと悪夢のような音を立てて男は友香の鳩尾を責め立てた。息も継げないような責め苦に友香は徐々に目の焦点が合わなくなり、舌を出したまま瞳がまぶたの裏に隠れ始める。佳奈は友香の惨たらしい悲鳴が聞こえないように耳を塞ぎながら、目を瞑って震えていた。
「がぁッ?! ごぷっ! んぐッ!」
「おら、そろそろイかせてやるよ!」
 男は倒れかかる友香の身体を、奥襟を掴んで無理矢理立たせる。友香はすでに意識が半分飛びかけ、両腕がだらりと垂れていた。男はまったく容赦をせず、前かがみになった友香の鳩尾を突き上げるように拳を突き上げた。ずぷんッ……という水っぽい音が響き、友香の鳩尾に拳が深々とめり込む。
「があぁぁッ?!」
 友香の身体は反射的にびくんと跳ねた。男がすぐさま拳を引き抜いても、鳩尾を守る上着にはクレーターの様に陥没した跡が残り、その威力の凄まじさを表している。友香は凄まじい攻撃をまともに喰らい、しばらく焦点の合わない目をしながら身体をガクガクと震わせた。男が友香の奥襟を離すと、床に前かがみに倒れ込んだ。
「ったく、手間かけさせやがって。これで終わりじゃねぇぞ。俺に逆らったことをとことん後悔させてやる……」
「あ……あの……」ぐったりとしている友香と男を交互に見ながら佳奈が言った。誰に向けた言葉でもないし、その後の言葉が出てこなかった。どうしたらいいのかわからないという様子だ。友香がここまで酷い目に遭ったのは自分のせいだろう。しかし、友香があのまま男を倒してしまえば自分は一生消えない熱を抱えながら生きていくしかなかったかもしれない。「私は……どうすれば……?」
 ふっ、と視界が暗くなる。
 見上げると、男が目の前に立っていた。蛍光灯を背負い、逆光で影になった顔の中で血走った目が自分を見下ろしている。そして自分の顔の位置には、今まで見たこともないほど強く勃起している男の性器が脈打っていた。
「知るかよ。こいつ殴って興奮しちまった。とりあえずしゃぶれ」
「え……? そん……な……」
「いいから口開けろ便所が! 手加減しねぇからな!」
「え……ゃ……やっ……嫌ッ! むぐぅッ!? ゔぇッ! ごッ!? げぇッ!?」
 男は佳奈の頭を両手で掴むと、力任せに佳奈の喉奥まで男根を突き込んだ。佳奈の後頭部を突き破りそうなほどの勢いで男は腰を振り、渡り廊下には佳奈の内臓を吐き出すような悲鳴が響き渡った。

5月3日の腹パで出品する「ERROR CODE:AYA完全版」のオマケテキストが出来上がりました。
いつも通り文章はこちらで全て公開します。

時系列的には綾がクラスメイトに輪姦され、少し時間が経ってシオンが綾の元に来る間の、外伝的な内容です。


では、どうぞ



 魚は、溺れるのだろうか?
 溺れるという事は、水に嫌われるという事だ。
 魚は水の中でしか呼吸が出来ず、餌もとれず、子孫も残せない水に依存した生物だ。仮に何らかの理由で魚と水の関係が悪化でもしたら、魚は水に対して媚び諂い、靴の裏を舐めてでも水の機嫌を取らなければならない。そうでなければ、死ぬしかないのだから……。

 今にも目の前に落ちてきそうな重々しい曇天から降り注ぐ雨を見つめながら、衣笠 紬(きぬがさ つむぎ)は溜息を吐くと、組織へと通じる隠し扉を開けて薄暗い階段を降りて行った。
 今朝方から降り始めた雨は一層勢いを増して、紬のローファーやソックスを濡らした。リノリウムの床と濡れた靴底が擦れ合って、甲高い音を響かせる。
 重い雨だった。
 決して強くはないが、その雨は無数の人々に踏みつけられた都会のアスファルトにこびり付いた汚れを、まるで海洋生物が身体から分泌する粘液の様に絡め取って舞い上がらせ、熱気と湿気を孕んだ初夏の気候を一層不快なものにした。
 アンチレジストの会議室の雰囲気もその不快極まりない外の気候と同様に重いものだった。程よく効いた空調も、部屋の隅に置かれたプランターも、無垢材で出来た高価なテーブルも、その粘り気のある空気を洗い流してはくれなかった。漂白された様な蛍光灯の灯りだけが、テーブルを囲む十数名の人間を悲し気に照らしている。

 綾が負けた。

 このセンセーショナルな事実はすぐには公表されず、数日が経過した後に一部の戦闘員、オペレーターが集められた合同会議の場で発表された。
 一番上座に位置する一角には人ではなく大型のモニターが置かれ、アンチレジストのトップ、ファーザーの側近が声のみで参加していた。
 報告を聞いて最初に声を荒げたのは綾専属のオペレーターである紬だった。会議室の中にいる全員の視線が、一様にその小柄な身体に集中する。紬はその視線をはね除ける様に言葉を続けた。
「私は納得出来ません! あれほどの実力がある人を、たった一回の失敗で処分するなんて!」
 モニターの向こうにいる人間に対して矢を放つ様に睨みつけながら紬は言い放ったが、ブラックアウトしたモニターはそんな紬の姿を嘲笑うかの様に、歯を食いしばってい紬の顔を反射させていた。
「処分とは人聞きの悪い。これは正当な下命の元の行動。いわば任務です」
 機械で加工された女性の声がモニターから聞こえる。
「実力の無い者にいつまでも優位的立場を与えていては、いずれは周囲にも影響を及ぼします。悪貨は良貨を駆逐すると言うように、あなたや私を含め、常に厳しい目で周囲から見られている事をお忘れなく」
「綾さんがいつ、その優位的立場を利用したんですか?!」
「ましてや今回の事は命令無視の単独行動。神崎綾には初戦での敗北の後、組織の指示が出るまでは自宅待機を命じていました。それを勝手に夜の学園に侵入し、挙句ふたたび敗北して敵の手に堕ちるとは、これを暴走を呼ばずに何と呼ぶのですか? 一般戦闘員の規範となるべき上級戦闘員にはあるまじき失態にファーザーも失望しています。皆さんのお手元にある下命書も、ファーザー直々のものです」
 紬は全員に配られた書類のコピーに視線を落とした。今では珍しい日本語のタイプライターで打たれ、太めの万年筆で「F」のサインが書かれている。紛れも無くファーザーからの下命書だ。

 下記の者、本日○年○月○日を持って階級を変更する。

・神崎 綾
 旧階級 上級戦闘員
 新階級 補助戦闘員

 特記
 上記は神崎綾があくまでも任務続行可能な状態であった場合に限る。チャームによる重篤な精神汚染が進行していた場合は処分も検討する

 補助戦闘員とは一般戦闘員の任務の遂行をサポートする後方支援部隊だ。具体的には事前に地理や周辺状況を把握してオペレーターへ報告、時にはターゲットの人妖、賤妖に接近し行動を監視することもある。入隊したばかりの隊員が配属される事が多いが、オペレーターとは違いターゲットと接触する危険性が高いため、この段階でミスをして普通の生活を送れなくなった隊員も多い。
 しかも降格以前に精神汚染が進んでいた場合は最悪殺すとも書いてある。紬の心は暗い井戸の中に放り込まれたように暗澹としていた。
「でも……でも!」
 紬は悔しさから下唇を噛む。何かを言おうとしても、肺からせり上がってきた様々言葉が喉の辺りで形を成さず、ぐずぐずに溶けてしまった様に消えててしまう。
「もうあの人は無理よ……」
 一般戦闘員担当のオペレーターが口を開いた。紬は顔を知っている程度だった。
「神崎さんに実力があるのは認めるけど、今回の事はフォローのしようが無いと思う……。戻ってきてもらっても、またいつ同じ様に単独行動して問題起こすかわからないし、既に精神汚染が進行しているかもしれないじゃない? 機密を喋られる前に対処するのも方法のひつとだと思うけど」
 狭い空間に、同調する声がひそひそと響く。紬は自分自身が否定されている気分になった。
「だからって、綾さんの代わりなんて早々見つかるわけ……!」
「一般戦闘員の中にも優秀な人材はたくさんいるわ。その芽を摘んでまで神崎さんを残す理由は無い。あなたが神崎さんにこだわるのは個人的な感情だけでしょう? これは組織の問題なのよ」
「何かあったら割を食うのは私達なのよ。神崎さんがこの組織の場所を喋って人妖達がなだれ込んできたら、あなた責任取れるの?」
「仲が良いのは結構だけど、公私混同は止めてほしいわ」
「そもそも神崎さんってそんなに実力あったの? 訓練での成績は良くても、実戦で負けたら意味ないじゃない」
「衣笠さんのよく言ってる『あの人は性格が良い』ってのも、何かあったらこういう風にフォローしてもらおうって考えが神崎さんにあったからなんじゃない?」
「いつもニコニコして、何か裏がありそうって思ってたのよね」
 会議室内の空気の粘度が高まり、コールタールの様な重く黒い雰囲気が会議室を満たす。枯れ葉同士が擦れる様なひそひそとした批判の音はまだ鳴り止まない。
 綾を蔑む声が、まるで数百匹の蟻が脳の皺一本一本を引っ掻く様に紬の頭の中を這い回る。気持ち悪い。吐き気がこみ上げる。強く噛み過ぎて、紬の下唇から血が滴る。ざわざわとした黒い感情が臍の辺りからせり上がってきた。
 紬が椅子を蹴って立ち上がる。白いイームズのシェルチェアが墨色の絨毯に倒れ、鈍い音を立てる。全員の視線が自分に集まる。樹脂で出来た椅子が倒れる軽い音までもが綾と自分を嘲笑っている様に聞こえた。
 部屋を出ようとした所、背後から射抜く様な視線を感じ、紬はびくりと足を止めた。
 振り返ると戦闘員の座っている席の上座から、上級戦闘員の鷹宮美樹が射抜く様な視線を自分に向けていた。最高級の日本人形の様に、腰まで届きそうなほど長く艶のある真っ直ぐな黒髪を手櫛で一度だけ梳くと、静かだがよく通る声を発した。
「そのくらいにしないか? ここで綾の人間性を批判しても何も始まらない。大事な事は綾の処遇をどうするかではなく、綾自身をどうするかだ。助けるのか助けないのか。助けるとしたら誰が行くのか? 見捨てるにしてもこのまま放っておくのか……最悪口封じをするのか。どうなんだ?」
 会議室内が静まり返る。美樹は会議室内の人間を左から右にゆっくりと見回す。
「ちなみに綾は身体こそ小さいが、運動能力が高い上に精神力はもの凄く強い。まぁ、今回はそれが空回りしてしまったが……。どちらにせよ、建設的な意見を頼む。私は助ける方向なら全力で支援するが、口封じは遠慮したい。個人的な意見を言わせてもらえば、精神汚染が進んでいるのかどうかはまずは救出してみなければ判断がつかないだろう? まずは綾の身柄を人妖から奪還する。その後検査でも何でもすればいい」
 その落ち着いた静かな声は、冷たく澄んだ綺麗な水が川の淀みに流れ込んで来る様に、徐々に会議室の空気を洗い流した。紬も黒い感情がいつの間にか小さくなっている事に気付く。
「賛成です。だから紬ちゃんも落ち着いて座って……」
 甘い香りがふわっと漂ったかと思うと、不意に耳元で声がした。
 いつの間にか美樹の隣に座っていたはずの、美樹と同じ上級戦闘員の如月シオンがまるで瞬間移動をしたかの様に紬の隣に立っていた。
 戦闘時や実戦訓練では戦闘用にカスタムしたメイド服を着て、美樹と同じく腰まで届く長い金髪をツインテールに纏めているが、今日は学校の制服を着て髪型をストレートに下ろしているため普段よりも大人びて見える。
 倒れた椅子を丁寧に起こして紬に座る様に促すと、シオンも自分の椅子を持ってきて横に座り、そっと紬の手を握った。
「綾ちゃんの処遇が決定したという事は、上層部の方々はそれなりの確証を掴んでいるという事ですよね。どのような手を使って確証を得たのかは大体想像出来ますけど……。ただ、物事を想像だけで仮定し、それに基づいて行動を起こそうとすると悪い結果しか産まれないと思います。もし機密を口外するほどチャームに汚染されていないのであれば、私も美樹さんと同じく救出するべきだと思います。処遇を決定するのはそれからでも遅くはないのでは?」
 シオンがモニターに向かって静かに語りかけると、美樹はふっと笑いながら「そんなに怒るな」と呟いた。紬はぎくりとしてシオンの顔を覗き込んだ。
「で、どうなんだ。シオンの言う通り、綾がどの程度チャームに汚染されているかわかる資料はあるんだろう? 助かる見込みはどの程度あるんだ?」
「そうですね……。如月さんの仰る通り、我々は神崎さんがかなり汚染が進んでいる状態である資料をいくつか入手しています。説明するよりもご覧頂いた方が早い様ですので、モニターをご覧下さい。誠心学園の体育倉庫で撮られた映像です」
「盗撮した、の言い間違いだろう?」と美樹は言った。
 会議室内の十数人の視線がモニターに集中する。
 ブラックアウトしていたモニターには体育倉庫内で男性型の人妖と対峙する神崎綾の姿が映し出された。
 紬の手を握っているシオンの手の力が、僅かに強まった。

「今日こそ……あんたを倒すから……」
 言い終わると同時に、綾が男性に突進した。綾の声はいくぶん震えているように感じた。部屋の端から中央で直立している男性へ距離を詰める。動きも明らかに精彩を欠いている。普段であれば水の中を泳ぐ魚の様に滑らかに移動する綾であったが、映像の中の綾は必死に飛ぼうと羽ばたく鶏の様にぎこちなく見えた。
 綾の放った拳はことごとく空を切り、軽々と躱される。普段は見慣れない蹴りも放っているが、いずれも男性に最小限の動きで避けられ、十分も経たないうちに綾は肩で息をして顎からは汗が滴っていた。
「はぁ……はぁ……な……何で……何で当たらないのよ……」
「自分でも気付いているでしょう? あなたは既にチャームに毒され、本能的に私に敗北する事を望んでいる。そしてその先も……。大人しくこのような茶番は止めて、友香の様に素直になればいいものを……」
「うるさいっ!」
 綾が拳を握りしめながら叫んだ。
「私は……アンチレジストの戦闘員なの! あんたを倒す事が私の任務で、私がここにいる意味なのよ! それすら無くなったら、私が私でいられなくなる!」
 絞り出す様な綾の叫びを聞いて、男性はやれやれと首を振る。カメラは男性の背中からのアングルのため、その表情は窺い知れない。
「自分の存在意義を他人に依存するとは愚かな……。今のあなたは生きているのではなく寄生している。しかも餌を貰うために叫ぶ雛鳥の様にうるさく喚きながら……」
「うるさいって言ってるのよ!」
 綾は叫びながら拳を繰り出すが、大振りの正面からの攻撃のために男性に軽く躱され、代わりに鳩尾を突き上げられた。
 どぽん、という重い音が響き、綾の足が地面から浮く。
「ぐぷっ?! ごぽッ……」
「しかしあなたの様に強情な人も珍しい。本来ならとうに身も心も私に差し出しているものを……。まぁ、それも今日までだ。今日は最後までするつもりなので、覚悟しておきなさい」
 男が綾の胸ぐらを掴むと、膝を腹部に突き入れた。
 映像を見ていたオペレーター数人から悲鳴が上がる。
「ごぶぅっ! ご……おごぇっ……」
「ほら、どうしました? このままではまた負けてしまいますよ?」
 ぐちゅり、と男性の拳が綾の鳩尾を抉った。モニターには一瞬で白目を剥く綾の顔が大映しになる。口からはだらしなく涎を垂らし、口からは力の抜けた舌が飛び出している。
「あがッ……あ……ゔぁぁ……」
 綾が力なく崩れ落ち、男性にしがみつく様に膝から崩れ落ちる。力なく男性のカッターシャツを掴んで体勢を保っているが、それを離した瞬間に崩れ落ちてしまいそうなほど危うく見えた。男性がスラックスのファスナーをゆっくりと下ろし、男根を解放する。
「ほら、これが欲しかったのでしょう? 素直にならないと、いつまでも苦しいままですよ?」
「あ……だ……誰が……こんなものッ……」
 言葉では否定しても視線は無意識に顔の前で揺れるそれを追ってしまう。画面越しに見ているオペレーターや戦闘員も、綾の表情が徐々に艶かしい色が浮かんでいる事に気付く。息遣いは深くゆっくりとしたものになり、だらしなく半開きになった口には唾液が溢れている。
「はぁ……はぁ……こ……こんなの……欲しくなんて……」
「その蕩けきった顔で言っても説得力はありませんよ。まったく、素直になればいいものを」
「や……やっ……むぐっ?! んむぅぅぅっ!」
 男性にとって脱力した綾の口に男根をねじ込む事は雑作もない事だった。男根を突き入れられた綾もタガが外れたのか、頬をすぼめ必死に男根を吸引する。
「んむぅぅっ……じゅるっ……ちゅっ……んはぁぁぁっ……」
「くくくっ……ほら、我慢していた分、遠慮なく味わいなさい」
「いやぁっ……何で……こんなこと厭なのに……何で我慢出来ないのよぉッ……うあっ……はむっ……んぐっ……んふぅっ!」
 男性の背後から綾を覗き込んでいるカメラは、その痴態をまるで男性の目線から捕えたかの様に生々しく伝える。綾は目に涙を溜めながら男根を喉奥まで頬張り、許しを請う様な視線を男性と、その背後にあるカメラに向かって送っていた。時折男性が強引に綾の頭を掴んで激しく前後に揺さぶると、綾の喉から苦しそうにくぐもった声が漏れる。呼吸を無理矢理乱され、口の端から透明な唾液が顎を伝わってセーラー服を汚す。
「ゔゔっ……ゔえぇぇぇっ! ゔああああぁっ……おうっ……ぷはあっ! あ……ああぁ……」
 窒息寸前で男性が綾の口から男根を引き抜くと、綾の唾液と男性の先走りが混じった液体がにちゃあっと糸を引く。酸欠寸前になった綾は慌てて酸素を取り込もうと咳き込むが、すぐに口内に男根をねじ込まれて喉奥を犯される。
「おごおおっ?! ごぶっ……ぐあああっ……」
「ああぁ……気持ち良いですよ……喉の粘膜が絡み付いて……。窒息しそうになって痙攣するほどぎゅうぎゅうと私を締め付けてきますよ……」
 男は綾の苦しみなど意に介さずに、ただ快楽を貪るために綾の喉を激しいストロークで抉る。時折ストロークする場所を変えてぷりぷりする頬の粘膜を擦り上げるたび、綾の頬はあめ玉を舐めている様にぽこぽこと膨らむ。喉奥へ男根を突き込み食道や気管の入り口を容赦なく擦る。
「おごぶっ……おうぇぇ! ゔえぇぇぇぇぇ!」
 意識が切れ切れになりながらも失神せずに耐えながらも内蔵を吐き出してしまいたいほどの衝動に襲われ、綾がたまらずに男根を吐き出し、同時に胃液をコンクリートの床にぶちまけた。びちゃびちゃという汚い音が室内に響く。男は綾の嘔吐が終わるか終わらないかのうちに左手で綾の頭を掴んで強引に顔を上げさせると、男根を喉奥まで突き込んだ。
「ぐっ?! うぶぅっ?! ごおぉぉぉっ!」
「くおおおっ……気持ちよすぎるな……。吐いたお陰で滑りが良くなりましたよ……」
「ぐぶっ……ぐぶぅぅぅっ……ふ……太いぃぃ……」
 男は綾の味わっている苦痛等意に介さず、夢中で綾の顔を前後に揺する。普段は強気な表情の綾が涙で顔をぐしゃぐしゃにしながら、自分の男根をくわえ込んで弱々しく上目遣いで見つめてくる。
「いい顔に……なってきましたね……。うっ……出る……出るぞ……おおおっ!」
「むぐっ……うぐぅぅぅっ……むぐっ?! んむぅぅぅっ! ぶはあっ! あ……ああっ! あああぁぁ……」
 綾は男の放出量に堪え兼ねて男根を吐き出したが、男の放出は止まることなく弧を描いて綾の顔や髪を汚して行った。だらしなく露出した舌には糊の様に濃厚な粘液が落ちることなく留まってゆく。
「くっ……おおぉ……」
「あはあああっ……あああぁ……こ……こんなに……出すなんて…………うあぁ……」
「……何を惚けているのですか? 言ったでしょう……今日は最後まですると……」
「え……? あ……きゃあっ!」
 男は膝立ちになって放心じている綾に覆い被さる様に、強引にマットに押し倒した。オフホワイトのマットに染み込んだ汗の匂いが埃と共に舞い上がる。粘液で所々染みの付いたセーラー服の上着を捲り上げると、その小柄な身体には不釣り合いなほど豊満な胸が、皿に落としたプリンの様にふるふるとこぼれ落ちる。
「ほぉぉ……これは……」
 男が泡立てたばかりのメレンゲの様に滑らかな綾の胸を鷲掴みにすると、節ばった指の間から突きたての餅の様な柔肉がはみ出した。心地いい弾力を持った僅かに汗ばんだ肌はしっとりと指に吸い付き、円を描く様にその胸をこね回す。
「くはっ?! あっ……胸はッ……だめぇッ!」
 綾は力なく男の手首を握って僅かに抵抗の意志を見せるが、臍のあたりに馬乗りになられた体勢では僅かに身体を捻るくらいしか抵抗が出来ず、男の愛撫をただ一方的に受け入れるしか術は無かった。
 脇のあたりから乳首に向かってゆっくりと搾乳する様に絞り上げられ、わずかに伸びた爪の先で胸全体を触れるか触れないかの力で撫で回され、時に潰れるくらいの力で握られる。蛇の様に執拗でねちっこく、それでいて多彩な男の責めに綾はただ声を堪えて抵抗したが、男が綾の充血してすっかり固くなった乳首を抓り上げると、綾の背中が電気ショックを受けたかの様にビクリと跳ね上がる。
「あひッ! うああぁ! ぅあ……もう……だめぇ……。変に……なる……頭の中……変になるぅ……」
「この大きさでも……感度は抜群ですね? そろそろ私も楽しませてもらいましょうか……」
 男は綾の顔に付着している乾きはじめた粘液を指で掬い上げて胸の谷間に塗りたくると、はち切れそうに勃起している男根をねじ込んだ。粘液と温かい柔肉に圧迫され、背骨のあたりを快楽の電気信号が脳に駆け上がる。
「おおおおっ……これは……私でも気を抜くとすぐに果ててしまいそうだ……。ゆっくりと堪能させてもらいますよ」
 男は両手で綾の胸を寄せると、ゆっくりと腰を前後に揺すりはじめる。極上の摩擦が男根を包み、自然と尻に力が入る。
「あっ……やっ……やだ……何して……む、胸でこんな……」
「おおおおっ……これは……すごいな……。温めたマシュマロに挟まれている様だ。まるで胸と肉棒が溶け合って、快楽神経を直接擦られているみたいですよ……」
 熱せられた歪な形の鉄の棒が自分の胸の間で蠢き、時折自分の顔を貫こうとするかの様に亀頭が顔を出す。
「い……嫌っ……こんなの……おかしい……変態……」
「パイズリは出来る人の方が少ないのですよ。くうっ……しかもここまで気持ちよく悦ばせられるのは……」
 男の腰を動かすスピードが徐々に加速して、綾の下乳に男の腰が当たる度に肉同士がぶつかり合う湿った音が響く。亀頭は真っ赤に充血して自分の吐き出した透明な汁を綾の胸の谷間で泡立てながら、天井の白熱灯の光を反射してぬめぬめと不気味に光っていた。
「あっ……ああっ……やあっ……もう……こんなの……」
 自分の想像を超えた変態的な行為に、綾が目に涙を溜めて首を横に振る。必死に男の手を掴んで抵抗するが、男の腰を打ち付けるスピードは増々速まり、呼吸も短く荒くなっていった。男根が胸の間を前後するにちゃにちゃという音は室内全体に響くほど大きなものになり、綾の鼓膜を突き抜けて脳を犯した。
「…………口を開けなさい」
 男が短く言葉を発すると、綾が必死に首を振る。チャームの麻薬的な中毒性よりも、精神的なショックの方が大きかったらしい。
「うぁ……ま、まさか……やだ……やだぁっ……」
「口を開けないと……目の中に出しますよ……」
 綾の身体がビクッと震える。何だ? 自分は何をされるのだという恐怖が、まるでムカデがその無数の足でぞわぞわと肌を引っ掻いている様に、爪先から脳天へ這い上がってきた。
「ひうっ?! 目? 目って……?」
「口を開けないのなら、無理矢理目をこじ開けてその中に出すという意味ですよ……。それよりも、眼窩ファックというものを教えてあげましょうか? 早くしないと……時間が無いですよ」
「あっ……あぁ……んぁ……」
 男の口調から、本当に余裕が無いことを察する。目の中に粘液を出されるなんて想像したことも無いし、眼窩ファックなんてものも知りたくもない。
「そのまま……舌を出して……。おっ……おおっ……おおおおっ!」
「あ……ぇあ……ふあっ?! あ……えあぁぁぁっ!?」
「くぅぅぅっ! 口を閉じるなよ……おおっ……ッ……!」
「あああっ……はぐぁっ……あ……かはッ……あああっ……」
 赤黒く鬱血した亀頭が胸の間からちゅぽんと跳ね上がると同時に、ビクビクと痙攣しながら綾の顔目掛けて大量の白濁を吐き出した。おずおずと開けられた口の中や震える舌の上にも容赦なく粘液がぶち撒けられ、先ほどのイラマチオで男が放出した乾きかけた粘液の上に、さらに白で厚塗りを施す。
 綾は涙を流しながら白い飛沫を顔中で受け止め、男の放出が収まった後でもしばらく舌を出したまま放心していた。その表情や姿は見ている者に更なる劣情を抱かせるには十分魅力的なもので、放出したばかりでやや硬度の下がった男の分身にも血が集まり、再び綾を脅す様に反り返って行った。
「あぁっ……もう……こんな……許して……お願い……」
「何を言ってるんです? これからが本番でしょう?」
「あ……やっ! ダメっ……それは……嫌ああっ!」
 男が放心している綾のスカートをゆっくりと足から引き抜いて、近くのボールカゴの中に放った。すぐに白いショーツに手をかけて引き摺り下ろそうとするのを、綾が必死に抵抗する。
「ダメ! お願い! それだけは嫌あっ! 許して……」
「ほう……まだ抵抗するとは……。軽い汚染を繰り返したせいで、かえってチャームに耐性が付いたか……。予定なら既に自分から股を開いているはずだったが……。まぁ、どちらにしろすることには変わりない。中で注げば嫌でもチャームに汚染されるだろう」
 男が綾の手を払いのけてショーツのクロッチ部分を無理矢理引っ張ると、乾いた音を立ててショーツが破れた。断末魔の様な綾の悲鳴が室内に響く。

「止めろ……」
 静まり返る会議室内で美樹が声を発した。画面の中では必死に抵抗する綾の上に男が覆い被さろうとしている。綾の口に男根がねじ込まれたあたりで数人のオペレーターがハンカチで口を抑えながら部屋を出て行く中、紬は流れる涙を拭おうともせず、パートナーの綾が画面の中で嬲られる様を目を逸らさずに見つめていた。珍しく悔しさを噛み締めているような表情を浮かべながらシオンが手を握っていない方の手で紬の肩の辺りを撫でている。
「早く止めろ」
 美樹の声に驚いた様に画面が再びブラックアウトした。叫び続けていた綾の悲鳴が唐突に途切れる。その悲痛な声は会議室に残っていた全員の内耳の中で、荒れる海の中で群れからはぐれた一匹の魚が必死に自分の群れを探しながら、悲痛にあても無く彷徨う様にいつまでも鳴り響いていた。
「綾さんは……まだ大丈夫です……」と、紬が震える声で言った。美樹がゆっくり頷いた。
「あの人妖の言葉を信じる訳ではないが、抵抗の様子を見る限り綾はチャームに耐性が出来ているらしい。まだ希望はある」
「望みは薄いと思いますが。これは二種間前の映像ですので、その間に汚染は進行しているとすると……」
「その二週間の間にどうにでも動き様があったのに、放っておいたのはお前達だ。それに、まだ二週間しか経ってないのだろう? 大丈夫かそうじゃないかはいずれわかる。まずは救出させてもらう」
 美樹が画面の中の人間の言葉を遮って言い放つと、紬がようやくハンカチを取り出して涙を拭った。シオンが紬の頭を軽く撫でると、ゆっくりと立ち上がる。
「そう言えば昨日、カンヤム・カンニャムが手に入ったんです」
「何だそれ?」と美樹が聞くと「リラックス効果が高くて、もの凄く綺麗なオレンジ色の紅茶なんですよ」とシオンが答えた。
「綾ちゃんはチェスで言えばナイトなんです……。独特な動きで相手の懐に切り込んで行ける優秀な駒なんですが、一歩間違うと敵陣の中で孤立してしまう……。まるで窒息した魚の様に藻掻いても藻掻いても、水はどんどん押し寄せて独りでは何も出来なくなってしまう。だから、ビショップやルークがフォローして実力を発揮させてあげないといけない。もちろんビショップやルークだってナイトに助けられることも多々あります」
 美樹は「お前の話は何が言いたいのかはわかるが、回りくどい」と言って静かに笑った。
「私は綾ちゃんとまたお茶が飲みたいんです。もうそろそろ綾ちゃんの学校が終わる時間ですし、早速お茶に誘ってみます」
 オペレーターが慌てて止めようとしたが、シオンは構わず部屋を出て行ってしまった。綾と直接会う気であることは明らかだ。危険ではないかという声があちこちから上がる。
「あいつはあれで意外と頑固なんだ。下手に止めると蹴られるかもしれないぞ? あいつの蹴りは結構痛いからな」と美樹は楽しそうに、本当に楽しそうに言った。席を立って紬の横に来ると、髪の毛を乱暴にくしゃくしゃと撫でる。紬は困り笑いの様な表情を浮かべて小さく悲鳴を上げた。
「作戦は救出で決まりだ。その後にあの人妖を倒す」
 全員の視線が美樹に注目した。モニターの電源は、向こう側からの操作で既に落ちていた。

 施錠された薄い緑色の体育館の扉をマスターキーで開けると、涼は扉を開けて綾に入る様に促した。
「あんたが先に入ってよ……」
 綾が十分に距離を取り、睨みつけながら涼に言い放つ。涼は肩をすくめながら体育館の中に入ると、後から付いて来る綾を振り返ること無く体育倉庫に向かって歩き出した。
 月明かりの差し込む体育館は二週間前のあの日と何ら変わらない光景だった。磨き上げられた合板の床の上を綾のブーツと涼の革靴が踏みしめる音だけが大きく響いた。遠くの方から運動部のかけ声が微かに聞こえて来る。
 体育倉庫の扉の前に来ると、涼が両手で把手を掴み、軋んだ音を立てながら体育倉庫の重い扉をスライドさせた。金属で出来た生き物が首を絞め殺されたら、こんな悲鳴を発するのだろうかと、綾は何ともなしに思った。
「どうぞ。何もしませんから、先に中に入って下さい」
 涼がわざとらしく扉から離れて綾を促す。「ふん」と鼻を鳴らしながら綾が倉庫の中に入り、入り口から一番遠くの壁際で身構える。涼が綾に続いて倉庫に入り扉を閉めると、外部の音は一切聞こえなくなり、窓の無い密室独特のカビや汗の匂いが僅かに強くなった。
 文武両道を重んじる誠心学園の体育倉庫は様々な器具を無理無く収納するために一般的なそれよりもかなり広めに設計されている。部活動数が多いため、雨の日にも屋内で運動部が練習出来る様に白いマットは壁際ギリギリまで高く積まれ、授業で使う跳び箱やボール入れに混じって、身体トレーニング用のベンチプレスやダンベル、クランチに使う台等かなりの数が置かれていた。
「これで邪魔は入りませんし、この適度な広さなら思い思いに戦えますね。簡単に距離を取ることも出来ず、好きなだけ殴り合える。多少声を出しても外には漏れない。私だってこの二週間ずっと貴女を待っていたんですから、楽しませてもらいますよ」
「私を待ってた? 友香だけじゃなく、他にも罪の無い女の子を襲ってることは知ってるのよ! いつか手痛いしっぺ返しが来るわよ。たぶん今日だと思うけど……」
「襲う? これは心外ですね。あの友香の満足げな顔を見たでしょう? 私は彼女達と利害が一致したから行為に及んでいるだけです。彼女達は快楽を得られ、私は生命活動のための養分を得られる。誰も損をしない。子孫を残す目的ならまだしも、自分勝手に快楽のみを求めたセックスを行い、挙句中絶や育児放棄の問題を未だに解決出来ないあなた方よりは、よほど建設的だと思いますが。私も片手間ながら教師という仕事をしている以上、この手の問題に直面する機会は結構多いのですよ」
「言いたいことはそれだけ……自分を正当化しようとして正論みたいに言ってるけど、女の子を利用していることには変わりないじゃない!」
 涼の眉間に僅かに皺が寄る。爬虫類の様に縦長に切れた瞳孔の奥に、微かな怒りと哀しみの色が浮かぶ。
「利用……か。本当にあなた達はいつもいつも、必要な時は散々持ち上げて利用しておいて、ひとたび都合が悪くなれば途端に手のひらを返して邪魔者、悪者扱いをする。下らなくて愚かで哀しい生き物だ。綾、貴女だには分かって欲しかったのですがね」
 涼のいつもならざる雰囲気に思わず綾が息を飲むが、頭を強く振ると一気に涼との距離を詰め、その整った鼻先に向けて拳を放つ。初弾は軽く受け流されるが、綾の猛攻は止まらず、嵐の様な拳の連打を放ち続けた。
 涼は顔の前で両腕をクロスさせ、握った手の甲を外側に向けて完全防御の体勢を取る。腕の骨がミシミシと音を立てるほどの衝撃が涼の身体に響いた。
「あああああッ!」
 気合いとともに放たれた綾の渾身の力を込めた右ストレート。
 涼の両腕のガードを突き破り、喉仏の下から鎖骨に掛けて拳が埋まる。
 衝撃でほこりを巻き上げながら後方へスライドする様に後ずさると、ゆっくりとガードしていた腕を開いた。
「ほぅ……凄いラッシュだ。まだ腕の感覚が戻りません。それに最後の一撃はガードしていなければ重度の呼吸困難か、最悪首の骨を折られていたかもしれませんね」
 涼が拳を握ったり開いたりして感覚を戻そうとしているが、まだブルブルと震えて感覚が戻っていないようだ。
「悪いけど今日は本気で壊しに行くから、今の内から覚悟しておいた方がいいわよ」
 自分を奮い立たせる意味も含めて、あえて威圧的な言葉を言い放つと同時に涼に向かって距離を詰めた。
「はああああッ!」
 綾の全力のボディーブローが涼の脇腹へ吸い込まれた。綾の拳に固い筋肉を打ち破って柔らかい内蔵の感触が伝わる。このまま言葉も発せずに昏倒させられる手応えだった。
 綾は涼の反応を見ようと顔を上げるが、涼は無表情で綾を見下ろすと、ゆっくりと口を開いた。
「すばらしい攻撃だ。ここまで練り上ることが出来たのも、あなたの才能だけではなく、並々ならぬ努力があったのでしょう」
(効いていない!?)
 穏やかな涼の声が綾の耳に届き、綾の足下から脳天へ向けて悪寒がせり上がって来た。綾は本能的にバックステップで後ろに下がる。
 一瞬遅く涼の左手が蛇の様に動き、綾のショート丈のセーラー服から覗く腹部に一撃を見舞った。
「がっ!? ぐうぅっ……」
 バックステップと、咄嗟に半身を切って攻撃を受け流す。拳がかすめた腹部を押さえながら態勢を立て直すが、距離を詰めてきた涼のローキックが綾の太腿を斜め上から襲った。
「あうっ!」
 左膝から下が無くなった様な感覚。
 綾がバランスを崩した所に追い討ちをかける様に、涼の膝が綾の下腹部に埋まった。
 ぐじゅりという音と共に、自分の子宮が痙攣する感覚が脳に届いた。衝撃で溢れた粘度の高い唾液が口内に溢れ、飲み込めない分は飛沫となってコンクリートの床に落ちる。
「…………!?………ッ…………ごぶぅっ!?」
 綾は両腕で腹を抱える様に押さえながら、両膝をついてうずくまる。息が継げず、口から絶えず唾液を垂れ流しながら喘ぐ。普通であればとうに戦意を喪失してもおかしくない状態だ。
「あっ……はっ……ッ……!? あぁっ……かはっ……」
 しかし、涼の影が視界に入った瞬間に綾は反射的に動いていた。
「………ああああっ!!」
 立ち上がる勢いを利用して、涼の顎を目掛けて拳を放つ。
 綾の拳は涼の顎を跳ね上げる前に手首を掴まれ勢いを止められるが、連鎖的に放った膝蹴りが涼の股間に入った。
「ぐっ……おおっ……」
 ダメージはほとんど無い様子だが、涼との距離を取ることに成功した綾は壁際まで後ずさり、未だに鈍痛が治まらない下腹部を押さえながら呼吸を整える。
「はっ……はぁ……はぁ……」
「良い攻撃だ。身体能力だけでなく、精神力も素晴らしい。あれほどの攻撃を受けながら、まだ立ち向かって来るとは。あなたと敵対していることが本当に惜しいですよ」
「生憎……私は敵対していることに感謝しているわ……」
「それは残念だ……。ところで……何故あなた方と我々は敵対して戦うのか、疑問を感じたことはありませんか?」
 綾の目がキョトンと丸くなる。
「全ての物事には理由があります。何らかの結果や行動が行われている場合は、それに対する原因や目的があってのこと。では、何故あなた方は我々と戦うのか……?」
「それは……あんた達が人類の敵だからでしょ? 自分が生きるために人間を利用しているんだから、人間と敵対するのは当然じゃない!」
「そうですか……。まぁ、ここで理屈を捏ねてもなにも始まらない。ただ、限りなく人類に近い我々も、ボウフラの様にそこら辺の水溜りから湧いて出た訳ではない。結果には原因が、行動には目的がある様に、我々にもそれがある。もちろんあなた達、アンチレジストにも……。しかし現実は、本当の意味での理由や目的を知っている者はごく一部だ。それ以外の大多数はチェスボードの上の駒に過ぎない。ポーンでさえクイーンでさえキングでさえ、チェスボードの外側に居るプレイヤーの匙加減一つで生死が決まってしまう。もちろん貴女も……ポーンとは言わないまでも、ナイトといった所でしょうか」
「そんなトリッキーな動きをしているつもりは無いわ。興味深い話だけど、今はアンタを倒すことに集中させてもらう」
 呼吸が整い、綾が涼に対して攻撃態勢を取ると、寄りかかっていた壁から背中を離して涼との距離を詰める。
「生憎……」
 綾は自分の真横から涼の声を聞いた。
 今まで視界に捕えていた涼の姿は一瞬で消え、気がつくと綾の真横に涼が立っていた。
 一瞬の出来事に綾の思考回路が対処しきれずにいると、ずしりという強い衝撃が響いた。鳩尾に砲丸を埋められた様な感触が綾の身体の中心から全身へと広がった。
「私も元は駒だったのですが、チェスボードから転がり落ちましてね。今はプレイヤーの一人なんですよ」
「あ…………え………?」
 綾が恐る恐る視線を下に移す。
 鍛えることが不可能な柔らかい鳩尾には涼の拳が手首まで埋まり、そのまま心臓を抉る様に埋まったままの拳が捻られる瞬間が目に飛び込んできた。

続きです。


 あの忌々しい日から二週間が経とうとしていた。
 組織から支給されているマンションの一室。部屋の中に降り注ぐ光は徐々にオレンジから濃紺に変わりはじめ、昼間は蒸し暑かった気温も今では肌寒いくらいに下がっていた。
 綾はパジャマ姿のまま、部屋のベッドの上でお気に入りのぬいぐるみを抱え、呆然と虚空を見ていた。
 検査を含めた二週間の入院の後、退院してからも綾は組織に顔を出す以外はほとんど外出せず、学校も休学していた。
「はぁ……」と、無意識に綾の口からが溜息が漏れる。
 綾の退院を待って開かれた会議の雰囲気は、まるで重油で会議室全体を満たしたかの様に重いものだった。
 いつも冷静な綾専属のオペレーター、紬が珍しく沈痛な表情で、誠心学園で更に二人の行方不明者が出たと報告した。涼による犯行であることは明白であり、報告を聞いた綾はまるで崖から突き落とされた様な気持ちになった。
「私の……せいだ……」
 綾がぽつりとつぶやいた言葉は曖昧に部屋の中に溶けて消えた。
 綾だけが、自分を責めていた。
「あの時、私が涼を止めていれば……」
 誰も綾を責めなかったし、むしろ無事に帰還したことを喜んでくれた。病院の検査ではチャームは少量しか吸収されておらず、精神を完全に支配されるレベルには至っていなかった。
 奇跡的な帰還であったし、組織としても綾ほどの逸材を失わずに済んだことは大きかった。
 だが綾の気持ちは、むしろあの場で堕とされていた方が良かったと思えるほど落ち込んでいた。上級戦闘員である綾が敗北した以上、一般戦闘員を向かわせるわけにはいかない。しかし、決して多くはない上級戦闘員は全て他の人妖討伐に向かっており、やむを得ず誠心学園の件は野放しの状態になっていた。
「私が……やらなきゃ……」
 綾が呟くと、あの夜の出来事が脳裏にフラッシュバックした。口内にねじ込まれた、ゴムを巻いた鉄棒の様な涼の男根の感触と、それが全て溶け出したと錯覚するほど大量に放出された熱くて濃いチャームの味が蘇る。
「うぷっ!?」
 反射的に吐き気がこみ上げ、左手で口元を押さえる。しかし、なぜか下腹部の辺りが徐々に熱くなってくるのを感じた。
(なんで……? 好きでもない人に、無理矢理されたのに……)
 散々腹を責められ、ファーストキスを奪われ、大量に白濁を浴びせられた。その後は朦朧としていたとはいえ、フェラチオをしてしまった。
 今までの生活の中で、将来出来るかもしれない恋人にならまだしも、自分があの様な行為をするとは考えてもいなかった。
 しかし、わずかに吸収されたチャームの影響か、帰還してから綾自身も自らの身体の中に僅かに疼く熱を感じずにはいられなかった。あの日から毎晩の様に夢に見るあの夜の出来事と、その続き……。口での奉仕の後、涼に犯され、嬌声を上げる自分自身……。目が覚めた時にいつも襲ってくる嫌悪感と、否定出来ない身体の疼き。
 綾は強く頭を振ると、ぬいぐるみを枕元において立ち上がった。
「倒さないと……。あいつを倒さないと、私は前に進めない!」
 綾はパジャマと下着を洗濯カゴへ放り込み、シャワーを浴び終えるとクローゼットを開け、戦闘服のセーラー服とグローブを身につけて誠心学園へと向かった。




 既に日は完全に落ち、透明感のある清涼な風が、澱の様にこびり付いた昼間の熱気を押し流す様にグラウンドを吹き抜けていた。
 この時間でもまだ練習を続けている野球部やラグビー部のかけ声が、綾のいる裏口まで響いて来た。
 綾は自転車を漕いで誠心学園の裏門へ到着すると、非常口から校舎内に侵入した。母校なのに侵入というのも妙な話だが、戦闘服に着替えた今の姿を部活動を終えたクラスメイトや友人に見られると厄介なことになる。誰にも会わずに涼を倒さなければならない。
 グラウンドとは違い、校舎内は生徒もほとんど残っておらず静かなものだった。教師が残務処理をしている職員室を身を屈めて横切り、突き当たりのT字路を曲がって重厚な扉が構える校長室の前まで来ると、綾は深く深呼吸をした。
 自然と身体が小さく震えて来るが、意を決して扉をノックする。一瞬間を置いて、中から涼の「どうぞ」という声が帰って来た。綾は息を止めてドアを開けた。

 水音が部屋を満たしていた。
 聞いたことのある水音だ。
 部屋の中は、その部屋の主のものである年代物のデスクとチェアが威圧する様に鎮座し、入り口のそばには磨き上げられた応接セットが設置されていた。
 ダークブラウンのカーペットとコーディネートされた趣味のいいアンティークのそれらはおそらくかなり高価なものだろうが、真っ先に綾の目に飛び込んで来たのは涼の姿と、その足下に跪いて一心不乱に涼の男根にしゃぶりついている行方不明になった親友、上代優香の姿だった。
「やぁ、そろそろ来る頃だと思ってましたよ」
 デスクの横に立っている涼が、まるで数年ぶりに再会した友人に話しかける様に、穏やかな口調で綾に言った。綾は涼の言葉など耳に入っておらず、視線は友香に釘付けになっていた。
「……ゆ…………友香………何……して……?」
「ああ……『これ』ですか? 少し待っていて下さい。もう少しで……」
 涼が友香の頭を掴んで激しく前後に揺すると、水音が更に激しくなる。
「ん!? んぅっ! んんんぅ!」
 じゅっぷじゅっぷじゅぷじゅっぷ……。
「や、やめろ!」
 綾が本応的に涼に飛びかかり、右の拳を顔面に向けて放つ。
 涼は素早く対応して綾の拳を捌くと、布地に守られていない腹部に裏拳を埋めた。
 我を忘れていたためか、綾は衝撃に対して何の防御も出来ず、綾は悲鳴を上げることも出きずに嘔吐いた。 
「!? か……ッはっ……」
「そうやってすぐに熱くなるのが貴女の悪い癖だ。すぐに終わるからそこで見ていなさい」
 綾は両手で腹部を押さえながら、両膝をカーペットに突いて苦痛に耐える。本当はすぐにでも反撃に出たかったが、的確に肝臓を貫かれていて身体の自由が利かなかった。
「ゆ……友香……」
 綾は祈る様な目で友香を見るが、友香の視線に綾の姿は入っておらず、ただ涼の男根を猫じゃらしを目の前にぶら下げられた猫の様に目で追っていた。
「ああぁ……先生……は、早く、ご奉仕させてください。それ……友香にしゃぶらせて下さい……」
「いや、ちょっと急用が出来たのでね。先にご褒美を上げましょう。親友の前でその堕ちた姿を存分にさらけ出しなさい。さあ、舌を出すんだ」 
「あ……ご、ご褒美……ぇあ…………」
 友香は言われた通りに舌を出して、薄目を開けて嬉しそうに涼を見上げている。親友のあまりの痴態に綾はただ首を振ることしか出来なかった。
「くっ……いやらしい顔をして……綾、見えますか? いまからこのだらしない友香の顔を、どろどろに汚しますよ。よく見ておきなさい」
 涼は友香の顔を狙って勢いよく男根をしごくと、何の躊躇いも無く友香の顔中に白濁をぶちまけた。
「くッ……ふっ……! 出るぞ……おぉっ!」
「ぷあっ!? あぶっ、えあぁ……」
「くぅッ! おおっ……」
 白濁は勢いよく飛び散り、友香の顔は見る見るうちに真っ白に染まっていた。口の周りを中心に目も開けていられないほど大量にかけられ、重力によって垂れた粘液は顎から床のカーペットにゼリーの様に溜まって行った。
「ふぅぅっ……ははっ、二週間前の君みたいだな。なぁ、綾?」
「友香……お前は……お前だけは、絶対に許さない!」
 綾は震える膝を押さえてようやく立ち上がると、涼に対して身構えた。涼はやれやれと首を振ると机の引き出しからタオルを出して友香の頭にかける。
「熱くなるなと言っているでしょう? ここは職員室も近いですし、大声を出すと他の教師や生徒に気付かれかねない。どうですか、体育倉庫に移動してみては? 貴女にとっても因縁の場所だと思いますが」
「望むところよ……」
 綾が力一杯拳を握りしめると、グローブがギチギチと音を立てて軋んだ。涼が唇だけを歪ませる嫌な笑みを浮かべると、机の引き出しから学校のマスターキーを取り出し、ドアの方へ歩いて行った。
「では、行きましょうか。この時間なら体育館は施錠されていますから、もう生徒は外の男子運動部しか残っていないはずです。時間はたっぷりありますから、楽しみましょう」
 涼が意味ありげな笑みを浮かべて部屋を出ると、綾もそれに続く。振り返ると、虚ろな目をして床に座り、カーペットにしみ込みつつある白濁を何ともなしに眺めている友香の姿が目に入った。
「待ってて友香……絶対に助けるから……」
 その声に友香はピクリと反応したが、すぐにもとの虚ろな表情に戻って行った。

皆様ご機嫌いかがでしょうか、number_55です。
まだ参加出来るか定かではありませんが、イベントの出し物やらIFストーリーの製作やらでてっきり更新が滞ってしまいました。
その間も毎日100を超えるアクセス、本当にありがとうございます。

さて、DL販売用に作成している綾編バッドエンドですが、文章はこちらで全て公開したいと思います(販売用は多少変更する可能性があります)。
文章のみでOKの方はこちらでお楽しみいただき、イラスト付きで読みたい方は後ほどDL販売にて購入して頂ければと思いますので、よろしくお願い致します。

基本的に正規ルートの綾編の途中から始まりますので、未読の方はそちらを読まれてからの方がいいかと思います。

ではどうぞ〜。







 涼は恍惚とした表情で綾の腹部に連続で拳を埋める。呼吸は既に獣の様な荒々しいものになり、トドメの一撃が綾の身体をビクリと跳ねさせると短い呻き声を上げた。
「うぅっ! くうぅぅぅ……たまらん……一回出すぞ……」
 涼は文字通り人間離れした力で綾の腕を拘束していた縄跳びを引きちぎり、目の前にひざまづかせた。そしておもむろにスラックスのファスナーを下ろすと一般男性の二周りほど大きい男根を取り出し、綾の顔の前で勢いよくしごきたてた。体勢的に真正面からそれを直視してしまった綾は、一瞬で何が起こるか、自分が何をされようとしているのかを理解する。
「えっ……? うそ……まさか……いや、いやぁぁ!」
「くぅぅ……たまらんな……その顔……。ほら、たっぷり出すぞ! 受け止めろっ!」
「あぶっ! なっ……ああああっ!」
 涼は何の躊躇いも無く綾の顔を目掛け、男根から信じられないほど大量の白い粘液を浴びせかけた。
 綾は本能的に嫌悪感を感じ顔を逸らそうとするが、涼は一瞬早く綾の頭を掴み正面を向かせたまま固定すると、どくどくと脈打つ様に異常なほど大量な白濁を浴びせ続けた。
「ほら、まだ止まらないですよ。ちゃんと舌を出してたっぷりと受け止めなさい」
「あ……あうっ……ぅぁ……えぅ……まら……れてる……」
 涼が命じると、度重なったダメージで朦朧とした意識の中、綾は素直に舌を出して多量の粘液を受け止めた。あどけなさの残る顔でうっとりと涼を上目遣いで見上げ、舌で白濁の粘液を受け止める様子はこの上なく背徳的で、涼の興奮は最高量に達していた。
 涼の放出は数十秒続き、綾の髪や顔中、口内や上半身までもどろどろに染め上げていった。
「えぅ……ああぁ……はっ……はぁあ……」
「ううっ……く……。こんなに大量に出るとは……興奮し過ぎましたか……。どうですか? 一番強力な特濃チャームの味は? たとえ貴女でも、もう身体の制御が効かないはずですよ?」
「あ……あぅ……あぁ……」
 綾はとても男性一人で放出したとは思えない量の白濁を顔で受け止め、真っ白にコーティングされた舌を出しながら光を失った目で涼を見上げ続けた。胸の前に差し出した両手にもなみなみと白濁が溜まり、口からこぼれて来る白濁を受け止めていた。
「さぁ、その口に溜まったものを飲みなさい」
「うぅん……ごくっ……ん……んふぅぅぅ」
「くくくく、素直で良いですよ。おいしいですか?」
「はぁっ……はぁぁ、う……わ……わからない……へ……変な味……」
「じきに虜になりますよ。さぁ、あなたが出させたのですから、責任を持ってこれを綺麗にしなさい。口いっぱいに含んで、尿道に残っているチャームも一滴残らず吸い出すんだ」
 涼は一歩前に出ると、放出したばかりだというのに硬度を保ったままの男根を綾の前に突き出した。綾は吸い寄せられるように涼の足下に跪くと、うっとりとした表情で男根を見上げる。
「こ……これ……口に……?」
「そうですよ。さぁ、早くしなさい」
 涼が綾の頭をそっと掴むと、ゆっくりと綾の顔を自らの下半身へと導いた。綾は戸惑いながらも小さく口を開けると、おずおずと男根を根元までくわえこんだ。
「んっ……んぐっ……じゅっ……じゅるっ……ごくん……んんぅ……じゅぶぅっ……ごくっ……」
 綾は戸惑いながらも必至に舌を絡め「これでいいの?」と訪ねる様に涼を上目遣いで見つめながら、言われた通りに男根に吸い付き、ストローでミルクシェイクを飲む様にチャームを吸引した。自然と舌や頬の密着度が高まり、放出したばかりで敏感になっている男根を締め上げた。
(なにこれ……? すごく濃い味……。でも……頭がぼうっとして……ドキドキする……)
 強すぎる快感に、涼が綾の頭を撫でる。綾は一瞬だけ戸惑った様な表情を見せると、頬を上気させたまま、教わってもいないのに吸引しながら舌先で尿道をチロチロとくすぐった。涼は身体を仰け反らせながら快感に喘ぐ。
「くっ!? くおぉぉぉ! す……すごいじゃないですか……くおおっ!? 天性のものがあるな……いつもそうやって彼氏を喜ばせているのですか?」
「ぷはっ……こ……こんなこと初めてに決まってるでしょ……か、彼氏なんて……出来たこと無いし……。で、でも……止められない……はむっ……じゅるっ……じゅぅぅっ……」
 綾は頬を赤くしながらも、一心不乱に頭を動かし、涼の男根に奉仕を続けた。顔からはいつもの強気で自信ありげな表情は消え失せ、目がとろんと蕩けただらしのない顔を涼にさらしている。
「うむっ……うむぅぅっ……。お……おいし……。あむっ……あ……ま、また……味が濃くなってきた……」
 涼は綾の奉仕を受け続け、歯を食いしばって放出を堪えていた。
 学校でもトップレベルの容姿を持つ綾が自分に対してかしずき、初めてだというフェラ奉仕を行っている。しかもその技量はかなりのものであり、栄養補給以外にも食物を摂取する様に日常的に女性と性交し、経験人数は千を超える涼であっても、少しでも気を抜けば途端に果てさせられてしまうほどのものであった。
「くうぅッ……くぉぉ……。いやらしくしゃぶりついて……そんなに俺のチャームが欲しいのか? 欲しければ……くれてやるぞ……」
「むぅっ……んふうぅ……ほ、欲しい……。い……いっぱい出して……濃くて熱いの……たくさん……あむっ……」
 最後のプライドだろうか、涼が綾に放出をねだらせる。涼は左手で綾の頭を掴んで乱暴に前後に揺すってスパートをかけると、背中に電気が走るのを感じて男根を一気に口元まで引き抜いた。
「むっ!? んぐっ!? んぐっ! んぐっ! んぐっ! んんんんっ!?」
「望み通り……出してやるっ! その小さな口に入り切らないほどたっぷりとな……くおおおおっ!!」
「むぅ? ん……んぅ? うぐっ!? うぶぅぅぅぅぅぅ!!」
 涼は放出の瞬間に一度口元まで男根を引き抜くと、尿道を綾の舌先に付け、喉を突き破りそうな勢いで白濁を放出した。粘液は綾の舌を舐める様に流れ、濁流は勢いよく食道を滝の様に落下して行った。綾は白濁のあまりの勢いに一瞬本能的に逃げようとするが、頭をがっしりと押さえつけられているために叶わず、両目を見開き、涙を浮かべながら放出に耐えるしかなかった。
 しかし、すぐにその表情は恍惚としたものに変わり、うっとりとしながら熱い白濁を嚥下し続けた。
「んんんんっ!? ごくっ! ごくっ! ごきゅっ! んふぅ……んんんっ……。ごくっ……じゅるっ……じゅるるっ!」
「ぐぅっ!? い……言ってもいないのに飲み干すとは……それに……また吸い込んで……くぅっ!」
 ちゅぽんと音を立てながら、強すぎる快楽のために涼はたまらず綾の口から男根を引き抜く。綾はまだ呆然と涼の男根を目で追っていた。
「はぁ……はぁ……ここまで私を責め立てるとは……。よく頑張りましたね。これはご褒美ですよ」
 涼はセーラー服のリボンを掴んで綾を立たせると、ピンポイントで胃を狙いを付け、下腹から鳩尾へ突き上げる様に拳を埋めた。拳によって収縮させられた胃から大量に飲まされた白濁が食道を駆け上り、滝の様に綾の口からこぼれ落ちる。
「ぐぶっ!? ぐぇぁああああああ!! ごぼぉっ!?」
 綾は両手で腹を抱えながら、生まれたての子鹿の様に膝を笑わせて腹部から襲って来る激痛と、嘔吐の苦痛に耐えていた。
 びちゃびちゃと綾の足下に白濁の水たまりが出来る。綾の意識は既に途切れかけ、最後の力を振り絞り顔を上げた瞬間に涼の膝が綾の腹部を突き上げた。
「ゔうっ!? あぁ…………」
「くくく……チャームが完全に身体に回り切る前に全て吐かせて差し上げましたよ。若干影響は残るでしょうがね。しばらく泳がせてあげますから、気が向いたらまた私の所に来なさい。女性としての屈辱を最大限与えてから、快楽の海へつき堕としてあげましょう」
 涼が背中を向けて去って行く姿を最後に、綾の意識は完全に途切れた。


「綾さん! 正門に車が来ていますから! もう大丈夫ですから!」
 暗闇に溶けてしまいそうなほど黒いウェットスーツの様なものを着た綾専属のオペレーター、衣笠 紬(きぬがさ つむぎ)は、綾に肩を貸してグラウンドを対角線状に横切っていた。
 時折防犯灯に照らされて浮かび上がる綾の姿は悲惨なもので、腹部には無数の痣が拳の形で痛々しく浮かび上がり、全身は白濁した粘液を頭から浴びせられた様にどろりと濡れていた。綾の性格を表した様な明るい茶色の髪の毛もべっとりと濡れ、まるで水死体のそれの様に綾の顔に貼り付いていた。
 ぼろぼろになった綾を半ば引きずる様に正門へと連れて行きながら、紬は血が滲むほど下唇を噛んでいた。
 綾との通信が途絶えて二時間ほど経過した後、居ても立ってもいられなくなった紬は綾の安否を確認するために誠心学園へ侵入した。身を隠しながらの偵察の後、不自然に灯りのともっていた体育倉庫の中で、散々酷使された後に打ち捨てられたぼろ雑巾の様に、うつ伏せになって倒れている綾を発見した。
 思わず叫びだしそうになった。
 綾は組織の階級、上級か一般か、戦闘員かオペレーターかの区別無く、誰とでも友達の様に接してくれた。もちろん紬にもだ。
 こんなに素晴らしい人がなぜこんな酷い目に遭わなければならないのかと思うと、涙と、人妖に対する怒りがふつふつと身体の底から沸き上がって来た。
 ようやく正門前まで到着すると、停まっている車から別のオペレーターが飛び出して来た。
「綾さん!? あぁ……なんて酷い……」
「相当ダメージを受けた後に、大量にチャームを飲まされてる。早く病院に運ばないと!」
 二人は綾の肩と脚を持って後部座席に寝かせると、アナスタシア総合病院へと車を走らせた。

最後の救急車を見送り、シオンはようやく肺に溜まった息を深く吐き出した。冷子の手にかかった男子生徒は驚くほど手際の良い作業で数台の救急車に乗せられ、総合病院へ搬送された。付近住民(といっても大抵はアナスタシアの関係者だが)は「毒ガスが発生した」「細菌が漏れた」などと一時騒然となったが、救急車が行ってしまうと次第に落ち着きを取り戻し、散り散りに解散して行った。その後はアナスタシアとアンチレジストの手によって情報規制がなされ、当時現場に居合わせた野次馬以外にこのことが知られることは無かった。鑑は落ち着いてオペレーターのリーダーに今回の件を報告しており、その背後では綾が仲間のオペレーターからこっぴどく叱られていた。

夜になり、若干涼しさをはらんだ8月の風がシオンの髪をなびかせる。右のツインテールを押さえた時、背後から綾が声をかけた。

 

「はぁ…やっとお説教が終わった…。なんだか戦闘よりもどっと疲れたわ…」

 

「あら?意外と早かったですね?」

 

「いろいろ報告があるから続きは後でゆっくりだって…それと当分は勝手な行動は慎む様にだってさ、はぁ…」

 

「ふふ…それだけ心配されるほど大切に思ってもらってるんですから、感謝しないとダメですよ?」

 

「まぁそうね。今回ここまで乗り込めたのもあの人たちのおかげだし。なんだかんだで振り回しちゃったからね」

 

綾が背後のオペレーターを振り返りながら呟く。先ほどまで綾を叱っていた仲間は今では携帯電話であちこちに電話をかけていた。

 

「なんか実感湧かないけど、終わったんだね…。とりあえず今回の件は…」

 

「そうですね…。私も現実感が無くて…。でも、正直今回は自分の未熟さを思い知らされました。綾ちゃんが来てくれなかったら私は今頃どうなっていたか…」

 

「まぁそれは私も同じことだしさ…単身乗り込んでシオンさんがいなかったら…。それにしても、あいつら一体なんだったんだろう?涼の身体を持って行った奴ら…」

 

シオンが涼にトドメを刺し、その場にいた全員が完全に力つきている時、突如3人の人間が部屋に入ってきた。 パニック映画の中に出てきそうな冗談みたいな格好の奴らだった。それぞれ真っ黒い服を着て、フルフェイスになったガスマスクの様なものをすっぽりと被っていたので、正体は全く分からない。3人は迷うこと無く涼の動かなくなった身体を運び出し、何事も無かったかの様に消えて行った。わずか15秒ほどの出来事。その場にいたシオン、綾、鑑の3人はあまりの手際の良さに声も発することが出来ず、ただ呆然と成り行きを見守るしか無かった。

 

「涼さんも最後に計画がどうとか言ってましたよね…。おそらく、私達の知らない所で何か大きな動きがあるのはほぼ間違いないでしょう。正直、アンチレジストという存在自体、見直した方がいいかもしれません」

 

「アンチレジストを…?」

 

「はい。自分で所属しておきながら、この組織はあまりにも謎が多過ぎます。マスメディアや警察を押さえ込む影響力や、あそこまで充実した施設や人員の維持…一個人や企業が取り仕切るには並大抵のことではありません。それこそ国家レベルでもない限り…。私なりに、少し調べてみます」

 

「確かに…。それが組織の方針だと勝手に思い込んできたけど…。私にも手伝わせて!もちろん人妖討伐も続けながらね!」

 

「もちろんです。これからもよろしくお願いしますね。綾ちゃん!」

 

「ええ、シオンさんもね!」

 

シオンと綾は満面の笑みが浮かべながら、パシンと小気味いい音を立ててお互いの手を握り合った。普通に生活していれば出会うことすらなかったであろう2人が、しかも組織の中のトップクラスの実力を持つ2人がお互いをパートナーとして認め合ったことは、横のつながりの殆ど無いアンチレジストという組織にしてはかなりの異例だった。

 

「あー、盛り上がっている所申し訳ないですが…」

 

2人がびくりとして振り返ると、報告を終えた鑑が眼鏡を直しながら立っていた。

 

「か、鑑君!?報告はもう終わったの?」

 

「いえ、まだ途中ですが、概要だけ話してひとまず病院へ向かうみたいです。ある意味病み上がりみたいなものですし、念のため僕を含め3人とも病院で検査入院する様にと」

 

「はぁぁ…」

 

綾がひときわ大きなため息をついた。やれやれ、また入院か。退屈な上に訓練が出来ない病院の中に居ることは綾に取って苦痛でしかなかった。

 

「その前に一度シャワー浴びたいですね…。結構汗かきましたし、それ以外にも色々浴びましたし…」

 

シオンが何の気なしに呟くと、普段は冷静な鑑が珍しく真っ赤になって下を向いた。自分も「それ以外」をシオンに浴びせた1人だし、その記憶は今でも鮮明に覚えている。そのことを思い出すと自然と健康な男子の反応が起こり、それを悟られない様に思わず腰を引く。

 

「と…とにかく!双子の捜索も含めて後処理は彼らに任せて、我々は少しでも休養を取るべきです。この隙をついて人妖が攻めて来たら、当然2人にも出動していただくのですから」

 

「あ…双子ってあの…」

 

「由里ちゃんと由羅ちゃんだっけ…。モニタールームで見たときは一方的にやられてたけど、あの後人妖の仲間になったってこと?」

 

「それは今から調べるそうです。組織もあまりの事態に混乱しています。このままこちらの内部情報が2人を通じて人妖側に流れる危険性も…いえ、既に流れているかもしれませんが…。どういう経緯で今回の様になったかは分かりませんが、このまま我々も活動を続けていれば、いずれ2人には再び会う時が来るでしょう…」

 

鑑が話し終わると、その場に居る3人は声を発することが出来なくなった。無言。ひとときの静寂が、残暑の残る空気を少しだけ冷やした。正門からはアンチレジストの黒塗りの車が一台、3人に向かって石畳を踏みしめながら走ってきた。

 

 

 

 

緑の縁取りの中でセイレーンが微笑んでいるカフェの奥の席で、金髪と茶髪の美少女2人と眼鏡をかけた整った顔立ちの男子生徒がテーブルを囲んでいた。テレビや雑誌に出てきそうな美男美女が3人揃い、ましてやシオンはかなり目立つ風貌をしていたため時々チラチラと伺う客も居たが、次第に飽きて自分たちの世界に戻って行った。シオンと綾、鑑は久しぶりの再開に楽しげに談笑していたが、店内の喧騒のために何を喋っているかは隣の席でも聞き取るのは難しかった。


「うわぁ、シオンさん髪おろしたんだ!?すっごい綺麗…さわらせて!」

 

「ええ、いいですよ~」

 

綾が手をわきわきと動かしながら問いかけ、シオンがいつも通りのんびりと答える。綾がシオンの髪に触り、おお~、とか、うわぁ~とか感嘆の声を上げているのを見て、鑑がため息をつきながら眼鏡を直した。

精密検査として入院したものの、それは半ば取り調べみたいなもので、アンチレジストの上層部と名乗る人間が(といっても厳重に顔を隠していたが)ひっきりなしに病室を訪れアレコレと質問をしては帰って行った。しかも3人の口裏合わせを防ぐかの様に入院中は別々の個室に移され、1週間後の退院の時までお互いの顔を見ることすら出来なかった。

厳しい戦闘の後であったため、退院後、それぞれ普段の生活のペースに戻るのに更に半月ほどかかり、ようやく落ち着いて3人が顔を合わせることとなった。

 

「いやぁやっぱり綺麗だね~。これだけ長いのに枝毛一本も無いし…」

 

「ありがとうございます。鑑君がおろした方が威厳が出るとか落ち着いて見えるとか言うので、試しにやってみたんですよ」

 

「えっ!?ま…まさか2人って付き合うことにしたの!?」

 

「ぶっ!違いますよ!」

 

鑑が飲んでいたカフェラテを吐き出し、珍しく大きな声を出した。普段は落ち着いているが、色恋の話は苦手らしい。

 

「だって、普通女性の髪型に意見するのってそういう関係になってからじゃない?しかも鑑君のリクエストにシオンさんも合わせてるんでしょ?」

 

「会長とはそう言う関係ではありません!人間としては尊敬できますが……」

 

「女性としては尊敬できないの?はぅぅ…」

 

「い…いえ、そう言う訳では……。と、とにかく会長、休んでいた間に溜まった業務があるんですから、当面はアンチレジストのことは置いといて、生徒会長のシオン・ イワーノヴナ・如月さんとして生活して下さいよ。間違ってもこの前のメイド服で登校なんてしないで下さいね」

 

「わ、わかってますよ!あれはあくまでも個人的に好きな格好なだけで、公的な場には持ち込みませんから!」

 

「あーあ、とうとうコスプレ好きを認めちゃったよこのお姉さんは…」

 

「だって好きなんだから仕方ないじゃないですかぁ…」

シオンが下を向きながら真っ赤になって呟くと。綾と鑑が同時に笑い出し、つられてシオンも笑った。一時の平和を3人の笑い声が包んでいた。

「ぐっ…ぐむっ……んむぅ………ガリッ!」

 

「!!?ぐっ…!?ぐぉぉ!?」

 

突如自分の急所を襲った苦痛に涼がくぐもった声を上げ、シオンの口から男根を引き抜く。涼の男根にはうっすらとシオンの並びのいい歯形が残っていた。

 

「はぁっ…はぁっ…うぐっ…」

 

シオンは弱々しく座り込みながらも、輝きを失っていない目で涼を睨みつけていた。痛みと剣幕に思わず後ずさりすると、ゆっくりとシオンが立ち上がる。

 

「……もうこれ以上、あなたの好きにはさせません!」

 

「馬鹿な…あれだけのチャームを飲まされておいて…多少吐き出したくらいでは効果が薄れることは無いはずだ…!?犯されたくてたまらないはずだぞ!?何が起きた!?」

 

シオンは確かに、先ほど綾と共に涼に奉仕している最中は身体の火照りを押さえられなかったし、綾に対してもある種同性愛的な感情すら抱いていた。しかし、今は徐々に霧が晴れるように身体の火照りやぼうっとした思考が薄れ、正常に戻って行くのを感じていた。体中を取り巻く倦怠感は相変わらずだったが、思考さえ戻れば何とかなるかもしれない。

 

「………どちらにしろ、お前らはもう終わりなんだよ!」

 

涼がシオンに突進しながら拳を振るうが、シオンは転がるようにしてそれを避ける。攻撃は出来ないものの、もともと大振りの涼の攻撃は掴まれでもしない限り避けることなら何とか可能だった。

 

「ちょこまかと…」

 

しかし、時間が経つにつれ徐々にシオンの動きも鈍くなってくる。シオンがバックステップを踏んだ際、背中がパソコンを置いているデスクに当たり、一瞬動きが止まった。その隙をつかれ、胸の辺りの布を掴まれると一気に引っ張られ、同時に拳が鳩尾に埋まった。

 

ズギュゥッ!!

 

「うぐあっ!?あ……あ………」

 

「ははははっ!やっと捕まえたぞ!!さぁ、お楽しみだ!」

 

ボグッ!!ズムッ!!ゴギュッ!!ズブゥッ!!!

 

「あぐっ!?うぐぅっ!!ぶふっ!!ぐふぅぅっ!!」

 

嵐の様な拳が、シオンの下腹部、臍、鳩尾とランダムに責め立てるが、そのいずれもピンポイントで急所を突いていた。拳が埋まるたびにシオンの巨乳が大きく揺れ、口から溢れた唾液がぽたぽたとその上に落ちた。徐々にシオンの意識が遠のいて行く。

「ほらほらどうした!!このまま死ぬか!?内蔵をぐちゃぐちゃにして………ぐっ!?なっ!?」

 

突然、涼の首に誰かの腕が巻き付き、ギリギリと締め上げている。 不意をつかれ涼の顔が一瞬でこわばり、攻撃が止まる。シオンは何が起きたか分からなかったが、考えるよりも先に身体が動いた。普段の半分ほどの力だったが、今出せる力のすべてを使い、渾身の回し蹴りを放つ。爪先が涼の顎先にヒットする会心の当たりだった。少ない威力でも、てこの原理で涼の顔が勢いよくぐりんと90度傾き、頭蓋の中で脳が揺さぶられる。さらに前屈みに倒れかかった涼の顎を膝で蹴り上げた。

シオンにしてはえげつない攻撃だったが、この間彼女はほとんど無意識で呼吸すらしていなかった。涼の首は自分の体重に逆らって顎を跳ね上げられ、一瞬後頭部と背中が付くのではないかというほど反り返った後、ガクリと顔面から地面に着地した。シオンは今の蹴りで体力のほとんどを使い果たし、ガクリと膝をつく。

 

「ぷはっ……はぁ…はぁ…な…何…?何が起きたの…?」

 

倒れた涼の背後に立っていたシルエットが徐々に鮮明になる。見ると、先ほどまで涼に身体を乗っ取られていた鑑が立っており、呆然と涼を見下ろしている。

 

「うぐっ……けほっ…か…鑑君!?だ…大丈夫なの?」

 

「やっと…自由に身体が動かせるようになりました…。 こいつに乗っ取られている間も、僕の意識はずっと覚醒していました…。すみません、会長に酷いことを…」

 

「鑑君……」

 

シオンは白い手袋をはめた両手を口元に当て、瞳からは涙がこぼれている。驚愕と、安堵が入り交じった表情だ。

 

「感傷に浸るのは後です、今はこいつを倒さなければ…。生憎、武器と呼べそうなものはこれくらいしか無いですが」

 

鑑は後ろのポケットから先ほど涼が叩き割った瓶の口の部分を取り出した。破片はナイフの様に鋭く尖がり、先端には4cm四方の小さな布が刺さっていた。鑑もかなり体力を消耗しているようだったが、気合いとともに飛び上がると、迷うこと無く涼の背中、過去に友香が刺した場所と同じ箇所に破片を突き刺した。ビクリと涼の身体が跳ね、鑑を跳ね飛ばす様な勢いで立ち上がる。

 

「があぁぁ…!な……きさ……貴様……!?」

 

涼は肩で息をしながら自分の背中を伝う血を指で拭い、信じられないという表情で鑑を見つめる。瓶の口を掴んで抜こうと試みるが、思った以上に深く突き刺さっており抜くことが出来ない。

 

「馬鹿な…俺に乗っ取られたんだぞ…?脳が耐えられず自我が崩壊してもおかしくはないはずだ…そうでなくとも、一生植物状態に…」

 

「おそらく僕が意識を失ったら、もう目を覚ますことは無かったでしょう。まるで暗い部屋に閉じ込められた様になりながら、自分の身体を使った貴方の行為を見ているだけの時間は本当に辛かった。いったい何人、知っている顔が目の前で犯されたか…」

 

「貴様……」

 

「ですが、おかげで色んなことも分かりましたよ。篠崎先生のこととか、チャームのこととかね。おそらく会長への貴方のチャームの効き目が弱かったのも、会長は過去に篠崎先生の作った濃縮合成したチャームを打たれていたからです。人間には『耐性』という能力がありますから、一度強い薬を使うと、それよりも同じ効果のある弱い薬は効き目が出難くなるんです。篠崎先生にチャームの強化版を作らせたのは失敗でしたね。それに、アンチレジストのオペレーターとして、初めて戦闘で役に立てました」

 

そう言うと鑑はあまり見せない笑顔をシオンに向けた。シオンの顔に驚愕の色が浮かぶ。

 

「オペレーター…?ま…まさか鑑君……?」

 

「僕もびっくりですよ。如月なんていう珍しい名前の人が上級戦闘員にいることは知っていましたが、まさか会長だったなんて。普段のおっとりしているイメージからは想像がつきませんからね。まぁ、その服が会長の趣味なのは分かりますが…少々やり過ぎですよ?」

 

「あっ…これはその……支給されて……いや…趣味ではあるんだけど……」

 

2人が会話している最中、涼はじりじりと後ずさりをしながら距離を取る。弱っているとはいえ、アンチレジストが3人もいる現状に加え自らも深手を負ってしまった。綾と一緒に来たオペレーターもいつ応援を呼んで来るか分からない。ここは一旦退いた方が得策だ。

 

「くくく…とことん運のいい奴らだ…。だが、お前らももうまともに動ける体力は残っていないだろう?ここは一旦退いてやるが、いずれ……むっ!?」

 

足下を見ると、綾の手が涼の足首を掴んでいた。後ずさりしながら、綾の倒れている近くまで来てしまったらしい。

 

「久しぶりね……。生憎まだ腕を伸ばすくらいの力は残ってるのよ…。あと…さっきアンタに言った言葉は取り消し。アンタなんかに初めてはあげられないわ!」

 

「なっ…貴さ……うぉあ!?」

 

綾は掴んだ足首を強引に捻った。涼がバランスを崩してたたらを踏んだ所に、床一面に広がった自ら放出したのチャームの水たまりがあった。粘度の強い液体に足を滑らせ、背中から倒れ込む。背中に突き刺さったままの瓶の破片が自らの体重と床の固さに挟まれ、いとも簡単に涼の体内に飲み込まれて行った。

 

「ぐぶっ…!?が…がぁ……」

 

一度強くビクリと身体を跳ねさせると、しばらく細かい痙攣が続く。その後、ごぼっという音と共に口からは血の泡が吹き上がった。内蔵のどこかにダメージを負った証拠だ。

 

「シオンさん!」

 

「会長!」

 

綾と鑑が同時に叫ぶ。シオンは力強く頷くと、何とか手近なパソコンの置かれたテーブルの上によじ上ると、涼に向けて膝から落下した。

 

「もう…攻撃をする力は無いですが、あなたに『落ちて行く』ことくらいは出来ます!これで終わりです!」

 

ずぶりとシオンの膝が、涼の鳩尾に落下する。シオンは膝の先に何か硬い感触を感じた。先ほどの瓶の破片が皮一枚隔ててシオンの膝に触れる。破片が完全に涼の心臓を貫通した証拠だった。涼の身体が大きく跳ねる。

 

「がああああっ!?ごぶっ……お……お前ら……これで……終わりだと…思うなよ…。まだ……計画は……始まった……ばか………り…………」

 

そこまで言うと、涼の口の中にごぼりと大量の血液が溢れ、自ら後に溺れるようにごぼごぼと咽せた。目を覆いたくなる様な光景だったが、シオンは呆然と一部始終を見届けた。涼は目を見開き、ばたばたと痙攣しながら自分の爪で喉をかきむしっていたが、突然ぱたりと全ての動きが止まった。目はシオンを凝視していたが、もはやその画像が涼の脳に映像として届けられることは無かった。

「あっ…あぁ…こ、こんなにたくさん濃いのが……す……すごいぃ……」

 

綾は顔中に粘液をぶちまけられながらも恍惚とした表情を浮かべ、ドロドロに白く染められた舌を出したまま、うっとりと涼を見上げていた。涼は綾の胸ぐらを掴んで無理矢理立たせると、顔を覗き込むようにしながらこの上ない征服感に満足げな笑みを浮かべた。

 

「くくくく…とうとうお前も堕ちたな…。さて…どうしてほしいんだ?」

 

涼は容赦無く綾のスカートの中に手を入れ、薄い布地越しにクレヴァスをなぞった。くちゅりという淫靡な音と共に、涼の中指が綾の固くなった突起に触れ、綾の身体がビクリと跳ねる。

 

「あうっ!?あ…あはぁん!?や…そこおっ!?」

 

「んん?なんだこのくちゅくちゅいってる音は?それにこんなにクリトリスを腫らせて…。まさか、敵である俺のチンポをしゃぶって興奮したのか?」

 

涼は悪戯っぽい笑みを浮かべながら綾の顔を覗き込む。チャームで快感神経を過敏にされ、初めて男性に触れられる敏感な箇所から送られる快楽を必死に否定しながらも、崩れ落ちそうな身体を涼の腕を掴んで必死に支える。

 

「くくくく…敵だろうが何だろうが、チンポなら誰のでもいいんだなお前は?正義感ぶっていても、正体はとんだ淫乱娘だ。何なら、ぶち込んでやってもいいんだぞ?」

 

「あ…あぁ…うう……くうぅっ……」

 

綾は涙を浮かべ、必死に歯を食いしばって耐えたが、涼の言葉を否定する言葉はとうとう出て来なかった。強烈すぎるチャームの効果は、たとえ綾であろうとその身体と精神を蝕んで行った。

 

「どうした?普段なら『冗談じゃない』とか言うだろう?もしかして、本当に俺に犯されたいのか?」

 

「うぅっ……くっ……す……するなら……好きにしなさいよ……」

 

顔を真っ赤にしながら、消え入る様な声で綾は呟いた。その言葉に肯定の意味が含まれていることは誰が聞いても明らかだった。しかし、涼はニヤリと笑うと、掴んでいたセーラー服の襟元を捻って綾の首を絞めた。一瞬で綾の表情が変わると、空いている右手で大量のチャームを飲まされ、少しだけ普段より膨らんでいる綾の下腹に拳を埋めた。

 

「ぐっ!?あ……けほっ……く…くる……し………」

 

グジュウッ!!

 

「!!?……ぐぶっ!?うぐあぁぁぁ!!!」

 

膨らんだ胃を押しつぶすように深々と突き刺さった拳を、柔らかな肉が包んでいた。涼はすぐさま拳を引き抜くと、2発目、3発目と打撃を加え続け、綾を責め立てる。拳によって綾の胃は何回も無惨に変形させられ、大量のチャームが胃の中で暴れながらすぐに喉元までせり上がって行ったが、首を制服で締め上げられているため吐き出すことが出来ない。

 

「ぐぶっ!?ごぶぅっ!!ぐぅぅっ!?うげっ…!あぐぉぉっ!!」

 

「ははははっ!あれだけの攻撃で俺が満足したとでも思ったのか!?たっぷり時間をかけて嬲り殺すと言っただろう?予定は変わるが、最期にはちゃんと犯してやるから安心しろ!」

 

「や…やめ!やめて下さい!」

 

シオンが涼の足にすがりつくが、拳は綾の腹部に突き刺さり続け、その度にむき出しの柔肌は痛々しく陥没した。綾の顔からは血の気が失せ、目は空ろに泳ぎ、悲鳴も徐々に小さくなって行った。

 

「あぐっ…ぐぶぅっ!うげっ……ごぶぅっ!!う……うぐっ!?」

 

「ほらほら?早く吐かないと胃が破裂するぞ……?何なら、手伝ってやろう」

 

涼は綾の首を解放すると、渾身の力を込めて拳を綾の胃に捻り込んだ。解放された喉元を一気にチャームが駆け上がった。

 

ズギュリィィィッ!!

 

「ぎゅぶぅっ!!?が……ごぼっ……うげぇぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

綾の口から大量の白濁が滝のようにこぼれ落ちた。長時間にわたる嘔吐で、びちゃびちゃと足下に白濁の水たまりが出来る。
涼が制服を掴んでいる腕を解放すると、綾は糸の切れた人形のようにその場にうつ伏せに崩れ落ちた。目は完全に白目を剥き、口からはひゅうひゅうと通常ではない呼吸音が漏れる。シオンは力の入らない身体で必死に抗議していたが、綾が倒れるとすぐさま近づき、呼吸を楽にするように仰向けに寝かせた。

 

「あ……綾ちゃん……嘘……こんなの……」

 

綾は失神したままだったが、呼吸はいくらか楽になったようだ。その様子にほっとしていると、すぐに後ろから涼が近づき、シオンの頭を掴むと無理矢理肉棒を口にねじ込んだ。

 

「あ…ああっ…!?むぐぅっ!?んむぅ…」

 

「はははっ、次はお前だ。完全にチャームの虜になって、綾のを見て我慢が出来なくなっただろう?安心しろ、お前も綾の次に犯してやる。そのエロい身体を1回も使わずに殺すのはさすがに勿体ないからな」

「あ……あぐ……ぐぶっ!?そ……そんな……こんな……ことって………」

 

綾は深々と自分の腹部にめり込んでいる涼の拳を、信じられないという表情で見つめていた。一瞬で窮地に立たされ、涼の嬉々とした表情とは対照的に、綾の表情には絶望の影が色濃く浮かんでいる。

 

「あ…綾ちゃんを離して!!」

 

あまりの事態に呆気にとられていたシオンがはっと我に帰り、2人の元へ駆け出す。涼はすぐに綾の身体を邪魔なものを捨てるかのように足下に放り投げると、飛んできたシオンの回し蹴りを片手で受け止めた。

 

ガシィッ!

 

「ああっ!?くぅっ…」

 

「くくく、 綺麗な蹴りだな、今は蚊が止まりそうな速さだが…。突き技が得意な綾と、蹴り技が得意なお前か。確かに言いコンビだな」

 

「な…何で…?力が…入らない…」

 

「くくくく…俺の使役する部下に特殊能力を持つ者がいてな…頭も容姿も最悪の全く役に立たない下賎な屑だったが、そいつの汗に含まれる成分は相手の筋力を弛緩させて弱らせることが出来た…。それを冷子に成分検出させて科学的に合成してみたんだが、どうやら成功のようだな…。あの屑もやっと役に立ったか…」

 

「筋肉を…弛緩…?ま…まさかあの瓶の中身ですか?この…体の怠さも…?」

 

「そうだ…濃縮して一瞬で効き目が出るようにしてある。あの液体から発生したガスを吸ってしまったら、もはや立っているだけで精一杯だろう?綾の得意なパンチも、お前の得意な蹴りも、攻撃力は全てしなやかな筋力があってこそだ。もちろん、防御力もな!」

 

涼は掴んだシオンの足首を引っぱり、シオンの身体を強引に自分の身体に引きつけると、その勢いを殺さずにむき出しの腹部に丸太のような膝を埋めた。

 

ズブゥゥッ!!

 

「う”ぅっ!?……あ……あぅ……うぐぅっ!?」

 

「ほらほら…どうだ?自分の得意技の蹴りで攻められる気分は?お前ほど綺麗ではないが、威力はそこそこだろう?」

 

ズブッ!ドズゥッ!グジュッ!ドブゥッ!!

 

「……うぐっ……!!?………う……ぐぶぅっ……うあぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

まともに悲鳴も上げられないほどの蹴りが、膝が、爪先が、次々にシオンの腹に突き刺さった。トドメとばかりに涼はほとんど無抵抗になったシオンの背中に、後ろに衝撃が逃げないように左手を置くと、シオンを抱きかかえるようにしながら渾身のボデイブローを突き込んだ。シオンの背骨が軋むほど奥深くに右の拳が埋まる。

 

ドグジィィィッ!!!

 

「うぐうぅぅぅっ!?………かはっ……う……うぶぇあぁぁぁぁ!!!」

 

完全に胃を押しつぶされ、シオンの口から大量に飲まされた男子学生の精液や涼のチャームが逆流し、床に白い水溜まりを作る。顔からは血の気が引き、腰から下がガクガクと痙攣を始め、危ない状態であることが伺える。

 

「くくくく…背骨が掴めそうなほど深く入ったな…。あのガスの中には濃縮したチャームの成分も入っている。お前達ももう終わりだ…」

 

「あぐっ……うぐえぇぇぇ………。あ…ああぁ…そ…そんな……ここまで…来て……」

 

シオンがガクリと両膝を着く。唇はガクガクと震え、口からは絶えず胃液や精液が逆流している。シオンが落ち着くのを見計らって、涼は倒れている綾の髪を掴んで無理矢理膝立ちにさせ、ギンギンに勃起したペニスを2人の前に突き出した。 涼は自分の眼下に跪いている2人を満足そうに見下ろす。

 

「ほら、死ぬ前に俺のチンポに奉仕をしろ。何ならお前らの処女を奪ってやってもいいが、生憎時間がないものでな…。綾、まずはお前からだ。せいぜい気合いを入れてしゃぶれ」

 

涼が勃起したペニスをぐいと綾に向かって突き出す。綾は青ざめた顔で涼の顔とペニスを交互にに見ながら、震える声で抗議した。

 

「な…何言ってるのよ…。そんなこと…で…出来る訳ないでしょ?す…好きでもないアンタなんかの……こんなものを……」

 

「コチャゴチャ言ってないでとっととしゃぶれ!」


「ふざけないで!誰がアンタのなんかの……ああっ…!?むぐっ!?んぐぅぅぅぅ!?う…うむっ……んむぅぅぅぅっ!?」

 

 

 

涼が綾の頭を鷲掴みにすると、強引にその小さい口の中に収まりきらないほどの極太を突き入れた。綾の口が限界にまで開かれ、あまりのことに目には自然と涙が浮かぶ。

 

「ははははっ!そう言えばお前はしゃぶるのも初めてだったな!くくく…どうだ?初めての男の味は…?くぅぅっ……綾が…綾が俺のを…」

 

「むぐっ!?んむぅぅっ!!ぷはっ!!はぁ…はぁ…な…す…すごぃ…ふ…太いぃ…」

 

綾はたまらず涼のペニスを吐き出すが、すぐさま涼に口内を再度犯される。さらにはシオンの頭を掴み、まるで自分のペニス越しに綾に口づけをさせるように2人の唇を合わせた。

 

「あ…やぁっ!?んむぅぅぅっ…!?ん…ちゅっ…あ…綾…ちゃん……」

 

「んむぅぅぅっ……シ…シオンさ……ちゅぶっ…んむっ……あふぅっ…」

 

綾とシオンの2人が自分の性器にフェラチオをしている。夢の様な光景が眼下に広がり、涼は限界を突破しそうな射精感を歯を食いしばって耐える。2人はチャームの影響もあるのか、上気した顔でまるでお互いの舌を求め合うように涼のペニスに奉仕を続けた。

 

「ちゅぶっ…はぁ…はぁん…んむっ…あはぁ………シオンさん……」

 

「綾ちゃ……はぅぅっ……あ…はぁぁ…ちゅっ…れろぉぉっ……」

 

繰り広げられる極上の美女2人の痴態に涼はとうとう我慢の限界を迎え、奥底からせり上がってくるマグマを感じると、2人の唇にサンドされていた限界まで膨張したペニスを綾の口内に押し込み、狭い唇でペニスをしごかせた。

 

「んぐぅっ!?んっ…んっ…んっ…んふぅぅっ…」

 

「くぅぅぅっ…!!限界だ…。窒息するほど出してやるぞ綾ぁ…!舌全体で味わった後、一滴残らず飲み込め!!」

 

どびゅうぅぅぅぅっ!!ぶぢゅっ!ぶびゅぅぅぅぅぅっ!!

 

「んっ…んふっ……むぐうっ!?ぐむっ…!?ぐ……んふぅぅぅぅぅぅっ!!?」

 

涼は一旦ペニスを綾の口元まで引き抜くと、考えられないほどの大量の体液を躊躇無く綾の口内に噴出した。綾の頬は一瞬で風船のように膨らみ、口内から食道、胃までを白濁で満たし、飲み込めない分は口元からこぼれ落ちた。

 

「うぶっ…んんぅ……うぶぅっ……う……うぐ……」

 

「はははは……いい眺めだな…。まだ止まらんぞ…。ほら、俺を見上げながら飲み込むんだ、音を立ててな…。くくくく…お前が俺のチンポにいやらしくしゃぶりついて、その奉仕が俺を満足させたという証をくれてやってるんだ…。嬉しかろう?」

 

「う…うぅん……ごぎゅ…ごきゅ…ごきゅ……んふぅぅぅ……ぷはぁっ!!あ……はぁ…はぁ…はぁ…あ…あぁっ!?か…顔に……」

 

綾は涙を溜めた上目遣いで、喉を鳴らして涼の体液を飲み込んでいたが、その量の多さにたまらず涼が放出し切る直前にペニスを吐き出した。残った残滓が綾の顔に振りかかり、あどけない童顔を背徳的ないやらしさに染め上げてった。

「な…何をしたの…何なのこの甘い匂いは…?」

 

「綾ちゃん気をつけて…絶対に何かある!」

 

2人は咄嗟に涼に対して身構える。涼はゆっくりと立ち上がると、一歩ずつ2人に向かって歩き出した。

 

「…俺にここまでの屈辱を与えたことを後悔させてやるぞ…死ぬまで嬲り尽くしてやる…!」

 

涼は2人に対して突進を開始する。標的は…シオンだった。

 

「おおおっ!!」

 

「またそれですか?………!?なっ…!?くぅっ…!」

 

先ほどと同様の大振りな右ストレート。シオンは警戒しながらもチャンスと思い、再び涼の死角へ潜り込もうとステップと取るが、突如脚がゼリーに覆われた様な重苦しさに襲われる。

脚が一瞬もつれたと思った頃には、既に拳はシオンの鼻先に迫っていた。一瞬の判断でかがみ込んで何とかそれを避ける。拳が自分の頭上をかすめたかと思うと、数本の金髪がはらはらと目の前に落ちてきた。あれをそのまま食らっていたら…。

 

「シ、シオンさん!?」

 

「くっ…やあっ!」

 

しゃがんだ体勢で、涼に脚払いを書ける。当たり所がよく、転びはしなかったものの衝撃は先ほど涼が負傷した肋骨に響いたようだ。呻きながらよろめいた所を、綾がさらに追い討ちをかける。

 

グギィッ!

 

「があっ!?ぐぅぅっ…」

 

よろめく勢いを利用したレバーブローがしたたかにヒットし、涼の口からくぐもった声が漏れる。その声が途切れないうちに、シオンの滑らかな脚線が鞭のようにしなりながら綾の頭上を高速で通り過ぎ、涼の顔のほぼ正面に見事な回し蹴りを叩き付けていた。

 

バギィッ!!

 

「がぶっ!?ぶぐぅっ!!」

 

レバーブローを撃たれ、憎々しげに綾をにらんでいた涼の顔は、一瞬でシオンのエナメルで出来たハイヒールの裏側に隠れてしまった。

 

「おおぉ…やるぅシオンさん!私達結構良いコンビかもね!」

 

「ふふ…光栄ですね…」

 

「ぐがぁぁぁあああ!!」

 

涼は声にならない咆哮を上げ、2人から離れる。鼻からは血が滴り、上唇も一部裂けているものの、思ったほどダメージは無いらしい。

 

「くぅぅ…まだこれほど動けるとはな…だが、もう少しだ…」

 

「もう少し…?どういうことよ?」

 

綾が拳を握りしめながら、ゆっくりと涼に近づく。

 

「ハッタリ言うのもいいけど、こっちはあまり殴りたくないってさっき言ったでしょう?そろそろ終わりにしてあげるわ!」

 

綾がダッシュし、涼の顔面へ拳を放つ。しかし次の瞬間、綾は腕全体に強烈な怠さを感じた。先ほどレバーブローを放ったときにもわずかに感じた感覚だったが、今回は腕全体にまるで無数の穴が空いて、そこから水がこぼれるように力が流れ出した様な、強烈な脱力感だった。

それはとてもパンチとは言えない勢いで、ただ惰性で腕が涼に向かって伸ばされただけだった。一瞬の軽いめまいから気付いたときには、自分の右手はがっしりと涼に掴まれていた。そして…

 

グジュリィッ!!

 

「あ…綾…ちゃん…?」

 

「え…?」

 

綾が自分の腹部を見下ろすと、涼の拳が手首まで隠れるほど深く、自分の華奢な腹部に突き刺さっていた。

 

「あ……う……ぐぶっ!?うぶあぁぁぁぁ!!」

 

「う…嘘…綾ちゃん!?」

 

あまりの衝撃の強さからか、綾が状況を把握してから苦痛を感じるまで数秒のタイムラグがあったが、その後に襲ってきた苦痛は想像を絶するものだった。涼が拳を抜き取った後も、綾の腹部には拳の後がくっきりと残っていた。

 

「あぶっ…!げぼぉっ!?な…なに……今の……?」

 

綾は口の端から唾液を垂らしながら、かすむ目で涼の表情を見る。涼はこれ以上無いほど嬉しそうな顔をして、再び拳を握りしめていた。

 

「くくく…やっと効いたか…。もう一発くれてやるから、自分で確かめたらどうだ?」

 

ふたたび拳が唸りを上げて綾の腹部を襲う。一瞬腹筋に力を入れるが、今度は腕ではなく腹筋から力が抜け落ち、完全に弛緩したへそ周辺に拳が吸い込まれて行った。

 

ズブゥゥッ!!

 

「げぶぅぅぅっ!!?うぐっ……ごぼぁああああ!!」

 

涼の拳は何の抵抗も無く綾のくびれた腹に吸い込まれ、内蔵をかき回した。両足が地面から離れるほどの衝撃に、綾の瞳孔が一気に収縮し、黒目の半分がまぶたの裏に隠れる。

 

「ははははっ!いい顔だな!それに、相変わらず良い声で鳴くじゃないか?さっきまでの勢いはどうした?」

 

涼は失神寸前の綾の顔を覗き込みながら、冷酷な笑みを浮かべる。そして口の端から垂れている透き通った唾液を舌で掬い取ると、強引に綾の口の中へ舌をねじ込ませた。

 

「うぶうっ…!?んむっ……んんぅ!?」

 

綾は半ば混濁した意識の中で、口の中を這い回る粘液にまみれた軟体動物の感触に身の毛がよだった。焦点の定まらない目で涼を見下ろすが、全身の力が抜け抵抗が全く出来ない。

 

「んんむ…ちゅばぁっ…。くく…美味しい唾液だ…。お前とは2回目だな。さぁ、もっと出してもらおう…」

 

グリィィッ…!!

 

「あ”あ”あ”あ”あ”っ…!?かはっ……!う……うぶっ……」

 

痛々しいほどに綾の腹に深く突き刺さった拳を、さらに奥へねじ込む。綾はもはや溢れる唾液を飲み込むことも出来ずに、ただ白目を剥きながらだらしなく舌を垂らして喘ぐしか無かった。

「……私も本当にナメられたものですね…私に対して1人で挑むとは…。面倒なので2人同時にお相手していただけませんか?病み上がりの私相手に強気になるのも分かりますが、正直面倒なもので…」

 

「その必要は無いわ…。あと、とりあえず私が勝ったらすぐにでも服を着て欲しいわね…。見たくもないものが目の前にあるのは結構不快なのよ」

 

「見たくもないものですか…くくく…もう少してこれをしゃぶりそうになっていた人のセリフとは思えませんね…」

 

「…少し黙りなさいよ!」

 

綾が涼に対して駆け出す。それを合図に涼も綾に向かって突進し、お互いの射程圏内で拳が機関銃のように飛び交う。

 

「やっ!はぁっ!」

 

「ぐうっ…こ、こいつ…!」

 

お互い多少の攻撃は受けていたが、綾の方が優勢であった。綾は来るべきこの日に備え、なお一層の修練を積んでいた。手堅く涼の攻撃をガードすると確実にカウンターを当て、相手の反撃が来る前に距離を取る。一撃が重い人妖に対しては最も有効な戦法だ。
涼の攻撃は徐々に大振りになり、なおかつほとんどガードをせずに綾の攻撃を食らっていた。

 

メキリッ!

 

「ぐおぉっ!?」

 

綾の右フックが涼の左脇腹に当たり、肋骨から嫌の音が響いた。相手が両手で脇腹を押さえたところで、すかさず左膝でむき出しの金的を蹴り上げた。人間の男性ならその一撃で失神してもおかしくない衝撃、急所の存在しない人妖でもダメージは相当なものであるらしかった。

 

「がっ!?があぁぁぁ!!」

 

涼は脇腹と股間を押さえ、脂汗を流しながら歯を剥き出しにして荒い息を吐いている。普段の人を食った様な表情からは一変して、獣の様な顔になっていた。

 

「間抜けな格好ね。身体能力の高さに思い上がって防御を疎かにするからこんなことになるのよ。もう勝負は見えたんじゃない?」

 

綾はゆっくりと片膝を付いている涼に近づくと、両手の拳を腰に当て、仁王立ちで見下ろす。涼はしばらく肩で息をしていたが、ニヤリと笑うと綾に言った。

 

「はぁ…はぁ…ふふふ…相変わらず着丈の短いセーラー服だ。下乳が見えていますよ?動きやすいのは分かりますが、下着くらいは付けたらいかがですか?」

 

「な…なっ!?」

 

綾の同年代のそれより結構大きい部類に入る胸は、下から覗けるほどショート丈のセーター服を押し上げていた。また、普段は我慢出来ても戦闘時は締め付けられる感覚が嫌で下着を外している。

綾は真っ赤になり、あわててセーラー服の裾を両手で下げる。その隙をついて、涼はきびすを返して走り出した。涼の走るその先には、シオンが壁にもたれて休んでいた。

 

「あっ!?ひ…卑怯者!」

 

綾も慌てて走り出すが、既に涼はシオンに対し唸りを上げて拳を放っていた。

 

「油断するからだ!この女を人質に取れば、お前も手は出せまい!」

 

しかし、拳がシオンの顔面に当たる一瞬前、涼の前からシオンの姿が消えた。涼の目が大きく見開かれる。一瞬のうちにシオンは涼の右隣に移動し、涼の右腕を自分の右手で掴んでいた。音も無く、あまりにも鮮やかな移動は端から見たら瞬間移動のように見えた。

 

「…綾ちゃんのおかげでもう十分休めました。それに、私だってアンチレジストの戦闘員なんですよ。鑑君の仇くらい、自分で取れます!」

 

シオンの放った右膝が、涼の腹部に吸い込まれて行った。予想外の展開に涼は腹筋を固めることもままならず、ずぶりという音と共に涼の胃がシオンの膝の形にひしゃげた。

 

「シオンさんナイス!そして、これで終わりよ!!」

 

ごぎりっ!!

 

「がっ!?がごぉぉ!!」

 

シオンの膝の真裏に、綾が渾身の突きを放った。涼の胃は完全に潰れ、弾かれるように2人から離れると、両手で口元を押さえてのたうつ。

 

「ごっ…ごぶぅ…うぶぉぉぉぉ……」

 

シオンと綾はお互い顔を見合わせ、お互いの拳を合わせると再び涼に視線を戻す。綾が涼に近づき、のたうつ様を見下ろしている。今度は胸が見えないように、両方の腕で胸を持ち上げるように隠している。

 

「どう…?もう終わりにしない?これ以上やっても苦痛が増えるだけよ?私達はあなたみたいに相手を痛めつけて喜ぶ趣味は無いから…おとなしく捕まってくれるのならこれ以上攻撃はしないわ」

 

「ぐぅぅぅぅっ…げろぉっ!!」

 

涼は綾をちらりと見上げた後、何かの黒い塊を吐き出した。一瞬血かと思い、綾はうっと顔をしかめ、目を細める。

 

「はっ…!?な、何を持っているんですか!?」

 

しかし次の瞬間、涼の手には小さめの茶色い薬瓶が握られているのにシオンは気付いた。涼は厳重に封をされた薬瓶を握りしめて立ち上がると、力いっぱい地面に叩き付けた。
小さなパァンという音と共に瓶が砕け、不思議な甘い匂いが当たりに漂い始める。

 

「はぁ…はぁ…はぁ…。まさかこれを使うとはな…。俺としたことが、貴様らみたいなゴミ虫相手に何という屈辱だ…。だが、これで俺の勝ちだ…。貴様ら…たっぷりと時間をかけて嬲ってから殺してやる…」

 

涼はもはや普段の話し方ではなくなっており、端正な顔立ちは元の表情が伺えないほど怒りを表す深い皺が刻まれていた。瞳は妖しい紅い光をいっそう強め、唾液を垂れ流しながら歯をむき出しにして、今にも折れそうな力で食いしばっていた。 

「くくく…許さないのはこちらも同じですよ…」

 

涼が脇腹の刺し傷を撫でながら綾に微笑みかける。しかし、それは「これが自分のスタンスだ」と言いたげに、ただ口元だけで微笑みを表現しただけで、目は決して笑ってはいなかった。

 

「こちらはあなた方のおかげで結構大変な目に遭いましてね…。ここへ向かう途中に行き倒れて、使役している賤妖に助けられるなどと無様な醜態を晒し、挙句の果てに蘇生までの間胸くそ悪い人間の身体を借りなければならないとは…いやはや、生き恥を晒すとはこういうことを言うのでしょうね…」

 

「自分で撒いた種でしょう?なに人のせいにしてるのよ。こっちだってあなたに…その…色々されたんだから…お互い様でしょう?」

 

「いえいえ…あなた方下賎な人間が、高貴な存在の人妖に良いようにされるのは自然の摂理でしょう?」

 

涼がゆっくりと綾とシオンに歩み寄る。綾はわずかに身体をシオンの前に移動して、庇うように涼に対峙する。

 

「どこまで思い上がっているの?生き物に優劣なんて無いわよ!」

 

「ははははっ!あなた方はいつもそうだ。自分のしていることは棚に上げて、他の人が同じことをすれば我慢が出来ない。時々ニュースで見ませんか?例えば人里に熊が出た場合、観光地に猿が出た場合。たいてい結末は決まっているでしょう?」

 

「そ…それは…」

 

「違います!」

 

突如響いた声に、一瞬場の空気が動かなくなった。綾の足下に座り込んでいたシオンがゆっくりと立ち上がって涼に向かい合う。

 

「確かに私達は自分勝手に動く生き物かもしれませんが、それでも様々な生き物と共存をしようという動きも少なからずあります!浜辺に打ち上げられたイルカやクジラを助けたり、さっき貴方がおっしゃった人里に出た動物だって、麻酔で眠らせて山に返すことだってあるんです!全てが最悪の選択ではないんです!」

 

シオンの頭の中に、隣の部屋のケージに入れられた、ぼろぼろになった動物達の死体が浮かび、涙がこみ上げてきた。それを振り払うかのように強く頭を振る。金髪のツインテールが揺れ、弱々しい蛍光灯の光を浴びてキラキラと輝いた。

 

「……まぁいいでしょう。こちらの計画も順調に進んでいます。今はあなたにお礼をすることに集中しましょうか?」

 

涼の目がギラリと光を放つと、2人に向かって、いや、綾に向かって突進を始めた。一気に距離が縮まり、綾の顔面を目掛け拳を放つ。

 

「あ、綾ちゃん!?危ない!!」

 

「うぁっ!?」

 

紙一重でよけるが、風圧で綾の右頬がヒリヒリと痛んだ。まともに食らっていれば、鼻の骨どころか頬骨や眼底の骨にまで深刻なダメージがあっただろう。綾は涼は一切手加減をする気がないことを、この一撃で悟った。

 

「くっ…このっ!!」

 

空いた涼の腹部を狙い、裏拳を放つ。ごぎゅりという音がして、オープンフィンガーグローブを付けた綾の拳が埋まる。

 

「ぐぶっ!?」

 

「やあああっ!!」

 

裏拳が入ると同時に、降りてきた顔面に向かってストレートを放つ。綾は考えるより先に身体が最善の選択をして相手に攻撃する。その選択が間違うことはほとんど無い。綾をアンチレジストの上級戦闘員たらしめる素質だ。

 

ガシッ!!

 

「くぅっ!」

 

綾の右手首を、涼ががっしりと掴んだ。綾の細い手首に、両の手はあまりに暴力的に見えた。

 

「ふぅ…ふぅ…効きましたよ…今の一撃は…。やはりまだ身体の能力は完全には戻っていないようだ…。しかし、貴女ごときに負けるはずが無い!」

 

ドグッ!!

 

「うぐっ!?ぐぅぅ……」

 

「綾ちゃん!?」

 

涼の右の拳が、綾のショート丈のセーラー服からむき出しになった腹部目掛けて放たれる。綾は咄嗟に腹筋を固めてダメージを堪えるが、全くのノーダメージという訳ではない。

 

「ほぅ…強くなりましたね…。よろけながら打ったとはいえ、私の一撃を耐えるとは…」

 

「うくっ…あ…当たり前でしょ?アンタと違って…黙って寝てた訳じゃないんだから…」

 

  涼は綾の手首を解放し、一旦距離を取って構える。

 

「くくく…これはお言葉ですねぇ…。強がっているようですが、もともとあなた達人間の身体とはスペックが違うというのに…。そう言えばシオンさんのお相手をした時も、私は鑑とかいう人間の身体を借りていましたね。いやはや、あの時はまるで身体が鉛になったみたいで、歯がゆい思いをしましたよ。早く私自信の攻撃でのたうち回るあなた達が見てみたいですね…」

 

鑑の名を聞いて、シオンがピクリと反応する。後ろからわずかに拳を握る気配が綾にも伝わった。鑑という名は綾にとって初耳だったが、シオンとは何らかの関係があることは分かった。

 

「シオンさん、悪いけど、ここは私に任せてくれる…?」

 

「えっ…?で、でも…」

 

「こいつとの決着は私自身でつけたいの。それに、残念だけどシオンさんは今までの戦闘で疲労がたまってるから、無理しても結果は見えてるわ…。詳しくは知らないけど、鑑さんの分も、あいつには身体で払ってもらう。もちろんシオンさんの分もね!」

 

そう言うと綾はシオンにニッと歯を見せて笑い、拳と手のひらをパシッと合わせた。

 

「100パーセントあり得ないけど、もし私があいつに負けそうになったら助けにきて。だから、今は休んで私に任せて欲しいの。気持ちを無視するようだけど、どうかお願い…」

 

「綾ちゃん…分かったわ。その代わり、危なくなったらすぐに助けに入るから。それは了承して」

 

綾は力強くうなずくと、涼に向き合い再び拳と手のひらをパシッと合わせた。


涼はシオンの胸を乳首が重なるくらいぎゅうっと合わせると、その中心へ男根を突き込んだ。本来はさらさらとした上質なタオルケットの様な肌はわずかに汗ばみ、むっちりとした弾力とわずかな抵抗を持って男根を受け入れた。まるで暖めたゼリーを詰めた柔らかい風船に挟まれている様な錯覚に陥るが、現実はさらに極上なものだった。

 

「お、おおおおおっ…。こ、これは確かに…凶悪なまでの気持ちよさだ。正面から突き込んでいるのにすべて隠れるこの大きさ。肌触りや弾力も…。遠慮は無用ですね…」

 

涼は最初からフルストロークでシオンの柔肉に鋼の様な肉棒を繰り返し突き込んだ。ぱんっぱんっという小気味いい音が響き、涼に極上の快楽を送る。

 

「あっ…あっ…あっ…わ…私…またエッチなことしてる…。ああっ…ふ…太いぃ…」

 

チャームの効果があるとはいえ、上気した顔で自分の胸に突き込まれている男根を凝視しながら無意識に呟く言葉は、男性の本能をこの上なく刺激した。こいつは天性のものがあるなと涼は思い、射精感は早くも限界に来ていた。

 

「ああっ…ビ、ビクッてなった…。で…出るんですか…?ま…また…白いの…いっぱい出しちゃうんですか…?ふああっ!ま…まだ大きくなるの?す…すごい…」

 

悩ましげな上目遣いで見上げながら溜息まじりで呟くシオンに、涼は瞬く間に限界まで追い込まれていった。男根を勢い良くシオンの谷間に叩き込みながら、最後のスパートに入る。背中に電気が走る瞬間に一気に引き抜き、

 

「ぐううっ…も、物欲しそうな顔をして…。くおっ!?う、受け止めなさい!」

 

「あっ!あっ!あっ!ああっ!す、すごいぃ…も…もう……えっ!?あ…あああっ!?」

 

涼は男根を引き抜くと、控えめなシオンの乳首に男根の先端を押し付け、放出しながらそれを左胸全体に塗りたくった。左胸全体がべっとりと粘液まみれになっても放出は止まらず、さらにシオンの半開きの口に男根を突っ込んだ。

 

「あ…熱いぃっ…!!あ…こんなに…どろどろに……。む…むぐぅっ!?ん…んぅ……んぐぅっ!!?ぶぐっ…うぶううぅぅ!!?」

 

「くおおおっ…し…舌が絡み付いて…て…手も……と…止まらない…」

 

シオンは突然男根を押し込まれ、慌てて手と舌で男根を押し出そうとするが、それは逆効果に絶妙に男根を刺激し、激しい涼の放出でシオンの頬は風船のように膨らみ、口内から喉にかけてドクドクと熱い樹液が流し込まれた。シオンはチャームによる軽い絶頂を味わい、わずかに痙攣しながら焦点の合わない目でただ涼を見上げていた。

 

「あはははっ!すごぉい!チャーム飲まされながらイけるようなら、そのうち精液でも大丈夫になるわよ。………………………なぁにがアナスタシア創立以来最高の生徒会長よ…。清楚なお嬢様が聞いてあきれるわね?今じゃ男のチ○ポにしゃぶりついて尻尾振ってる一匹のメス豚、いえ、メス牛かしらね。本当にくだらないわね」

 

最初はいつもの余裕のある顔で手を叩いていた冷子の表情と口調が、突然刺々しいものに変わり、シオンにゴミ溜めに群がる蠅を見る様な視線を送る。

 

「本当に気持ち悪いわ、吐き気がする。涼、もう済んだでしょう?あの双子から連絡で、予定通りアナスタシアを離れるらしいわ」

 

冷子はシオンに再び一瞥を投げつけると、そそくさと隣の部屋に向かって歩き出した。涼はぐったりと座り込むシオンを残念そうに見つめている。

 

「はぁっ…はぁっ…くぉぉ…最高でしたよ…。出来るなら最後までお付き合い願いたいですが、生憎時間のようです…。またお目にかかりたいですね…」

 

「あ…あぅ…ふ…双子…?ま…まだ、仲間がいるんですか…」

 

「ええ…あなたも知っていると思いますが……おや…?いやはや……いいのですか?」

 

涼が珍しく少し驚いた表情をしている。部屋の中に入ってくる2人の少女、レジスタンスの戦闘員、由里と由羅が無表情で部屋に入ってきた。

 

 

 

 

 

「止まって下さい綾さん!1人で乗り込むのは危険です!あなたにまで何かあったら…!!」

 

背後からオペレーターの悲痛な叫びが聞こえるが、綾は聞こえない振りをして研究棟を目指し疾風のように掛けて行った。シオンの行動が追えなくなってから2時間。いくら何でも遅過ぎる。当初、音声通信が途絶えた後もシオンの動きだけは追えたものの、駐車場から広場まで移動し、研究棟に入ったと同時にシオンの反応までもが消えてしまった。おそらく軍事基地のように、研究棟全体が特殊な妨害電波のようなもので覆われているのだろう。

2時間してもシオンが出てくる気配がないことに、綾の天性の勘と今までの経験が警鐘を鳴らしていた。とても嫌な予感がする。

居ても立ってもいられずに学校の制服から戦闘用のセーラー服に着替えアジトを飛び出そうという時に、綾とパートナーを組んでいるオペレーターと出くわし、その呼びかけでいつの間にか5人ほどが自主的にシオン救出に名乗りを上げた。

 

「待っててシオンさん…。すぐに助けに行くから……ッ!?」

 

研究棟付近の噴水広場に、野球部のユにフォームを着た男子学生が3人ほど倒れていた。眼鏡をかけた学生は耳から血を流している。

 

「ちょ…ちょっとあなた!大丈夫!?一体何が…?」

 

あわてて綾が眼鏡をかけた学生の元に駆け寄る。失神こそしているものの、呼吸や心音は正常だった。念のため他の2人も確認したが、いずれも命に別状は無いらしい。ほっとして通信機のスイッチを入れる。

 

「こちら綾、救じ…」

 

「なにしてるんですか綾さん!!勝手に行ってしまって…いくら強いからって、もしものことがあったらどうするんです!?」

 

綾の言葉を遮り、耳がキーンと鳴るほどの怒声がイヤホンを付けている右耳から左耳へ抜ける。綾はよろよろとよろけ、倒れている眼鏡につまずきべしゃりと見事に転んだ。

 

「わわっ…痛った!!?」

 

「えっ!?ちょ…大丈夫ですか!?」

 

「もう!急に大声出すからびっくりしたじゃない!先に行ったことは謝るわ。あと、研究棟前の広場でけが人3人を発見。救助を要請します」

 

「けが人?容態は大丈夫ですか?」

 

「失神しているけど、呼吸や心音は安定してるわ。まったく、ここで一体何があったのよ…。とにかく私は研究棟に向かうから、救助の方は任せたわよ。研究棟は何があるか分からないから、あなた達は下で待機していて欲しいの。もし2時間して私が戻らなかったら、ファーザーに連絡して…」

 

「あ…ちょっと綾さ…」

 

一方的に通信を切った後、改めて研究棟を見上げる。選ばれたもののみが入ることを許されたアナスタシア聖書学院、建物から地面の石畳に至るまで中性ヨーロッパ調に統一された広大な敷地内の、ほぼ中央にそびえる現代的な建物は、周囲の景観から明らかに浮いていた。月の光を浴びて不気味に光りながらそびえる巨大な研究棟は、まるで悪魔の根城のようにも見えた。

単身研究棟に入る。ドアが半分開いており、すんなり中に入ることが出来た。注意して1歩1歩進んで行くが、周りに人の居る気配がない。奥を見ると、まるで招き入れるようにエレベーターが青白い光を廊下に落としていた。

ごくりと固唾を飲む音が廊下全体に響いた気がした。綾は意を決し、エレベーターに入る。扉が、まるで獲物を捕えた食虫植物がその葉を閉じるように、ゆっくりとしまっていった。

 

 

 

「うわ…酷い臭い…。涼…アンタ張り切り過ぎ…。冷子、アンタまたシャワーに入れてあげた方がいいんじゃない?」

 

「やぁよ…面倒くさい…。それよりここを離れるんでしょ?どこだか知らないけど、行くなら早くして欲しいわ」

 

「あなたがシオンさんですか…へぇ…モニターで見るよりも本物の方が綺麗ですね…」

 

「あ…あなた達……由里さんと…由羅さん…?な…何故ここに…?」

 

目の前には、会議室でファーザーが流した映像で見た双子。肥満体の人妖に散々責め立てられ、堕ちる所まで堕ちたように見えた彼女達が、目の前で人妖と親しげに話をしている。あまりの出来事にシオンは事態が飲み込めなかった。

 

「シオンさんに良いニュースですよ…。お友達の綾さんがもうすぐここに来てくれます…。シオンさんも乗ったエレベーターに入ると自動的にこの階に着くようにセットしてきましたから…」

 

「ちょっ…!由里!?あんたいつの間にそんなことしたの?ヤバいじゃん!?」

 

「大丈夫だよ由羅…その前にここを出ればいいから…。隠し通路は知っている人にしか分からないしね…。シオンさん、とりあえずこれだけでも…」

 

のんびりとした動作でシオンにフリルの着いた黒いトップスを付けてあげる由里と、パタパタと慌てて端末を操作する由羅。遠くの方で重いものが動く音がした。

相変わらず対照的な2人に半ば呆れながら、冷子が涼に声をかける。

 

「なんだかんだでこの2人に任せてれば安心ね…。さぁ涼、すぐ出発するから服を来て著頂戴」

 

「………綾」

 

「え…?」

 

「………私はしばらくここに残りましょう…。仮死体験などという貴重な体験をさせていただいて 、彼女には個人的に色々とお礼がしたいものですからね…」

 

涼の目は興奮のためか、人妖特有の縦に切れた瞳孔が赤い光を放ってた。表情こそ、表面的にはいつもの落ち着いた柔らかい笑みを浮かべていたが、長い付き合いの冷子にはその奥にどす黒いマグマの様な怒りがフツフツと沸き立っていることを察知出来た。

 

「ちょっと!気持ちは分かるけど今はここを離れるのが先決でしょう!?今は綾って娘1人かもしれないけど、数が増えたら厄介になるわよ。それに、あの娘を殺すならいつだって…」

 

「いえ、私ももう我慢が出来ないのですよ…。後で新しいアジトの場所を連絡して下さい。なるべく早く済ますつもりですが…ククク、明日の夜までには戻りますよ…」

 

涼がこうなってしまうと止まらないことを冷子は知っていた。説得を諦めて双子と共に部屋を出る。冷子達と入れ替わるように綾が部屋に飛び込んできた。

 

「シオンさん!大丈夫!?」

 

綾は目の前に広がっている光景に、しばらく言葉が出なかった。床中にまるで白いペンキをぶちまけたかのように、あちこちで白濁の粘液が水たまりを作っており、その中心には白濁まみれになり鳶座りで呆然と佇むシオンと、その正面で全裸で仁王立ちになり顔だけをこちらに向けている涼の姿があった。

シオンは綾が視界に入るとゆっくりと顔を向け、安堵のためか緑色の瞳からは一筋の涙が流れた。

 

「綾ちゃん……私……汚れちゃった……」

 

「…………ッ!!」

 

綾はわなわなと震えながら、シオンの目の前に立っている涼に憤怒の視線を向ける。しかし、その姿を見た涼はにやりと嗤うと、いきなりシオンの細い顎を掴み、そのまま男根を口内に押し込んだ。

 

「うぶっ!?うむぅぅぅっ!!?」

 

「なっ!?やめろぉぉぉぉっ!!」

 

綾が涼に突進すると、あっさりとシオンの口から男根を引き抜き数歩後ろに下がる。どうやら挑発のための行為だったらしいが、綾は完全に頭に血が登り、ふぅふぅと肩で息をしていた。今にも飛びかかりそうになる気持ちを堪えながら、シオンの肩に手を置く。

 

「シオンさん、もう大丈夫だから…。待ってて…すぐにあいつをぶちのめすから!」

 

ギリリと綾のはめている革製のグローブが軋む。シオンは下を向き、ぽろぽろと涙を流しながら綾の手を自分の肩からそっと外した。。

 

「!?。シ、シオンさん…?」

 

「わ…私…汚れちゃったから…綾ちゃんに会わせる顔が無い…」

 

「そ…そんなことない!な…何言ってるのシオンさん…。『汚された』の間違いでしょ!?あんな下衆にやられたことなんて気にしない方がいいよ!」

 

「ち…違うの……。さ…されてるうちに私…だんだん気持ちよくなって…。あの…イクっていうの…?それにもなっちゃって…。自分がこんなにエッチだったなんて知らなくて……。もう…学校にも…アンチレジストにも居られない……」

 

シオンは細い肩を振るわせながら泣いていた。綾はチャームや精液が身体に付くこともかまわずに正面からシオンをしっかりと抱きしめた。一瞬ビクリとしたシオンだったが、徐々に力が抜けて行き、弱々しく申し訳無さそうに綾のセーラー服の袖を掴んだ。

 

「大丈夫…大丈夫だから…。シオンさんは絶対に汚れてなんか無い…。もしそうだったらこういう風に抱きしめられる訳無いでしょう?絶対に大丈夫…。悪いのは全てこのチャームのせいだから。いまからシオンさんをこんな風に傷付けた奴を懲らしめるからね…」

 

綾も目に涙を浮かべながら立ち上がり、手のひらでぐしっと涙を拭うと、涼に対して向き合った。

 

「お前…絶対に許さないから…。もう謝っても絶対に許さないから!!」

暗い部屋の中には明かりは1つも点いておらず、大小さまざまなモニターの作る光だけが、2つの小さなシルエットを浮かび上がらせていた。モニターにはシオンのいる部屋を様々な角度から映している他、学園のあらゆる場所が映し出されていた。夜の校舎内や校庭、敷地内に動くものは無く、シオン達のいる部屋以外はまるで静止画のように写っていた。

 

「あーあ…自己満で終了なんて、涼も変わったね」

 

「仕方ないよね…長いこと仮死状態だったし…あ…終了じゃないみたいだよ」

 

「あ、ホントだ、やっぱり相変わらずだね。そう言えば、以前は一晩中ぶっ通しってこともあったっけ…。ねぇ、人間って何時間犯し続ければ死ぬと思う?」

 

「んー…分かんないけど興味あるかな…。あのシオンって娘で試してみる?」

 

「涼が本調子になったら試してみようか?何ならアンチレジストの他の戦闘員でもいいし…。賤妖達の餌として廃工場に閉じ込めたのは逃げちゃったから、他の娘でね」

 

「……逃がされた、でしょ?あの肉ダルマさんに…」

 

「相変わらず毒吐くわねぇ…。まぁ、ソレについてはもう済んだことじゃない?」

 

「そうだね…。あの2人仲良かったから…ずっと仲良くできるように、同じ格好にして隣同士にしてあげたものね…」

 

「『キモオタさん』の隣にね…。あれ?正門の所が…へぇ…思ったより早いじゃない?」

 

一番左下の学校の正門を写したモニターに動きがあった。ぴったりとした黒いウェットスーツの様なものを身につけた人影が5人ほど、正門を開けようと作業を始めている。アンチレジストのオペレーターの装備だ。

その後ろから助走を付けて、2m以上はあろうかという正門を驚くほどの身の軽さでよじ登り、オペレーター達より一足先に敷地内に侵入したセーラー服の少女が1人。茶色を基調としたショート丈のセーラー服に指出しのミリタリーグローブを身につけたアンチレジストの上級戦闘員、綾だ。正門の外でオペレーターが待つように指示しているらしいが、綾はそれにかまわず一目散に自分たちのいる研究棟の方向に走り出していた。

 

「普段は待機しているオペレーターまで来るとはね…。ファーザーは命令は出してないんでしょ?」

 

「うん…。多分自発的に動いてるんじゃないかな…?多分あの娘の呼びかけだと思う…」

 

「綾か…。ま、どっちにしろ今日中にここは離れる予定だったしね。少しくらい早まってもいいか…じゃあ行こうか、由里…」

 

「そうだね…由羅…」

 

小さい2つの影はお互い嗤い合うと、携帯電話を操作した後エレベーターに向かって歩き出した。

 

 

 

 

 

「そうそう、この娘の胸すごく気持ち良いらいわよ?感度も良好だし、挟むには十分すぎる大きさでしょ?ボクシング部なんて射精と同時に失神してたわよ」

 

「ほう…それは素晴らしい…では、早速いただきましょうか?」

 

そう言うと涼はシオンの後ろに回り込み、首の後ろと背中で蝶結びになっている紐を解いた。シオンの胸を締め付けていたフリルのついたデザインのトップスが弾けるように外れ、ぱさりと床に落ちた。

 

「ああっ!?やあっ…恥ずかしい…ッ」

 

ぷるんと音が聞こえそうなほどの勢いで締め付けから解放された胸は一回り大きくなったように見えた。若さ故の張りと弾力で形はほとんど崩れず、ピンク色の控えめな乳輪と乳首はシオンの清楚さを静かに主張していた。

 

「ほぉぉ…これは素晴らしい…。柔らかそうだが張りがあって…我慢出来ませんね…」

 

涼はいきなりシオンの胸を後ろから鷲掴みにし、のの字を描くように乱暴にかき回した。愛撫などと呼べるものではなく、ただ自分を満足させるためだけの行為。胸には指が鷲掴みの文字通り猛禽類の爪の様に食い込み、ゴツい指の間から溢れたシオンの柔肉が対照的な印象を放っていた。

 

「あうぅっ!?い…痛っ…!痛いぃ…!ふっ…あぐぅぅ……」

 

「おやおや申し訳ありません。あまりにも素晴らしい胸でしたのでつい…シオンさんは優しくされるのが好きなんですね?」

 

涼はシオンの反応ににやりと笑うと、暖かいマシュマロの様な手触りの胸から手を離し、指の先と爪のみを使って驚くほどのソフトタッチでシオンの胸を触り始めた。まるで一本一本の指が独立し、意志を持った生物のようになめらかな胸の肌の上を這い周り、時折乳輪や乳首をわずかに刺激しながら撫で回す。

 

「あ…あふぅっ!?な…こ…これ!?あ、あああっ!?あああああん!!」

 

シオンは絶妙な刺激にたまらず声を上げる。体中の産毛を逆撫でされている様なゾクゾクする快感に悶え、手袋をはめた指を噛んで声を堪えようとする。ソフトタッチで焦らされた後は、もにゅもにゅと音が聞こえそうなほど慣れた手つきで胸全体を転がすように揉みしだき、再びソフトタッチで焦らす。今までの男子部員とは比べ物にならない技巧であったが、決して一番敏感な桜色の突起には触れなかった。

時間にすれば10分ほどであったが、シオンにとっては数時間にも感じられた。一番触って欲しい所を避けながら焦らされ続け、指を噛みながらぐったりと荒い息を吐き続け、我慢の限界を迎えそうな時、突如シオンの胸を這い回る生き物は意図的に避けていた両方の乳首に向かって一斉に集合し、親指と人差し指の腹を使って凝りをほぐすかのように集中的にしごきはじめた。

 

「くっ…くふぅぅっ……えっ?うあ゛っ!?あああぁっ!!そ、そこっ…そこおっ!!ああぁ、らめぇぇぇぇ!!」

 

「くっくっく、こんなに痙攣して、待ちかねた刺激はいかがですか?さぁ、胸だけでイッてしまいなさい」

 

そう言うと涼は右手でシオンの乳首を転がしながら、シオンの左胸にしゃぶりついた。唇で強引に胸を吸いながら、舌先を高速に動かし乳首を転がすように刺激する。始めて感じる刺激にシオンは一気に頭の中を真っ白にさせられた。

 

「あ…あああっ!!ふあぁ………え?…い…いくって…どこに?……うぐっ!?ぐぅぅぅぅ!?ああああっ!?そ…そんな…す…吸っちゃだめぇぇ!!」

 

「あらあら…涎垂らしたままそんなによがっちゃって…うふふ…すごぉい…」

 

冷子の声ももはやシオンには届いていなかった。シオンの絶叫と涼の唾液を啜る音だけが部屋にこだまする。

 

「あっ!?ああっ?!な…何…?く…くる…なんか……来ちゃ……!!ああっ…や…やあぁぁっ!!ああああああああああっ!!!」

 

大きく身体を仰け反し絶叫しながら、シオンは目を閉じて快感に身を任せた。元々敏感な身体をしたシオンの、初めて体感した絶頂。玉の汗を浮かべ、その意味も分からないままただビクビクと身体を痙攣させた後、涼に倒れ込んだ。

 

「はぁっ…はぁっ…はぁ…な…な…なに…これ……?何かが、身体を…んむぅっ!?ん……んぅ……」

 

涼がシオンに唇を重ねると、シオンもぼうっとした意識の中で本能的に舌を絡めてくる。チャームの効き目が徐々にシオンを蝕んでいった。

 

「んむぅっ…、良かったですよ。今のがイくということです。先ほどあなたと遊んでいた男子生徒達や私も、みんな精液を出すときはこんなに気持ちよかったのですよ」

 

「あ……み…皆さんも…こんなに…気持ちよかったのですか……?」

 

「えぇ、そうですよ。では、今度は私もしてもらいましょうか…?」

時間の感覚が無くなっていく。私がここで目覚めてから何日、いや、何週間経過しただろうか。ほぼ毎日、様々な人妖が私を散々責め立てた挙句、濃厚なチャームを浴びせていった。人間とは不思議なもので、そんな極限状態ともいえる生活にも私の身体はすっかり順応し、逃げ出したいという気持ちは今でもあるものの、彼らが部屋に入るたびに私は自然と彼らのチャームを期待するようになっていった。

 

 

 

「おら!もっと奥までくわえ込むんだよ。喉奥でしごくんだ!」

 

「うぶぅぅぅっ!!?うぐぇっ!!ごえぇぇぇっ…!!」

 

マッチョなこの男はいつもは太った別の男と一緒に来るのだが、今日はなぜか1人だ。でも、やることは大体同じ。散々私のお腹を責め立て、胃の内容物をすっかり吐き出させた後のイマラチオ。お決まりのパターンだ。

喉が男の巨根の形に合わせて、まるでカエルのように大きく膨らむ。もの凄い吐き気と呼吸がままならない死への恐怖が私を襲うが、この行為の結果を思うと自然と身体の奥が熱くなる。

 

「ぐぅぅぅぅっ……!!メス豚へ餌を恵んでやる!こぼすんじゃねぇぞ!!」

 

どびゅぅぅぅっ!!ぶびゅっ!!ぶびゅるぅぅぅぅっ!!!

 

喉奥へ突き込んだまま、熱い樹液が直接胃へ流し込まれる。味なんて分からない。ただ、これを飲まされるたびに、私の身体は否応無しに悦びを感じる。しかし、放出が終わり男が男根を一気に引き抜く一瞬前、さらに奥にそれを突き込んだ。

 

「うぎゅう!!?うげぇぇぇぁぁぁぁ!!」

 

それが私の限界を超えさせ、たった今流し込まれた大量のチャームをびちゃびちゃと床に吐き出した。白濁した水たまりが、床に着いた私の膝の間に広がる。

 

「ちっ!!何やってんだよ!?」

 

男が私の髪を掴んで顔を上げさせ、覗き込んでくる。男の顔は無精髭が生え、髪はやや伸びすぎているが、それでも元々の顔が野性的で整った顔をしているので、不思議と魅力的に写った。

私達はしばらくそのままの姿勢で沈黙した。静寂が足下から私達の間に霧のように広がる。ふと、私の髪を握っている男の手が小刻みに震えているのに気付いた。不思議に思って顔を覗き込むと、その目が赤い。いや…泣いてる……?

 

「クソッ!!」

 

吐き捨てるようにそう言うと、男は私を突き飛ばすように髪を離した。床に倒れたまま男を振り向くと、背中を向けて小刻みに震えている。

 

「……あ…あの……いつも一緒の人は…?」

 

当然の疑問を口にすると、男の背中が小さくビクリと跳ねるのが分かった。しばらく男は何かを考えるかのようにその場に静止していると、やがでふぅっとため息をついて私に振り返った。

 

「お前…帰りたいか…?」

 

私の質問を無視した意外な一言に、私は即答することが出来なかった。

 

「家に帰りたいかって聞いてんだよ?」

 

「えっ…!?あ…は、はい。も、もちろんです。帰りたいに決まってます!」

 

男は自分の足下に視線を落とすと、小さく「だよな…」と呟いた。帰れる?私、ここから出れるの?男は相変わらず足下を見ながら、つま先で小さな図形を描いていた。やがて、意を決したように視線を上げて、私に向き直った。

 

「いいぜ、出してやるよ。俺が出た後に逆方向の扉が開くようにしておく、そのまま真っすぐ行けばやがて出口だ。見張りなんかもいねぇから安心しな。そのかわり、途中どの扉も開けるんじゃねぇ」

 

突然言い渡された解放宣言に私は事態を飲み込むことが出来ず、呆然と男を見つめた。

 

「なんだよその目は…?言っとくが、罠じゃねぇぞ。俺は乱暴だし、お前にも色々酷いことをしたが、人間みたいに嘘は言わねぇ…」

 

「な…何故急にそんなこと…」

 

「理由なんてねぇよ。俺の気が変わらないうちにとっとと消えな」

 

それだけ言うと、男は私に背を向けて自分が入ってきたドアに向かって歩き出す。私はただ呆然とするしかなかった。男の言うことが本当なら、彼がドアを開けると後ろのいつも閉まっているドアが開くはずだ。そして、おそらく彼は嘘は言ってないだろう。

 

「ああ…あのよ…」

 

男がドアノブに手をかけながら、私を振り返った。

 

「お前、アンチレジストに帰るのか?」

 

どこか諦めた様な、まるで解体工場に送られて行く家畜を見る様な表情だった。

 

「え…?あ…と、当然です!人妖を倒すのが私の使命です!たとえ上級戦闘員になれなくても、オペレーターとしてバックアップは出来るはずです!」

 

「ふぅ…やめておけ。おとなしく家に帰って、そして普通の生活をしろ。金輪際俺達やアンチレジストに関わるんじゃねぇ」

 

「な…何故ですか!?あなた方にそんなことを言われる筋合いは…!!」

 

「どこの世界も、全てを知っているのは上の一部だけで、それ以外の奴らは訳も分からず利用されてるだけなんだよ!」

 

私の言葉を遮って発せられた諭す様な男の言葉に、私は二の句が継げず黙り込んだ。

 

「お前が思っているよりも、俺たちを取り囲んでいる輪は遥かに大きい。状況が変わったんだ。今に暴走がはじまる…」

 

「暴…走…?ど、どういうこと……?」

 

「…………気になるんなら、出口の途中、右側にあるボイラー室のドアを開けてみな。後悔しない自信がありゃあな…俺が言えるのはそれだけだ。じゃあな……あと、今まで悪かったな」

 

バタンとドアが閉まった後も、私はしばらく男の出て行ったドアを見つめ続けていた。何か大きな出来事が、私の周りで起こっていると彼は言っていた。まるで大海原に放り出され、巨大な渦巻きに飲み込まれる前の静けさの中に居るような感覚だった。

しばらく呆然とした後、はっと気付いて後ろのドアを開ける。ドアは今まで固く口を閉ざしていたのが嘘のようにすんなりと開いた。

途中、いくつかのドアを通り過ぎた。更衣室や機械室の他、大きなベルトコンベアが設置された部屋もあった。いくつかの部屋を通り過ぎた後、赤いライトの下に照らされたボイラー室はあった。

 

「ここがボイラー室…。中に何があるのかしら…?」

 

震える手でドアノブを回す。想像よりも大きな音がして、ドアは開いた。開けた瞬間に、様々な臭いが私の鼻を突き刺し、思わず口と鼻を手で覆う。

 

「ううっ……ひどい…何、この臭い…?チ…チャームと…血?」

 

臭いの1つは間違いなくここに来て何度と無く嗅がされたチャームの臭いだった。それが汗や体臭の臭いと混じり合い、酷い臭いがこの部屋を塗りつぶしていた。プールの更衣室をずっと掃除せずに放置すればこのような臭いになるのだろうか?いや、プールの更衣室をいくら放置しても、錆びた鉄が腐った様な、ぬめりつく様な血の臭はするはずが無い。

私は逃げ出したい気持ちを抑えながらも、口元を覆いながら慎重に部屋の奥へと進む。奥に行けば行くほど、次第に血の臭いは濃くなっていった。そして、ボイラーに「ソレ」はあった。いや、へばりついていた。

 

「一体何がこの部屋で……ひぅっ……!!!?」

 

悲鳴はそのまま身体の中にかき消えていった。部屋の奥に設置されたボイラー。最初、ボイラーの中心にぼろぼろの黒い布がかかっているのかと思った。しかし、近づくとそれはまぎれも無く人だった。いや、よく見れば見覚えがある。あの頻繁に私を襲ってきた2人組、さっき逃がしてくれた人妖の相棒。肥満体の人妖がボイラーの中心に、まるで前衛芸術の作品のように貼り付けられていた。

 

「うぐっ…!!うげぇぇぇぇぇ…!!」

 

胃の中に吐くものなんて残ってなかったが、ともかく吐かずにはいられなかった。いくら嘔吐いても何も出て来ないが、とにかく吐いた。目の前にある「太っちょ」の変わり果てた姿は自分の想像の範疇を超えていた。身体の中の空気を全て吐き出した後、少し落ち着いて恐る恐るソレを見上げる。

身体の至る所に五寸釘かアンカーの様なものが打ち込まれ、ボイラーにまさに「貼り付け」られていた。胴体と首が分かれていた。首は胴体の右側に貼り付けられ、さらにその右隣には根元から抜き取られたのか、異様に長い舌が貼付けられていた。顔中は切り刻まれ唇は無く、むき出しの歯は笑っているように見えた。両目はくり抜かれ、黒い穴が過去そこに目が存在したことを主張していた。身体は解剖したカエルの標本の様だった。両手足は大の字にした状態で固定され、胴体まるで巨大な絨毯のように、喉仏の下からヘソの下まで大きく切り開かれた皮膚が左右対称に貼付けられ、包むものが無くなった臓腑がこぼれて床にまで垂れ下がっていた。

 

「おうぐっ!?うごぇぇぇぇ!!」

 

再び強い吐き気に教われ、嘔吐きながらボイラー室を出て一目散に出口まで走る。転がるようにドアを出ると、そこは見慣れない夜の町だった。私が閉じ込められていたのは、どうやらこの町の工場だったらしい。しかし、稼働している様子は無く、所々朽ち果てている。こういうのを廃工場と言うのだろうか。私はほとんど無意識に当ても無く歩き、駅を見つけて実家へと帰った。どのように乗り継いで帰ったかは覚えていないので、当然あの廃工場のあった場所は今でも分からない。

私はこの一件をファーザーに報告しようと思ったが、結局組織には戻らなかった。引き止める両親には悪いと思ったが、念のために色々と理由をつけて現在は遠い町で一人暮らしをしている。心配した組織との関係も、私が不要になったのか、死んだものとして扱われているのか、いずれにせよ特に接触は無かった。

今でも時々マッチョが言っていた「状況が変わった」という言葉の意味を考えるし、あの太っちょの末路が時々夢に出てきて飛び起きることがある。しかし、今の私はあの場所からずいぶん遠くまで来てしまった。私がマッチョの言っていた「取り囲んでいる輪」の外に出ることが出来たのか、それともただ輪の中心から離れただけで、未だに輪の中にいるのかは分からない。

 

 

レジスタンス「外伝:cage」

 

EИD

「ん……んぅ……うぅ……」

 

どのくらい時間が経っただろうか。

先ほどと同じ部屋。シオンは固い床の上に目を覚ました。まだ目の前がハッキリしないが、本能的に身体のあちこちを点検した。幸い、 腹部に疼痛が残る以外は、手足や首に致命的なダメージは負っていない。いつの間にか汚された身体もある程度綺麗に清拭され、 衣服に白くこびり付いた残滓と口の中に残る精液特有の後味がわずかに不快なだけだった。

 

「くっ…」

 

横座りのまま両手で身体を支え、わずかに上体を起こす。何だろう、拘束などはされていないが異様に身体が重い。それに、なぜか身体の中がじんわりと熱い。

 

「あらあら、目が覚めたかしらぁ?」

 

びくりとして後ろを振り向くと、冷子がモデルのような姿勢で椅子の上に座ってシオンを見下ろしていた。拳の上にその鋭い顎を乗せ、すらりと伸びた足を妖艶に組んでいる。

 

「うふふふ…ずいぶんと派手に汚されたわねぇ…。愛されててうらやましいわぁ…。一応身体は拭いといてあげたけど、なかなか落ちない所は我慢してね」

 

「篠崎先生…」

 

ハッキリしない意識の中、ぼうっとした様子で冷子を見つめていたシオンだったが、ハッと気付いてあわてて声を上げる。

 

「あ、あのっ!み、皆さんは…、皆さんはどこへ行かれたのですか!?」

 

「はぁ…?皆さんってあの男子部員達のこと?あっきれた…。あなたあいつらに滅茶苦茶にされたのよ?今更生きてようが死んでようがあなたには関係ないでしょう?」

 

吐き捨てるようにそう言うと、軽蔑の視線を隠そうともせずにシオンを見つめる。しかし、シオンは必死だった。

 

「か…彼らは、篠崎先生の作った薬で一時的に前後不明になっただけです!無事なんですか?後遺症とかは無いんですか?」

 

「………吐き気がするほどのお人好しね。本当にむかつくわ。安物のチョコレートじゃあるまいし、ゲロ甘なのも大概にしなさいよ。虫酸が走るのよ。アンタみたいなのを見てるとね……」

 

薄暗い部屋の中、冷子の声は氷で出来たナイフのように冷たく響いた。椅子から立ち上がるとカツカツと高い靴音を立ててシオンに近づき、髪の毛を掴み無理矢理立たせる。

 

「あうっ!?痛っ!!」

 

「なんでアンタはそんなに他人を信用出来るのよ…?アンタ達人間なんて他人を平気で裏切るし、すぐに殺し合いを始める屑以下の存在じゃない。共食いする生き物なんて蜘蛛やカマキリみたいな虫ケラとアンタ達人間だけよ…。もっとも、同族同士で憎み合うだけならまだしも、他の生き物にまで迷惑をかけている分、アンタ達の方がタチが悪いわねぇ…?」

 

「な…何でそんなに…人間を憎むんですか…?」

 

シオンは冷子の手首を掴んでこれ以上髪の毛を引っ張られないように押さえつける。しかし、冷子の握力は凄まじく、シオンの力ではとてもほどけそうも無かった。冷子は一瞬真剣な表情になり何かを言いかけたが、すぐに元のあざ笑う様な表情に戻った。

 

「…………さぁてねぇ…どうかしら?」

 

「な…何か訳があるなら聞かせて下さい…!私達も…もしかしたら分かり合えるか…うぐうっ!?」

 

言葉をすべて発する前に、冷子の左手がシオンの下腹部に鋭くめり込んでいた。女性の急所である子宮へのピンポイントの打撃。シオンの顔がみるみる青ざめていく。

 

「あんまり舐めたこと言ってると本気で殺すわよ?人の心配より自分の心配でもしたら?ふふふっ…あなたの若さで子供が出来ない身体になるのも辛いでしょう?」

 

「あ……あふっ…!?あ……あああ……」

 

「ふふ…せめてもの情けよ…。しばらく黙ってなさい…」
 

 

グヂィッ!!!!

 

「ぎゅぶぅっ!?…うぐあぁぁぁ!!」

 

シオンの口から今まで聞いたことの無いような悲鳴が吐き出された。あれほど重かったボクシング部のパンチの威力を軽く凌駕する冷子の一撃が、鳩尾に捻り込むように突き刺さった。冷子の言葉通り、この一撃がシオンの子宮に向けられていたら確実に後遺症が残っただろう。

冷子がシオンの髪を解放すると同時に、シオンは膝を折って崩れ落ちた。失神こそしなかったものの、その顔は完全に血の気が引き、普通の日本人より遥かに白いシオンの肌は、もはや青いと言っていいほど真っ白になっていた。

 

「いつかその仮面が剥がれて醜い素顔が出てくると思ったけど、ここまで分厚い仮面もなかなか無いわね。人間なんて所詮は上辺だけで最後には自分さえ良ければそれで良いのよ。あなただってその気になればあいつらを皆殺しにして逃げることだって出来たでしょうに、無抵抗にされるがままで…。ふん…まぁいいわ。無事よ。能無し共は下の回でぐっすり寝てるわ」

 

そのこ言葉に、いまだ青ざめているシオンの表情がわずかに緩んだ。もはや教師の頃の面影は無いが、今でも少なくとも冷子は嘘は言わないだろう。彼らだってそれなりに鍛えられた部員だ。たいした怪我も負っていないのなら、どうにかして逃げ出すチャンスだってある。

シオンが鳩尾を両手でかばいながらほっとため息をつくと、冷子の背後にあるカプセルの裏から人影が現れた。高身長で引き締まった筋肉質の身体、脇腹に残るナイフの刺し傷。何も身に付けていない涼が頭を振りながら現れた。

 

「あらあら…こっちもお目醒めね。気分はどう」

 

「ううむ……まだ少しぼんやりしていますが、なかなか良好ですよ。やはり自分の身体はいい…」

 

「そう、よかった。ところで、補給はどうするの?」

 

「補給もしたいですが、まずは仮死状態だった頃の老廃物を出したいですね。出来るだけ多くを吸収したいので」

 

涼は全裸のまま、一切隠そうともせずにうずくまるシオンに近づく。

 

「一応あなたのチャームを分析して、科学的に合成したものを注射しておいたんだけど、まずかったかしら?」

 

「はっはっはっは!これはこれは…相変わらず準備が良いですね。いやいや、助かりましたよ。まだ本調子ではない中、アンチレジストの相手はいささか疲れますからね」

 

(合成したチャームを注射…?私に…?)

 

シオンがハッとして顔を上げると、涼は既に目の前で仁王立ちになっていた。腰の位置が高い涼の股間が丁度シオンの目の前に来ている。だいぶ表情に血の気が戻ったシオンは、涼の男性器を見た瞬間身体の中に電気が走った。目を逸らそうとしても、不思議と心臓の鼓動が早くなり、視線はそれに釘付けになる。

 

(な…何…?何で私…こんなにドキドキしてるの?あ…身体が…熱い…)

 

「うふふふ…しっかりチャームが効いているみたいね。いつものあなたなら悲鳴のひとつでも上げているはずなのに、そんなに熱い視線で涼のを見つめちゃって…」

 

「あ…あぁ……あ……」

 

目を逸らしたいが、身体が言うことを聞かない。これはチャームのせいだと冷静な自分が頭の中で言う反面、別の自分が触りたいとさえ思っている。シオンが生唾を飲み込む音が大きく部屋に響いた。

 

「くっくっく…そんなに見つめられると興奮しますね。さて…それにしても本当に可愛い娘だ…。しかもこんなにエッチな格好をして…。くくく…今からあなたで自慰をしますから、しっかり見ていて下さいね」

 

「えっ…?じ…自慰って…あっ…!?」

 

自慰という単語を呟いた後、ぼっと顔が赤くなる。それを合図に涼は自分の男性器をしごき始めた。まるでシオンに見せつけるようにゆっくりとした動きだったが、男根はすぐに硬度を増し天を仰ぐ。

 

「あっ…あああっ……す…すごい………もう…こんなに……」

 

「ふふふ……ほら、見て下さい…。ガチガチになっているでしょう?私の頭の中であなたは今、滅茶苦茶に犯されているのですよ?」

 

「お、犯されてる…?わ…私が…あなたに犯されてるんですか…?あ……ダメ……そんな…大きいので……犯さないで下さい……」

 

シオンはうわ言のように呟くが、涼の自慰を見て興奮しているのは誰が見ても明らかだった。涼の手の動きはどんどん速くなり、硬度や大きさも最高潮に達する。先は既に透明な粘液で濡れ、シオンの鼻先に突きつけられた性器からは強烈な臭いが放たれ始める。

 

「すごい……こんなに大きく……。先から透明なのが…ああぁ……」

 

「くぅぅ……エッチな顔になってきましたね…。オナニーのネタにされている気分はいかがですか?私もそろそろ限界ですよ」

 

涼の呼吸から余裕が無くなり、男根の先がシオンの顔を目掛けて構えられる。既にピクピクと痙攣がはじまり、限界が近いことをシオンも悟る。

 

「お……犯しちゃやぁっ…。だ…ダメ……こんなに太くて…逞しいので…想像の中の私にエッチなことしないで…。あ…ああっ…ビクビクしてる……」

 

言葉とは裏腹に、増々熱い視線で涼の性器を見つめるシオン。そのまましゃぶりつきそうなほど自らも身を乗り出し、緑色の瞳で切なそうに先走りが出てくる様を見つめる。

 

「もうすぐ、たっぷりチャームを出してあげますからね。その可愛くてエッチな顔中にぶちまけてあげますよ…」

 

「え……?あ…あの白くて熱いの出しちゃうの…?すごく濃いの…いっぱい出るの…? やぁ… ゆ…許して…許して下さい…。か…かけちゃだめ…し…白いの…いっぱい出しちゃだめぇっ…。こ…これ以上かけられたら……私…私ぃ……」

 

口では拒絶の言葉を呟きながらも、 まるでここに出してくれと言うようにわずかに開いた口から舌を覗かせる。涼はすぐに限界を迎えた。

 

「くぉぉぉぉっ…!!出るっ!!このエロ娘が…!そんなに私のが欲しいのか…?望み通りぶちまけてやるッ!!!」

 

ぶびゅうっ!!どびゅるるるるっ!!

 

そう言うと同時に、涼の性器から白い粘液がまるで堰を切ったダムのようにシオンの顔に降り注いだ。量も濃さも常人の数倍はあり、シオンの顔は一瞬で粘液まみれになった。

 

「あ…で…出る……もうすぐ…出るぅ……。あっ……うぶっ!?あああぁぁ!?あ……すごっ……あふぅっ!!ま…まだ出て……こ…濃いぃ……」

 

あまりの勢いに一瞬目を細めるものの、シオンは顔を背けようともせず、出した舌もしまわずに素直に涼の放出を受け止めた。それどころか、まるで清らかな泉の水を掬う聖女の様に、手を自分の胸の前で受け皿のようにかまえ、こぼれた粘液を受け止めた。手には聖水の代わりに邪悪な人妖のチャームが溜まっていった。

case:ZIONももうすぐ終盤です。
今回はギャラリーのシオンの絵を見ながら読まれますと、イメージしやすいかもです。

少し長くなりましたが、どうぞ↓







「ははははっ!お前、本当に変態だな!こりゃあすげぇ」

 

「こんなの思い浮かばねぇぜ!?一体どうなるんだ?」

 

ボクシング部とサッカー部が口々に軽口を言い合う。シオンは気絶している間に壁際に背中を付けた状態で膝立ちにされ、両手を相撲部が恋人同士が手を握り合うように指を絡めた状態で壁に押し付けていた。極端に背の低い相撲部の股間が、丁度シオンの鳩尾の正面に来ていた。

 

「お…起こしてもらっていいかな…?」

 

「もちろんだ。しかしお前、本当に大丈夫なのかよ?海綿体骨折なんてシャレになんねーぜ?」

 

「だ、大丈夫だよ…。は、早く…!」

 

ボクシング部がシオンの肋骨の切れ目に指を押し込むと、シオンの身体がビクリと跳ね上がり、再び悪夢という現実に引き戻される。

 

「くはああっ!?……あ…あぅ……あ…何…これ…?」

 

シオンは自分の前に突き出された相撲部の性器を一瞬理解出来なかったが、直後に真っ赤に赤面して首を振る。

 

「や…やあっ…!そ…それ……し…しまって下さい…」

 

「だ…ダメだよ…。ぼ、僕たちこれから愛し合うんだから…。き…今日のためにとっておいたんだよ。か、会長のために…!」

 

「え…?あ…愛し合う……?そ…それって……」

 

シオンの顔からさっと血の気が引き、頭の中には最悪の事態がリアルな映像として想像された。シオンには過去にも現在も特定の恋人はおろか、特別な存在として好意を抱いている相手もいなかった。そんな暇は無かったし、博愛主義ではあっても、男女間の恋愛にそこまで興味が無かった。

しかしそんな彼女でも、やはりヴァージンは好きな人へという想いは当然ながらあるし、いつか来るべき日を想像したことだってある。こんな訳の分からない状況で訳の分からない薬を打たれた訳の分からない状態になっている相手に奪われるほど恐ろしいことは無い。

 

「や……嫌……それだけは……お願いですから……」

 

「あ…か…勘違いしないでよ?そ、そりゃあ僕だって会長としたいけど…僕も経験無いし…だ、だから別の方法で会長の中に入るよ…」

 

シオンには相撲部の話す内容が理解出来なかった。別の方法で自分の中に入る?どういうことだろうか?しかし次の瞬間、シオンの鳩尾に熱い塊が押し付けられた。見ると、相撲部がシオンの胸の真下に、自らの男根を押し付けていた。

 

「えっ…?なっ…?こ…これ…?」

 

「あっ…あぁ…すごい…スベスベして……い…いくよ…」

 

恍惚とした表情で相撲部が呟くと、ゆっくりと自らの腰を突き出した。ズブリと亀頭の先端がシオンの鳩尾に飲み込まれる。

 

「あっ…ぐっ!?…う……うぐぅっ!?」

 

筋肉の殆ど無く、故に鍛えようの無い鳩尾は抵抗する術を持たず、素直に男根を受け入れた。あたたかく滑らかなシオンの皮膚が周囲の腹筋を巻き込みながら男根を包み、さながら女性器と同様の快感を相撲部に与える。

 

「あっ…ああぁ…す…すごいぃ…。こ…これが会長の中なんだ…」

 

一旦相撲部が男根を引き抜くと、シオンの鳩尾と男子部員の男根が先走りの糸で繋がり、再び勢いを付けて突き込まれる。

 

「はっ…はっ…うぐっ!?…くはっ…あぁ…ぐむっ!!…う…うぐ……ぐふぅっ!?」

 

断続的に突き込まれる槍はリズミカルに加速してゆき、微妙に突く場所を変えながらシオンを責め立てる。もはや腹筋は弛緩しきり、鳩尾に限らず臍の上や横隔膜まで突きまくられてシオンの胸の下は先走りの粘液でぬめぬめと光っていた。

 

「あうっ!あぐっ!ぐふっ!うっ!ぐぶっ!うぐっ!がはあぅっ!!」

 

まるで本物の性交のようにピストンを繰り返し、シオンは息継ぎをすることも出来ず責め立てられ、飲み込む暇のない唾液はだらしなく口から下がった舌を伝い巨乳の谷間に溜まっていった。
苦痛によりシオンは本能的に相撲部に絡めた指を強く握る。それは相撲部員はおろか見ていた男子部員達をも興奮させた。

 

「す…すげぇ…本当にヤってるみてぇだ!」

 

「見ろよ、会長のあの顔。めちゃくちゃアヘってるぜ…」

 

「エ…エロ過ぎだろこんなの…」

 

最初は相撲部の変態的な行為を冷笑していた部員達も、予想外に淫靡な光景に自然と手が自分の性器に伸びて一心不乱にしごいていた。玉の汗を浮かべながらシオンを突きまくっていた相撲部員も限界が近いことを悟る。

 

「あっ!あっ!あっ!ああっ!で…出る!!もう出るよ!!会長の中で出るよ!!」

 

相撲部がひときわ大きく腰を引くと、一気に男根をシオンの鳩尾に突き込んだ。半ば意識を失っていたシオンはその衝撃で覚醒し、自分の身体の奥で灼熱のマグマが弾けるのを感じた。

 

ズブュウッ!!

 

「あっ……あぐううっ!!?………も…もう…あっ…ああっ!?あ……熱いいぃっ!?」

 

男根はドクドクと脈打ち。突き込んだ隙間からごぼりと溢れた。相撲部はガクガクと膝を振るわせながらもドクドクと長い射精をし、精液は滑らかな腹筋の筋を伝ってミニスカートに溜まっていった。

 

「あ…お…お腹の中で…、で…出てる…。す…すごい量…。あ…熱いのが垂れて…」

 

シオンはうわ言のように呟きながら、無意識に相撲部を上目遣いで見上げていた。その表情はさながら絶頂を迎えた余韻に浸ってるようで、この上なく淫靡だった。今まで味わったことの無い最上級の快感に浸っている相撲部員を、他の男子生徒が押しのける。

 

「ど…どけよ!俺もやべえんだ!!」

 

「はぁ、はぁ…こ、こんなの見せられたら…またどろどろにしてあげるよ…」

 

「お…俺たちも多少楽しむかぁ?」

 

既に破裂寸前の怒張を突き出し、シオンを取り囲む。サッカー部がシオンの長いツインテールを手でたくし上げると、さらさらと手からこぼれ落ちた。

 

「い…いつか触ってみたいと思ってたけど…す…すげぇ…。これ本当に人の髪の毛かよ…?キラキラして…すごく細くて…こ…これで…」

 

おもむろにテニス部はシオンの髪の毛を自分の男根に巻き付け、しごき始めた。シャリシャリと言う小気味いい音と共に、極上の快感がテニス部に送られる。

 

「あ…あっ?やぁっ!?か…髪の毛で……」

 

女性の命とも言える髪の毛で男根をしごく背徳感。それがシオンのものとなればなおのことだ。いつまでも味わいたい快楽だったが、10回ほどしごいた後、サッカー部は限界に達した。

 

「ああぁっ!!勿体ねぇ…もうダメだ!!気持ちよすぎて…。くっ…出るっ!!」

 

「あっ…と…透明なのが…出て……あっ?き…きゃああぁ!!うぶっ…ぷぁぁ…、ああああぅぅ!!」

 

テニス部はシオンの顔に狙いを定めると、一気に精を噴出した。透き通る様な白い肌が、さらに白い背徳で汚されていく。悲鳴を上げたと同時に勢いよく白濁が口の中に入り、シオンの上唇と下唇が白い糸で繋がる。

ボクシング部とテニス部も同時にシオンを取り囲み、欲望の限りを尽くす。

 

「へへへ…また汚されちまったなぁ?でも、まだまだこれからだぜ?へへ…前からこの胸で…してみたかったんだよなぁ…」

 

ボクシング部はそう言うと、シオンの胸を隠しているブラジャー型のトップスをわずかに持ち上げ、下乳の谷間に自らの男根を挟み込んだ。ぬちゃあっと卑猥な音が響き、ボクシング部の男根をその巨乳がすべて飲み込む。トップスが自動的に男根を挟んだまま胸を締め付け、先ほどの相撲部の行為で溜まったシオンの唾液が潤滑油代わりとなり、ボクシング部がピストンを開始すると、ぬちゃぬちゃといやらしい音を立てながら極上の快楽を送り続ける。

 

「おおっ!?お…おおおおおお!!こ…これはすげぇ…!!そこいらの女と生でするのよりも気持ちいいぜ…。おら…会長…こっち見てくれよ…エッチな顔でさぁ…」

 

「あ…あああっ!?やらぁっ…お…おっぱいでこんな…。な…中で…暴れてる……」

 

ボクシング部がシオンの顎をくいと上に持ち上げると、 よほどショックだったのか、 涙目になったシオンと目が合った。顔を上気させ、口は半開きで目は泳ぎ、見ようによっては熱に浮かされているようにも見えるし、もっと精液をくれとねだっているようにも見える。
 

「すげぇ…やらしい顔しやがって…そのエロ顔にまたすぐぶっかけてやるぜ…」

 

「やっ…だめぇっ…。だ…出さないで…。も…もう…白いの……かけないでぇ…」

 

シオンの必死の訴えも、男の射精感を煽るスパイスにしかならなかった。シオンの男根をすべて隠してしまうほどの胸の谷間から、リズミカルに悪魔の様な赤黒い亀頭が見え隠れし、その天使の様な白い肌と見事なコントラストを描いていた。

 

「会長…これ見て…」

 

気がつくと、シオンの右肩に当たるくらいの距離で、テニス部が男根をしごきあげながら立っていた。無我夢中でパイズリを味わっているボクシング部を尻目に、猫なで声でシオンに呟く。

 

「会長がすごくエッチだから、こんなになっちゃったんだよ?責任取ってよね…?」

 

「あっ?なっ………ど…どうすれば…?」

 

テニス部が亀頭の先がシオンの唇に触れるほどの距離まで、ぐいと腰を突き出す。その先は透明な先走りでぬらぬらと光っていた。

 

「………舐めて?」

 

「えっ…?…こ…こんなの……なっ…舐められません……」

 

「酷いなぁ……こんなのなんて…。僕…会長がもっとエッチになるとこ見たいのに…」

 

「なぁ……舐めてやれよ…アンタのせいで苦しんでるんだぜ?可愛そうだろ…?」

 

ボクシング部がビストンを続けながら、シオンのトップスの中に手を入れ、胸の先の蕾を指で転がす。慎ましげな乳首を弄られ、シオンの身体は電気が走ったようにびくんと跳ねる。

 

「んはあっ!?はうぅぅっ!!あ…らめぇ!!そ…そこはぁ……」

 

「なんだよ?会長の乳首もコリコリじゃねぇか?チ○ポ挟んでて興奮したのか?」

 

「会長も気持ちよかったんだね…じゃあ…みんな一緒に気持ちよくなろうか?」

 

目を瞑って快感にビクビクと身悶えるシオンの口を目掛け、テニス部の男根がぐいと突き出される。突然口内に侵入してきた異物の感触に、シオンは涙を浮かべながら目を大きく見開いた。
そこにはもはや凛とした清楚な生徒会長の姿は無く、
際どいメイド服を着たまま精液まみれでパイズリし、乳首をいじり回される快感に身体を震わせながら、別の男根に奉仕する巨乳の金髪美少女の姿しか無かった。男なら誰もが夢見る様な光景が目の前に広がっていた。


 

「むぐっ…んくっ…んんんぅ……。ぷはっ!あ……ああぁん!!さ…先はダメ…弱いから………んぐぅっ!?…んむっ…んちゅうぅっ……」

 

シオンは喉奥まで男根を突き込まれないように右手でその根元を押さえていたが、それは白手袋を隔ててシオンの細い指が織りなす極上の手淫となり、テニス部の頭を真っ白にした。男子生徒達の呼吸に徐々に獣の気配が漂い始め、目の前に差し出された獲物をどう狩ろうか考えを巡らせているようだった。シオンもその気配を察知し、泳ぐ目で交互にボクシング部とテニス部を見上げながら、まるで何かを訴えるように首を振る。

その許しを請う様な様子を見た2人は一気に昂り、テニス部は失神しそうな快感から勢いよく男根を引き抜いた。粘ついた唾液が男根とシオンの口に橋を架け、薄暗い室内でキラキラと輝いている。

 

「むぅっ…!?ん…んぐっ…んぅっ…?ん…んんんんぅ…ぷはぁっ!!…はぁ…はぁ…はあぁっ……」

 

「ああっ……くそ……もう限界だ!!おらっ!口開けろ!!たっぷり飲ませてやるぜ!!」

 

「あ、あああっ!!い…イクよ!!会長がエロすぎるのがいけないんだからね!で、出る!そ、その可愛い舌に出すよ…出る出る出る出るぅ!!」

 

男根を引き抜かれた衝撃で開きっぱなしになった口を目掛け、ボクシング部が最後のピストンを突き込んだ。ぱちゅんと肉同士がぶつかる音がした後、胸の谷間からわずかに顔を出した亀頭の先端からものすごい勢いで精液が飛び出し、シオンの顔中に降り注いだ。ほぼ同時にテニス部もオルガスムに達し、勢いは無いものの、ドクドクと音が聞こえそうなほど大量の白濁をシオンの口内へピンポイントに落とした。

 

「あぅ………あ…で…出るの?……白いのいっぱい…出しちゃうの……
?…あ…あああっ!!?ぷあぁっ!?あぶっ……ああぁぁぁぁ………。え?こ…こっちも…?お…おおおぉっ…!!?あがっ…あがうぅっ!?あ…お……おぼれ…おぼえふぅ…!?」

 

ボクシング部はシオンの顎を押さえ、口を閉じるのを許さなかった。あまりに大量の精液を口内に注がれ、呼吸がままならず溺死しそうになり、白目を剥きかけた所でやっと解放した。シオンがゆらりと地面に倒れ込むと同時に、男子生徒2人もその場に座り込んだ。

 

精液特有のむっとする臭気と湿気が充満する部屋の中、冷子の拍手する音だけがいやに乾いて響いた。

「さて、それじゃあ俺も楽しませてもらおうかな?」

 

さっきまでシオンを後ろ手にロックしていたテニス部がシオンの眼前に佇んでいる 散々至近距離でシオンの苦悶する様子や声を聞かされ、いわば生殺し状態にあった彼の目は血走り、呼吸は極度の興奮のためか不規則に荒く、唇はわずかに震えていた。

 

「へへ…正面から見ると反則的に可愛いな…」

 

テニス部はシオンの顔に自分の鼻先がくっつきそうなほど近づき、シオンの顔を仔細に観察した。目の形や鼻筋から眉に至まで見事にシンメトリーに整い、「怖いぐらい」という表現が誇張ではないほどの容姿の上での、あどけなさの残る童顔。反則的。彼の表現は確かに的を得ていた。

 

「この顔が苦痛に崩れるんだぜ?まぁ、崩れてもすげぇ綺麗だけどな…。綺麗なものを汚す快感ってやつか?」

 

「それに、腹を殴ったあの感覚、すごく良かったな。セックスみたいに相手の身体の深い所で繋がっている気がしてさ…」

 

ボクシング部とサッカー部が口々に感想を言い合い、テニス部を煽る。シオンは強制的に覚醒させられた頭のモヤがやっと晴れ、自分の置かれる状況を理解する。今はサッカー部がシオンの腕をがっしりと閂で固め、口元を伝う唾液を拭うことも出来ない。

 

「はぁ…はぁ…じ…じゃあ…いくぜ…!」

 

シオンの唇が「や…やめ…」とかすかに声を発した瞬間、ズブリという音と共にテニス部のゴツゴツとした拳がシオンの腹部に侵入していた。

 

「か……かふっ……!」

 

体中の空気がすべて抜けきったような感覚の後。襲ってくるあの鈍痛と苦痛。空気が抜けた身体から、無理矢理内蔵がせり上がってくるような感覚がシオンを襲う。

 

「ぐっ!?うぐぅあぁぁ!!」

 

ガクンと身体がくの字に折れるが、後ろから閂締めにされているためダウンすることもままならない。

 

「甘めぇな…ボディーはこう打つんだよ。当たった瞬間捻るんだ…おらぁっ!!」

 

ボグリュゥッ!!

 

「ぐぶっ…!?ご……ごぶえぇぇぇぇっ!!?」

 

普段人を殴り慣れているボクシング部の打撃は、他のそれとは大きく様相を異なっていた。拳は長年の練習でタコが出来、石のような硬度に変化していた。さらに人に苦痛を与えるツボをピンポイントに突く技術、当たってから更なる苦痛を与える技術はシオンの思考を苦痛一色に染め上げるのに十分だった。

シオンのへそを中心に打ち込まれた拳は、周囲のなめらかな肌を巻き込むようにねじ込まれていた。恐ろしい悲鳴が口から漏れ、同時に口内に溜まっていた唾液が衝撃で一気に吐き出される。普段はアーモンド型の目は大きく見開かれ、緑色の瞳の半分が上まぶたに隠れる。舌が限界まで露出し、いわゆるアヘ顔に近い状態だ。普段の穏やかで清楚なシオンからは想像出来ない声と表情に、男達の興奮は昂って行った。

 

「あ…あうぅ……うあぁ……」

 

もはや何も考えられない状態なのだろう。目は泳ぎ、小刻みな痙攣は金髪をかすかに振るわせた。

 

「すごいな…会長の顔がこんなに崩れて…。俺も、サーブのつもりでやればいいのか…」

 

テニス部はアンダーサーブの要領で腕をしならせながら、シオンのくびれた脇腹をえぐる。ピンポイントでのレバーブローに肝臓が悲鳴を上げ、反射的に胃の内容物がせり上がった。

 

「うふぅぅぅっ……!!あっ……かはっ……!!?」

 

軽い呼吸困難陥るシオンを、ボクシング部の非情なボディーブローが突き上げる。

 

スボグッ!!

 

「ぐぅっ!?むぐぅっ!!?あ…ああ……」

 

「ほぉら…捕まえた」

 

顔中を苦痛に歪ませ、もはや悲鳴すら上げることの出来ないシオンの姿にサディスティックな笑みを浮かべるボクシング部。突き上げられた拳は抜かれずに数秒感苦痛を与え続けた後、捻るように胃を押しつぶした。

 

グギュルゥッ!!

 

「ごぷっ!?ぐ……ごぶぅぅっ!!」

 

シオンの喉から水音が響いたと思うと、空っぽになった胃から透明な胃液が強制的に排出された。身体はビクビクと痙攣し、一瞬顔を上げようとした後、ガクリと糸の切れた人形の様に失神した。

 

「あーあ…またやっちまった。さぁて…そろそろおっきする時間ですよっと」

 

「あ…あの…そろそろ僕もやっていいかな…」

 

ボクシング部が再びシオンを覚醒させよとすると、おずおずと後ろから見ていた相撲部が声をかける。眼前で繰り広げられた光景で彼の股間は既に破裂せんばかりだったが、驚いたのはその大きさだった。周囲の男子生徒達の2周りほど大きい。

 

「おお、もちろんだ。それにしてもお前…でけぇなぁ…。それで使ったこと無いなんて宝の持ち腐れだぜ?じゃあ、また眠り姫を起こしてやっか」

 

「それじゃあ、俺が押さえててやるか。せいぜい強烈な張り手を見せてくれよな」

 

ボクシング部とテニス部がシオンに近づく中、相撲部はもじもじしながらまるで遊んでいてガーデニングの壷を割ってしまった事実を母親に報告する時の子供の様な声で言った。

 

「ちょ、ちょっと待って!あの…僕…やってみたいことがあるんだ…」


「は…はぅぅ…こ、こんな…ひどい…。うっ…、すごい臭い…」

 

シオンは自分の身体にぶちまけられた白濁に呆然自失となり、初めて体験するその味と臭いに顔をしかめていた。学園に咲いた高嶺の花のシオンが、挑発的な格好で精液にまみれ涙ぐんでいる。学園中の男子生徒、果ては教員までもが夢にまで見た光栄が眼前に広がり、取り囲んだ男達の心を劣情の炎が包んでいた。

 

「お、おい…どうする…?」

 

「どうするって…や、ヤっちまうか?」

 

「ええっ!?ぼ…僕…経験無いよ…」

 

「いや…この様子だと…会長も経験無いだろ…?やらねぇなら、俺からやるぞ…」

 

「いや…さすがにレイプはマズいだろ…?」

 

男子生徒達の間にわずかに残った理性が一線を踏みとどまらせる。シオンもショック状態から抜け出せず、かすかに震えるばかりで男達の声は届いていない様子だった。男子生徒が全員すがるように鑑を見た瞬間、入り口のドアからその空間に不釣り合いな柔らかい声が響いた。

 

「あらあら、か弱い女の子を泣かした悪い子は誰かしらぁ?」

 

篠崎冷子がまるで喜劇舞台を見ているような表情で佇んでいた。鑑を含め、男子生徒が一斉に振り返る。カツカツとハイヒールをならして集団に近づき、一直線に鑑に声をかける。

 

「どうかしら?この子達の様子は?」

 

「ええ、皆さんいい感じに欲望に忠実になってますが、ギリギリで理性は残っているようですね」

 

「そうみたいね。てっきり今頃如月さんが滅茶苦茶に犯されてる頃だと思って来たけれど、まだ理性の方が消しきれてないみたい。誰も動こうとしないんでしょ?」

 

「黙って見てましたが、皆さん尻込みするばかりで…。やはり人間を人間たらしめる理性を無くすのは容易では無さそうですね。この地上で最も欲深く暴力的な人類の本能を解放し野生に放てば、簡単に互いに殺し合って全滅してくれると思ったのですが、まだまだ研究が必要ということです」

 

「あまり無くしすぎるとあの野球部員みたいに馬鹿になっちゃうしね。何事もバランスを取ることが一番難しいわ。ところで、身体の方はそろそろいいみたいよ?」

 

「ほぅ、それはありがたい」

 

冷子と鑑がまるで男子生徒などそこに存在しないかのように会話し、2人してパソコンの前まで移動すると冷子が端末で何やら操作をはじめた。直後、試験管を逆さまにしたような入れ物の中が青白い光でライトアップされ、その液体で満たされた容器の中に、かつて綾と対峙した涼の姿が浮かび上がった。脇腹にナイフを刺した傷痕が見えるが、すでにほとんど周囲の皮膚と変わらないほど回復している。

 

「すばらしい。もう傷はほとんど消えていますね」

 

「見た目を気にしなければ、すぐに使えるわよ?死体を蘇らせるのも魂を切り離せるようになってからはかなり簡単になったわ。今までは肉体が死んでしまったらそれに同化している一魂まで一緒に死んでしまって、たとえ肉体を蘇らせても空っぽの器しか残らなかったけれど、変わりの器に転移させているうちに肉体を修復すれば、また元に戻すだけで済むもの」

 

「すぐにでも戻りたいですね。人間の身体はスペックが低すぎて堪え難いので…」

 

「それなら隣のカプセルに入るといいわ。操作はこっちでやるから」

 

「久しぶりの自分の身体ですよ、懐かしい…。それに、生気もかなり減っているでしょうから、すぐに補給しないといけませんね。幸い、いい補給元が近くにあることですし…」

 

鑑はそう言うとシオンを横目で見ながら涼の身体の隣のカプセルに入って行く。冷子が端末を操作し始めると、再びカプセルが暗転して中の様子が分からなくなった。

 

取り残された男子生徒達は呆然と2人のやり取りを見ていたが、すぐに視線を目の前のシオンに移した。シオンも徐々に目に光が戻り、いつもの責任感の強い生徒会長の顔になり、震えがちな声で男子生徒に話しかけた。

 

「み…皆さん。どうか、間違ったことは止めて、すぐに寮に帰って下さい。このことは誰にも話しませんから、皆さんに不具合が及ぶことはありません。人間ですから、誰でも間違うことはあります。今日のことは反省していただければ、それで十分ですから…」

 

最高級の絹糸のような長い金髪がかすかに震え、同じく金色の長い睫毛にはうっすらと涙が浮かんでいる。 芸術的な身体をキャンパスにして白いアートを施されたシオンはまるで淫靡な前衛芸術の彫刻のようだった。 それでもシオンは男子生徒達を責めること無く、健気に間違いを正し、諭そうとする。

全員誰も言葉を発すること無く、下唇を噛んでシオンを見つめていた。しんとした静寂が、透明な塵のようにシオンと男子部員を包み込んでいた。

 

「ぼぼ…僕…。会長に本当に憧れてて…。ああ、何てことを…ご、ごめんなさいぃ…」

 

とうとう相撲部員の男子生徒が泣き崩れた。他の男子生徒も全員神妙な顔をしている。茶髪も口を開いた。

 

「いや…その…何というか…俺達、とんでもないことし……………」

 

突如、茶髪の動きが止まった。不審に思った他の生徒も茶髪を見るが、次々に全員が怪訝そうな顔から無表情に変わって行く。シオンの顔にさっと不安な表情がよぎる。無表情になった相撲部員の巨体の影から、冷子が姿を現した。その両手の指の股には人数分の注射器が握られていた。

 

「うふふふ…、皆ダメじゃない、お薬を飲み忘れたら…」

 

何が行われたのかは火を見るより明らかだった。一瞬のうちに冷子は薬の効き目が切れかけ、理性を取り戻しそうになった男子生徒全員に再び薬剤を注射したのである。

 

「あなた本当にすごいわぁ…。ここまで汚されてもまだ相手を信頼して説得しようとするんだもの。危うく薬の効き目が予定より早く切れそうになったじゃない。でも、それもオ・シ・マ・イ。夜は長いんだから、せいぜい楽しんでね」

 

そう言うと、冷子はパチンと指を鳴らした。男子生徒達が古い操り人形のようにぐりんと首だけをシオンに向け、その後ゆっくりと体全体の向きを変え、シオンを取り囲んだ。

 

「あ…あの……あの………」

 

シオンも思わず目が泳ぎ、声がうわずる。茶髪が再び座り込んでいるシオンの背後に回り興奮した様子で荒く息を吐きながら口を開く。

 

「…変かもしれないけど、俺さ…さっき腹殴られてる時の会長の顔、すごくエロく見えたんだけど…」

 

「あ…ぼ…僕もそう思う!なんか普段は見れない切羽詰まった表情が何とも…」

 

「じ、実は俺も…やべ…思い出したら勃っちまった…」

 

「何言ってんだよ?最初からガチガチじゃねぇか。なぁ…俺らも…殴ってみないか?さすがにレイプはマズかもしんないけど、それくらいならいいだろ?」

 

「じゃあ…決まりだな……」

 

茶髪が背後からシオンの腕を掴んで無理矢理立たせると、シオン両肘の間に自分の腕を通し、まるで閂を通したように固定する。プロレス技で言うチキンウィングの形に極められ、無理矢理腹と胸を正面に突き出された形になった。

 

「あ…あぐっ…い、痛い…!や…止めて下さい。目を覚まして…」

 

童顔で涙目になっているシオンに、ミスマッチなほど挑発的な身体。胸を突き出された拍子に、ぶるんという擬音が聞こえそうなほどの勢いでシオンの巨乳が上下に波打つ。男達の生唾を飲み込む音がはっきりとシオンの耳に届いた時、槍のような膝がシオンの下腹部に突き刺さっていた。

 

ドグジュッ!!!

 

「がっ…!?ごぶぅ!!う……うぐぁぁぁぁ!!!」

 

シオンはガクガクと痙攣し、膝がめり込んでいる自分の腹部を見つめた。痛々しいほどにへその位置に膝がめり込んでいる。

 

「へへ…やわらかいな…。普段蹴ってるサッカーボールより蹴り甲斐がある…」

 

「あ……あぅ……ぐぷっ…!…あ……はぁぅ………」

 

シオンは声を発せない状態だったが、「どうか馬鹿な真似は止めてほしい」という気持ちでサッカー部を上目遣いで見た。しかし彼には、まるでシオンが責め苦を受けながらも許しを請うような表情に見え、そのサディスティックな情欲の炎に油を注ぐだけだった。

 

「へへ…こいつはやべぇ…。フェラしてるときの女の表情にそっくりだ…。いや、それ以上にそそる…。お前もやってみろよ…ボクシング部だろ?」

 

見るからに鍛え上げたれた丸刈りの男が興奮した様子で近づいてくる。やられる…、とシオンは本能的に思った。

 

「言われなくてもやるに決まってんだろが!へへへ…こんなやべぇ身体見せられたらたまんねぇよ。それに、実は普段から女を殴りたいって思ってたんだが、こんな最高な形で叶うとは思っても無かった……ぜっ!!」

 

ゴギュウゥッ!!ズブゥッ!!!

 

「うぐうぅっ!!あ……げぶぅっ!?ごぶっ……う………あぅ………」

 

正確無比に、洗礼されたパンチは見事にシオンの両胸の間にある鳩尾を貫き、立て続けに胃袋を押し潰した。強制的に舌と黄色い胃液が吐き出され、シオンの緑色の瞳孔が小さな点になる。数瞬ビクビクと身体を痙攣させた後、一瞬で意識が谷底の暗い深淵へと突き落とされ、ガクリとシオンの頭が落ちた。

 

「お…おい!?まだ俺殴ってないぞ?」

 

「そ…そうだよ?ぼ…僕だって!」

 

すぐさま残りの2人から不満の声が上がる。特に後ろからチキンウィングを極めていたテニス部の茶髪は不満そうだ。しかし、ボクシング部は手をひらひらをさせながらシオンの肋骨が終わるあたりに親指を付ける。

 

「まぁ慌てんなって…。落ちた相手を起こす方法なんて簡単なんだよ。ボクシングでもよくあることでな、気ぃ失ってもこうすれば…」

 

ボクシング部が押し当てた親指を強く押し付けると、シオンの身体はビクリと電気ショックを受けたように跳ね上がり、一気に意識が覚醒した。

 

「ぷはぁっ!?はぁ…はぁ…あ……え…?」

 

一瞬気絶してたことにも気付かなかったのか、軽いパニック状態になり、状況が飲み込めずに辺りをきょろきょろ見回した。視線に入ったのはニヤニヤと笑う男の顔ばかりだった。

 

「こいつはいいや……」

 

「な?遠慮するこたぁねぇぜ?気絶してもまた起こしてやるよ」

 

「長い夜になりそうだな、会長さん」

 

シオンの前には別の男が拳を握って佇んでいた。

「う…うぐっ…はぅぅ…はっ…あぁ…」

 

シオンは肩で息をしながら腹部を押さえ、片膝を付く。そのミニスカートから覗いた白い下着を部屋にいる男全員が凝視していた。口元からは一筋の唾液がすらりとした顎に向かって流れ、表情にえも言われぬ色香を漂わせていた。

 

「くくく…これは失礼しました。あまりにも責め甲斐のある身体だったものでつい力が入ってしまいまして。しかし…これからが楽しみですよ」

 

鑑は口元に手を当て、含み笑いをしながらシオンに呟く。他の男達からは息をのむ音が聞こえるようで、今この場から鑑がいなくなればすぐにでもシオンに襲いかかることは想像に難くない。犯し尽くす?精液まみれ?いくらこのようなことに疎いシオンとはいえ、言葉の意味することはさすがに理解できる。

鑑の姿を借りた涼を見上げながら、シオンは考えを巡らせる。涼も「身体を借りている」というくらいだから、おそらく本調子ではないだろうし、鑑の身体は人妖のそれとはちが人間である。他の運動部員達も数は多いがシオンの敵では無いだろう。

 

 

「不意打ちは食らいましたが、次はこうはいきません。絶対に倒します!」

 

「くくく…お手柔らかに…」

 

「はああああっ!!」

 

シオンの動きに合わせ、金髪のツインテールが流星のように美しくなびく。鑑は最初こそ余裕を持ってシオンの攻撃をガードしていたが、それでも慣れない身体のせいか徐々に苦しそうな表情になってくる。

 

「くっ…これだから人間の身体というのは…おごっ!!?」

 

シオンの放った膝蹴りが鑑の鳩尾にヒットし、下がった顎を掌底で跳ね上げ追撃する。もんどりうって鑑は倒れ、すぐに起き上がるが既に目の前にはシオンが仁王立ちで立ちふさがっていた。

 

「くぅぅ…い…いいんですか?こんなことをして…」

 

「私だってこんなことしたくありません。ですが、降伏しないのでしたら、さらに攻撃します!」

 

毅然とした態度を保ち、シオンには珍しく大きな声で鑑に言い放つ。しかし、鑑は不敵に笑いながら上目遣いでシオンを見つめた。

 

「おやおや…こわいですね。このまま痛めつけられれば鑑君が目覚めた時にどれだけ後遺症が残っているか。私は自分の身体が完全に回復すれば元に戻るだけですが、鑑君はそうはいかないでしょうねぇ?」

 

「なっ!?そ…そんなこと…」

 

「いいのですよ…好きなだけ痛めつけてくれれば…。鑑君の身体をね」

 

「ひ、卑怯者!それじゃ…攻撃できないじゃないですか…」

 

鑑はゆらりと立ち上がりながらシオンに一歩ずつ近づく。シオンは何もできずに後ずさるが、すぐに壁際まで追いつめられ、鑑との距離はもはやお互いの打撃が届く距離まで近づいていた。

 

「ほら、どうしたんですか?早く攻撃して下さい」

 

「あぅ…うぅ…くぅぅ…」

 

大げさに両手を広げてシオンに身体を開くが、シオンは全く動けずにいた。冷子の取り巻きの野球部員のように格闘に対して素人であれば、それなりの手加減をして行動不能にすることも出来たが、涼に乗っ取られた鑑に対してそれは通用しない。シオンも全力で攻撃しなければ歯が立たないが、果たしてそれに鑑の身体が耐えられるかと思うと疑問が残る。もしものことがあってはならない。

 

「くくくく…ではこちらから行きましょうか?あぁ…ついでに攻撃をガードしたら後ろで待機している男子生徒にも危害が及ぶかもしれませんので、お気をつけて」

 

鑑はサディスティックな笑みを浮かべると、ゆっくりしたモーションで拳を引き絞り、シオンのくびれた腹に狙いを定めた。

 

「ほら…行きますよ!!」

 

ドグッ!

 

「ぐっ…!ぐぅぅ…」

 

「ほう…これはこれは…」

 

ガードすることを禁じられたシオンは咄嗟に腹筋を固めて鑑の拳を受け止める。一見華奢そうに見えるが引き締まった体にはそれなりの筋肉が付いており、ダメージはあるものの致命的な衝撃からは守られていた。

 

ガッ!ガスッ!ドッ!

 

「ぐっ!うぅっ!くっ!……はぁ…はぁ…」

 

「ほとんど効いていないようですね。さすがはアンチレジストの上級戦闘員だ……そこのあなた」

 

鑑がテニス部部長の茶髪を呼び出した。呼ばれた茶髪は無表情で2人の所に近づく。

 

「ふふふ…相変わらずギンギンになってますね…もう我慢できないんじゃないですか?」

 

「あ、ああ…こんな格好してる会長見てたら、我慢なんて出来ねぇよ。ちょっと…トイレで一発ヌイて来てもいいか?」

 

「せっかちですねぇ…もうすぐ思う存分ぶっかけられるというのに…。シオンさんが少し強情なので、後ろからこの大きな胸を揉んであげて、緊張をほぐしてあげて下さい」

 

「マ…マジかよ!?いいのか!?」

 

後ろにいた男達もざわめき始める。茶髪は興奮して息を荒げながら鑑とシオンを交互に見ていた。

 

「もちろんですよ。あなたがこの中では一番慣れてそうですからね。全身の力が抜ける位丁寧にほぐしてあげて下さい」

 

「はぁ…はぁ…も、もちろんだ」

 

茶髪はいそいそとシオンの背後に回ると、その首筋に舌を這わせゆっくりと腹部の辺りをなてまわし始めた。

 

「あ…あふっ…!?や…やめ…なっ……く、首は……」

 

「あぁ…あぁ…すげぇいいにおいだ…」

 

腹部をなでさすっていた手が徐々に上へと上って行き、ある一瞬から一気に胸をも揉みしだき始めた。もにゅもにゅという擬音が聞こえそうなほどシオンの豊満な胸は茶髪の手によっていやらしく形を変えて行った。

 

「あ…あうっ!?や…やらっ…やらあぁっ…!お…おっぱい……いや……いやぁ……あふぅぅ……!」

 

ほとんど初めて感じる刺激と、茶髪の巧みな技巧でシオンはすぐに全身の力が抜けて行った。頬は赤らみ、目はとろんと蕩け、歯を食いしばって快感に耐える姿は誰もが劣情を抱き得ないほど卑猥なものだった。

 

「くくく…これは予想以上の反応ですね。私も興奮してきましたよ…。さぁ、皆さんもこのエッチなシオンさんを見てあげなさい」

 

待ってましたとばかりに5~6人の男がシオンのそばに殺到する。既に目は血走り、それぞれの男性器は限界寸前まで昂っていた。おのおのが生唾を飲みながらシオンの痴態を凝視する。

 

「うわぁ…会長めっちゃ敏感じゃん」

 

「エ……エロいな……」

 

「やべぇ…ちくしょう!俺も触りてえ…」

 

シオンは快感に耐えるのに必死で、鑑が攻撃しようとしていることなど既に頭の中から消え失せていた。その上自分のこんな姿を見知った男子生徒達に見つめられていると思うと、身体の奥の方が徐々に熱くなって来た。右腕はわずかに抵抗するためか、首筋に吸い付いている茶髪の頭を抱くように回され、左手の白いロング手袋を噛んで快感に耐える姿は男達の興奮を煽るだけであった。

 

「だいぶ効いてきたみたいですね…では…そろそろ…」

 

既に心ここにあらずのシオンは鑑に対し無防備に身体を開いていた。鑑はゆっくりと狙いを定め、ちょうどヘソの中心を目掛け突き刺した。快感により弛緩しきった腹筋に鑑の拳を受け止めることは当然出来ず、ズブリをいう音とともに拳が手首まで埋まると、先ほどとは比にならない衝撃がシオンの身体を駆け巡った。

 

「あ…やっ…見ないで……はぁん……ごぶうぅぅっ!!?」

 

性的な刺激で大量に分泌された粘度の高い唾液が、糸を引いて口から飛び出た舌を伝い、地面に落ちた。一瞬で快感という天国から苦痛という地獄にたたき落とされ、シオンの頭は半ばパニックに陥った。

 

「くくく…そう…その表情ですよ…!」

 

ズギュウッ!!ドブッ!!ズブウッ!!

 

「ぐぼあぁっ!?あぐうぅ!!うぐあぁぁ!!」

 

シオンの目が大きく見開かれ、瞳孔が収縮し四白眼の様になる。周囲の男達も突然の事態に目を丸くするが、シオンの苦しむ顔を見ると別の表情が浮かんできた。

 

「なぁ…会長の腹殴られてるときの顔…なんかエロくないか?」

 

「ああ…イッた時に女が見せる表情っつーのかな?あれに似てね?」

 

「え…えぇっ!?シ…シオンさんイクとあんな顔するんだ…す、すごい!」

 

「な、なんか…俺も殴りたくなってきたな…」

 

「やべぇ……こんなエロイ表情見せられたら俺もう……出そうだ……」

 

口々にそう呟きながら、シオンの腹と表情を交互に見つめる。それを横目に鑑が満足そうにうなずいた。

 

「皆さんもう限界そうですね。私ももう我慢できそうもありませんよ…。そろそろ…フィニッシュしましょうか?タイミングを合わせますよ」

 

待ってましたとばかりに男達は一斉に男根をしごき始める。シオンの胸をこね回していた茶髪も既に男達の側に回って、今まで味わっていた感触を思い出しながらものすごい勢いで男根をしごいていた。

 

「これで…最後ですよ!!」

 

鑑はシオンの肩を掴むと身体を下に向けさせ、巨乳の中心にある鳩尾を容赦なく突き上げた。肺の中の空気がすべて出され、胸骨がめきりと嫌な音を立てる。

 

「はぁ…はぁ……ぐぼあぁぁぁぁ!!!……あぅぅ……」

 

何度目かの攻撃を受け、シオンは舌先から唾液を滴らせながらがくりとうなだれた。膝立ちになりながら肩で息をし、喘ぎながらうなだれる姿はとても卑猥で、鑑が無理矢理顔を起こしていつの間に取り出したのか男根をシオンに突きつけた。

 

「うぐっ…!……はぁ…はぁ……え?……な……なんですか?」

 

シオンは状況が掴みきれず、目の前に突き出された数時間前に初めて見たばかりの男根をしげしげと見つめてしまった。鑑はシオンの頭を両手で固定すると、その半開きになっているシオンの口に勃起しきった男根をねじ込んで上下に頭を振り立てた。

 

「え…?か…鑑君…?むぐぅ!!?んむっ…!?んっ…んぐぅぅぅ!!」

 

「お…おおおっ!!キツい唇だ…しかし、ねっとり蕩けて……チャームは出ませんが、鑑君の精液を味わわせてあげますよ!」

 

「む…むぐっ……んっ…んっ…んっ…んむぅ………むぐぅっ!?ぐ…ぐむぅぅぅぅぅ!!?」


「おおおおっ…!!ま…まだ出るぞっ…!」

シオンの口内をかき回していた鑑の男根がビクリと跳ねたかと思うと、その直後に今まで味わったことの無い味の熱い粘液が口中に広がった。男根は定期的にドクドクと脈打ち、シオンの口内に大量の白濁をぶちまけ、嚥下しきれない分は唾液と混ざり合ってボタボタとシオンの巨乳に落ちた。

 

「むぐっ…う……むぅぅ……ぷはっ!!はぁ…はぁ…はぅぅ………な、何ですかこれ?ま、まずい…」

 

長い射精が終わり、ようやく鑑の男根が口から抜かれたかと思うと、すぐに数本の別の男根がシオンを取り囲みんだ。今までの人生で想像すらできなかった口内射精のショックから立ち直れず、胸や手のひらに落ちた精液を呆然と見つめているシオンに向け一斉発射を開始する。


「ああ…あああ…あ、あのシオンさんのフェラチオが見れるなんて…」

 

「ぐぉぉぉぉ…!会長エロ過ぎだぜ!もっとドロドロにしてやるよ!」

 

「口の周り真っ白だぜ、それに胸も…ああっ!……イク!!」

 

ほとんど同時に、男子学生達が一斉に精を放った。興奮の度合いが高すぎたせいか、おのおの数回分に相当する大量の白濁をシオン一人に浴びせ、シオンの体中はたちまち真っ白染め上げられて行った。

 

「え…?あっ…み、皆さん…何を…?…あ…きゃあっ!?なっ…?いやぁぁ……!うぶっ…口に入っ……あ…えうっ……いやぁぁ…!!」

 

黒を基調としたメイド服に白い精液がコントラストとなり、大量の白濁を強調していた。周囲にはむっとする精臭が漂い、その中心でシオンが呆然と佇んでいたが、それを取り囲む男達の男根は寸分も萎えていなかった。

「何…ここ…?」

 

 

エレベーターを出ると、空調が効いているのか、ひやりとした空気がシオンを包み、火照った体が一気に冷めるのを感じた。がらんとした空間は所々防犯用の薄暗い蛍光灯に照らされ決して明るくはなかったが、それでも部屋全体を把握するのには困らなかった。

部屋には床も壁もコンクリート打ちっぱなしの殺風景な部屋には、様々な大きさのケージや檻があり、それぞれ何らかの動物が入れられていた。犬や猫のほか、猿やゴリラのような大型の霊長類までいる。ある一角には小さめのケージが天井近くまで積まれ、そのひとつひとつにネズミのような生き物が入れられていた。つい最近まで多くの動物達がいたのか、コンクリートの床はうっすらと汚れており、所々に引きずったような傷がついていた。

異様だったのは、様々な動物達がいるはずなのに物音が一切しなかった。眠っているのかと思いシオンが一番近くにあった4つほど積み重なった猿の檻に近づくと、 檻の中の猿は濁った目を開けたままシオンを見つめ返した。事態が飲み込めずにしばらくその場を動かずに檻の中を凝視すると、猿は両腕と足の一部を欠損していた。シオンの背中に冷たいものが流れた。よろよろと隣にあったゴリラや犬、ネズミのケージを覗くも、既に事切れている動物ばかりだった。しかもその殆どが身体の一部を欠損し、生前に想像するに耐えない行為を受けたことが伺えた。

 

「ううっ…」

 

シオンは思わず口を抑える。多くの死に囲まれた言いようの無い気味の悪さと、何も出来ない自分への無念さ。

 

「な…なんですかこれは…なんて酷い…。どうして…」

 

シオンはコンクリートの床に、文字通り両手で頭を抱えて膝をついた。長い金髪がはらはらと肩から流れて床に垂れる。このような場所が自分の学校にあったという受け入れがたい事実。シオンは頭を抱えていた手を自分の顎の下で組み直し、静かに動物達の冥福を祈った。

5分ほどそうしていただろうかシオンが隣の部屋から聞こえてくるかすかな物音に気付いた。

 

「足音…?それも複数いる…。関係者でしょうか…?」

 

ネズミの檻の壁をすり抜け、コンクリートの壁と同色に塗られたドアをそっと音を立てずにわずかに開け、その隙間に鏡を差し込んで中を見る。その光景を見た瞬間にシオンは息を飲んだ。

 

「!!?な、何ですかこれは!?」

 

部屋全体の作りはあちら方が広いが、壁際には複数のコンピューターやワークステーション、もう一方の壁には中は暗くて見えないが、試験管を逆さまにしたような形の、人間が1人くらい軽く入れるようなガラス製かアクリル製の大型の入れ物が4つ設置され、コンピューターと大小様々なケーブルで繋がっていた。その横には同じような大きさの檻が2つ置かれ、今は空になっていた。様々な機材のため、実際に歩けそうなスペースはそんなに広くはないだろう。

しかし何よりも異常だったことは、部屋の中には、全裸の男性が5~6人がうつろな表情でうろうろと歩き回っていた。中には知っている顔もあり、おそらく全員がアナスタシアの生徒であろう。一番シオンの近くにいるのは長髪を茶髪に染めた男子テニス部の部長だ。3月に行われた生徒会部費予算会議に彼が出席していたことを覚えている。その当時、はつらつとインターハイ出場の夢を語っていた彼だが、今ではそのぼさぼさの髪と落ちくぼんだ目からまるで麻薬のジャンキーのような風貌になっている。少し奥には相撲部の部長もいた。

 

「な…え…?これは…?なぜ彼らがここに?この部屋は一体…?」

 

「おやおや…やっとメインゲストのお出ましですか。さぁ、こちらですよ」

 

「え…?きゃああ!」

 

事態が飲み込めず、震える手で鏡を使い部屋の様子を観察していたシオンの手を、突然何者かが掴んで強引に部屋に引きずり込んだ。鏡が派手な音を立てて割れ、シオンも強引に引っ張られた反動でコンクリートの床に前屈みに倒れる。シオンがゆっくり振り向くと、部屋中の男達が血走った目でシオンを凝視していた。

 

「はぁ…はぁ…マジで会長じゃん…」

 

「本物!?本物の如月さん!?本当に本物!?」

 

「すっげぇ、マジで可愛いな…」

 

「ふひひひひ…綺麗な髪だなぁ…これが夢にまで見た…」

 

「シオンちゃん、すごい格好してるな…何のコスプレだよこれ…?誘ってんのか…?」

 

ぎらついた目でシオンとその身体を舐めるように見つめる男達。先ほど冷子と一緒にいた野球部員とは様子が違うが、全員普通の状態ではないことは確かだった。全員が全裸で、男性器を隆々と勃起させている。

 

「あ…あぁ…。 み…皆さん…な…何してるんですか…?」

 

突然複数の全裸の男性に取り囲まれるという異常事態に、震える声で男子生徒達に声をかけるが、当然返答はなかった。

 

「私が変わりに話しましょうか?」

 

ドアのそばから先ほどシオンを引っ張った男がこちらへ歩いてくる。ドアの影の暗がりから蛍光灯の下へ出るとシルエットだった男の像が鮮明に浮かび上がる。先ほど引っ張られたときの声にも聞き覚えがあったが、その姿を見て確信した。

 

「あ…あなた…副生徒会長の鑑君!?な…なぜこんな所に…?」

 

全く事態が飲み込めず、困惑した声を向ける。シオンを引っ張った男は、3人いるアナスタシアの副生徒会長のうちの1人だった。眼鏡をかけた知的な生徒だったが、今ではどこか野性的な、というよりも別人のような雰囲気を全身から漂わせている。

 

「ふふふ…まぁまぁ慌てずに…」

 

鑑が大げさな身振りで両手を広げる。

 

「まず、彼らを責めないで下さい。私の同僚が作った薬で少しばかり欲望に忠実になっているだけです。以前の薬はやや知能が低下してしまいますが、今回のはその改良型ですから意思の疎通は出来るはずです」

 

鑑が今にも飛びかからん勢いの男子生徒を手で制すと、生徒は一瞬不服そうな顔をした後、素直に従った。他の男達も同様に男の一歩後ろに下がるが、荒い息を吐きながら粘つくような視線をシオンに向けている。

 

「同僚…?まさか、篠崎先生のこと…?か…鑑君が…どういうこと…?」

 

「ふふふふ…驚かれているようですね。まぁ無理もありませんか。今はこの身体を借りているだけですからね…。私の名は桂木涼。以前あなた方の組織の神崎綾さんに大変お世話になりましてね。お陰様で今は本来の身体が思うように使えないので修復中なんですよ。変わりにこの学園の副生徒会長の鑑君の身体が、私の元の身体に近いことが分かりましてね、拝借しているわけです」

 

シオンはあまりの事態に次に出てくるべき言葉がいくつも頭の中に渦巻いて、何も喋ることが出来なくなっていた。目の前にいる副生徒会長の鑑は、自分よりひとつ年下の男子学生だ。普段はもの静かだが、冷静沈着で何が起きても常に物事に対し最善の判断を下すことのできる数少ない人物で、シオンもかなりの信頼を置いていた。それに加え家系の伝統らしく幼少の頃から様々な武道を学んでおり、華奢そうに見えるが身体はかなり鍛え上げられ体力測定でも常に好成績をキープしていた。

その鑑を、以前綾と対峙した人妖が乗っ取ったと言うのだ。身体を借りる?そんなことが現在の医学で可能なのか?そもそも綾が涼と対決したのは1ヶ月ほど前ではなかったか。ではその頃から既に涼は鑑と入れ替わっていたのか?

 

「それにしても…ここにいる男達が夢中になるのもうなずけますね…」

 

不意に涼に乗っ取られた鑑が声をかけて来た。鑑はシオンの身体を先ほどの男子生徒同様つま先から頭まで舐めるように見回している。視線は足首からむちむちの太ももを伝い、挑発的な黒いミニスカートとそれに合わせたエプロンドレスの巻かれた腰を舐め回した後、キュウッとくびれた素肌の露出している腹部を凝視し、そのくびれた腹部に不釣り合いなほど豊満な胸と、それ引き立てる黒地に白いフリルの付いたブラジャータイプのトップスを視姦した。

 

「なっ……ど…どういう意味ですか…?」

 

「くくくく…どうやら噂通りの天然娘のようですね。なら教えて差し上げましょうか?」

 

油断したとシオンは瞬間的に思った。無理も無い。つい最近まで一緒に生徒会の仕事をしていた姿が、自分の身体をいやらしい目つきで見回しているのだ。その混乱に乗じて鑑は素早くシオンの目の前に移動し、耳元で囁いた。

 

「私を含め全員、可愛くてエッチな身体をしたあなたを、滅茶苦茶に虐め犯し尽くして、精液まみれにしてやりたいと思っているんですよ…」

 

「なっ…そ…そんな…うぐぅっ!!」

 

耳元で囁かれた悪魔のような言葉に困惑した瞬間、シオンのくびれた腹部には鑑の小さめの拳が手首にまでめり込んでいた。

 

「ほぅ…綾より華奢なお腹ですね。これは虐め甲斐がありそうだ…」

 

鑑はシオンの腹部に埋まったままの拳を強引に開きながら、さらに奥へ腕を沈めた。内蔵がかき分けられ、身体の内側から来るダメージがシオンを襲い、後方へ弾かれるように吹っ飛ぶ。

 

「がっ…あぁぁ……ぐぶうっ!?ごぶあぁぁ!!」

 

飲み込みきれない唾液が強引に吐き出され、鑑の腕に飛沫が飛ぶ。鑑はハンカチを取り出してそれを拭き取ると、赤く光る縦長の瞳孔でシオンを見つめた。

暗闇の中のコンクリート打ちっぱなしの壁は、外の蒸し暑さを忘れ、すべての熱と音を吸収するように冷たく静まり返っていた。ポツポツと付いた頼りないオレンジ色の非常灯と、緑色の非常口を表すライトに赤い非常ベル。昼間の生徒達で活気あふれる空間とは対照的に静寂の空間が広がっていた。

シオンは入り口から最初の角を曲がった所で尻餅をついたまま壁にもたれかかり、呼吸と体調が回復するのを待った。幸い、冷子が入ってくる気配はない。

 

「はぁ…はぁ…。なんで追ってこないんですか?それにしても強い…。私で勝てるの…?はぁ…はぁ…」

 

汗で額に貼り付いた金髪をかき上げながらシオンが呟く。シミュレーション訓練では最高難易度も軽くクリアするシオンだが、冷子との戦闘では野球部員が3人いたとはいえ、ほぼ一方的な展開であった。未だに攻撃された腹部から鈍い痛みが響いてくるが、いつまでもこうして休んでいるわけにはいかない。冷子を倒す方法を見つけるか、アンチレジストのオペレーターに連絡を取って応援を要請するか…。

 

「そもそも…何で研究棟が施錠されてないんですか。おかしいです。こんなことがバレたらアナスタシアの信用はガタ落ちのはず…誰かが故意に開けた?でもなぜ…?」

 

シオンが考えを巡らせていると、不意に甲高い、ポーンと間の抜けたような電子音が響いた。シオンが咄嗟に身構えるが、何も無い。辺りを見回すと、廊下の遥か奥の方に、先ほどまで無かった非常灯とは違う蛍光灯の明かりが漏れている部屋があることに気付いた。

シオンが近づくと、それはエレベーターだった。さっきの電子音はエレベーターの扉が開く音だったのだ。エレベーターの上にある停止階のランプを見ると、2階から5階まではすべて「・」で表されてあり、その上には赤地に白抜きで「生徒使用厳禁」と書かれたプレートが貼付けられていた。

 

「民間企業用のエレベーターがひとりでに…?そんなわけない…誰かが操作しているはず…」

 

シオンは考えを巡らす。どう考えても罠に違いない。そもそもこの時間に研究棟に自分が入れたこと自体がおかしいのだ。その上このエレベーター。明らかに敵の手中に追い込まれて行ってることは明白である。しかし、シオンは一度深呼吸すると、ためらい無くエレベーターに乗り込んで行った。

 

「日本のことわざに、虎穴に入らんずばってのがあります。このまま逃げていても、皆を…アナスタシアを救うことは出来ません。私の好きな場所は、私が取り戻します!」

 

 

 

 

モニターの中では、シオンがエレベーターに乗り込む姿を廊下から映した映像と、エレベーターにシオンが入ってくる姿をエレベーター内部から写した映像が別角度で映っていた。人影がボタンを操作すると、エレベーターの扉が閉まり、指定した階に向かって上昇を始める。

 

「入っちゃったね」

 

「罠と知りながら乗ってくるとは…」

 

「さすがは責任感が強いな。学校と生徒を守るためには自分の身も犠牲にするか。この娘が生徒会長になってから問題が激減したのもうなずける」

 

「それ以上にファンがすごく多いんでしょ?ここまで顔もスタイルも良い上に性格も良い人なんて最近いないよ。告白も何十回されたか分からないらしいよ。まぁ本人にその気は全く無いというか、天然入ってるから告白しても気付かないんだって」

 

「会長に迷惑はかけられない…って感じで学校がまとまってるのかな?」

 

「それにしても良い人材を見つけてくるものだな、アンチレジストは。その人間の持つ人徳が高ければ高いほど、我々が得るエネルギーも大きい」

 

「そのためにはたっぷりと苦痛と屈辱を与えないとね」

 

「そうだな…あいつらの様子は?」

 

「もう大変。冷子の作った薬のおかげで暴走寸前だよ。拘束して抑えてるけど、この娘…シオンだっけ?見たらどうなるか分からないよ?」

 

「そうか…楽しみだな…」

 

楽しみだと言った1人が席を外し、部屋から出て行った。部屋の中の1人が別のボタンを操作すると、モニターには病院の大部屋のような部屋に5~6人の男性がベッドに寝かされている映像が映った。全員運動部の学生か、鍛え上げられた体をしていたが、その全員がベッドに両手両足を拘束され、衣服も毛布類も身につけていなかった。それだけでも異様な光景だが、全員酷くうつろな表情をしている反面、股間が大きく隆起していることとがその異様さに拍車をかけていた。

 

 

 

シオンがエレベーターに入ると、自動的に扉が閉まり、軽い衝撃とともに速いスピードで上昇を始めた。エレベーター内部の停止階ランプはどこも点灯していない。とうに生徒の使用する特別教室の階層は過ぎ、民間企業用の研究施設の階層に入ったが、まだ上昇は止まらなかった。かなり上の階に行くようである。

ポーンと再び間抜けな電子音が聞こえ、エレベーターは停止した。扉が開くと、薄暗い蛍光灯に照らされた広い空間に出る。シオンは意を決してエレベーターから一歩進み出た。

「ほらほらぁ…いくわよぉ…スゴいのがいくわよぉ…」

 

冷子はギリギリと拳を引き絞り、シオンの引き締まった腹部に狙いを定める。冷子のサディスティックな満面の笑みとは正反対に、シオンの顔は青ざめ、あきらめの色がにじむ。

 

「あ…ああ……や……やめ………」

 

 

胃を握りつぶされ、鳩尾を膝で突き上げられ、散々虐められて未だに痙攣の収まらない腹部に更なる打撃を加えられれば一体自分はどうなってしまうのか。不妊、内臓破裂、最悪…死亡。まだまだ若いシオンにとっては残酷すぎる現実が、目の前の冷子の拳から自分の身体に突き入れられると思うと、恐怖と絶望でいっぱいになった。

 

「ほらぁ…どこを狙ってほしいの?鳩尾?お臍?それとも子宮のあたりかしら?あはぁ…どこを攻撃しても、もしかしたらイっちゃうかもぉ…」

 

「わ………私は………」

 

「んふぅ~?なぁにぃ?」

 

度重なる衝撃によって、口内には唾液が通常よりも多くあふれるが、シオンはそれを飲み込むことが出来ず、唇の端を伝って地面や豊満な胸に落ちる。ただ喋るだけでも内蔵が悲鳴を上げるが、シオンは力を振り絞って冷子に語った。

 

「私は…げふっ……こ…この学校が好き……学校の…皆も……先生も………も……けほっ……もちろん……篠崎先生だって……」

 

「ふぅん……それで?」

 

「せ……先生と…この人たちを……す…救えなかったことが…心残りです…。絶対に……綾ちゃんや……他のみんなが……来てくれるはずですから……げほっ……先生も…酷いことはやめて……改心して下さい……」

 

「ふふ……ふふふ……あははははは!それがあなたの最期の言葉!?私を救いたいって?人妖の私を!?どこまでお人好しなのかしらぁ!?」

 

「お…お人好しでもいい……それでも…私は……皆に…幸せになってほしい……」

 

絞り出すようなシオンの言葉。もはや声は途切れ途切れの弱々しいものになっていたが、その目には意思の光が宿っていた。

 

「ふぅん…。おめでたい人ね。そんな考えではこの先利用されるだけよ?まぁ、ここで死んじゃえば関係ないけどねぇ…。それじゃあ…さようなら」

 

唸りを上げて冷子の拳がシオンの下腹に向けて放たれる。シオンは無表情で自分の腹部に吸い込まれて行く拳を見つめた。 骨同士がぶつかり、軋む音が石畳の上に響く。

 

メギィィィィ!!

 

「が……が……」

 

「!!?お…お前!?」

 

シオンの太ももに頬擦りしていた眼鏡が瞬間的に頭を持ち上げ、冷子の拳をその頭で受け止めていた。ミシミシという音が眼鏡の頭からシオンの耳に届く。

 

「くっ…はぁっ!!」

 

「あぐっ!?」

 

脳が考えるよりも先に、瞬間的にシオンの体が反応した。自由になった右足で冷子の顎を蹴り上げ、振り上げた足が戻るのを利用し、背後から羽交い締めにしている帽子の金的を蹴り上げた。自由になった手で手刀を作り、未だに左足に頬擦りをしているひげ面の首に振り下ろし、悶絶している帽子の鳩尾を突き上げた。

わずか数秒。体に染み付いた全く無駄のない動きで、一瞬のうちに冷子は蹴り飛ばされ、帽子とひげ面は失神して地面に伸びていた。シオンはあわてて冷子の全力の一撃を受け、石畳の上でビクビクと痙攣している眼鏡に駆け寄った。

 

「だ、大丈夫ですか!?な…なぜこんなことを…!?」

 

「あ…ああ……会長のお腹…スベスベだったなぁ……」

 

拳が離れた瞬間から、眼鏡の鼻や耳から大量の血が吹き出していた。シオンは無理に抱き起こさずに、小刻みに痙攣している眼鏡のズボンのベルトを緩め、横向きに寝かせてやる。

 

「そんな…大変…すぐ病院へ…」

 

「し…幸せだぁ…会長に…触れられて………会長も……幸せに……なってく…れ……」

 

眼鏡は糸の切れた人形のように全身の力が抜け、ぴくりとも動かなくなる。シオンは目に涙を浮かべ、何度も首を横に振る。

 

「あ……ああ……嘘……嘘ですよね…?」

 

「失神しているだけよ」

 

背後から冷子の声が聞こえ、シオンは素早く振り向く。冷子はまるで汚いものに触れたかのようにハンカチで拳を拭いながら近づいてくる。

 

「まったく、最後の最後まで使えないゴミ虫共だわ。利用価値のない奴らは全員死ねばいいのに…残念ながら頭蓋骨も折れてないし、あなたの取った行動は応急処置としては完璧ね。その姿勢なら血や吐瀉物が喉に詰まることも無い。医者の私が言うから間違いないわ」

 

「先生…!!」

 

今まで抱いたことの無いほどの黒い感情が、シオンの中を駆け巡る。全身の細胞がこいつは敵だと伝えてくる。絶対に倒さなければならない。気付いた時にはシオンは冷子に向かって突進していた。

 

「はぁぁぁぁ!!」

 

「あらあら…らしくないわね…」

 

ゴギュッ!!

 

「うぶぅっ!!?……し…しまっ…」

 

冷子の「伸びる腕」が、我を忘れ突進していたシオンの腹に突き刺さる。一瞬で勢いを止められ体がぐらついた所を、冷子がじりじりと距離をつめながら攻撃する。

 

ヒュヒュン!!…ドギュッ!ズムッ!グジュッ!!

 

「あ…がぶっ!うぐうっ!ごぶっ!!……あ…ああ……」

 

「うふふふ……つかまえたぁ」

 

気がつくと、冷子はシオンの目の前まで迫り、がっしりと髪を掴まれ、無理矢理顔を上げさせられる。

 

「あうっ…!痛…」

 

「んふふ…さっきのお返しよ…」

 

伸びる腕の何倍もの破壊力のある直接の攻撃。小振りだが石のように固い拳がシオンの滑らかな腹部に吸い込まれた。布地の一切無いむき出しの生腹に手首まで拳が埋まり、背骨がメキリと音を立てる。

 

ズギュウウッ!!

 

「ぐぼああぁぁぁ!!!」

 

2つに纏められた長い金髪をなびかせながら、シオンは数メートル後ろへ跳ね飛ばされ研究棟の外壁へ背中を痛打し、腹を両手でかばうようにしながら地面に両膝をつく。

 

「ああぐっ…げぶっ!?……うぁぁ……」

 

腹部と背中への衝撃から、たまらずこみ上げたものを地面へ吐き出す。その間もまるで苦しむシオンを楽しげに観察するように、ゆっくりと冷子が近づく。

 

「ま…まずい……、離れないと……」

 

力の差は歴然であった。このままでは劣勢になる一方と悟ったシオンは一度体勢を立て直すために、何とかこの場を離れようと、よろよろと立ち上がる。冷子の近づく速度は変わらない。壁に手をつきながら建物に沿って移動すると、鉄製の、装飾の施された研究棟の入り口があった。下層階は生徒達の特別教室になっているが、当然今は施錠されているはずである。

 

「あははは!如月さん、今度は鬼ごっこかしら?そんなに遅いんじゃすぐ捕まえちゃうわよ?」

 

まるで傷ついた獲物をじわじわと追いつめる残酷なハンターのように、背後から冷子の声が近づく。追いつかれるのもこのままでは時間の問題である。シオンは祈るような気持ちで研究棟の扉に手をかけると、意外なことに軽く扉が開いた。

 

「えっ!?な…なんで?開いてるわけが……?で、でも…チャンス…なの?」

 

この研究棟は下層階はともかく、上層階には民間企業や外部研究所のトップシークレットの研究が数多く行われている。仮に夜中に不心得者が侵入しデータなどを奪われでもしたら、アナスタシアの信用はガタ落ちになるため、この研究所のセキュリティは特に厳重との話だった。鍵を閉め忘れるなんてことはあり得ない。

シオンの頭に様々な考えが浮かんだが、このまま闇雲に逃げ回っているよりはいくらかは事態が好転するはずである。シオンは意を決して研究棟の中に入った。

 

「あらあら…やっぱり入ったわね。うふふふ…如月さん、罠というのはね、奥に行けば行くほど脱出が難しくなるのよ?」

 

冷子は満足げにシオンを見送ると、携帯電話でどこかに電話をし始めた。

「げふっ……あ…ああ……」

 

腹部に定期的に波打つ鈍痛。身体の奥からこみ上げてくる不快感。シオンは腹を両手でかばうように押さえながら人妖、冷子を見つめた。月の光を後方から浴びて青白いシルエットの中に、赤く光る目だけが異様な存在感を放っていた。

 

(何なのあれ?私、何で攻撃されたの?)

 

「あらあら、まあまあ…口から涎垂らしちゃって、すごくエッチな顔になってるわよ?そんなに痛かったかしら?これでも加減したつもりだったんだけれど…。まぁいいわ。少し眠って頂戴」

 

再び空気を切り裂く音が聞こえてくる。シオンは咄嗟に右方向へ転がるように離脱する。

 

「あははは!ほらほら、逃げてるだけじゃどうにもならないわよ?」

 

冷子の攻撃方法が分からない以上、不用意に近づくのは危険だ。連続して襲い来る攻撃を右へ左へと何とかかわすが、このままでは無駄に体力を奪われるだけである。シオンが噴水を背にした所を攻撃され、必死によけると噴水の水が勢いよくはじけた。

 

「あら、惜しかったわねぇ。もう一回あなたが嘔吐く所が見たかったのに…」

 

「くっ…まずい…このままじゃいずれ当てられる…。ん…あ、あれは…?」

 

シオンは意を決し、空気を切り裂く何かをサイドステップで紙一重でかわすと、重りの付いた鞭のような物体が一瞬目の前で静止した。シオンは機敏な動きでそれを掴む。

 

「えっ…う…な…何これ!?」

 

「あら…凄い反射神経ねぇ…」

 

それは、腕だった。形状こそ腕だったが、それはまるで軟体動物のような気味の悪い固さになり2mほど伸びており、先端にはしっかりと拳が握られていた。反射的にシオンが手を離すと、冷子の「腕」はまるで伸びたゴムが縮むように一瞬で元の形状に戻った。

 

「もうバレちゃったわね。さすがは上級戦闘員ってとこかしら?戦力が未知数の相手に不用意に近づかずに攻撃できるように、ちょっと骨やら筋肉やらを弄ってみたんだけど、攻撃力がガタ落ちなのよね。やっぱり直接攻撃するに限るわ」

 

どこをどう弄ればこういう風になるのかわからないが、人妖の強靭な身体と冷子の医師としての才能がこのような腕を作ったのか。

 

「攻撃で噴水の水がはじけた後、篠崎先生の腕が濡れていたのでまさかと思いましたが…こんなことって…」

 

シオンは改めて目の前に存在するものが化物であることを認識する。今まで幾分なりとも世話になった先生が人妖であることを心のどこかで否定していたが、その人外そのものの腕を見た瞬間に心は決まっていた。

 

「篠崎先生…いえ、篠崎冷子!対人妖組織アンチレジストの戦闘員として、あなたを退治します!」

 

「うふふふ…勇ましいわねぇ…。美しい…とても気高くて美しいわぁ…。でもね如月さん。こちらとしても簡単に退治されるわけにはいかないのよ………あなた達!いつまで寝ているの!?」

 

その声にびくりと反応し、先ほど倒したはずの野球部員達がヨロヨロと起きだした。帽子にいたってはまだ気を失っていたが、ゾンビのようにフラフラとシオンに近づいてくる。

 

「なっ?こ…これは一体…?」

 

「凄いでしょう?意思の力は時々肉体を凌駕するのよ。この子達に施したチャームの力は絶対。何があっても私の命令通りに動くわぁ」

 

「チ、チャーム?チャームって、男性型の人妖の…た、体液のことじゃ…?」

 

うっすら赤くなりながらシオンは冷子に言う。男性型人妖の唾液や精液には人を魅了する力があるというが…。

 

「あらあら、如月さんはそんな挑発的な身体しておきながら結構ウブなのねぇ…。女性型でもチャームは使えるのよ。それも男性型より強力な…ね。粘膜を触れ合わせて相手に直接送り込むからかしら?まぁ、この子達みたいに童貞君の相手は結構疲れるけど」

 

「なっ…そ、そんなことを……」

 

シオンは耳まで赤くなりながら冷子の話を聞く。綾の話ではチャームはせいぜい「相手を魅了する」程度のものだ。安定的にエネルギーを補給するためだろう。しかし、冷子の行っているそれは洗脳や傀儡に近い。

シオンと冷子が会話している間に、野球部員達はのろのろとした動きで冷子の後ろに跪く。冷子は満足げに3人を見下ろすと、3人にそれぞれディープキスをしたり、手で股間をまさぐったりした。

 

「うふふふ。素直でいい子よ…。あらあら…こんなにしちゃって。まぁ目の前に憧れの如月さんがあんな格好でいるのだから無理も無いわねぇ。さぁみんな…お注射の時間よ」

 

冷子は足で部員達の勃起した股間を小突きながら、胸ポケットから白いケースを取り出し、中の注射器を3人の部員達の首筋に突き刺した。

 

「な、何してるんですか!?もうこれ以上その人たちに危害は…」

 

「うふふ…大丈夫よ。もう終わったわ。さぁ、如月さんを取り押さえなさい。手は出しちゃダメよ」

 

目の前の痴態に思わず固まってしまったシオンだったが、はっと我に帰り冷子に向かって叫ぶ。注射を打たれた3人は再びシオンに向かって歩き出していた。

 

「なっ…こ、来ないで!来ないで下さい!」

 

「だめよぉ…この子達はあなたを捕まえるまでは止まらないわ。どうしても止めたかったら殺すか、さっきみたいに気絶させるしかないわよ?」

 

冷子は喜劇舞台でも見ているような様子で首を傾げ胸の下で腕を組みながら呟く。その間にもシオンと3人の距離は徐々に詰まっていく。

 

「くっ……し、仕方がありません…。なるべく傷つけずに…」

 

眼鏡が抱きつくようにシオンに両手を広げて迫る。相変わらず隙だらけだ。シオンは相手が迫る勢いを利用し、右手を眼鏡の腹部に突き出す。

 

ドギュウッ!

 

「が…が………」

 

「ごめんなさい…どうか眠って…」

 

「が……が……へへ………へへへへへ………」

 

「!?な、なに?」

 

「会長ぉ……会長がこんな近くにぃ……」

 

シオンの攻撃は確かにクリーンヒットした。しかし、相手は怯むどころかまるで攻撃など無かったかのように抱きつこうとするのをやめない。残りの2人もシオンのすぐそばまで迫っていた。

 

「な…なんですかこれは!?どうして…?」

 

「ちょうどあなたの裏に建っている研究棟。そこには最新鋭の設備があることはあなたも知っているでしょう?私はそこで様々な薬を開発したの。チャームの効果を爆発的に上昇させたり、ここにいる子達みたいに大脳新皮質の働きを弱めたり。痛覚神経と脳を遮断したり…ね。身体能力も少しだけ強化してあるわ」

 

「そ…そんな…そんなこと…。あっ、や…やめ…。くっ……」

 

冷子が会話している間にも、3人の野球部員はシオンを押さえ込もうと体にまとわりついてくる。シオンも必死に抵抗するが、顎を跳ね上げようが脇腹に膝を入れようが相手は全く怯まず、ついには両足をひげ面と眼鏡に、両腕を後ろから帽子に羽交い締めにされ、全く身動きが取れない状態になる。

3人はそれぞれ荒い息を吐きながら、眼鏡とひげ面は抱きすくめたシオンの太ももに頬擦りしたり、帽子はシオンのうなじを舐めたりと思い思いの行動をとる。

 

「やめ…んあぁっ!や…やめて下さい!あうっ…!う…動けな…い」

 

「あらあら、愛されているわねぇ…顔が真っ赤よ。うふふふ…そういう顔はとても好き…。でもね、私は美しい女性が苦しんでる顔の方が、もっと好きなの…」

 

気がつくと、冷子はシオンの目の前まで来ていた。男子部員は冷子の命令通り手は出してこないが、がっしりと体を押さえ込まれ振りほどくことができない。

 

「うふふふ…今度は直接だからもっと苦しいわよ?頑張って耐えてねぇ…?」

 

「な…何をする気で……ぐぼあぁぁっ!!」

 

シオンの腹部には、手首まで冷子の拳が埋まっていた。先ほどの腕を鞭のようにした攻撃でも十分な威力であったが、今回のは桁が違いすぎる。シオンのなめらかな腹部は無惨につぶれ、内蔵が悲鳴を上げていた。

 

「げぶっ…!?あ…あぁ……うぐっ……」

 

「あらあら…こんなに目を見開いちゃって…あはぁ…とっても素敵。美しい顔が苦痛に歪むのはね…。でも、まだ一撃目よ?」

 

ズギュウッ!!ドギュッ!!

 

「ごぶっ!?ぐふあぁぁ!!……あ……す……すごい…力……」

 

「うふふ……私も身体強化の薬を使っているの。なかなかの威力でしょう?…それにしても如月さん、綺麗な足してるわねぇ…汚い虫が2匹付いてるのが気になるけど…私の足も見てくれる?」

 

グギィィィッ!!

 

「うぐうっ!!?…は…はうぅ……」

 

冷子の膝が、シオンの華奢な鳩尾へ吸い込まれるように突き刺さった。肺の中の空気が強制的に排出され、一瞬窒息状態に陥る。

 

「が…かはっ…!あ……はぁっ……!!」

 

「どうかしら?私のもなかなかでしょう?ほらぁ……もっとよく見て…」

 

グギュッ!グギュウッ!!ドギュウッ!!

 

「ごふうっ!?あぐうっ!!うぶあぁぁっ!!……え……えぐ……」

 

「うふふ…いい…いいわぁ…凄く感じちゃう……」

 

冷子はうっとりとした表情でシオンを責め立てる。シオンは何とか反撃の隙を探るものの、度重なる重い攻撃に一瞬で意識が飛ばれされ失神と覚醒を繰り返すが、朦朧とした中でも何とか意識を保とうとする。

 

「あらあら、顔色が悪いわよ?悪いものが溜まっているときは、一度全部出すとスッキリするわよ」

 

スブウッ!!

 

「ごぶうっ!!ああぁ……そ……そこはぁ……」

 

「あらぁ…如月さん、ずいぶん胃が小さいのねぇ…?それじゃあ………治療してあげるわぁ!」

 

グギュウゥッ!!

 

「うぶぅっ!?…う…うう……うぐぇぇぇぇぇぁぁ!!!」

 

冷子が力任せにシオンの胃を握りつぶすと、シオンの口から強制的に逆流させられた胃液が勢いよく飛び出し、地面にびしゃりと落ちた。あまりのサディスティックな猛攻にシオンはビクビクと痙攣し、慎ましげな口からは舌が垂れ下がり、瞳は半分が上まぶたに隠れ白目を向いている。

 

「あははははは!最高よぉ、あなた!!凄くいい顔してるわぁ!!私ももう感じすぎてて…。死なないように頑張るのよ!!」

 

冷子が、もう何度目分からないが拳を脇に引き絞り、シオンの華奢な腹部に狙いを定める

。シオンは薄れ行く意識の中で、諦めに近い感情を抱いていた。

「くっ……!」

 

このままではまずい。シオンはようやく痛みと残像の収まった目で辺りを見回し、鈍痛が残る腹を押さえながらひとまず駐車場を離れようとする。足下がアスファルトから石畳へ変わり、研究棟の方向へ移動する。幸い野球部員3人はターゲットをシオンに定めたらしく、冷子を襲うことは無く無表情でシオンを追いかけていた。

 

「よかった、3人とも私を追って来てる。このままこっちへ来て」

 

鍛えられた野球部員3人は俊足を生かし、シオンとの差をぐんぐん縮める。研究棟前の広場の前には中央広場に比べると小振りではあるが同じようなデザインの噴水があり、シオンは噴水を背にして3人と対峙する。

 

「はは…日本のことわざで言えば背水の陣ってやつですかね。でも、先ほどは不意をつかれましたけど、今度は本当におとなしくしてもらいます!」

 

シオンの声は相変わらず3人には届いていないようだった。しきりにぶつぶつとうわ言を呟きながら、シオンに攻撃をしようとじりじりと近づいてくる。

 

「この3人、明らかに様子がおかしいですね…。人妖だったら何らかのコンタクトをとってくるはずですが、私の声も聞こえてないみたいですし…。もしかして、誰かに操られてる?」

 

シオンが考えを巡らせていると、3人はそれぞれ雄叫びをあげながらシオンに襲いかかってきた。しかし、3人同時の攻撃とはいえ、単調でストレートな攻撃はシオンに軽々と捌かれてしまう。

 

「さっきのようには…いきません!」

 

「ぐがぁぁぁぁ!」

 

シオンのすらりと伸びた足から放たれた回し蹴りはそのまま眼鏡の脇腹にヒットし、よろめいた所へ膝蹴りを追撃する。眼鏡はうめき声を上げて倒れ、同時に後ろから羽交い締めにしようと近づいたひげ面の腹へ後ろ蹴りを放った。

 

「ぐぼぉおおおっ!!」

 

シオンの履いている靴のヒールが根元までひげ面の鳩尾に吸い込まれ、前方に倒れ込む勢いを殺さずに空気投げを放つ。ひげ面はゆっくりしたモーションで前方に一回転し、背中から石畳へ落下した。

 

「はぁ…はぁ…残るは、あなただけですよ。無駄な抵抗はせずに、おとなしくしていただければ、危害は加えません」

 

さすがのシオンも全力疾走後の3人同時の相手に幾分息が上がっているが、それでも残りの1人を倒すことくらいは雑作も無いことだった。極力生徒に危害を加えたくないシオンは説得を試みるものの、やはりその声は届くことは無かった。

 

「ああああぁ…会長ぉ……俺……こんなに……会長が好きなのに……なんで分かってくれないんだぁ………俺のものにしてぇ……してぇよぉ……」

 

「くっ……だ、ダメですか……仕方ないけどここは…」

 

シオンが意を決して構えるが、同時にシオンの真後ろ、噴水の影から柔らかい声が響いた。

 

「あらあら…まったく…情けないったらないわねぇ……」

 

そこにいたのは、シオンが先ほど車に隠れるように頼んだ篠崎冷子だった。ゆっくりとした動作で噴水を半周周り、シオンに数メートルの距離まで近づく。

 

「え…?し、篠崎先生!?」

 

「まったく…鍛えてるからあなた1人くらいどうにでもなると思ったんだけど、てんで使えないのね。それともあなたが強すぎるのかしら?」

 

「うそ…本当に篠崎先生?え…なんで?この人たちに何をしたんですか…?」

 

「簡単よ。脳の大脳新皮質の働きを鈍くする薬を作って注射しただけ。この子達があまりにもあなたのことが好きみたいだったから、邪魔な理性を無くして素直にしてあげただけよ。うふふ…」

 

目の前に居る冷子の信じられない言葉に、シオンは酷く混乱した。薬?注射?理性を無くす?何を言ってるのか分からない。なぜ篠崎先生がこんな真似を?中央広場で言われた「悪ふざけ」にしては度が過ぎている。

 

「あまりにも使えないからこんな玩具まで使って手助けしてあげたのに、結局逃げられるしね」

 

冷子はそういうとポケットからレーザーポインターを取り出し、噴水の中へ投げ入れた。プレゼンテーションの時に指し棒の変わりに使うものだが、その光線は強力で人体の網膜に多大な影響を及ぼし、最悪失明に至るほどの威力があり一時期社会問題になったほどだ。先ほど急にシオンの目を襲った激痛は、おそらく車の中から冷子がこれを使ったためだろう。

 

「……篠崎先生…あなた…本当に篠崎先生ですか…?」

 

信じたくないという気持ちがシオンの唇を震わせる。しかし、冷子の口から出た言葉はシオンに残酷な現実を突きつけつものだった。

 

「嫌だわ、名前を忘れちゃったの?篠崎冷子よ。冷たい子供で冷子。人妖は冷たさを感じる名前を付けることが決まりなの」

 

シオンの顔が絶望に染まる。疑惑が確信へ。一般市民が人妖の存在を知るわけが無い。冷子が人妖であることはこれで確定した。しかし、オペレーターは確かに男性型の人妖と言っていなかったか?それに中央公園でシオンと冷子が会話しているときも、オペレーターからは何の連絡も無かった。

 

「うふふ…こんなにのんびり会話をしていていいのかしら?そこの男の子があなたに告白したいらしいわよ?」

 

「えっ?なっ!?」

 

シオンが振り向く一瞬前に、帽子はシオンを羽交い締めにしていた。一瞬だけ顔が見えたが、焦点の合っていない目と、はぁはぁと荒い息を吐き続ける口からは絶えず涎が垂れていた。

 

「あああああ…会長ぉぉぉぉぉ……好きだぁぁぁ……」

 

「いやっ…!ちょ……離して下さ……んはぁっ!!」

 

帽子がシオンの豊満な胸をデタラメに揉みし抱く。必死に身体をよじって抵抗するが、不利な体勢で力任せに抱きつかれていることと、基礎的な筋力の差でなかなか振りほどくことができない。

その間も帽子はシオンをがっしりと抱きすくめながらも、乱暴に胸をこね回すのをやめず、さらには髪の毛の香りを嗅いだり首筋を舐め回したりと欲望の限りを尽くした。

 

「やらぁっ…!ほ、ほんとうにやめ…あうぅっ……離して…!!」

 

「あらあら、若いっていいわねぇ…ずいぶん積極的でストレートな愛情表現だこと。でもあなた、全然美しくないわ。愛の表現はもっと美しくしなきゃダメよ」

 

一瞬ナイフのように風を切る音が聞こえ、シオンの右頬を何かがかすめたかと思うと、無我夢中でシオンの首筋を舐め回していた帽子の身体が猛スピードで後方に吹っ飛んでいた。

 

「え…?あっ……何、今の…?」

 

「うふふ、見えなかったかしら?あまりにも見るに耐えないものだから消えてもらったの」

 

シオンが後方を振り返ると、帽子は鼻から血を流しながらビクビクと小刻みに痙攣していた。目にも留まらない何かが冷子から放たれ、一瞬で帽子の顔面にヒットしたのだろう。しかし次の瞬間、再び風を切る音とともにシオンの腹部を中心に激痛が走った。

 

ヒュッ……ズギュウッ!!

 

「あぅっ……ぐっ!?げぶうぅぅぅ!!」

 

「こんな風にね…少し強すぎたかしら?」

 

冷子の両手は腰に当てられたまま微動だにしていない。しかもシオンとの距離は2メートルほどあるので手の届きようが無いのだが、シオンの下腹部のあたりにははっきりと拳の形が残り、その奥にあるシオンの小さい胃は無惨に潰されていた。

 

「ぐむっ!!…ううぅ……」

 

必死に両手で口を押さえ身体の中から逆流してくるものを堪えるが、再び独特の空気音を聞いたときには既に攻撃が終わっていた。

 

ヒュヒュッ……ズギュッ!グチュウッ!!

 

「!!??ぐふっ!?ぐぇあぁぁぁ!!!」

 

鳩尾と臍、人体急所である正中線への同時攻撃。あまりの攻撃にシオンはたまらず堪えていた逆流を吐き出し、透明な胃液が勢い良く飛び出した。

 

「がふっ!?……あ…あうぅ……」

 

「あらあら…あなたみたいな可愛いコでも嘔吐したりするのねぇ…。でも素敵よ。その苦しんでる顔は何物にも代え難く美しいわ…」

 

冷子は両方の手のひらを自分の頬に当て、両腕で腹をかばいながらも倒れずにいるシオンをうっとりした表情で見つめる。表情こそ穏やかなものの、その目は既に瞳孔が縦に裂け、冷酷な赤い光を放つ人妖のものに変わっていた。

心臓が早鐘のように打ち、 全身の血液がはげしく身体を巡る。もう少しで職員用駐車場が見えるが、冷子の悲鳴は断続的に続いていた。

 

「お願い…間に合って…」

 

シオンが駐車場に到着する。肩で息をしながら辺りを見回すと、奥の方にもつれ合うような人影が数人見えた。駆け寄ると、冷子の赤いアルファ・ロメオの前で、3人の男子生徒に詰め寄られている冷子の姿があった。

 

 

「ちょっと…何なのあなな達は?やめ…やめなさい!」

 

「篠崎先生!大丈夫ですか!?」

 

「き、如月さん!?あなた、なんでここに?」

 

「説明は後です!それより…」

 

3人の男子生徒はアナスタシアの野球部のユニフォームを着ており、2人は坊主頭で1人は帽子をかぶっていた。シオンも名前こそ知らないものの、壮行会や生徒会の視察で何度か見たことのある顔だった。しかし、その顔は酷くうつろな顔をしており、3人ともぶつぶつとうわ言のようなことを呟いていた。

 

「あなた達、何やってるんですか?もうとっくに部活も終わっているでしょう?早く帰宅してください」

 

シオンが静かに男子学生達に呼びかけるものの、その声は全く耳に入っていない様子だった。

 

「あぁ………会長だぁ………」

 

「やべぇ…………マジで………可愛い………」

 

「………すげぇ……なんだ……あの格好………」

 

それぞれひげ面だったり眼鏡をかけていたり帽子をかぶっていたりと特徴はあったが、3人とも同じような表情でじりじりとシオン達に近づいて来た。異様な雰囲気を察し、シオンが冷子に声をかける。

 

「こ、これは一体…男性型の人妖って、まさかこの3人のこと…?篠崎先生はすぐにこの場を離れてください。この場は私がなんとかしますので。あと、このことは内密にしてください」

 

「な、何を言っているの!?如月さんを置いて行くなんて、そんなことできるわけ無いでしょう!私も説得してみる!」

 

2人がやり取りをしている間に、帽子をかぶった生徒がいきなり奇声を上げて2人に突進して来た。シオンが冷子を突き飛ばし、男子学生が振り下ろした右腕の手首を両手で掴んで受け止める。

 

「がぁぁ……がぁぁぁ……」

 

「くっ……凄い力……一体…何があったんですか…?」

 

「き、如月さん!?」

 

思わぬ事態に冷子が声をかけるが、その声に反応し、残りの眼鏡とひげ面が冷子の方向に向きを変えた。元々厳しいトレーニングを積んで鍛えている野球部員相手では、おそらく冷子が逃げたところで追いつかれて襲われてしまうだろう。

 

「先生…早く…車の中に入ってください!私は…大丈夫ですから…」

 

ギリギリとシオンの腕が力で圧されはじめる。白い手袋が悲鳴を上げ、ぎちぎちと嫌な音が鳴り始める。

 

「先生…早く!」

 

その声に冷子は自分の車へ駆け出し、中に入ってドアをロックした。それを見届けるとシオンは腕の力を抜くと同時に足払いをかけて帽子を転倒させた。

 

「がぎゃあぁぁぁ!!」

 

帽子にとっては一瞬の出来事で、急に目の前からシオンの姿が消え、勢い余って前方につんのめった所に足払いをかけられて顔面をしたたかに地面に打ち付けた。その悲鳴を聞いて、残りの2人もシオンに方向に向きを変えた。

 

「よし、このままこっちに来て。可哀想だけど、しばらく眠ってもらいます」

 

シオンが白手袋をはめた拳をパシッと合わせ、身構える。1対3と圧倒的に不利な状況だが、専門的な訓練を受けているシオンと、鍛えてはいるが戦闘には素人の野球部員ではまだ自分に分があると思った。

 

「しぃぃぃぃぃっ!!」

 

「うおぉぉぉぉぉぉ!!」

 

眼鏡とひげ面が同時に駆け寄る。シオンに対し突きや蹴りを繰り出してくるが、やはり素人の動き。鮮やかにシオンに捌かれてしまう。

 

「くっ…やあっ!」

 

眼鏡がシオンの顔面に向けて拳を繰り出すが、シオンはそれを左手で受け流すと右手で顎を押しながら、右足で眼鏡の右足を後ろに払う。柔道の大外刈りのような技をかけられ、眼鏡は悲鳴を上げながら後頭部を地面に打ち付けた。

 

「おおおおお!!」

 

ひげ面もシオンの腹をめがけ膝蹴りを繰り出すが、バックステップでそれをかわすと逆にひげ面の腹に膝蹴りを見舞った。

 

「はぁっ!」

 

「ぐぶげぇぇぇぇぇ!!」

 

一撃を見舞うとすぐに離れる。相手が人妖の可能性もあるが、生徒である以上深手は負わせたくない。なんとか昏倒させてアンチレジストに3人を保護してもらうのが一番だろうとシオンは考えた。

 

「あなた達、何があったかは知りませんけど、もうすぐ私の仲間が来てくれるはずですからおとなしくしてください。あなた達を傷つけたくはありません」

 

ひげ面はわずかに苦しそうな表情を浮かべているが倒れることは無く、先に倒した2人もよろよろと立ち上がる。3人はシオンの呼びかけには反応を見せず、再び何事かを呟きながらシオンに近づき始めた。

 

「お願い、あなた達とは戦いたくないの!おとなしく…」


「会長ぉ…やべぇ……こんなに近くで見れるなんて……」


「やっぱ……すげぇ身体してんなぁ………ヤリてぇ……」

 

「あああ……犯してぇ……」

 

見れば、3人の股間部分は既に大きく隆起しており、うつろな視線はシオンの身体を舐めるように見ていた。何があったかは知らないが、獣のように欲望をむき出しにしてシオンに近づく3人に改めて身の危険を感じた。

 

「な…何言ってるんですか…?申し訳ないけど、本気で気絶させて…」

 

3人が同時に駆け寄る。帽子とひげ面が真っ先に襲ってくる。シオンはすぐに身構え、攻撃を受け流そうとするが、2人が攻撃する一瞬早く、シオンの視界が真っ赤に染まった。

 

「!!??…やっ……ああっ!?何…これ!?」

 

一瞬のことで何が起こったか分からずシオンは慌てて両手で目を押さえるが、すぐに激しい痛みがシオンを遅い、目を開けていられなくなった。赤色の残像がまだまぶたの裏で明滅する。獣のような声と衝撃がシオンに届いたのはその直後だった。

 

「がぁぁぁぁ!!」

 

「おおおおおおお!!」

 

ズギュッ!!

 

ドムゥッ!!!

 

「あ……かはっ……うぅあぁぁぁ!!」

 

両手で目を押さえ、がら空きになっているシオンの腹部に左右から帽子とひげ面の膝がめり込んだ。力任せの蹴りだったが、それは正確にシオンの下腹部と鳩尾を襲い、凄まじい苦痛がシオンを襲った。

 

「あ…ぐううっ…」

 

視界はなんとか見えるようになり始めたが、まだどちらが前後かも分からない。よろけながら向きを変え、この場を離れようとするが、シオンが向きを変えた先は眼鏡の正面だった。

 

「しぃぃぃぃ!!」

 

ズムゥッ!!

 

「ぐふぅぅっ!?あ…あぐ……」

 

眼鏡のボディブローがシオンのむき出しの腹にクリーンヒットし、シオンの美しい金髪が揺れる。一瞬目の前が暗くなるが、直後に背中に蹴りを受け前のめりに地面に倒れる。

 

「あ…きゃあぁぁぁ!」

 

アスファルトの上に倒れ込み、肘まである白手袋の数カ所が破れる。やっと視界が戻り、倒れたままの姿勢で振り返ると3人はすぐ後ろまで近づいて来ていた。

 

「はぁ…はぁ……やべぇ……犯してぇ……」

 

「ああぁ……や……やっちまうかぁ……」

 

「鎮めてくれよぉ……会長ぉ……」

 

シオンの顔に初めて恐怖の色が浮かんだ。

「そこにいるのは誰かしら!?」

 

いきなり背後から声をかけられ、シオンが30?ほど飛び上がる。

 

「は、はひっ!?あ、あの…私は…あ…篠崎先生?」

 

「あら?あなた如月さん?あなたこんな時間に何をしているの?」

 

声をかけて来たのは、アナスタシアの保健室勤務の教師、篠崎冷子だった。端正で知的な顔立ちとスレンダーな身体をフォーマルスーツに包み、コツコツとハイヒールを鳴らして近づいてくる。

保健室と言ってもアナスタシアのそれは小さめの病院と言っても過言ではない設備と広さを持ち、勤務している彼女は医師免許も取得している、その気になれば手術すらもこなせる正真正銘の医師であった。

 

「門限はとっくに過ぎてるわよ。それに…あなた…ハロウィンはまだ先よ…?」

 

冷子はあきれたようにシオンの格好を見る。いくら夏とはいえ、深夜に露出度の高いメイド服に身を包み門限を破って噴水に腰をかけていたシオンの状況は説明のしようがない。

 

「最近女生徒の失踪が続いているのは生徒会長のあなたの耳にも入っているでしょう?私が言うのもはばかられるけど、おそらく性的な暴行目的の犯行だと思うの。そんな格好は襲ってくれと言っているようなものじゃないかしら?」

 

冷子は眼鏡の奥から知的な視線をシオンに向けている。一部も隙のなく背筋をピンと伸ばした姿勢からは自信と気品があふれていた。それに加え、まだ30歳を過ぎたばかりの年齢にも関わらず冷子は大人の魅力にあふれ、男子生徒のファンもかなり多かった。しかし、その生真面目で近寄りがたい雰囲気から直接行動に移す男性は少なかったと聞いている。また、冷子自身はそういう色恋沙汰にはてんで興味が無く、仮に行動に移したとしても適当にはぐらかされてしまい、いつしか冷子に男女関係に関する話題は御法度という噂が出たほどだった。

 

「同じ女性として忠告しておくわ。あなた、自分では知らないかもしれないけど、学校中に凄い数のファンがいるのよ?あなたがそんな格好でうろついていたら理性を保てなくなる男子生徒や教師がいてもおかしくないわ。それとも、見せびらかしたいのかしら?」

 

「い、いえ。そんなつもりは…」

 

なんだろう。今日の篠崎先生はいたくフランクだなとシオンは思った。


「 男子生徒は元より、教師ですらあなたで自分を慰めていることを知っているかしら?私だってそれなりに自分に自信はあるけれど、如月さんの前では情けなくなってくるわね。 如月さんの盗撮写真が結構高値で取引されてるみたいよ。撮影者は色々みたいだけど、この前保健室に来た男子生徒が持っていたあなたのプールの時の写真は、明らかに体育教官室からしか撮れないものだったわ」

 

 

 

 

おかしい、絶対におかしい。こんなことを言う先生ではないのに。まさか…人妖?でも、オペレーターさんは間違いなく今回の人妖は男性だって言ってたし…。

 

「あなたは…」

 

シオン意を決して訪ねる。

 

「あなたは…誰ですか…?」

 

2人の距離はほんの数十センチ。しかし、シオンはいつでも戦闘態勢に入れるように身構えていた。冷子はゆっくりと射るような視線をシオンに向ける。

 

数秒の沈黙の後、ぷっと冷子が吹き出してケラケラと笑い出した。

 

「あははは!ごめんなさい、冗談でも悪趣味が過ぎたわね。如月さんがあんまり可愛い格好しているものだから、少しからかってみただけよ。普段はあまり気が抜けないから、時々こうして生徒をからかってるのよ」

 

一通り笑った後、冷子は呆気にとられているシオンに背を向けて教師の車が停めてある駐車場に向かって歩き出した。

 

「それじゃあ気をつけてね。あなたの趣味に意見するつもりは無いけど、寮長に気付かれる前に帰るのよ」

 

「あ、ちょ、ちょっと待て下さい!この格好は私の趣味と言うか…いえ、趣味でもあるんですが…別に露出が趣味とかそういうわけじゃ…」

 

必死に取り繕うとするシオンにを尻目に、冷子は手をヒラヒラと振って去ってしまった。後には片手で「待って」の体勢のまま固まったシオンが取り残されていた。

 

 

「はぅぅ…な、なんか変な誤解されちゃった…。どうしよう…」

 

『シオンさん!聞こえますか!?』

 

「は、はひっ!?オ、オペレーターさん?」

 

突然シオンのイヤホンにオペレーターから通話が入った。緊急時しか使用しない受信側が許可ボタンを押さない強制通話での通信だった。

 

『今、人妖の反応をキャッチしました!アナスタシアの職員用駐車場の付近です!』

 

「ほ、本当ですか!?今そこには篠崎先生が向かっているんですよ!?」

 

『民間人が付近にいるのですか?危険です!シオンさ……す………現場………急こ………』

 

「オ、オペレーターさん!?よく聞こえないんですが?オペレーターさん!?」

 

『シ………綾さ…の時……………妨が…………気をつ……………』

 

その後シオンの呼びかけにも関わらず、イヤホンからオペレーターの声が聞こえてくることは無かった。シオンは通話している最中から駐車場に向かって歩き出していたが、通信が不可能となるとあきらめてイヤホンを仕舞い走り出していた。駐車場に人妖が?だってそこには今篠崎先生が…。

 

シオンの耳に冷子の悲鳴が届いたのは、駐車場への最後の角を曲がったときだった。


アナスタシア聖書学院都市駅を降りると、そこは学校というよりひとつの街と表現した方が正しいような、中世ヨーロッパ調の空間が広がっていた。 広大な敷地には様々な施設。巨大な本校を中心に、各種研究施設や専門教室棟。売店や美容院、レストランやブティックまである。夜も11時も回れば門限の厳しい生徒達はすぐに男子寮、女子寮へと帰った後で、石畳や噴水が、昼間の多くの生徒達の喧騒とは対照的な静寂を吐き出していた。

 

「んふふ~♪ふんふん~♪」

 

暗闇にひらひらと足取り軽く進む影、ツインテールに纏められた長く美しい金髪に月の光が反射し、髪がなびくたびにキラキラと幻想的な光を放っていた。静寂の中にシオンの上機嫌な鼻歌が響く。

 

「んふふ。メイドさん♪メイドさん~♪」

 

シオンはメイド服を基調としたセパレートタイプのゴスロリ服を身に纏っていた。試供品として渡された戦闘服はかなり際どいもので、シオンの豊満な胸を白いフリルの装飾の付いた黒いブラジャーのようなトップが辛うじて隠し、同じく白いフリルエプロンの付いた黒いミニスカートからすらりと伸びた健康的な足を同じデザインの黒いニーソックスが締め上げていた。余分な贅肉が一切無いくびれた白い腹部は惜しげも無く露出され、手には二の腕まである長い白手袋がはまり、頭にはご丁寧にヘッドドレスまで装着してある。

 

先日行われた会議の後、戦闘服に着替えたシオンを見た他の戦闘員やオペレータは開いた口が塞がらず、思わず綾も

 

「あの…ファーザー…いくら何でもこれは戦闘向きでは…」

 

と、進言したほどだったが、肝心のシオンは鏡の前で目をキラキラさせながら

 

「うわぁーかわいいー!本物のメイドさんだぁ…。こっ、これ、本当に次の戦闘で着ていいんですか!?」

 

と、早くも1人で色んなポーズを取り出し、周りはそれ以上何も言えなくなった。確かに日本人離れしたシオンの容姿とプロポーションにはその際どいメイド服がかなり似合っており、逆にシオンの魅力を引き立てていた。なにより本人が至極ご満悦で今更違う戦闘服を渡せる雰囲気でもなかったので、綾も仕方なく

 

「頑張ってね…」

 

と声をかけるだけであった。

 

シオンは学園都市内の店舗のガラスに自分の姿が写るたびに、思わず顔がにやけそうになった。幼い頃から名門家としての教養、作法、立ち居振る舞いの他、人の上に立つものとしての教育を叩き込まれて来たシオンは、なぜ自分が人の上に立たなければならないのか、みんな平等で仲良く出来ればいいのではないかと常に疑問を感じていた。

そのような中、ある時観たフランス映画の中に出てくるメイドの姿に釘付けになった。「この人はだれか他の人のために仕事をしている」

人を使うことのみを教えてこられたシオンにとって、メイドは憧れと理想の存在になった。当然そのようなことは両親は許すはずも無いが、いつかは自分の夢として「誰かの上に立つのではなく、誰かの役に立ちたい」という気持ちを打ち明けようと考えている。

生徒会長に立候補したのも、両親が長期海外赴任中に届いたアンチレジストへのスカウト状に飛びついたのも純粋に人の役に立ちたいと思ったからであった。

 

 

「オペレーターさん!聞こえますか?」

 

明るい声でシオンがイヤホン型のインカムに向かって喋る。

 

「はい、聞こえます。良好です」

 

「今アナスタシアの中に入れました。改めて見ると広いですね~」

 

「そうですね。こちらでも確認していますが、敷地はかなり広大で人妖の反応を探るのに苦労しています。シオンさんが到着する数時間前までは研究棟の中から反応があったのですが、今は反応が消えています」

 

「研究棟ですか?あそこは理科室や実験室もありますが、上層の研究室へは学校の関係者でも一部の人しか入れなくて、生徒はもちろん一般の教師でも入れないんですよ。今のような夜間なら特別なパスが必要なはずですが、なぜ人妖がそんなところに…」

 

「わかりませんが、前回の綾さんのケースから考えると、今回の人妖もそれなりの立場の人である場合が考えられます」

 

人妖の反応が出たら連絡すると言い残し、オペレーターは通信を切った。

 

「理科室にでもいたのでしょうか…?でもこんな時間に?研究室なんかは私でも入れてもらったこと無いですし…」

 

アナスタシア聖書学院の研究棟は下層が生徒が使う特別室、上層は学校側が表向きは社会貢献の名目で最新の設備を有償で企業や大学に貸し出してる。当然企業のトップシークレットの研究も行われている所であり、入室は特別に発行されたIDカードと暗証番号が必要だった。

 

「ふーむ…デタラメに歩き回っても体力を消耗するだけですね~。本校なんかに入ったら全部の教室を見て回る前に朝になっちゃいますし、ここはオペレーターさんからの連絡を待ちますか」

 

左手を胸の下に回し、右手で軽く顎をさすりながら考えを巡らすシオン。その一挙手一投足が絵になり、全く嫌味にならない。美術品のような容姿と抜群のプロポーションもさることながら、名門家の令嬢で生徒会長という立場でありながら誰とも分け隔てなく接する態度と、温和でのんびりした性格は男子生徒は元より女性とからも憧れの的だった。

近くの自動販売機でミネラルウォーターを買い、アナスタシアの敷地の中央にある噴水に腰をかける。美味しそうに水を飲むシオンに近づく影に、まだ彼女は気付いていなかった。

「アナスタシア…聖書学院…」

 

シオンがつぶやくようにファーザーの言葉を反芻する。困惑したような、理解不能のものを見せられたような、そんな表情だった。

 

アナスタシア聖書学院。

入学には家柄や性格判断、基礎学力や身体能力まで多岐にわたる試験や検査、5回以上の面接を経て選ばれたものだけが入学できるミッション系のエリート進学校である。アナスタシア卒というだけで箔が付き、一流企業や大学も入学時からある程度生徒に目星をつけるという。特に選挙で選ばれた生徒会役員や各部活の部長、優秀選手は卒業と同時に各方面から声がかかるケースも珍しくない。

また、聖書学院とは言っても規律はそこまで厳格ではなく、全寮制と日に数回の礼拝、服装規則以外は男女交際も「結婚を前提としていれば可」とミッション系の中ではかなり自由な校風になっている。もっとも、入学までの厳しい審査項目を見れば、「問題のある学生は1人もいない」という学校側の自信の現れとも取れる。

 

「ちょ、ちょっと待ってください!アナスタシア聖書学院って言ったらシオンさんの…」

 

「はい…私の母校です…。綾ちゃんにはさっき少し話ししたよね。実は、3ヶ月ほど前から生徒が5人ほど失踪しているんです。まぁ、全寮制なので稀に共同生活に馴染めずに逃げ出す人もいるのですが、それでも数年に1人いるかいないか…3ヶ月で5人というのは異常な数なんです」

 

『ふむ…人妖の仕業と見てほぼ間違いないだろう…』

 

「でも、そんなに失踪者がいたら学園でも騒ぎになるんじゃ?」

 

「今は生徒会の力で情報の漏洩は抑えています。生徒達には一時的な帰省と…。私ももしかしたらと思っていたので、役員の皆には私から指示して動いてもらっています」

 

「役員に指示って…シオンさんってまさか?」

 

「ええ、アナスタシア聖書学院の生徒会長です。今回の件は、私に行かせてください。学校内の地理も把握していますし、何よりも学校の皆を守りたいんです!」

 

シオンの強い意志に圧され、会議室には口を開くものはいなかった。当初は次の任務にも志願しようとしていた綾も、自分の母校を人妖に好き勝手に荒らされる気持ちは痛いほど分かるため、手を挙げようとはしなかった。

 

『わかった。今回の件はシオンに一任しよう。いざという時は身の安全を最優先するように。戦闘服の用意はできている。では作戦は………」


簡潔な文章だった。

 

 

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アンチレジスト上級戦闘員召集会議の件

 

以下の者は、アンチレジスト上級戦闘員召集会議への出席を命ずる。

 

・神崎 綾

・シオン イワーノヴナ 如月

・鷹宮 美樹

・…

・…

・…

 

日時:2010年8月24日

21:00より

 

場所:アンチレジスト地下訓練場 第9会議室

 

以上

 

 

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「 迷うかもと思って余裕もって出て来たけど、一本道だったから結構時間あるなぁ。 というか上級戦闘員なんてランク付けあったんだ…当たり前だけど全員知らないし…」

 

A4用紙に書かれた無機質な文書を読みながら、街を歩けば誰もが振り返るであろう美少女が長い廊下をこつこつと足音を立てながら歩く。ショート丈のセーラー服。ミニスカートから伸びた健康的な足。手のひらには革製の指だしグローブ。

神崎 綾。

1ヶ月前に母校にて人妖、涼と対峙し、辛くも引き分けたアンチレジストの上級戦闘員。人妖討伐へ送り込まれた戦闘員のほぼ全員が行方不明となる中、彼女とその友人、友香は帰還に成功した。つい先日退院した綾は、涼との再戦に向け退院後すぐに通常通りのトレーニングを再開していた。

 

「今までこんな会議なんてしたこと無いし、もしかして何か進展が…。だったらすぐにでも!」

 

招集の紙をくしゃっと丸めると、そのまま胸の前で拳をバシッと合わせる。意気込みは十分だった。ファーザーに掛け合い、不良品の対人妖グローブも交換してもらった。
すぐにでも戦いたい。綾は場合によっては会議中にファーザーに次の戦闘も自分に任せてもらうように進言するつもりだった。

もうすぐ第9会議室に着く。ドアが見えてくる頃、廊下の向こう側からも歩いてくる女性がいた。

 

「あ…うわぁ…」

 

女性の綾ですら息をのむほどの美少女が歩いて来た。すらりと伸びた手足。一本一本が絡まることの無い絹糸のような金髪のロングヘアをツインテールで纏め、透き通った緑色の瞳からは知性が感じられた。 綾の隣の区の名門校の制服を来ていたので、歳はおそらく自分とそう変わらないだろう。しかし、うつむき加減で自分の足下を見て歩く彼女の表情はやや暗く、何か作り物のような雰囲気を醸し出していた。

しかしその女性は、近寄りがたい…と一瞬思った綾を見つけるとにこりと笑って話しかけて来た。

 

「こんにちは。あの、もしかして会議に?」

 

「えっ?あっ?は、はい!そうです。あの…上級戦闘員の…」

 

「ああ!私もなんですよー!はぅー、よかったー。1人で入るの心細かったんです」

 

その雰囲気からは想像がつかない喋り方と、コロコロと表情を変え、親しみやすい笑顔を向けてくる女性に綾はすぐに好感を持った。

 

「あの、私、神崎綾って言います。よろしくおねがいします」

 

「ええっ?あなたが綾さん!?はわー。噂は聞いてます。成績は殆ど1位ですよね?しかも1ヶ月前に人妖と戦闘して生還したとか。あの、お怪我はもう?」

 

彼女の身長が10㎝くらい縮んだ気がした。綾が、なんだか可愛い人だなと思って見とれていると、彼女ははっとして付け加えた。

 

「す、すみません。私自己紹介してなかったですね。私は、如月シオンと言います。父がロシア人で、母が日本人なんです。といっても、ロシア語は全く話せませんけどね~」

 

と言ってシオンは「んふふ」と笑った。綾も人懐っこい性格をしているので、2人はすぐに打ち解けることができた。シオンは実戦経験こそ無いものの、シミュレーション訓練では綾に迫る成績をたたき出していた。学校の成績も優秀でスポーツも得意だが、将来はどこかの家のメイドになりたいと、どこかずれた夢を語り綾は思わずコケそうになった。

 

 

 

会議は綾とシオンを含む上級戦闘員5名とオペレーターの幹部が3名。ファーザーは例によって音声のみでの参加となった。円卓に座った8人全員、正面のスクリーンとスピーカーから聞こえてくるファーザーの声に耳を傾けた。

 

『今日集まってもらったのは他でもない。今後の人妖討伐作戦についてだ。正直に言って、作戦において戦闘員が帰還できる確率は低い。だが、ここにいる神崎綾が1ヶ月前の人妖討伐任務からの帰還に成功した。今日はその体験を全員に話してほしい」

 

「あ、は、はい」

 

いきなり話を振られ、若干戸惑ったものの、綾は思い出せるだけのことを全員に話した。

 

『綾、ご苦労だった。人妖の生態についてはかなり貴重な情報だ。次は悪いニュースだが、先日廃工場に人妖討伐に向かった由里と由羅の2人は、3日経った今でも連絡がつかない…。おそらく、奴らの手に落ちたものと思われる。だが、彼女らの作戦の前にオペレーターが工場内の数カ所にカメラを付けることに成功していた。ボイラー室のカメラに映っていた映像なんだが…まずは見てもらおう…』

 

その映像に、会議室にいた全員が息をのんだ。最初こそ優勢だった由里と由羅だが、次第に技のキレやスピードが無くなり、徐々に劣勢に追い込まれて行った。後半はほぼ一方的に2人が交互にいたぶられるのみとなり、男の拳がボイラーに縛り付けられた2人の腹部にめり込むたび、オペレーターから小さな悲鳴が上がった。最後は由里と由羅の2人が男の性器に奉仕を開始したところで映像が終わった。

 

『綾の証言から、人妖は人を魅了するチャームと呼ばれる体液…人間で言えば唾液や精液のようなものだが、それで人間の精神を操ることが分かった。しかし、この映像では人妖の動きや特徴、2人の急激な戦力低下から、おそらく汗にも何らかの効果があると考えられる。気化した汗や体臭に、人間の筋力を低下させる効果があってもおかしくない』

 

「ひどい……こんなことって……」

 

シオンが複雑な表情を浮かべながら、祈るように机の上で手を組む。綾も複雑な心境だった。自分も友香がいなければ、あの2人のように人妖の手に堕ちていたことは自分が一番良く知っていたからだ。

 

『2人には気の毒だが、我々は先に進まなねばならない』

 

重い空気の会議室に、ファーザー声が響いた。

 

『次の人妖の居場所が分かった。アナスタシア聖書学院。ここでも男性型の人妖の反応があった』

「げふっ…うあぁ…」

 

何度もお腹に突き刺さる、金属バットの冷たく無慈悲な感触。マッチョはサディスティックな表情を浮かべながら、まるでゲームを楽しむように私のお腹を嬲り続けた。

やがて、私がぐったりとうなだれると、お腹に向けられた金属バットを急に私の股間に当て、ぐりぐりと押し付け始めた。

 

「あ!?ああんっ!?うぁ…や、だ、ダメ…」

 

「ぶふふふふ…へぇぇ、10代にしては結構敏感なんだねぇ…?」

 

「おいおい、当たり前なこと言うなよ。こういうのは慣れてない方がいいんだぜ?」

 

金属バットの先の角の部分が、ジャージの上から私のクレヴァスを押し広げ、中心の突起を執拗に攻め続ける。先ほど感じた苦痛と、現在感じている快感がない交ぜになり、自分の身体のあちこちが熱くなってくる。

 

「くぅん…あっ…あぁん……も、もう……あああっ!?」

 

散々私の股間をイジめていた金属バットが急に胸に移動し、同世代のクラスの子に比べると大きめな私の胸を押し潰した。左の胸をぐりぐりと押しつぶした後は、先端で私の乳首を転がすようにこね回し、すぐに右の胸を同じように攻め始めた。下着を付けず、体操服の化学繊維越しに敏感な部分を擦られ、私の胸はたちまち服の上からでも分かるくらいエッチな形へと姿を変えて行った。

 

「うひひひ…乳首がコリコリに立っちゃってるよ。ほぐしてあげないとねぇ…」

 

「え…?ちょ…今…触られたら…んはぁあああ!!」

 

急に私を後ろから羽交い締めにしていた太っちょが、両手で私の胸を揉みし抱きながら乳首を親指と人差し指で転がしたり、押しつぶしたりしはじめた。マッチョの金属バットは再び私の股間へと攻める箇所を変え、私は屈辱に耐えながらも2人の執拗な攻めに屈し、だらしない声を上げ続けるしかなかった。

 

ズムッ!!

 

「ごふっ!?…うぁ…なんで……」

 

目を瞑り、官能的な快感の浮遊感に身を任せていた私を、マッチョの丸太のような拳が私の腹部を押し潰し、一気に苦痛の底へたたき落とす。

 

「うげぇっ……そ、そんな…なんでいきなり……」

 

「けっ。一人でよがってんじゃねぇよ。お前が生かされている理由を考えるんだな」

 

「い…生かされている理由…?」

 

「ぶふふふ、そうだよ。君は僕たちの餌さ。僕たち人妖に生気を提供するだけのね。君はただ僕たちに好きなように嬲られて、老廃物を浴つづけていればいいんだよ」

 

「なんで自分がここにいるかもわからねぇだろ?まぁ記憶を一部消されてるから覚えてなくても当然だがな。まぁ、要はお前は用無しだったってこった。安心しな、あっちでは捨てられても、俺たちは優しいから壊れるまで使ってやるからよ…」

 

何?何を言っているの?あっちってどこのこと?捨てられた?私が?餌?私が?用無し?私が?わからない。わからないよ。どうなってるの?ここはどこなの?私はアンチレジストの訓練所にいて、実戦シミュレーションを受けて、それから……それから?

 

ズムゥッ!!

 

「げぇぶっ!?……あぁ……」

 

思考を一瞬で真っ白にするほどの衝撃。また、何もかもがどうでもよくなてくる。2人は何か囁き合うと、太っちょが私を解放し、2人に対し正面を向かされる。

 

「さて、そろそろフィニッシュだ。イッちまいな」

 

「ぶふふ…僕たちもイクよぉ!!」

 

ズギュッ!!

 

ドギュゥッ!!

 

「がふっ!!ごぶあぁぁぁ!!」

 

マッチョは鳩尾、太っちょは胃をそれぞれ押しつぶした。そして、マッチョはさらに強引に拳を奥に埋め、太っちょは胃を握りつぶすようにえぐった。

 

「ぐぶっ!!??ごぶぇあぁぁぁぁ!!」

 

ビクビクと身体が痙攣し、胃液が逆流して床に水たまりを作る。両手で腹部を抱えてうずくまると、マッチョが私の髪を掴み顔を天井に向けさせた。裸電球が頼りない光を放っている。そして男2人は私を見ながら自分の性器を一心不乱にしごいていた。

 

「はぁ…はぁ…たまんねぇな…エロい顔しやがって……」

 

「ああああぁ…あぁ…イク…イクよぉ…いっぱい出るよぉ…」

 

左右から太い肉棒が私に向けられ、男達の呼吸に余裕がなくなってくる。出るんだ…あの白くて凄い臭いのする液が…またたくさんかられちゃうんだ…たしかチャームとか言ってたっけ…。

 

「くぅぅぅ!!限界だ!!おら!口開けて舌出しな!!」

 

「え?こ…こうですか…んぁ…」

 

「ああ!ああああ!!イク!イクよぉ!!ドロドロに濃くて洗っても落ちないくらいのをその可愛い舌にたっぷりかけてあげるからね!!」

 

どびゅっ!!ぶびゅるるるるうぅぅぅぅl!!

 

ぶびゅううううう!!どぷっ!!どぷっ!!どぷっ!!

 

「あぶうっ!んあああぁぁぁぁぁ!!!えぅぅぅ………ろ、ろまらないぃ……」

 

2人は容赦なく私の口や舌、顔をめがけ大量の体液を放出した。私だって友達とエッチなビデオ位は見たことがあるけれど、精液って言うの?こんなに大量に出る男の人はいなかった。私は溺れそうなほど大量の液体を受け止めていた。不思議な幸福感を感じながら…。

捕らわれてから、もう何日が経過したのだろうか?この光が全く差さない地下室では、徐々に時間の感覚が失われ、今はもう昼なのか夜なのかもわからない。もっとも、「捕らわれた」といっても、ここはそこそこの広さがあり、トイレやシャワー室の他、食事や着替えもいつの間にか置かれているため生活にはほとんど不自由していない。数時間前に出された食事はミネストローネと冷製のパスタ、着替えは私の高校で使うような体操服の上着と、えんじ色のジャージだった。問題は無かった。あるとすれば、ここがどこなのか?なぜ自分はここに居るのかまったくわからないということだ。

ガチャリ…と、ドアが開く音がして私はここに来てから幾度と無く味わった絶望に苛まれる。今日は…2人。1人は筋肉質のマッチョな男。もう1人は脂肪が蓄積しすぎた太っちょだ。2人は小声で何事か話し合うと、真っ直ぐに私に向かってきた。

当然、全速力で逃げる。しかし、いつもは広いこの地下室も、なぜか「相手」が入ってくると同時にあちこちの壁が閉まり、広さはたちまち10畳ほどの広さしかなくなった。

 また、はじまる…。

何度目かの抵抗を試み、訓練で習った体術を繰り出すも、太っちょの異常に厚い脂肪には私の攻撃が全く利いていなかった。

ズギュウッ!!

一瞬のうちに、私の腹部に太っちょの拳が埋まる。数瞬間をおいて、すさまじい衝撃と鈍痛が私を襲った。

「う…うぐえあああぁぁぁぁぁ!!!」

自然と口から悲鳴とも叫びともつかない声が漏れる。腹部を中心に苦痛が広がり、膝が笑い出し、口からは大量に分泌された唾液があふれる。太っちょは私の反応に満足そうな笑みを浮かべると、体操服を胸が見えるくらいまで引き上げ、むき出しの私の腹部にまた強烈な一撃を見舞った。

「あぶっ!?ぐぅえあああぁぁぁ!!」

胃液があふれ、床にビシャリと落ちる。一瞬目の前が暗くなり、男にもたれかかるように倒れたところをを狙って、鳩尾を突き上げられた。

「うぐぅっ!!あ……あああぁ……」

「ぐぶふふふふ…もうイッちゃいそうなのかい?もっと頑張ってくれないと全然満足できないよ?」

奥襟をつかまれ、地面に倒れることも許されない。私はただ口からだらしなく涎をたらしながら太っちょを見上げるしかなかった。

「おっと、俺もいることを忘れるなよ?」

ズムウッ!!

気がつくと、マッチョの丸太のような膝が私のお腹に突き刺さっていた。呼吸困難に陥り、悲鳴すら上げることもできない。

「おい、お前勝手に楽しんでるんじゃねぇよ。俺にも楽しませろ」

「へへへへ、わかってるよ」

太っちょが私を背後から羽交い絞めにすると同時に、いつの間にかマッチョは金属バットを取り出し、いたぶるように私のお腹を嬲った。

ズンッ!

「うぐうっ!」

ズンッ!

「ぐふっ!…あぁ…」

ズンッ!

「あうっ!?…や、やめ…」

ズンッ!

「うぅあぁぁ!!」

等間隔の無慈悲な攻撃。私はただそれを受け、男の望むとおりの反応を示すしかない。しばらくすると、太っちょは自分の股間を私の腰に当ててきた。大きくなってる…。見れば、マッチョの穿いているジーンズも股間部分が大きく隆起している。

…興奮してるの?

私は苦しみと同時に、自分の中の女としての悦びを感じていた。

ご機嫌いかがでしょうか?

number_55です。


case:TWINS、本日連載終了しましたが、個人的には悔いの残る、というかいろいろと課題が見えた作品となりました。


反省点をあげればきりがないですが、まずは以前から暖めていた「双子キャラ」の描写の難しさ。

個人的に結構魅力あるキャラが産まれてくれたと思っていたのですが、その魅力を半分でも引き出すことが出来たかと思うと正直微妙です。

また、性格が違う2人でもどうしても攻めがマンネリ化してしまい、数種類考えていた双子ならではの攻めも結局1つしか出すことが出来ず。。。

結局プロットにあった構想はあまり使えずにラストまで突っ走ってしまいました。


また、ラストシーンへのつなぎも少々無理矢理感があったと思います。ラストシーンは初期のプロットから決定していたのですが、展開がうまい具合に発展しなかったことと、納期のことも考え、ややなし崩し的に纏めてしまったという感じです。

最後に、プロット作成の段階でいつも裏テーマを決めるのですが、それが今回足を引っぱり前回のようにスムーズに物語の中にとけ込ませられず、浮かせてしまったような感じです。

すべて私の貧弱な表現力や描写力の問題ですね。今回の話はいつかリメイクでしたいと思っています。

さて、次回はどんなキャラクターが産まれてくるのでしょうか。自分でも楽しみです。

最後になりましたが、読んでいただいた方。ありがとうございました。 

「ああ……うぁぁ……」

 

「ぐふふふ…ほら…もっと、もっとだよぉ…」

 

ドギュッ!ズムゥッ!!

 

「ぐふぅっ!!うぅあぁぁ!!………あ…あぁ…」

 

「ぐふふふ、い、いいよぉ…。ゆ、由里ちゃんの表情もとっても素敵だ。も、もっと苦しめてあげるね…」

 

「や……やめろ……」

 

男と由里が足下を覗き込むと、膝立ちになった由羅が必死な形相で男を見上げていた。腕は後ろ手に拘束されているため、腕を後ろで組んだまま正座をしているような体勢になってる。

 

「ゆ、由里に、これ以上酷いことをするな…この変態…女の子動けなくして、いたぶって恥ずかしくないの?少しは恥を……ぐふぅっ!?」

 

男はむき出しの由羅の腹につま先を埋めた。無防備の中でまともに攻撃を食らってしまい、由羅の身体がくの字に折れる。

 

「ぐふふ、少しは言葉を慎んだ方がいいんじゃないのかい?だ、大好きなお姉ちゃんが、もっと苦しんじゃうよ?」

 

男はそう言うと、由里の下腹部、子宮の位置を狙って右手を手首まで埋めた。凄まじい衝撃が由里を襲う。

 

ズギュウッ!!

 

「あぐうぅぅぅぅぅぅっ!?うぇ……らめ……そこはぁ……」

 

由里の口から飛び出た舌を伝って、唾液が糸を引いて床に落ちる。女性の急所を突かれ、由里は軽い呼吸困難に陥り、白目を剥いたまま半分失神した状態になった。

 

「ゆ、由里!?…げほっ…こ、この…卑怯者。由里に何かあったら…絶対許さないから!」

 

 

「…………さ、さっきから変態とか卑怯とか、ず、ずいぶんな言われ様じゃないかぁ。そ、そんなにお姉ちゃんの苦しむ顔が見たいのかい?」

 

ドギュゥッ!!

 

「ぐぶあぁっ!?」

 

華奢な由里の腹部が痛々しく潰され、半ば意識を失っていた由里の身体がビクンを跳ねて、床に透明な胃液が飛び散った。男はうわ言のようにつぶやきながら、由里の鳩尾から下腹部下腹部にかけて何度も何度も攻撃し続けた。

 

「ぼ、僕だって好きでこんな風に産まれて来たんじゃない!ほ、本当は普通の人妖だったり、に、人間に産まれてきたかったのに!な、なんで僕だけこんなに醜くて、せせせ、賤妖なんて呼ばれなくちゃいけないんだ!でも生きなくちゃいけないから……こ、こうするしか無いじゃないか!」

 

ドギュッ!ズブッ!ズムッ!ボグッ!ズギュゥッ!!

 

「あぐっ!?ぐふうっ!うぶっ!ごふっ!うぐうっ!!」

 

 

由里は何度も何度も悲鳴を上げ、由羅は泣きながら男にすがりついてやめてと懇願した。男の目にも若干涙が浮かんでいた。
 

 

「や…やめて…お願いだから…ゆ、由里が死んじゃう……由里をこれ以上……」

 

「や、やめてほしければ、さ、さっき由里ちゃんが僕にしたことをしてもらおうか?こ、これも生きるためなんだよ。ほ、ほら、これをしゃぶって…」

 

男は由羅に向かってぐいと腰を突き出した。数十分前に放出したばかりだというのに、男の男根は隆々と空を仰いでいる。

 

「くっ…わ、わかったわよ…。そ、その代わり、絶対に由里に手出ししないで…」

 

「そ、それは僕が満足できるかどうかだね。つ、つべこべ言わずに、は、早くしゃぶれ!」

 

「なっ…むぐぅ!!??んむっ……んん……」

 

男は由羅の頭を掴むと、無理矢理自分の男根を由羅の口に押し込んだ。しかし、由羅は決して口を動かそうとはせず、男を睨みつけるだけだった。

 

「ほら…動いてくれないと気持ちよくなれないよぉ…」

 

「…………」

 

「し、仕方ないなぁ。ててて、手伝ってあげるよ」

 

「むぐぅ!?ぐっ!?あぅぅ!!んんんぅ!?」

 

男は由羅の頭をわしづかみにすると、力任せに上下に揺さぶった。何度も舌を男根でこすられ、喉奥を突かれ、由羅は呼吸もままならず胃液がこみ上げてくるのを感じた。

 

「うぶっ……うぇ……ぐぶぅ……」

 

「ど、どうだい?苦しいだろ?さぁ、わかったら自分でしてみてよ…」

 

「…………」

 

しかし由羅は目に涙を浮かべながらも決して自ら動こうとはせず、男を睨み続けた。

 

「ぐふぅ…強情だなぁ…まぁ、それなら勝手に楽しませてもらうだけだけどね」

 

男はゆっくりとしたストロークで由羅の口内を犯した。亀頭を重点的に舌にこすりつけ、先走りを塗りたくり由羅の表情の変化を楽しんだ。 
 

「ほらほら、わかるかい?だ、段々僕の味が濃くなってくるのを…で、出る…もうすぐ出るよぉ…」

 

「むっ…むぐうぅ……んぁ……」

 

由羅は初めて味わう男の味に戸惑いながらも、徐々に頭の芯が痺れ熱を帯びてくるのを感じていた。表情は弱々しくなり、上気した頬で、半ばうっとりした様子で男に上目遣いの視線を送っていた。

 

「ぬぅぅぅ…い、いい顔になってきたねぇ…。ううぅ…そろそろ本当に出るよ…あああ…出る!出るよぉ!!」

 

男は男根を一気に口元まで抜くと、先端を由羅の舌先に付けたまま一気に放出した。

 

ぶびゅつ!!ぶびゅるるるるるる!!

 

「むぐっ!?んふぅぅぅぅぅぅ!!!???」

 

「ほ、ほら…ああああ……舌全体で味わわせてあげるあらね、と、止まらないよぉ…」

 

どびゅぅぅっ!!ぶびゅっ!!!ぶしゅぅぅぅぅっ!!

 

「んむぐぅぅぅぅ!!??ごくっ!ごくっ!ごくっ!んんんん……ごきゅっ!…んふぅぅぅ!!」

 

あの強気な由羅が、涙目で必死に自分の体液を飲み込んでいる。男はこれ以上無いほどの征服感と快感を味わっていた。

 

「ふぅぅぅぅ…ああ……こんなにたくさん出たよぉ……」

 

じゅぽぉぉ!

 

「う……うぐ……うぇぇぇぇぇぇ……」

 

男がゆっくりと由羅の口から男根を抜く。由羅はたまらず飲み込んだ体液と胃液をびちゃびちゃと床に吐き出した。

 

 

「げぶっ……うぁ……こ、これで満足でしょ…?早く…由里を離してよ…」

 

由羅は口の周りに大量に白濁の残滓をこびり付けたまま男に言った。

 

「ぐふふふ、さ、最高だったよ由羅ちゃん。ゆ、由羅ちゃんもお姉ちゃんと間接キスが出来て嬉しかったんじゃないのかい?そ、それにしても、いい顔になったねぇ。口の周りが僕のもので真っ白だよ。ゆ、由里ちゃんは離してあげるよ…や、約束だからね…」

 

男は由里を縛っていたロープをほどくと、由里の身体は糸の切れた人形のように床に座り込んだ。それと同時に由羅の手を縛っていたロープも解き、自分の男根を握らせた。

 

「さ、さっきは無理矢理僕がしちゃったからね…こ、今度は由羅ちゃんが自分からしてもらおうかぁ?」

 

「きゃぁっ!こ、こんなもの触らせないでよ…ど、どうすれば…?」

 

由羅は男に対して非難の言葉を浴びせる。しかし、人妖ほどではないにしろ、男の一番強力なチャームを直接飲まされたせいか、うっすらと顔は上気し、目はとろんと熱を帯びていた。

 

「こ、このまま上下にしごくんだよ。や、優しく先っぽを擦るようにね…」

 

「ううっ…こ、こう?」

 

ちゅこちゅこと肉棒が由羅の滑らかな指でしごかれる。男のものは快感からたちまち硬度を取り戻し、倍ほどの大きさに膨らんで行った。

 

「あ…ああっ…。こ、こんなになってる。ふ、太い…」

 

「ゆ、由羅ちゃん…こ、こっち見て……口開けて……ほらぁ……」

 

男は自分の舌を出して、由羅の口をめがけて唾液を垂らしてた。由羅は最初驚いた顔をしたが、素直に口を開けてそれを受け止めた。

 

「えっ?……あっ……んぁ……ん……こくん……こくん……んふぅ……」

 

「ほら…もういいだろう…さ、さぁ、由羅ちゃん、な、舐めてくれる…?」

 

「ん……ああん……んむっ……んっ…んっ…んっ…」

 

由羅は完全に男のチャームに堕ちてしまった。不慣れながらも、一心不乱に男根に奉仕を続ける。

しばらくして由里が目を覚ますと、自分のすぐ隣で男は由羅によって限界寸前まで昂らされていた。

 

「んっ…んふぅ…んく…んく…ぷはっ…で、出そうなの?さっきからビクビクしてるよ……はむっ…」

 

「あ……ゆ、由羅……?何やって……」

 

「んんっ!?ゆ、由里!?や……これは……違……」

 

「な、何してるんだい?由羅ちゃん、もうすぐ凄いのが出るよぉ…お、お姉ちゃんを守るんだろう。は、早く続けないと、またお姉ちゃんが酷い目に遭うよぉ…」

 

「う…そ、そうよ…これは、由里のために…仕方なく……んむうっ…」

 

由羅は自分を納得させるようにつぶやくと、再び喉奥まで男根をくわえこんだ。しばらくは信じられないという様子で呆然と由羅の痴態を見ていた由里だが、やがて意を決したように自分も男の肉棒に奉仕を開始した。いや、男の肉棒越しに、由羅にディープキスをしたという表現の方が正しかった。

 

「んむうっ!?ゆ…ゆりぃ?んむっ…そんら…」

 

「むふぅっ…ゆらぁ…好きだよ……もう、何があっても……2人で…」

 

突然始まった予想外のダブルフェラに男の興奮は最高潮に達し、肉棒がさらにふた周りほど膨らんだ?

 

「おおお!?おおおおお!!ど、どうしたんだい2人ともぉっ!?そ、そんなことされたらぁあああああ!!」

 

男から見れば、天使のような双子が自らの禍々しい肉棒を奪い合っているように見えるが、2人はもはや男の存在など気にせずお互いの舌と唾液を求め合っていた。しかし、その動きが男にこの上ない快感と興奮を与えているのも事実だった。

 

「由羅ぁ……堕ちる時は一緒だよ……私達…ずっと一緒だよ…」

 

「んむぅ…ゆ、由里ぃ…いいの?…こんな私でも……由里ぃ……大好き……」

 

男が歓喜の悲鳴とともに盛大に白濁をぶちまけたと同時に、2人の頭も真っ白に染まっていった。

 

 

 

由羅……もう私……由羅だけいればもう何もいらない……

 

 

由里……私もだよ……もうアンチレジストも…人妖も…ファーザーも…どうでもいい…

 

 

ずっと……一緒だよ……

 

 

ずっと……一緒だよ……









レジスタンス case:TWINS

口内をまさぐる粘ついた感触。まるで太いナマコが口の中を這い回っているような錯覚に襲われる。由里は嫌悪感と共に目を覚ますと、目の前には男の顔があり、一心不乱に自分の唇を吸っていた。

 

「む?…んん!?…んんむぅ!!」

 

あわてて顔を背け、男と繋がった唇を離す。口の中にはまだ男の生臭い体液の味と、今流し込まれた唾液の味が残っていた。

 

「お、おはよう由里ちゃん。お、おいしい唾液だったよ…ととと、蕩けそうだ…。ゆ、由羅ちゃんも全然起きないから、が、我慢できなくてねぇ…」

 

「ゆ、由羅!?き、キモオタさん…な、何でこんなことするんですか?わ、私…」

 

「は、初めてだったのかい?ぶふふ…大丈夫だよ。もう由里ちゃんは僕のものだからね。僕以外の人とキスなんてしないよ。ぼ、僕の体液にはね、び、微力ながら相手を魅了する力があるんだ。き、きっと、だんだん我慢が出来なくなってくるよ」

 

由里は先ほど飲まされた男の体液の味を思い出して吐き気を催した。しかし、それ以上に後ろ手に手を縛られ自分の足下に倒れている由羅の安否が気になった。仰向けに倒れ、完全に失神している。

 

「こ、こんなこと…お、お願いします…もう止めてください…由羅…由羅と、倉庫の人たちを助けてください…」

 

「ぶふふふ、そ、そうはいかないよ。ぼ、僕も生きるためにはそれなりの糧が必要だからね。ま、まぁ倉庫の女達は飽きたから解放しても良いけど、君たち2人はそう簡単に手放せないなぁ…と、特に、ゆ、由羅ちゃんのお腹を殴られた時の表情がたまらなくてね…ふ、普段強気の顔が苦痛に歪んで…も、もっと虐めたくなってくるよ!」

 

「や、やめて!お願いします、私は何でもしますから、ゆ、由羅にこれ以上…」

 

「ぐふふ、さ、さっきもそう言って、ぼ、僕のを舐めてくれたよね。ほ、本当に妹思いだ…。じ、じゃあ由羅ちゃん以上に良い表情を見せてくれるかい?」

 

「えっ…?」

 

「ぐひひひ、ゆ、由羅ちゃんの分までいたぶらせてってことだよ。お、お腹をたくさん虐めてあげるから、たくさん感じてねって意味だよ…。こ、怖いかい?」

 

当然怖いに決まっている。先ほどの戦闘で男の重い拳を何発も受けて来たので、その威力は身体で理解している。しかも今自分はボイラーに縛り付けられ、男の攻撃をかわすどころかガードすることも出来ない。その上背後に密着したボイラーのせいで、衝撃を後ろに受け流せずにダメージが100%自分に降り掛かってくる。想像を絶する苦痛が自分を襲うだろう。

しかし、それ以上に由羅を助けたいという気持ちが勝り、由里は男に進言した

 

「わ、わかりました…。な、何でもしてください…。い、虐めたいなら…たくさん虐めていいですから…だから由羅は…」

 

男はニタリと満足そうに笑うと、じっくりと時間をかけて拳を引き絞り、おびえた表情の由里の腹に狙いを定めた。

 

「あ……ああ……」

 

由里の身体が恐怖のために小刻みに震える。

 

「ほ、ほら…いくよ…いくよぉ…」

 

「ゆ…由羅……私………頑張るから………」

 

ドギュウッ!!

 

男は容赦なく由里のくびれた腹部に拳を埋め、しばらく抜かずに腹の感触を味わった。

 

「う…うぐぅっ!?………あ、あうぅ……」

 

「ほらぁ…顔を良く見せてぇ…」

 

男は右手で由里の腹を嬲りつつけ、左手で髪を掴み顔を上げさせる。

 

「あ…あぐ…く、苦し……えぅ……」

 

「んん~。思った通り由里ちゃんの方が腹筋が弱いみたいだねぇ。柔らかくて、内蔵の感触まで分かるよ…表情も…」

 

ズッ……ズギュッ!!

 

「がっ…がはぁっ!!あ…みぞ…おちに…」

 

男は勢いよく由里の腹から拳を引き抜くと、すぐさま鳩尾を貫いた。由里は一瞬目の前が暗くなるほどの衝撃を受けたが、それは絶妙に急所から外され、失神するまでは至らなかった。男は無理矢理上げさせている由里の顔が苦痛に歪むのを満足そうに覗き込んでいた。

 

「ぐふふふふ…いいねぇ…由里ちゃんの弱々しい表情もそそるよぉ…。ゆ、由里ちゃんはじわじわ攻めた方がいいねぇ…」

 

男は鳩尾に埋まったままの拳を捻り、さらに奥まで埋めた。男の力任せの攻めを、自由を奪われている由里はただただ受け止めるしかなかった。

 

グリィィィィ!!

 

「ぐっ!?ぐあぁぁぁ!!がっ…あぐっ…や……やぁぁ……」

 

ぴったりとしたレオタードによって浮き上がらされた由里の滑らかなラインを描く胸の間に、男のゴツゴツとした腕が痛々しく突き刺さっている。

 

「むふふふ……いい……いいよぉ……キ、キスしようかぁ?」

 

「んむっ!?……ぐ……んんむぅ……」

 

男は拳でぐりぐりと由里の腹部を嬲りながら、同時に由里の口内を蹂躙した。上唇と歯の間を舐め、舌の裏側をくすぐり、舌全体を啜った。由里は男の唾液の効果で徐々に頭がぼーっとなり、身体の中心が熱を帯びる感覚を味わった。

 

「ぷぁっ……うぅ……腕……抜いて……下さい」

 

「むふぅ…美味しいよぉ…う、腕は抜けないなぁ…む、むしろ増やしてあげるよ?」

 

男はおもむろに顔を上げさせている左手を離し、右手を鳩尾に埋めたまま左手で由里のへその辺りを容赦なく突き刺した。レオタードが男の拳を巻き込み、痛々しく陥没する。

 

ズギュゥッ!!

 

「がぶぅぅうう!!あ…ああ…」

 

予想外の上下への同時攻撃に、由里の小さな桜色の唇からはあふれた唾液が一筋流れ伝い

、垂れがちの目が大きく見開かれた。

 

「おおおお…こ、これはいい…じゃ、じゃあ、両手で胃を挟み込んであげるよぉ!」

 

ボグッ!!ズギュゥッ!!!

 

「げふぅ!!う…うぇぁぁぁぁぁ………」

 

両手の拳が同時に由里の腹部に埋まり、左右から胃を押しつぶした。先ほど無理矢理飲まされた男の白い体液が逆流し、胃液と一緒にボタボタと地面に落ちる。

 

「あああ…凄いよぉ。ぼ、僕のここも、凄いことになってるよぉ…」

 

男はスラックスのジッパーを下げると、バネのように勢い良く肉棒が跳ね上がり、自分のでっぷりと突き出た腹に当たった。赤黒く攻撃的に勃起したそれは男の興奮の度合いを表し、今にも由里に襲いかかってきそうな勢いだった。

 

「あ…ああ…そ、そんなに大きく…で、でも…私……もう……」

 

「ぐふふふ、ゆ、由里ちゃんのせいだからね。ど、どうやって鎮めてもらおうかなぁ?」

 

男は再び由里の髪を掴み、拳を握りしめると、足下からくぐもった声が聞こえた。

 

「ん……ゆ、由里…?」

 

由羅が目を覚ますと、真っ先に由里の惨状が目に飛び込んで来て、顔から血の気が引いて行った。

 

「ん…くぅ……わ、私…どうなって…?……!?こ、これは」

由羅が目を覚ますと、すぐに自分の体の異変に気づいた。由羅はボイラーのレバーや支柱に手足を大の字で開かれたまま固定されていた。腕や足にはギチギチと痛々しいほど工事用のナイロンロープが食い込み、ロープの跡が赤く腫れていた。

「ぐふふふ、い、いい格好だよ由羅ちゃん。無防備で。な、何も出来ないでしょ?」

「お前…この…卑怯者!な、何する気よ?」

精一杯強がって見せるが、その目には明らかに恐怖に怯える色をしていた。このような状態にされて、男に自分がされることといえば決まっている。犯されるか、いたぶられるか、最悪殺されるか…。どちらにしろ、ろくな目にあわないのは決まっている。視線を泳がすと、男の後ろに由里が倒れていた。由里は両手を後ろに回され、由羅と同じ工事用のロープで手首を縛られ寝かされていた。

「ゆ、由里!?どこまで外道なのお前は!?」

「ひひひひ…さぁて、目が覚めたばかりで悪いけど、さ、早速楽しませてもらうよ…。ぼ、僕のここも、もう爆発しそうになってるからね…」

男が由羅の前に立ち、頭を掴んで下を向けさせる。

「あっ!な、なにす…あぁぁ……」

由羅の視線の先には、はちきれそうなほど膨れ上がった男の男根が、スラックスのファスナーの間からそそり勃っていた。

「ふ、2人が可愛過ぎるせいで、こ、こんなになっちゃったんだよ!せ、責任取ってくれるよね?」

「ど、どうしろって言うのよ!?そんな汚いもの…早くしまってよ…」

初めて見る男性器に顔を真っ赤にして目をそらすが、頭をがっしりと押さえつけられているために嫌でも視界に入ってしまう。由羅としても興味が無いわけではない年頃なので、目をそらしてもまたチラチラとそれを盗み見てしまう。

「ぐふふ…興味津々なんだね由羅ちゃん。さっきからもの欲しそうに見ちゃって…」

「なっ!?ち、ちがっ…こんなの、全然」

「そ、それなら、もっと大きくなるように協力してもらおうかぁ?」

「き、協力って……何すれ……ぶぐぅぅぅぅ!!」

背中に感じる冷たく固い金属の感触と、男の鈍器のような拳が与える激痛。その間に挟まれ、由羅の細い腹部は痛々しいほどひしゃげられていた。

「がっ!?がっ…あ…」

「ぐふふふ、い、いいよぉ…。ぼ、僕はこういうのじゃないと興奮しないからねぇ…も、もっと苦しんでる顔を見せておくれ」

「こ……この……変態……うぐあぁああ!!」

「いい…いいよぉ…お腹を殴られてる女の子の表情はこの上なく卑猥だねぇ。も、もっと見せて」

ズギュッ!ドブッ!グチッ!ドギュウッ!!

「ごふっ!!ぐはぁあ!!…や、やめ…うぐっ!?ぐはぁああ!!」

絶え間無く与えられる苦痛。由羅は口の端から飲み込めなくなった唾液を垂らしながら喘ぎ続けた。

 



数分後、由里が目を覚ますと視界に映ったのは男の後姿と、その向こうでボイラーに縛り付けられぐったりとうなだれる由羅の姿だった。手は縛られていたものの、自由な足で這うようにして近づいていった。

「ゆ、由羅を離して!…お、お願い、もうやめて!わ、私が…私が何でもするから!」

「ぐふふ…お、お、お姉ちゃんはずいぶんお寝坊さんなんだねぇ…」

「……由里……ダメ…由里だけでも……ここから…逃げ……」

「だめだよ!お願い!私が何でもするから!これ以上由羅に酷いことしないで!」

「ひっ…ひひひ…何でも…かい?」

「うん、何でもする!だから…」

「由里……だめ……」

「ぐふふ…それじゃあ、こ、これの相手をしてもらおうかなぁ…」

「ひ、ひっ!?」

男は由里に向き直ると、露出しっぱなしの男根を由里に見せつけた。それは執拗なほどの由羅への攻撃で男の興奮が最高潮に達し、赤黒く変色した先からは透明な液がにじみ出ていた。あまりのグロテスクさに由里は小さく悲鳴をあげてしまう。

「ひひひひ、お、お姉ちゃんも見るのは初めてかい?な、何でもするって言ったよねぇ?じ、じゃあ、由羅ちゃんの前でこっち向きに膝まづいて…」

由里は素直に由羅の前に行くと、男に向かって両膝をついた。

「こ、これでいいの?な、何をすれば…?」

「ぐふふふ…僕のこれを舐めて、もっと気持ち良くしてもおうかなぁ?」

「なっ!?この変態!!どこまで性根が腐って…うぐうっ!!」

男のあまりの要求に激高した由羅だが、すぐに男の拳が由羅の腹に突き刺さる。由里の目の前で男の男根がびくりと跳ねた。

「わ、わかりました!舐めます!舐めますから…これ以上由羅をいじめないで!」

「ぐふふふ…いいよぉ…それじゃあ、は、早くしてもらおうか?」

由里は当然フェラチオなど未経験であるどころか、なぜ男が男根を舐めさせたがっているかすらも理解できなかった。しかし、それ以上に由羅を助けたいという気持ちが勝り、しばらく躊躇いがちに男根を見つめていたが、意を決して口に咥え込んだ。

「んむっ……うっ……おぇ……ん……んんん……」

男根は強烈な匂いと味を放っており、思わず胃液が逆流してくるのを感じたが、必死に耐えて咥え続けた。しかし、舐めろと言われたもののどうやっていいかわからず、ただ舌先でおずおずと先をくすぐるくらいしかできなかった。

「んん~。おっ…おお…。くくく、ゆ、由里ちゃんが、ぼ、僕のを…。で、でも、やり方が分からないみたいだねぇ…。口をすぼめて、くちびる全体で上下にしごいて…あ、あと、吸いながら舌を絡めて舐めまわしてぇ…」

「げほっ…うぇ…や、やめ…由里……こんな、こんなの…」

由羅は自分の足元で繰り広げられる痴態に涙を浮かべながら、自分のせいで由里をこんな目にあわせてしまったと思い、胸が張り裂けそうな気分を味わっていた。

「むちゅっ…んむ…ん…んん……んくっ……」

「そ、そうだよ…こ、このぎこちなさが…た、たまった唾液は音を立てて飲み込むんだよ…こ、こっちを見ながらね…」

「む…むぅ……ごきゅ……ごきゅ……ごきゅ……んふぅ…んんぅ……」

由里は素直に上目づかいで溜まった唾を音を立てて飲み干した。年端も行かぬ魔法少女のような格好をした少女が、許しを請うような視線を自分に向けながら肉棒に奉仕を続けている。その様子はたまらなく背徳的でいやらしかった。

「あ、ああ!あああ!た、たまらないよ!ゆ、由羅ちゃんも、き、協力して!!」

ズギュウ!ボグッ!!ズムッ!!

「ぐうっ!?がぶぅっ!!ぐぇあぁ!!!…あ……あああ」

「む!?んむぅぅぅ!!ん?んぐ!?んっ!んっ!んっ!んっ!」

男は熱に浮かされたように由羅に攻撃すると、由里の口の中で男根がビクリと跳ねた。由里は話が違うと抗議の目を男に向けるが、すぐさま頭を両手で押さえつけられ強引に前後に揺さぶられた。

「ああ!ああああ!!さ、最高だよ!!で、出る!!出るよぉ!!ぶっ!?ぶぎぃぃいいい!!!」

どびゅぅぅぅぅぅ!!ぶびゅっ!!ぶびゅぅぅぅ!!

「んぐぅぅぅぅぅ!!!??ごきゅっ…ごきゅっ…ごきゅっ…んんっ!?んんんん!!」

男は躊躇することなく、由里の小さい口に体液を吐き出した。たちまち由里の口内は男のものでいっぱいになり、飲みきれずに男根を吐き出すと顔じゅうを白濁で汚されていった。

「ああああああ…ゆ、由里ちゃんが、由里ちゃんが僕の汚いので……あああ」

「い、いやぁぁ…あぶっ!?な、なに、これぇ……んぶっ」

男の射精は数十秒続き、終わる頃には由里は顔だけでなく全身を真っ白に汚され、放心状態で男を見上げていた。

「お、おおぉ…す、すごい出たよ…き、気持ちいいぃ…。ど、どうだい由里ちゃん。初めての男の味は?お、美味しかったかい?」

由里はショックで遠くを向いたまま、男の言葉は耳に入っていないようであった。男は笑みを浮かべると

「ぐふふ、さて、由羅ちゃんも失神しちゃったし。由羅ちゃんにも味見をしてもらわないとねぇ…」

男は由羅を拘束しているロープを引きちぎると、今度は由里をボイラーに縛りつけ始めた。

「げっ…げうっ…うあぁぁ……」

数分後、男の猛攻を受け続け、地面に倒れこむ由羅の姿があった。左手で集中的にいたぶられた腹部を押さえ、あえぎ続ける。

「ぐ、ぐふふふ、よ、よく耐えたね。こ、こんなに強い女の子は、は、初めてだよ」

由羅はいまいち焦点の合わない目で前方を見ると、由里がよろよろと起き上がる姿が見えた。

「あ…えぅっ…ぐはっ…あ…はぁ…はぁ…由羅…大丈夫?」

「ゆ、由里こそ…立って大丈夫なの?くぅっ…」

その姿に励まされ、由羅も同じように立ち上がる。由里が由羅に歩み寄り、手を貸して起き上がるのを手伝う。

「こ…こいつ…何で…?急に強くなるなんて。今まで手加減してたってこと?」

「わ、わからないよ…。でも、倒すしかない…」

「由里…いける?」

「うん…」

2人は同時に男に対し、同時に構えを取る。男は余裕の表情で笑みを浮かべ、手招きをして挑発する。

「はあぁぁぁぁ!!」

「やあぁぁぁぁ!!」

由羅の蹴り、由里の突きが同時に襲い掛かるが、男は涼しい顔をして二人の攻撃をガードする。いや、数発は確かに当たっているが、全くダメージを感じていないようだ。しばらく黙って2人の攻撃を受けていたが、不意に攻撃の矛先を由羅に向けた。

「しぃっ!はっ!!…え?…」

ドギュッ!!

「ぐふぅぅ!!……うぐ……この……」

ズギュッ!!

「がはぁあ!!」

「ゆ、由羅!?大丈…」

「ぐふふ…よそ見してていいのかなぁ?」

ボグゥッ!!

「えっ……ぐ!?ぐぅあぁぁぁ!!」

スブゥッ!!

ドムッ!!

「うぐあぁぁ!!」

「あぐぅぅぅ!!」

「おっと、倒れるにはまだ早いよ」

男はダウンしかけた2人の胸倉を掴むと無理やり立たせ、舐めるように2人の体を凝視した・

「あ、あぅぅ…な、なんで…こんな…」

「げ、げほっ…す、すごい力…」

「ぶ、ぶふぅ…ふ、不思議がっているようだね?い、いいよ。教えてあげる。ぼ、僕の体や汗から出る体臭はね、人間の筋力を徐々に麻痺させる効果があるんだよぉ…。だ、だから、僕は手加減なんてしてないし、き、君達が勝手に、弱くなってるだけなんだよぉ…」

「な、なんですって…」

「嘘…そんなの、聞いてない…」

「ぶふふふ…や、やっと利いたみたいで、あ、安心したよ。こういう狭い部屋に逃げ込めば、たいてい数分時間稼ぎすれば効果があるのに、ぜ、ぜんぜん利かなかったから…」

「だ、だからあんなに…自分のことばかりべらべら喋ってたのね」

「わざと攻撃させてたのも…効果を確かめたかったからなの?」

「そ、その通りだよ…ぼ、僕は殴られて喜ぶ趣味は、な、無いからね!いやぁ、一時は本当に焦ったけど、こ、こうなったらもう2人は僕のものだからねぇ…さ、さっきはよくも苛めてくれたねぇ…たっぷりお礼をしてあげるよぉ…」

男はボイラーまで2人を連れて行き、由羅をボイラーの壁に背中をつけて立たせると、近くに落ちていた木片を由羅の腹部に押し当て、重なるように由里の背中を押して叩きつけた。

「ぐはぁぁっ!!」

「あぐぅぅぅ!!」

男は両手でボイラーを固定しているバーを握ると、由里の背中に自分の腹を押し当て、力任せに腕を引いた。由里と由羅はボイラーと男にサンドイッチのように挟まれ、ギュウギュウと締め付けられた。互いの腹部に挟まれた木片が絶えず苦痛を与え続ける。

「うぐっ!!あ…由里…由里ぃ……」

「由羅ぁぁ…ぐぅっ…あ、く、苦し…」

「ぐ、ぐふふ、どうだい?お互いの苦しんでいる顔がよぉく見えるだろ?お、おなかの力を抜けば、相手は苦しくなくなるかもねぇ…」

その言葉を聞いて、すぐさま由羅は腹筋を緩めた。途端に木片が自分の腹部に深くうずまる。

ズブゥゥッ!

「ぐ!?ぐぶぁぁっ!……ああ…」

「由羅!?ま、待って…私も…ああっ!?ぐぅぅぅ!」

二人はお互いを苦しめないように、ほぼ同時に腹筋を緩めたが、それは木片をますます2人の中にめり込ませただけだった。

「ふ、2人は本当に、お互いが大好きなんだね?ぐふふふ、いいことを思いついたよ。ちょっと眠ってもらうよぉ」

男は渾身の力で腕を引き付けた。同時に木片が見えなくなるほど由里と由羅の間にめり込み。短い悲鳴を上げるとほぼ同時に気を失った。

「ふぅぅ、ふぅぅ。た、楽しい夜になりそうだよ。さて、工事用のロープがその辺に…」

男は工事用の黄色と黒のロープを拾うと、気を失っている由羅をボイラーに縛りつけ始めた。

「いぎっ…いぎぃ……」

 

男はかれこれ1時間ほど2人の攻撃を受け続け、コンクリートの床に芋虫のように転がっていた。由羅に蹴られ、由里に殴られても、男は反撃らしい反撃を殆どせず、むしろ攻撃されるのを喜んでいるようであった。

 

「はぁ…はぁ…どうなの…?もう満足したでしょ?いい加減にくだばりなさいよ…」

 

由羅が息を切らしながら男に尋ねる。一方的に攻撃しているとはいえ、休む間もない攻撃の連続はかなりの体力を消耗する。しかし男はどんなに攻撃を受けても、何度も立ち上がり一向に力尽きる様子は無い。再びむくりと男が起き上がる。

 

「ふぅ…ふぅ…。す、すごいよ。2人とも、す、凄く強いんだね。ぐふふ。も、もっと、もっと攻撃して…ゆ、由里ちゃぁぁん!!」

 

男は由里に突進し、抱きつくように両手を広げる

 

「い、いやぁぁぁ!こ、来ないでください!」

 

由里のアッパーが男の顎にしたたかに入り、すぐさまがら空きのブヨブヨの腹に強烈なストレートを見舞った。

 

「何してんのよぉぉぉ!!」

 

後頭部めがけ由羅の飛び膝蹴りが決まり、前のめりに倒れかけたところを由里のボディブローが見事に入った。

 

「ぐぶぉぉぉぉ……ぐふ…ぐふふ…」

 

男はヨロヨロと数歩下がり腹をおさえて呻くが、その顔には笑みが浮かんでいた。

 

「え……?」

 

「た、倒れない…の?」

 

今まで由里か由羅のどちらか一方の攻撃を受けても昏倒していた男が、アンチレジストでもトップクラスの2人の連携技をまともに食らって倒れないはずがない。 様子が違う男の態度に2人は動揺していた。

 

「ど、どうしたんだい…は、早く、も、もっと殴ったり蹴ったりしてよ…ゆ、由羅ちゃんも、もっと罵ってよぉ…」

 

「こいつ!たまたま甘く入ったくらいで、調子に乗るんじゃないわよ!」

 

「もう…次で決めるから!」

 

2人は同時に男に向かって駆け出す。由羅は甘く入ったと言うが、そんなはずが無いことは自分が一番よく知っている。あれは確実に男の後頭部をとらえていた。それに加え直後に由里のボディーブローもまともに入っている。あれほどの攻撃で倒れないわけが無い。

 

「うぉぉぉぉ!!」

 

「はぁぁぁぁぁ!」

 

左右から同時に由羅の蹴り、由里の突きが男にショットガンのように襲いかかる。しかし、見る見るうちに男の様子は変わって行った。

 

「ぐっ!痛い!い、痛いぃぃ!も、もっと…もっとだよぉ…」

 

「ぐっ!、こ、このぉ!!」

 

「えいっ!えいっ!…な、何で?」

 

男はもはやよろけることも無くなり、最初こそ痛がっていたものの、15秒ほど攻撃を受けている間には徐々にダメージすらも受けてないように見えなくなって行った。由里と由羅の表情に焦りと戸惑いの色が現れる。

 

「ほらぁ…もっと蹴ってぇ…由里ちゃんも、も、もう少し強く殴ってくれないと、ぜ、全然感じないよぉ…あれ?な、何でやめちゃうんだい?」

 

「はぁっ!はぁっ!はぁっ…な、何なの?」

 

「う…嘘…。全然…きいてない…」

 

「ほ、ほらぁ…な、なんで来てくれないの?こ、こここ、来ないなら…」

 

男の目がぎらりと光る。

 

「こ、こっちから行くよ!」

 

 

ズギュッ!!!

 

ドブゥッ!!!

 

「うぐぅっ!!??うぐぅあぁぁぁぁぁ!!」

 

「うぶぅっ!?……ぁ……ぁ……!!!」

 

男の左右の手が同時に高速で動き、脂肪で膨らんだ鈍器のような拳が正確に由里と由羅の腹部にめり込んだ。由羅は目を見開いて嘔吐き、由里は呼吸もままならないほどの衝撃を受け止めた。

 

「ぐふふふふ……ふ、2人とも…仲良く食らっちゃったねぇ…ど、どうだい?ぼ、僕の攻撃は?」

 

「あ…あぐ…ぁ…。ま、まぐれ当たりで…いい気になるんじゃ…ないわよ…。は、早く…これ…抜きなさいよぉ…」

 

男は2人の腹部に拳をうずめたまま、にやぁと下品な笑みを浮かべた。

 

「んん~。そ、そんなこと言っていいのかい、ゆ、由羅ちゃん?だ、大好きなお姉ちゃんが、く、苦しんじゃうよ?」

 

由羅はびくりとなって男にすがるような目を向ける。この日初めて見せた弱々しい表情だった。

 

「な、何する気?ゆ…うぐっ…由里を…離してよ」

 

由羅は自分も同じように拳を突き刺されたままの状態であるにもかかわらず、由里の解放を求める。由里は下を向いたまま、息が継げない状態で小刻みに痙攣していた。

 

「ほ、本当にお姉ちゃんが大好きなんだねぇ…由羅ちゃんは…。ぐふふ、ゆ、由里ちゃんの方が、こ、拳が深く入っちゃったから、く、苦しいだろうねぇ?」

 

「げ、外道!…うぅっ……ゆ、由里だけでも…離して」

 

「んふぅ~。そ、そうはいかないよ?んー、こ、これは由里ちゃんの胃かな?ぐふふ、隣でお姉ちゃんが苦しむ様子を見せてあげるからね…」

 

「な、なに…する…や、やめ…」

 

由羅が精一杯静止の言葉を口にするが、男は容赦なく由里の胃を捕まえ、強引に握りつぶした。

 

グギュゥゥゥゥゥ!!!

 

「ぐ!?ぐぶっ!!??ごぶぅぇぇぇぇぇぇ!!」

 

「ゆ、由里!?由里ぃぃ!!」

 

ビクンと由里の身体が跳ねると、大きくガクガクと痙攣したまま黄色い胃液を吐いた。

 

「あ…ああ……ああああ……」

 

「い、いやぁぁぁぁ!」

 

白目を剥いて痙攣し続ける由里を見て、由羅が悲鳴を上げる。男は投げ捨てるように由里を地面に突き倒した。

 

「ゆ、由里!?んむぅぅぅぅ!!??」

 

由羅は慌てて由里に駆け寄ろうとするが、すぐさま男に捕まり、右手で口を塞がれる。喋れない状態のまま キッと男を睨みつけた。

 

「ん、んんー!!んー!!」

 

「ぐふぅ…ゆ、由羅ちゃん…さ、さっきはたくさんたくさん蹴ってくれたよねぇ…す、凄く気持ちよかったよ…ぐふふ、お、お礼に、こ、今度は僕がたくさんたくさんたくさんたくさん…蹴ってあげるからねぇ…」

 

「ん!?んん…んんー!」

 

由里の瞳に恐怖の色が浮かび、目が泳ぎはじめる。逃れようとするが、男の強い力で押さえつけられており、首をわずかに動かすことで精一杯だった。

 

「膝蹴りが凄く気持ちよかったよ…こ、こんな短い足で申し訳ないけど…ぼ、僕も膝で蹴ってあげるね…」

 

ズギュゥッ!!

 

「ぐっ!?ぐむぅぅぅぅ!!!」

 

男は強引に由羅の身体を直立させると、丸太のような膝を由羅の細い腹部にめり込ませた。想像を絶する衝撃に由羅の身体がくの字に折れ、男の手の間からくぐもった悲鳴が漏れる。

 

ズギュッ!ズギュッ!ズギュッ!ズギュゥゥッッ!!

 

「ぐぶっ!!ぐむっ!んむぅっ!!んぶぅぅぅっ!!!」

 

口を塞がれているせいで、まともに悲鳴すら出せない由羅。男の一撃一撃は非常に重く

、食らうたびに視界が狭くなって行くのを感じた。

 

「ゆ、由羅ちゃん、や、止めて欲しい時はいつでも言ってねぇ?あんまり我慢してると…」

 

男は笑みを浮かべると由羅の口をおさえている手に力を込めた。

 

「死んじゃうかもよ?ちゃあんと『止めて』って言ってねぇ…」

 

由羅の瞳が絶望に染まる。下を見るとものすごいスピードで男の膝が自分の腹に飛び込んでくる所だった。

様々なものが雑然と放置されている廃工場の中は、まるで機械で出来た動物の胃袋を思わせる。電気が通っているのか、ぽつぽつと等間隔に吊るされた裸電球が弱々しい光を落としながら、鉄骨とコンクリートの影を浮かび上がらせていた。

 

「明かりが付いてる…やっぱりこの中に居るんだ…」

 

「中に入ったきり出て来て無いって言ってたから、キモオタさんもきっと居るよ…」

 

「由里、そのキモオタさんって呼び方、もしかして気に入ってる?」

 

「…」

 

2人の足音だけが響くがらんと広い空間。所々横部屋はあるものの、でたらめにモノが放り込まれておりとても生活できるようなところは無かった。しかし、しばらく進むと「仮眠室」と書かれたプレートが貼り付いた扉があり、薄く開いたドアを覗き込むとそこには万年床の布団や服などが散らかすように置かれており、生活の気配を感じられた。

 

「由羅…これって…」

 

「人妖…の…?ホームレスとかが住み着いてるだけじゃない?奥まで見えないけど…」

 

「でも、これだけ布団や服があるのに、食べ物はひとつも落ちてないよ…」

 

「ちょっと待って、懐中電灯出すから」

 

由羅は胸に刺していたペンライトを捻り、明かをつけると部屋の奥の方を向かって照らした。2人が同時に息をのむ。

 

「!!!」

 

「酷い…」

 

「間違いなさそう…。でも、こんなこと…」

 

部屋の奥には、5~6人ほどの女性がほとんど全裸で、天井から吊るされた紐で手首を固定された状態で座っていた。頼りない光からでも、全身につけられた痣が見える。全員生気の無い瞳で暗い地面を見つめていた。慌てて由里が駆け寄る。

 

「だ、大丈夫ですか?なんて酷い…今助けますから!」

 

「…も……くだ………な……」

 

「え?何ですか?どこか痛いところがあったら?」

 

「もっと…もっと体液を下さいぃ……いっぱい……奉仕……しますから……濃いの……出して…くださいぃ……」

 

縛られた女性は、由里が肩を揺すっても全く反応を示さず、ただ地面を見たままうわごとのようにつぶやくだけであった。

 

「え?……な、何言って……」

 

「由里、もうダメだよ。完全に人妖に魅せられてる…。オペレーターから聞いたけど、人妖は人を魅了する力があるみたい…多分それでこの人達も…」

 

不意に、ガタンという音と共に入り口のドアから人が去る気配があった。

 

「由羅…」

 

「うん!間違いない!追うよ、由里!」

 

2人は急いでドアから出ると、音のした方へ向けて駆け出した。しばらくすると、荒い息づかいとともに男が必死に走っている後ろ姿が見えた、その男はちらりと後ろを振り返ると、ひぃっという小さな悲鳴を漏らして近くの部屋に逃げ込んでしまった。

 

「由羅、ここに入ったよ!」

 

「うん、ボイラー室か…。由里、気をつけて。私から入るから…」

 

すっかり油の乾いた蝶番がぎぃぃという音を立てて、立て付けの悪いアルミ製のドアが開かれる。中には数個の裸電球が吊るされていたが、それでもこの部屋を照らすのには十分だった。部屋の奥の大きなボイラーに手をついて、男が苦しそうに荒い息を吐いていた。

 

「ひぃー、ひぃー、ひぃー」

 

「ちょっとアンタ!こっちを見なさいよ!」

 

「はっ!はぁ、はぁ、ち、違う…ぼぼぼぼ、僕じゃないよ」

 

「まだ何も言ってないでしょ!人妖討伐機関アンチレジストの戦闘員、木附(きづき)由羅よ!アンタがあの部屋の女性達を監禁していたことの調べは付いてるんだから。おとなしく降伏しなさい!」

 

「ひ、ひぃぃぃぃぃ…。ちちちち、ちがっ、ち、ちがぅう。ぼぼぼ、ぼく、ぼく、ぼくはぁ」

 

男は全身に汗をびっしょりかきながら、どもりの強い口調で必死に弁明していた。その姿は写真で見た通り大変醜いもので、でっぷりと太った体躯に無精髭が目立つ二重顎。眼鏡のレンズも曇って白くなっていた。肩までのびたぼさぼさの長髪はやたら量が多く、汗のために顔のあちこちには貼り付いていた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ…落ち着いて来た落ち着いて来た落ち着いて来た。も、もう、いきなり酷いじゃないか!ななな、なんで僕の家に、かかか勝手に、は、入ってくるんだよ!」

 

「キモオタさん!あなた何で女性を攫ったりしたの!?それにあんなに傷つけて」

 

珍しく由里が大きな声を出す。さっき見た光景がよほどショックだったのか、目に涙を浮かべ、握りしめられた拳は怒りに震えている。

 

「ぼぼぼ、僕だって、い、い、生きるためには仕方が、ななな、無いんだ。ききききき、君たち、アンチレジストだろ?ってことは、もう僕が賤妖だって、し、し、知ってるんだろ?」

 

「せん…?」

 

「よう…?」

 

2人の頭の上に、同時に?マークが浮かぶ。初めて耳にした言葉に、2人は顔を見合わせた。

 

「げ、下賎の賤に、妖怪の、よ、よ、妖だよ。ぼ、僕たちは、人妖の、お、お、落ちこぼれなんだ。人妖は、あ、あ、あいつらみたいに、全員が格好良くなんか、ないぞ!中には、ぼぼぼ、僕みたいに醜くて名前も無い出来損ないだっているんだ。あいつらは僕らを、め、め、召使いみたいに扱うか、それでもダメなら、すすすす、捨てられる。ぼ、僕がそうさ。僕は、り、り、涼っていう人妖に使われてたけど、す、捨てられたんだ」

 

「涼…確か以前隣の市の学校で校長先生をしていた人妖がそんな名前だったわね。レポートで読んだわ。悪いけど、アンタの生い立ちなんて興味無い。おとなしく捕まりなさい!」

 

由羅が前に出て男に近づく、しかし、男はバタバタと走ってもうひとつのボイラーまで逃げる。

 

「い、いやだ!ぼぼ、僕だって生きたいんだ!それに…そ、それに…」

 

「それに…なに…?」

 

由里も男に一歩歩み寄る。由羅とは違い、その目にはかすかに同情の色が見えるが、次の男の言葉で打ち砕かれることとなる。

 

「せ、せっかくこんなに可愛い、ししし、食料が、ふ、ふ、2人も来てくれたんだ。ぐふふふ…こ、このままおとなしく捕まるなんて……し、死んでも嫌だね!」

 

「キモオタさん…」

 

「お前……。由里、かまわないわ。こいつ少し痛めつけてやろうよ。捕まえるならその後でも出来るし」

 

「そそ、そんなに簡単に、い、い、いくかな。ぐふふ…み、見てよ…こ、これを」

 

男が正面を向くと、腰をぐいと前に突き出した。スラックスの上からでも分かるほど股間が大きく勃起している。

 

「さ、さっきから、ずずず、ずっとこのままなんだ。ぐふふ。な、なんて、いやらしい格好をしてるんだい?しかも、ふふ、2人とも凄く可愛いし…似てるから、ふ、双子かな?まとめて、まとめて、色々してあげるからねぇ」

 

にたぁと男がこれ以上無いくらいの下品な笑みを浮かべた。さすがの由里も顔がこわばるが、それより先に由羅の方から「ブチッ!」と音が聞こえ、男に突進して行った。

 

「お前ぇぇぇぇ!!!」

 

バキッ!ドガッ!ガッ!ガキィィィ!

 

「ぐびぃぃぃ!ぶふっ!!ぶっ!?ぼぎゅぅぅぅぅ!!」

 

頭への左回し蹴りから腹部へ右の前蹴り、下がった顎を膝で跳ね上げ、がら空きの腹へ後ろ蹴りを流れるように食らわせていった。ごろごろと男が地面を転がる。

 

「おぶっ!おぶぅぅ!、つ、強いぃ…」

 

「ふーん、報告通りちゃんとダメージあるじゃん?どう?今なら謝れば許してあげるけど?」

 

由羅はの目の前に近づき、腕を組んだ仁王立ちで見下しながら聞いた。男は由羅の顔と膝上まであるロングタイツに包まれたむっちりした太もも、レオタードとタイツの合間の肌を交互に見ながらにたぁと再び笑った。

 

「な、何よ?」

 

「も…もっと蹴ってくださぃぃぃ…」

 

男が言い終わると同時に再び由羅から「ブチィッ!」という音が聞こえ、男に見事なまでの右回し蹴りを食らわせてた。

 

「ひぎっ!!ひぎぃぃぃ!ぶぐぅ!」

 

「ほらほらほらぁ!!これで満足なの!!?」

 

ぶぎゃぁ!という大きな悲鳴を残し、男が吹っ飛ばされてボイラーにしたたかに背中を打ち付けた。そのままずるずると尻餅をつく。

 

「ほら…もっと蹴ってあげるからこっち来なさいよ!」

 

「ひ、ひぃぃぃ…」

 

男は這うようにして逃げ出すが、そこには由里の姿があった。

 

「キモオタさん…少し頭冷やした方がいいみたいですね」

 

ボイラー室の中に男の悲鳴がこだました。


「由里もかぁ…」

 

「うん…なんか、恥ずかしいかな…」

 

黒い絨毯に白い壁。どこかの会議室の用な部屋の一面は大きなモニターになっていた。2人はファーザーの指示通りそれぞれ控え室でオペレーターから手渡されたコスチュームに着替えるとこの部屋で合流し、お互いを見つめ合った。

基調としている色が由里がピンク、由羅がオレンジということを除けば全く同じデザインのコスチューム。レオタードのような身体にぴったりした服を基本にしながら、肩には羽根飾りのようなデザインが施され、同色の膝上のタイツを太ももの付け根からガーターベルトのようなもので繋いでいた。否応にも身体のラインが強調され、控えめな胸やキュウッとくびれた腹部の中心にある可愛いヘソ。むちむちの太ももを挑発的なまでに引き立てていた。2人の格好はさながら双子の魔法少女の様であった。

 

「噂には聞いてたけど、キワドいわねぇ。なんかアニメとかに出てきそうだし。まぁ蹴り技主体の私にとっては動きやすいけどさ」

 

「うん、私も袖が無いからパンチは出しやすいかな…。あぅ…でも恥ずかしい…」

 

「由里はプロポーションいいんだから自信持ちなって!まぁ双子の私も同じ体型だけどね~」

 

由羅はモニターの反射を鏡代わりにして思い思いにポーズをとっては満足そうに笑っている。由羅にとってこの格好はまんざらでもないらしい。

 

「由羅…顔がえっちな本見てるオジサンみたいになってるよ…」

 

「!?な、なんですってー!由里!あんた姉だからって調子に乗るんじゃないわよ!」

 

「ひゃあ!いらい(痛い)!いらいいらい!!」

 

由羅が由里のほっぺたをつねり、左右に引っ張る。由里が涙目になりながら手をパタパタさせていると、突然モニターが付いた。

 

「本当に仲がいいな?」

 

「「!!?? ファ、ファーザー!?」」

 

2人はあわてて敬礼をする。もちろん由里は涙目のまま。ファーザーの声には様々な種類があり、今回は抑揚が無いものの、よく通る若い男性の声だった。

「楽しんでいるところ悪いが、早速任務について説明させてもらう…」

 

話によると、2人の住んでいる町の外れにある廃工場付近で、最近女性の失踪事件が増えているとのことだった。若い女性が男に廃工場の中に連れ込まれたという目撃情報もあり、警察も調査に向かったがその警官も帰ってこなかった。人妖事件としてファーザーが情報を握り潰し、調査員のオペレーターを派遣しある程度調査をした上で、今回の2人の派遣に至ったという。しかも、オペレーターの調査によれば、今までの人妖とは容姿や波長が異なるという。

 

「今までの人妖は、男性タイプでも女性タイプでも、俗に言う容姿が端麗で社会活動もしており地位も上なケースが多かったが、今回のはやや違う。まぁ、見てもらった方が早い」

 

モニターに荒い画像だったが1枚の写真が写った。2人の顔が同時に引きつる。

 

「うぇー…」

 

「あぅ…キモオタさん…」

 

「由里…あんた意外と毒吐くわね…」

 

でっぷりと太った体躯にぼさぼさの頭髪、よれよれのポロシャツに汚れたジーンズの男性が、こそこそと廃工場に入って行く写真だった。確かに今までの人妖とは雰囲気が違った。

 

「あのー、コイツ本当に人妖なんですか?えと、その、男性タイプの人妖ってイケメンばかりだってデータを見たんですが」

 

「ふむ…確かに由羅の言う通り、今までの人妖にはそういうタイプが多かったが、今回の人妖は社会活動も一切していないらしい。しかも奇妙なことに、今回は人妖特有のバリヤーも検出されていない」

 

「…生身の人間と同じ耐久力ってことですか?」

 

「その通りだ由里。今までは対人妖グローブやレッグサポーターをしなければダメージを与えられなかったが、今回は大丈夫だろう」

 

「楽勝ってこと?なぁんだ、せっかく由里との初仕事だと思ったのに張り合いないなぁ。仮想エネミーの方がよっぽど強いんじゃない?」

 

「由羅…油断は禁物だよ~」

 

「その通りだ。もしものことがあったら身の安全を第一に考えてほしい。では、今夜23時に突入を開始する。手順は…」

 

 

 

 

 

「で、来てみたわけですが」

 

「あぅー、こんな格好してるところ近所の皆さんに見られないかなぁ…」

 

「だからチャッチャとやっつけて片付けちゃおうよ。それにね、由里」

 

「なに?」

 

「私達、同時に産まれて…まぁ由里の方が少し先だったけど、同時にアンチレジストにも入ってさ、やっと一緒に仕事ができるんだから、精一杯頑張ろうよ。いつまでも一緒だからね!由里姉さん!」

 

「う…うん!そうだね。忘れられない夜にしようね!」

 

2人は廃工場に向かって駆け出した。2人にとってはある意味忘れられない夜になるとも知らずに…。


廃墟のような空間に間隔を置いて響く肉と肉がぶつかる音。崩れ落ちそうな柱を縫う追うように俊敏に駆ける影が2つと、それを追う大柄な影が1つ。広場に吊るされた裸電球の下に3つの影がくると、それぞれのシルエットが浮かび上がった。

 

「グギィィィィィィィ!!!」

 

爬虫類と人間を融合させたような姿の大男。灰色の肌に太い尻尾、耳まで裂けた口からは先の割れた太い舌が、粘液にぬれて怪しい光を放っている。

 

「ギガァァァァァァァァ!!!」

 

「あーもう、うるさいわねぇ、ねぇ由里(ゆり)?そう思わない?」

 

「そ、そうだね、由羅(ゆら)。ちょっと…声大きいよね…」

 

「もうー、いつもハッキリしないんだから由里は!こんな奴ちゃっちゃとやっつけて早くシャワー浴びよ!」

 

「そ、そうだね由羅、じゃあ、やろうか?」

 

短い会話を交わす2人の少女。顔つきは幼く可愛らしい顔をしているが、会話を交わす間も怪物から目を離すことは無かった。由里と呼ばれた少女は薄いピンク色の、由羅と呼ばれた少女はオレンジ色のレオタードのような衣装を着ており、2人の可愛らしさを引き立てていた。

 

「しゅぅぅぅぅぅぅぅ…しゅぅぅぅぅぅぅぅ……しゅうっ!!」

 

怪物が2人をめがけて突進するが、2人は弾かれたように別々の方向へ走り出し、すぐに怪物の背後をとった。

 

「はぁぁぁぁぁ!!」

 

「ええええええい!」

 

ガッ!グギィッ!!

 

「グギヤァァァァ!!」

 

由羅の蹴りが怪物の首筋を強打し、由里の突きが脇腹をえぐった。流れるように由羅が飛び膝蹴りを背中に見舞い、怪物が倒れかかったところに前に回り込んだ由里がボディーブローを決めた。怒濤のような連携攻撃に、怪物が倒れ込む

 

「ご、ごめんなさい…大丈夫?」

 

「こら由里!何そんな奴に同情してんの!?とっととトドメを刺すわよ!」

 

由里のとぼけた言動に一瞬緊張感が消えた瞬間、空気を裂くような音が響いた。

 

ヒュッ!!ドグッ!!

 

「え?…う…ぐふっ!?あ…えぐぅぅ!!」

 

怪物の尻尾が独立した生き物のように動き、目にも留まらぬスピードで由羅の腹部にめり込んでいた。

 

「ゆ、由羅ぁぁ!」

 

「くっ…油断した…由里…次で決めて…たぶん、一撃しか持たないから…」

 

「由羅!ダメだって!」

 

「…ほら、何してんの?全然効かないんだけど?もう少しカンジるの頂戴よ」

 

「ぐるるるるるるる…」

 

あからさまに不機嫌になった怪物が由羅の前に立ちふさがる。由羅は強がった態度を取っているが、その手は明らかに震えていた。

 

「…ほ、ほら…少しはカンジさせてよね…」

 

「シュアッ!!」

 

グリィィィィ!!

 

「げっ!?げぇうぅぅぅぅ!!?」

 

怪物は手のひらを無理矢理由羅の腹にめり込ませると、力任せに握った。

 

グチィィィィィ!!

 

「ぐうっ!?うげぁぁぁぁぁ!!!」

 

強烈に内蔵を圧迫されたためか、ボタボタと由羅の口から胃液がこぼれ、怪物の腕にかかる。しかし由羅は自分の腹部にめり込んだその腕を掴むと、無理矢理笑みを浮かべた。

 

「あ…ああ…。や、やる…じゃない…。でも、あんたも…終わりよ…」

 

「グゥゥ…?グギィィィ!!??」

 

後ろから駆け出してきた由里が、怪物の首に強烈な一撃を放っていた。

 

「由羅に…由羅に酷いことしないで!」

 

怪物の身体が白く光りながら、粒子になって消えていく。同時に空間が歪み始め、無機質な広い空間に2人だけけが残っていた。がくりと由羅が由里に倒れかかる。

 

「由羅!由羅ぁぁ!」

 

「もう…何であんたは私がやられないと本気出せないのよ?訓練用の仮想エネミーだって結構キツいんだから…」

 

「フタリトモ、ゴ苦労ダッタナ」

 

突如、部屋の中に機械が喋るような声が響き、2人が直立不動の姿勢になる。

 

「は、はい!ありがとうございます。ファーザー」

 

由羅が空中に向かって返事をする。ファーザーという名前意外は全くと言っていいほど情報が無い人物。相当な権力者という意外は、正直性別すらも定かではない。

 

「マダ問題モ多々アルガ、フタリノ連携技ハカナリ有効ナ武器ニナル。実ハ新シイたいぷノ人妖が出現シタ。早急ニ討伐シテ欲シイ」

 

「了解しました!」

 

2人が同時に敬礼をする。2人にとっては初めての実戦で正直怖さもあるが、それ以上に今までの訓練の成果を試せると思うと自然と気持ちが昂ってくる。早く戦いたい。もともと好戦的な由羅はもとより、由里も同じ気持ちを味わっていた。

 

「期待シテイルゾフタリトモ。こすちゅーむハ用意シテオイタ。場所ハ…」

ご機嫌いかがでしょうか?

number_55です。

レジスタンスシリーズの冒頭に当たるcase:AYA、何とか書き上げることが出来ました。

最後まで拙い文章でしたが、4話くらいからキャラクターがひとりでに動き出してくれて、書いている方も楽しめました。特にラストはブログ開設前に書いたプロットとは全く違う形となり、私自身驚いています(友香の登場などは全くの予定外でした)。

メインの綾には最初からかなりひどい目に遭わせてしまった挙句、ほとんど活躍らしい活躍をさせてあげられませんでしたが、まぁ腹パンチ小説においては腹パンチを受けることがある意味活躍なので我慢してもらいました。
個人的に思い入れの強いキャラクターですので、皆さんに気に入っていただければ嬉しいです。



さて、「レジスタンス」は結構前から私の頭の中に構想はあったのですが、説明しきれてない用語とかを少し解説していきたいと思います。


・人妖
「じんよう」と読みます。レジスタンスシリーズの核ですね。彼らにとって人間は養分です。苦痛や快感という人間の感情の変化を、直接触れることによって養分として吸収しています。人間を殴ったり性交したりすることは彼らにとって食事と同等です。
そして一定の養分が溜まると老廃物を排出します。彼らの分泌液や老廃物には人間を魅了する力があります(チャーム)。生きていくために備えた技ですね。
様々な種類が存在し、今後は違う種類の人妖も登場します。


・アンチレジスト
綾や友香たちの所属する人妖討伐機関。トップは「ファーザー」と呼ばれ人物。格闘に特化した戦闘員と、戦闘員をバックアップするオペレーターがいるが、構成員の横のつながりはほとんど無い。綾と友香はかなり珍しい例。



今後も読みきりをはさみながらレジスタンスシリーズを続けていこうと思います。今後ともよろしくお願いします。

涼の放出は数十秒続き、綾の髪や顔中、口内や上半身までもどろどろに染め上げていった。

「えぅ・・・ああぁ・・・はっ・・・はぁあ・・・」

「ううっ・・・く・・・。こんなに大量に出るとは・・・。どうですか?一番強力な特濃チャームの味は?たとえあなたでも、もう身体の制御が効かないはずだ」

「あ・・・あぅ・・・あ・・・」

綾はとても男性一人で放出したとは思えない量の白濁を顔で受け止めた後も、真っ白にコーティングされた舌を出しながら光を失った目で男を見上げ続けた。

「さぁ、口に溜まったものを飲みなさい」

「うぅん……ごくっ…ん…んふぅぅぅ」

「くくくく、素直で良いですよ。さぁ、これを舐めて綺麗にしなさい」

「はぁっ……はぁぁ、う……あぁ……」

涼は一歩前に出ると、放出したばかりだというのに硬度を保ったままの男根を突き出した。綾は左腕で腹部をかばうようにおさえながら、吸い寄せられるように涼の男根を咥えようとする。しかし、寸でのところで目にわずかに光が戻り、動きが止まる。

「だめ……友香……友香を……助けるまで……負けられない……」

「こいつ……ここまで強情とは…。まぁいい、なら死ぬ寸前まで痛めつけてやる」

涼は新しい縄跳びを取り出すと、元の体制に綾を縛り直した。

「まだまだ…これからですよ。組織の場所を喋りたくなればいつでもどうぞ」

喋れば、楽になれる。このままでは殺されるかもしれない。恐怖と苦痛と悔しさで目からは自然と涙があふれる。もう喋ってしまおうか。組織の本部と訓練場の場所を喋り、この場を凌いで家族の元へ返ろうか。なぜ自分が顔も知らないファーザーの為にここまでしなければならないのか?
一瞬のうちに様々な考えが浮かんでは消えていったが、綾は決して喋らなかった。頭の片隅に常に浮かぶ友香の顔。一緒に頑張ってきた友香がこの男に弄ばれたかもしれないのだ。絶対に敵を討ちたい、いや、討てなくても屈服だけは絶対したくない。

「……絶対に…お前なんかに…屈しないから……」

「………すばらしい。死ぬまでいたぶってあげますよ」

涼の拳がギチギチと音を立てるほど強く握られ、弓を引き絞るような動作で綾の腹部に狙いを定める。

「次は……強力ですよ。これで……ぐぅっ!!??」

急に涼の顔つきが変わり、握られた拳がゆっくりと開かれていく。一瞬のことに、綾は何が起こったか分からなかった。涼がゆっくりと綾に背を向ける。後ろには綾の親友、友香が立っていた。

「ゆ…友香……なぜここに?わ…私に何をした…?」

「綾をひどい目に合わせたからよ。目を覚ましたら先生が居なかったから、探したらここから声が聞こえて…。よくも綾に酷いことを!」

涼の背中には調理室にあった包丁が突き刺さっていた。グレーのスーツがみるみる赤く染まっていく。涼は包丁をつかみ引き抜くとその先をまじまじと見つめた。

「馬鹿な…私達人妖の身体は刃物ごときで傷つけられるはずが……。!?、こ、これは、対人妖グローブか…」

「あなたの身体にグローブを当てて、その上から刺したわ。実戦では一撃も当てられなかったけど、やっと役に立った…」

「こんな、こんなもの…まさか本物か?ファーザーめ、実力の劣る友香には本物を渡したな…」

涼の手から包丁が落ち、大きな音を立ててコンクリートの床に落ちた。

「綾ならともかく、お前みたいな出来損ないが…一番強力なチャームに打ち勝っただと?おとなしく私のチャームを求めるだけの存在になっていればいいものを…」

「友香…本当に友香なの?」

「綾、待ってて。すぐに助けるから」

友香の中で人妖の強力なチャームの力よりも、綾との友情の力の方が勝ったのだ。もう少しで涼の言う通り思考もすべて停止し、人妖の体液のみを求める存在にまで堕ちるところだったが、綾の苦しむ声が聞こえ、邪悪な力に打ち勝つことが出来た。
涼は先ほどまでの余裕の表情が消え、憎悪の表情でゆっくりと友香に近づく。

「出来損ない出来損ない出来損ない…お前のような落ちこぼれに私が負けるはずが無い…せめてお前だけでもあの世に送ってやる!」

「たとえ出来損ないだって、ちゃんと生きて存在しているのよ!あなたこそ忘れないでよ、グローブはもうひとつあるんだから!」

「な、なんだと!?ぐがぁぁぁぁ!!」

友香は先にグローブが刺さっている包丁をもう1本取り出し、涼に突進するとそれを左胸に突き刺した。包丁は滑るように涼の身体に吸い込まれていった。

「が……馬鹿…馬鹿な…。私が…私がこんな奴らに…」

涼はよろよろと友香の脇をすりぬけ、扉に向かって歩き出す。友香はかまわず綾に駆け寄り、拘束している縄跳びを床に落ちていた包丁で切った。綾は友香に崩れるように倒れるが、しっかりと友香を抱きしめた。

「友香…ありがとう…。怖かった…。それに、友香も無事で良かった…」

2人の瞳からは自然と涙があふれ、友香も綾の頭をなでながらうなずいたところで、背後から涼の声が聞こえた。

「お、お前ら2人とも、覚えておけ…。ゴボッ…。これくらいでは私は死なんぞ…。近いうちに絶対に殺してやる。散々痛めつけてからな…。首を洗っておけ…」

涼はそれだけ言うと扉の前から消えた。あわてて友香が追いかけるが、体育館の中には既に涼の姿はなかった。床に落ちた血の跡を追うも、明らかに人が通れるはずも無い排気口の前で消えていた。

この後、綾は組織の息がかかった病院に入院するも命に別状は無く、1週間ほどで退院できた。その間も毎日のように友香が見舞いに訪れてくれた。1週間後に綾が学校を訪れると、涼は海外の教育研究機関に派遣されたことになっており、所々で悔しがっている女生徒の姿が見受けられた。数日後に赴任して来た後任の校長はどう見ても人妖には見えない平凡そうな年配の男で、女生徒はますます悔しがっていた。
しかし、綾と友香はどこかで涼が生きていることを確信している。もちろん海外になど行っておらず、自分たちの近くに潜んでいることを。「絶対に殺してやる」という涼の吐き出すような呪詛の言葉が2人の間から消えることは無かった。



レジスタンス 第一章  「case:AYA」


「ん……んん……、こ、ここは…?」

 綾が目を覚ますと、そこは所狭しと様々な用具が置かれた体育倉庫だった。まだはっきりしない頭で今までのことを思い出す。人妖捜査の命を受けて自分の母校に赴き、校長が人妖だったことをつかんだまでは良かったが、その後の格闘で圧倒的な力の差を見せつけられ、失神してしまった。

「やっとお目醒めですか?待ちくたびれましたよ」

 目の前にはこの学校の校長、人妖の涼が積み上げられた白いマットの上に座っていた。綾が目を覚ましたのを確認すると、ゆっくりとした動作でマットから降り、近づいてくる。

「あんた…ずっと待ってたの?こんなことして……え?…な、何これ?」

 意識がはっきりすると同時に、綾は自分の置かれている状態に気がついた。綾の身体は体育倉庫の壁に背中をつけられ、両腕は頭の上で交差させた体勢で縄跳びで固定されていた。足首にもそれぞれ縄跳びがきつく結ばれ、壁のむき出しの鉄骨と結ばれていた。
 否応無しに無防備に身体を開いた状態になり、ショート丈のセーラー服はもう少しで胸が見えそうなくらいまくれ上がっていた。

「こ…これは…?」

「やっと自分の状態に気付きましたか。ふふふ…いい格好ですよ」

「うそ…これじゃ…抵抗できない…」

「あなたが苦しむ顔があまりにもそそるモノでしたから、もう少し苦しめてあげたくなったのですよ。さっきまではまだ自由に抵抗できましたが、これからはどうでしょうかね…せいぜい楽しませてくださいよ…」

 綾の表情から血の気が引いてゆく。男の言う通り、先ほどまでは自由に抵抗でき、いざとなれば逃げ出すことも出来た。しかし今はわずかに身体をひねるくらいしか出来ないほどきつく壁に固定され、たとえナイフで刺されそうになっても逃げ出すことが出来ない状態になっている。先ほどまでの苦痛に対する恐怖ではなく、命の危険に対する恐怖が綾を襲っていた。

「さて、それじゃあ早速始めましょうか。痛めつけるだけじゃ芸がないので…そうですね、尋問でもしましょうか。アンチレジストの本部や訓練場の場所でも喋っていただけますか?そうすればすぐに解放しますが…」

「い…言う訳ないでしょ…こんなことしても無駄ごぼぉおっ!!?」

 綾が言い終わらないうちに、涼の拳が綾の腹部にめり込んでいた。

「そうそう、言わないでもらった方がこちらも楽しめますよ。頑張ってくださいね」

ズブッ!ドスッ!ボグッ!ズンッ!!

「がっ!?ごほっ!うぐっ!ぐああっ!!…ああぁ…」

「どうですか?背中を壁につけられているせいで威力がそのまま伝わるでしょう?こんなことも出来るんですよ?」

ズッ!!グリィィィ!!

「ぐぅっ!?おぐああぁぁぁ!!……うぐ…うぇぇぇぇ………」

 綾の口から透明な胃液がこぼれ、びちゃびちゃと床に落ちる。

「くくくく…壁と拳の間に胃を挟んて捻り上げて差し上げましたが…。大きな胸の割にウエストが細いのでやりやすかったですよ。効果は抜群というとこですか」

「あ……うぇ……苦しぃ……」

「これはどうですか?」

ズギュウゥッ!!

「ぐ!?ぐあぁぁぁぁぁ!!!」

「膝です。拳とは比にならない威力だと思いますが」

「や…やめ……赤ちゃん……出来なくなっちゃぅぅ……」

 綾は口の端から逆流してきた涎をこぼしながら、目に涙を浮かべる。凄まじい攻撃にさすがの綾も心が折れそうになるが、強い使命感と友香を助けたいという気持ちがぎりぎりで屈服しそうな心を支えていた

「ふふふ…その表情ですよ…私の求めていたものは…さぁ、もっと苦しみなさい」

ドスッ!ズギュッ!!ドグッ!ズブゥッ!!

「ごぶっ!!ぐはぁぁっ!!あぐっ!うぐうっ!!」

「うぅぅぅぅ……たまらん……一回出すぞ……」

 涼は文字通り人間離れした力で綾の腕を拘束していた縄跳びを引きちぎり、目の前にひざまづかせた。そしておもむろにスラックスのファスナーを下ろすと一般男性の2周りほど大きい男根を取り出し、綾の顔を目がけ勢いよくしごきたてた。体勢的に真正面からそれを直視してしまった綾は、一瞬で何が起こるか、自分が何をされようとしているのかを理解する。

「えっ…?うそ…いや、いやぁぁ」

「くぅぅ…そそりますよ…その顔…。ほら、受け止めなさいっ!」

「あぶっ!?なっ…ああっ!?」

 涼は何のためらいも無く綾の顔に白い体液を浴びせかけた。綾は本能的に嫌悪感を感じ顔を逸らそうとするが、涼は一瞬早く綾の頭を掴み正面を向かせたまま固定すると、異常なほど大量な白濁を浴びせ続けた。

「ほら、まだ止まらないですよ。ちゃんと舌を出してたっぷりと受け止めなさい」

「あ…あうっ…ぅぁ……えぅ……まら…れてる…」

 度重なったダメージで朦朧とした意識の中、綾は素直に舌を出して恍惚とした上目遣いで涼の射精に似た行為を受け止めた。

 数時間後。暗い体育館のほぼ中央で両膝を突きうずくまる綾
と、それを見下す涼の姿があった。

「あ…、あぅ……ああぁぁぁ……」

「ふぅ…よく頑張りましたね。これだけ痛めつけられても失神しなかった女性は初めてですよ。普段ならものの数分で泣きながら弱音を吐くものですが」

 綾は苦しげな表情ながらも、強さを失っていない瞳でにらみ返した。

「当たり前でしょ…げほっ…。お前みたいな最低な奴に、屈するわけないじゃない…」

「くくくく…いいですね。その強気な表情。いつ屈服するかと思うとゾクゾクしますよ」

「生憎アンチレジストにはそんなヤワな戦闘員はいないわよ。皆、どんな攻撃だって耐えるんだから」

「ほぅ…綾ちゃんの同じクラスの友香ちゃんをご存知ですか?あなたと同じ戦闘員だったはずですが、すぐに屈服しましたがね」

「なっ!?ゆ、友香をどうしたの?」

 綾と友香は、横のつながりの殆どないアンチレジストの中では珍しく、友人同士で組織に入隊した同期だった。お互いに切磋琢磨したが、組織で友香は持って生まれた綾の才能の陰に隠れて目立たない存在になっていた。しかし、そのことに卑屈になることなく努力を続ける有香を綾は尊敬し、友香も綾の才能を素直に認めていた。
 しかし、1週間ほど前に人妖捜査に向かったきり、行方不明になっていた。当然クラスメイト達は騒然となったが、ファーザーの手引きで急病のため入院したことになっている。このような事態を考慮し、戦闘員には一人暮らしを義務づけられており家族との連絡も制限されていた。
 失踪した友香を発見することも綾の任務だった。そして十中八九、友香は人妖討伐に失敗し連れ去られたものと考え、綾は今回の任務に自ら志願したのだった。

「あなたと同じように私を捜していたもので、自己紹介をしたらいきなり攻撃してきましてね。返り討ちにしたまでですよ。じっくりと時間をかけてね。もっとも、綾ちゃんと違いすぐに弱音を吐きましたが」

「友香は…友香はそんなことしない!」

「お友達を信じたい気持ちはわかりますが、事実ですよ。心が折れたと同時にチャームを使ったので、今ではすっかり素直になりましたが」

「チャーム…?」

「私たち人妖の分泌する体液には人間を魅了する力があるのですよ。体液によってその効果の強さは違いますがね。まずはあなた達人間が唾液と呼んでいるものを使い、最後には…くくくく、まぁそれは自分で体験してのお楽しみとしましょうか」

「どこまで下衆なのあなた達は!?そんな卑怯な手を使って友香を…」

「卑怯とは人聞きの悪い。私は友香ちゃんにキスをしただけですよ。今では自分から望んで私の男根をしゃぶってきますがね」

「!!? このぉぉぉぉぉぉ!!」

 綾は怒りに我を忘れ、猛然と涼に突進した。近づきながら突きを繰り出すも悠然と涼にかわされ、腕を捕まえられたまま抱きかかえられる格好になった。

「なっ…この…離せ…んむぅぅぅ!?」

 男は強引に綾の唇を奪った。唾液を流し込もうとするが、綾が咄嗟に口を閉じ、歯を食いしばってそれを拒む。先ほど聞かされたチャームを自分もされるのかと思うと全身に鳥肌が立つほどの嫌悪感を覚える。

「んんん、なかなか強情ですね。おとなしく口を開けなさい」

ズドッ!

「ぐはっ!!んぅ!?んんんんんん!!」

 涼は押さえつけていない方の手で綾の腹部を殴り、えずいて口が開いた瞬間に強引に舌を侵入させた。綾のファーストキスは奪われた。

「んむっ!?んんん!!んんんんぅ…むふぅ…」

 男の唾液が流し込まれると、綾の頭は次第に痺れるような感覚に教われ、徐々に熱くなっていった。目はとろんと蕩け。頬はだんだんに桜色に染まっていく。

「ん……ん……んあうっ!?」

 不意に涼は綾の豊満な乳房を揉みしだいた。右腕をつかまれ、左の乳房をこね回され、唇をすわれ続ける。はじめて体験する感覚の連続に綾の頭は混乱し、何も考えられなくなる。

「んふぅぅぅっ……あ…あぅぅん。だめ、そこ…んむっ…んん…ぷはっ…はぁ…はぁ…」

 涼は綾の唇を解放すると、月の光に照らされた銀色の橋が2人の唇の間に架かった。

「さすがは私の見込んだ女だ。友香ちゃんの何倍も楽しめそうですよ。さて、場所を変えましょうか?」

ズキュッ!!グリィィッ!!!

「ごぶっ!!ぐぇぁあああ!!………ああぁぁ……」

 涼は綾の腹部に拳を埋め、そのまま無理矢理鳩尾まで拳を突き上げた。強烈な衝撃に綾はこの日初めて気を失い、涼の身体に倒れこんだ。

「今日は最高の夜になりそうですよ。そう簡単に落ちられても面白くないので、もう少し痛めつけてあげましょう」

 ひょいと肩に綾を担ぎ上げ、涼は体育倉庫に向かって歩き出した。

「うぐっ・・・ぐぁぁ・・・。な、なんで・・・先生が・・・」

「くっくっく・・・私も驚いていますよ。まさか綾ちゃんがアンチレジストの一員だったとはね。以前からその身体には目をつけていたんですよ」

 男の目は既に先生と呼ばれていた頃の面影は無く、飢えた肉食獣のような目つきで綾の豊満な胸や両手で抱くようにかばっている腹部、ミニスカートから覗く白い下着を舐めるように凝視していた。その赤く光る蛇のような縦長の瞳孔は、紛れも無く涼が人妖である証拠を綾に突きつけていた。

「はぁっ・・・はぁ・・・・ふ、不意打ちが当たったくらいで、勝った気でいないでよね・・・」

綾は右手で強烈な一撃を浴びた腹部を抑えながら、ゆっくりと立ち上がる。

「もう先生が、いや、お前が人妖だってわかったからには容赦しないわ!謝っても許さないんだからね!」

「おお、これは怖いですね。せいぜいお手柔らかに頼みますよ」

「この、なめるなぁああ!」

綾は一気に距離を縮め、高速の突きを涼の腹部に見舞った。

「ごっ!ぐぅっ!?ぐっ!ぐぅぅぅ!」

「ほら!ガラ空きよ!」

ガッ!ドボッ!

左手で顎を跳ね上げると、すかさず右手で涼の腹部に一撃を加える。その流れるような動作は一切の無駄が無く、美しかった。

「とどめぇぇ!!!」

ズボォォッ!!

「ぐおぁぁぁぁ!!」

強烈な一撃を浴び、涼はその場に膝を着く。

「どう?なかなかでしょ?この対人妖グローブは人間の数倍のあなた達の耐久力を、人間と同等まで落とせるのよ。その上で私のパンチの威力が合わさったらどうかしら?おとなしく拘束されるなら、これ以上攻撃はしないわ。その場でうつ伏せになりなさい」

アンチレジストの中でも、綾はとりわけ突き技に関して自他共に認める才能があり、シミュレーション訓練では常にトップクラスを維持していた。そのため普段は横の繋がりの無い戦闘員の間でも話題になるほどであった。勝負はこのまま決したかに見えたが、しかし、涼はしばらく片膝の体制を維持したかと思うと、余裕の表情を浮かべながら立ち上がった。

「まだ抵抗するの?後悔するわよ?」

「ふふふ、私は自信に充ち溢れた顔が絶望に変わる様を見るのが好きでしてね。演出上こういう展開も必要ですから」

「なっ?・・・とことん舐めるじゃない・・・?ならあなたの顔を絶望に変えてあげるわ!」

再び綾は涼に急接近し、猛攻を加える、しかし・・・。

ガッ!ガッ!ドッ!ドボッ!

「・・・・・・・・」

「・・・え?」

「ふぅ・・・最初にお手柔らかにと頼んだのに、酷いじゃないですか?」

「な、何で?嘘・・・効いてない・・・の?」

「言ったでしょう、演出だって」

「こっ、このおっ!」

ガッ!ガシィッ!!

「ああっ!?」

涼は最初の一撃を何事も無かったかのように受けると、その突き出された綾の腕をつかみ、真上に持ち上げると開かれた腹部に一撃を見舞った。

スボォッ!

「うぐぅぅぅぅ!?」

「くくく・・・ガラ空きですよ?」

ズンッ!ズグッ!スブッ!ドムッ!ズボォッ!!

「ぐふぅっ!?うっ!うぐっ!ぐはぁああ!」

綾の膝がガクガクと震え、立っているのがやっとの状態で男を見上げる

「ああ、あああ・・・」

「ふふふふ、その表情ですよ。たまらないのは・・・」

「な・・・んで・・・。グローブが・・・効かないの・・・?」

「さぁ?不良品ではないですか?組織に帰ったらファーザーに文句を言えばいいですよ。もっとも、帰れればの話ですが」

「ファ・・・ファーザーを・・・知ってるの?」

アンチレジスト。対人妖組織のボス、ファーザー。名前以外はまったくの謎に包まれているが、人妖が出没し始めたころから既に組織の元になる団体を作り上げており、構成員から絶大な支持を得ている。組織のの運営や戦闘服やオペレーターの物資支給、果てはその給与までもがファーザーの私財から出ているという。

「知ってるも何も・・・。まぁ、今はそんなことより楽しみましょうか?すぐに気を失わないように気をしっかり持ってくださいね。夜は・・・長いですから・・・」

男はギリリと右のこぶしを握りしめ、綾の腹部に狙いを定めた。綾の顔はすでに、絶望に染まっていた。

 整然と片付けられてた体育館にも青白い月明かりが入り込み、がらんと広い空間の静けさを一層引き立てていた。昼間の部活動や授業中の活気のある雰囲気とは対照的で、自分のブーツの足音がいやに大きく響いた。綾はひとまず体育館を対角線上に歩き、キョロキョロと周りを見るも、その中に動くものの気配は無かった。中央で立ち止まり、気持ちを落ち着かせるために深呼吸する。

「とりあえずここには居ないか・・・。それにしてもどうしてウチの戦闘服ってこんななんだろ?丈が短いからお腹は丸見えだし、スカートも・・・少し動いたらパンツ見えちゃうし・・・。そういえば友香のもブルマにニーソックスだったな。動きやすさのためとか言ってたけど、どう考えても上の趣味よね」

 若々しいむっちりした太ももにくびれた腹部。若くて張りのある巨乳がセーラー服を押し上げ、最高のプロポーションをフェティッシュな戦闘服が引き立てていた。「んー」と伸びをする綾をステージの袖から男が生唾を飲みながら凝視しているとも知らずに。


 自分とは違う足音に気づいたのは、綾が諦めて体育館の入り口の扉に手をかけたときだった。見ると、スーツ姿で長身のがっしりとした男が、体育館中央をこちらに向かって歩いてきているところだった。

「え?校長先生!?」

「ええ、綾ちゃん。こんな時間に会うとは珍しいこともあるものですね」

 男の名は桂木 涼。35歳という異例の若さでこの誠心学園の校長に就任してきた。当初は創業者の縁故かと噂されていたが、どうやら教育委員会からの直々の推薦らしい。長いこと外国の大学で教育の研究をしていたらしく、あらゆる物事に詳しかった。当然頭の回転も速くリーダーシップもあり、最初は反感を持っていた年配の教師たちが彼に従うのにそう時間はかからなかった。おまけに理知的な中に野生的な鋭さを持った容姿はたちまち女生徒達の憧れとなった。

「珍しい・・・ですか?」

「ん?」

「先生、こんな時間に何をされているんですか?」

 両手でこぶしを作り腰にあて、首を傾げてたずねる。そのかわいい仕草もさることながら、若さに裏打ちされた張りのある巨乳がセーラー服を押し上げ、ショート丈にカットされた上着からくびれた腹部とかわいいヘソが覗いている。男は思わず生唾を飲み込み、血液が股間に集まるのを感じた。

「それはこっちのセリフでしょう?」

男が綾に歩み寄る。

「校長という仕事は暇そうに見えますが、意外と忙しいのですよ。すべての生徒はもちろん教師も管理しなければならないですからね。やっと教育委員会への報告書の作成を終えたので、校内の見回りをして帰るところでしたよ。綾ちゃんこそ、こんな時間になぜここにいるのですか?」

 そう言われればその通りだった。常識的に考えて、今は綾のほうがこの空間には異質だ。

「あ、いえ、それは・・・探し物を・・・」

「何を探しているのですか?」

「いえ・・・友人に頼まれて・・・その・・・」

 咄嗟に嘘がつけない性格のためか、しどろもどろになっていると男はすでに綾の目の前に迫っていた

「え・・・校長先生?」

「ひとこと、言えるのはですね」

ズグッ!!

「・・・あ」

 男が笑みを浮かべる同時に、ノーモーションで男のこぶしが深々と綾の腹部に突き刺さっていた

「あなたの探している人妖は、もう目の前にいるということです」

「う・・・ぐっ!?・・・あぐあぁぁぁ!!

 不意打ちを受け、数秒置いて襲ってきた猛烈な苦痛に、綾はその場に崩れ落ちるしかなかった。

「あ・・・がっ!?・・・な・・・んで・・・嘘・・・?」

 男はひざまづいている真綾のセーラー服のスカーフをつかみ無理やり立たせると、容赦無くむき出しの腹部に向かってこぶしを突き刺した。

ドボォッ!

「うぐっ!?・・・ぐあぁぁぁ!!」

 綾は、その華奢な身体がくの字に折れ、両足が地面から浮くほどの衝撃を受け止めた。

 夜の学校というものは、普段自分が通い慣れているものとは思えないほど雰囲気が変わるものだ。何か邪悪な瘴気のようなものが校舎中を取り巻き、ひとたび校舎内に足を踏み入れれば、どこか別の世界へ連れ去られてしまう錯覚にとらわれる。その雰囲気は、たとえアンチレジストの戦闘員である綾とはいえ、本能的に足をすくませるものがあった。

「オペレータへ、応答願います・・・・・・ん?」

 しかし、イヤホンから聞こえてきた音は、いつもの事務的なオペレーターの声ではなく、ホワイトノイズのみであった。綾はイヤホン式通信機を再起動させたり、果てはぶんぶん振ったりしたものの、一向にホワイトノイズは止まず、オペレーターの声が聞こえることはなかった。

「おっかしーなー。今まで故障なんてしたこと無いのに。そういえばグラウンドの中に入ったときから調子が悪くなったような・・・。どうやら人妖はこの中にいると思って間違いなさそうね」

 綾はふぅっと息を吐き出すと、イヤホン式通信機をセーラー服のポケットに突っ込み、代わりにキーピックでを取り出し正門の鍵を開け始める。ある程度の知識があれば、たいていのアナログの鍵は開けられる。しかも見た目が頑丈なほど簡単に。ものの3分もかからないうちに、ガチャリと音がして正門の鍵が外れた。
 人気の無い校舎の中は、青白い月明かりと頼りない非常灯がポツポツとついているだけだが、案外明るかった。

「これなら懐中電灯はいらないな。初めての実戦だけど、人妖だろうが何だろうが叩きのめしてやるわ!」

綾は革製の手袋を締めなおすと、体育館の方へ向かって走り出した。


・・・・・・・・・。


「んっ・・・んむっ・・・はぁ、すごい・・・こんなになってる・・・」

 ぴちゃぴちゃと淫らな音が部屋の中に響く。豪華な調度品に囲まれた革張りの椅子に座る男性と、その足の間に跪き一心不乱に男性の肉棒に奉仕を続けているセーラー服の女子学生。

「んっ、んっ、んっ、んっ、んっ・・・ごくっ・・・ごくっ・・・。んふぅう・・・」

口の中にたまった唾液を音を立てて飲み干し、上目使いで男性を見つめる。

「くっくっく・・・ずいぶん積極的になりましたね友香ちゃん。ろくに教えてもいないのにどんどんフェラチオが上手くなっていますよ」

男が頭を優しく撫でると、友香はうっとりと満足げな視線を向け、口を肉棒から外した。

「ぷはっ!・・・だ、だって、先生のこれ・・・素敵すぎて・・・逞しくて、放したくないんです・・・はぁぁ・・・」

熱に浮かされたように肉棒に頬ずりすると、それを再び深くくわえ込んだ。

「んむぅぅぅ・・・。んくっ、んくっ、んくぅぅぅ・・・」

頷くように頭を動かし、下あご全体で肉棒を擦る。一気に男性の顔から余裕が無くなり、サディスティックな表情が浮かぶ。

「くぅぅぅぅ!こ、これは・・・。ぐぅぅ・・・そこまでするのなら、遠慮無く一気にぶちまけてあげましょうか」

 男は友香の頭を左手でつかむと、喉までくわえ込まれていた肉棒を口元まで引き抜き、友香の舌先に肉棒の先端を付け一気に放出した。

「ほら、ご褒美に舌全体で私を味わわせてあげますよ!ぐっ!イくぞ!」

どびゅっ!!ぶびゅるるるるぅっ!!ぶしゅぅぅぅぅ!!

「んむうっ!?んんんんんんん!!!!」 

 突然の大量放出に友香は初めは本能的に抵抗するそぶりを見せたが、すぐに表情は恍惚としたものに変わり、愛おしそうに放出されたものを飲み下していった。

「ごきゅっ・・・ごきゅっ・・・んふぅぅぅ・・・・ごくっ・・・ごくっ・・・」

「はぁ・・・はぁ・・・アンチレジストの戦闘員ですらここまで堕とせるとは、人間全体を我らに魅入らせられるのも時間の問題かもしれませんね。さて、丁度あなたのお友達も来たようですし、遊んできましょうか・・・」

男性の液体を飲み干すことに夢中な友香には、男の声は届いていなかった。

「オペレーターナンバー6からAへ、人妖の波長を誠心学園でキャッチしました。至急現地へ向かってください」

「りょーかい。至急現場へ向かいまーす。通信終了っと。はぁ・・・よりによって、何で私の学校で人妖が出るのよ・・・」

彼女の名前は、神崎 綾。誠心学園へ通う学生でありながら、人妖討伐機関「アンチレジスト」のメンバーである。

「初仕事が自分の母校とはね。でも、いなくなった有香ちゃんもおそらくこいつの仕業・・・。絶対に私が叩きのめす!」

パシッとオープンフィンガーグローブを装着した自分の手の拳と手のひらを合わせる。既に格好はアンチレジストの戦闘服である腹部の出たセーラー服に着替えていた。引き締まった身体にアンバランスな巨乳がセーラー服の胸元を押し上げ、ショート丈のセーラー服から覗くくびれた腹部を強調していた。

「それにしても、なんでウチの戦闘服ってこんななのかしら?まぁ動きやすいことは動きやすいけど・・・もう少し防御とかも考えたほうがいいと思うんだけどな。さて、じゃあ行きますか!」

綾は背後にそびえる自分の母校に向かって駆け出した。

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