Яoom ИumbeR_55

Яoom ИumbeR_55は「男性→女性への腹パンチ」を主に扱う小説同人サークルです。

カテゴリ: case:AYA

「うぷっ?! ぐえぇぇぇぇ……」
 びちゃびちゃという粘ついた水音が体育館に響いた。
 悪夢の様な責め苦を数十分受けた後、ようやく涼は綾の身体を解放した。その場で崩れ落ち、急激に体勢を変えた衝撃で胃液が逆流したのだろう。両手で腹を抱えたまま、床に両膝を着いて胃液を吐き出している。
「げぷっ……はっ……はぁ……」
「よく頑張りましたね。これだけ痛めつけられても降参しなかったアンチレジストは初めてですよ。普通ならものの数分で泣きながら命乞いをするものですが」
 綾は苦しげな表情をしながらも顔を上げ、強さを失っていない瞳でにらみ返した。
「当たり前でしょ……げほっ……。あんたみたいな最低な奴に……屈するわけないじゃない……」
「くくくく……いいですね。そういう女性ほど、屈服させる甲斐があるというものです……。あなたと同じクラスの友香さんは、すぐに折れてしまって歯ごたえがありませんでしたからね」
「やっぱり友香は……けほっ……あんたの仕業だったのね……。デタラメ言わないでよ……友香は簡単に降参なんてする訳無い」
 綾が片膝立ちになり、歯を食いしばって涼を睨みつける。
 綾と友香は同じタイミングで組織に入隊した同期だった。
 お互い同じ学校、同じ一人暮らしという似通った境遇で意気投合し、互いに切磋琢磨したが、すぐさま才能を開花させて上級戦闘員に昇格した綾とは違い、友香は具体的な欠点は無いがあまり目立たない一般戦闘員のひとりになっていた。しかし立場こそ変わっても二人の仲は変わらず、しばしば買い物や旅行に出かけて行った。
 友香の未帰投の知らせが入ったのは一週間前だ。
 クラスメイト達は騒然となったが、ファーザーの手引きで情報操作が行われ、急病のため入院したことになっている。綾と同じく友香も家族とは疎遠になっており、ことが大きくならずに済んでいる。
「ちょうど今日のような晴れた夜でした。綾さんと同じ様に私を捜していたので、自分から名乗り出たらいきなり攻撃されましてね。すこし痛い目に遭ってもらいました。もっとと、綾さんとは違い、すぐに降参しましたが……」
「嘘言わないで。友香は……友香はそう簡単に屈服しない!」
「友人を信じたい気持ちはわかりますが、事実ですよ。心が折れたと同時にチャームを使ったので、今ではすっかり素直になりましたが」
「……チャーム?」
「あなた達も少しは知っているでしょう? 私達の分泌する体液には人間を魅了する力があるのですよ。例えば唾液とか……。まぁ麻薬みたいなものです。精神に作用し、我々のチャームが欲しくてたまらないように精神依存を発症させる」
「どこまで下衆なのあなた達は!? そんな卑怯な手を使っ友香を……」
「卑怯とは人聞きの悪い。私は友香さんにキスをしただけですよ。今では自分から望んで私の性器をねだってきますが……」
「黙りなさいよ!」
 綾は怒りに我を忘れ、正面から涼に突進した。
 顔面に向けて殴打を放つ。
 単純な攻撃は涼に軽く躱され、腕を掴まれたまま抱きかかえられる体勢になった。
「くっ……この……離せ……んむッ!?」
 涼は強引に綾に唇を重ねた。唾液を流し込もうとするが、綾が咄嗟に口を閉じ、歯を食いしばってそれを拒む。初めての、しかも敵対する相手に唇を奪われ、嫌悪感から全身に鳥肌が立った。
「んぅ……なかなか強情ですね。おとなしく口を開けなさい」
「んぶッ! んむッ!? んうぅ!」
 涼は抱き合ったまま、綾の下腹部に拳を突き込んだ。衝撃で開いた綾の口内に強引に舌を侵入させる。舌は意志を持った生き物の様に的確に綾の舌に絡み付いた。綾はドアをノックする様に涼の胸板を拳で叩いたが、その程度の抵抗で涼が口を話す訳も無い。綾の顔は完全に天井を向き、絡み付いた涼の舌を伝って、綾の口内に唾液が流し込まれる。
「んむッ?!」
 涼の唾液は糖蜜の様に甘かった。抵抗空しく唾液の注入は続き、徐々に綾の頭はぴりぴりと微かに痺れるような感覚を覚えた。微かに体温が上がった気がする。瞼がぼうっと熱くなり、目がとろんと蕩けてきた。
「ん……んぅ……んあうっ!?」
 不意に涼は綾の胸を鷲掴みにした。左胸をこね回され、唇を吸われ、舌を嬲られ続ける。初めて体験する感覚の連続に、綾の思考は徐々に温かい泥の中に沈んで行く様に曖昧になっていった。
「んふぅっ……あ……んぅ……んむっ……んん……ぷはっ……はぁ……はぁ……」
 ようやく涼は綾の唇を解放した。二人の唇からは粘度の高まった唾液の橋が架かり、月の光を反射しながら崩落した。
「かなり効いてきたみたいですね……。それにしても、本当に良い反応だ……このまま堕とすのが惜しい。もう少し楽しませてもらいましょうか」
 ずぐん……ぐじっ……。 
「ぐぶっ?! ゔあぁっ! あ……あぁ……」
 涼は綾の緩み切った腹部に拳を埋め、そのまま鳩尾まで捩じり上げた。意識が飛びかけていた綾は突然の苦痛に悲鳴を上げる。しばらく空気を求める様に口をぱくぱくと開閉した後、失神して涼の身体に倒れ込んだ。涼は綾を軽く肩に担ぎ上げると、体育倉庫に向かって歩き出した。


「ん……んん……、んぁ……」
 綾が目を覚ます。裸電球に照らされた黒くザラザラした地面が目に入った。顔を上げる。かごに入った様々な球技のボール。バスケットの得点板。その他、所狭しと押し込められた様々な用具。
「やっとお目覚めですか? 待ちくたびれましたよ」
 涼が積み上げられた白いマットの上に座っていた。綾が目を覚ましたのを確認すると、ゆっくりとした動作でマットから降りる。
「くっ……え? な、何これ?」
 ぼうっとした意識を頭を振って回復させる。思考が回復して来ると同時に、綾は自分の置かれている状態に気がついた。綾の身体は体育倉庫の壁に背中をつけられ、両腕は頭の上で交差させた体勢で、手首を縄跳びで壁の金具に固定されていた。足首にもそれぞれ縄跳びが剥き出しの鉄骨と結ばれ、僅かに身じろぎするくらいしか身体の自由が効かなかった。強制的に無防備に身体を開いた状態になり、ショート丈のセーラー服はもう少しで胸が見えそうなくらいまくれ上がっていた。
「な……なっ……?」
「ふふふ……いい格好ですよ」
「嘘……くっ! この……ッ!」
 必死に身体を揺さぶるが、縄跳びの拘束は緩みそうも無い。涼は笑みを浮かべながら綾に近づく。
「あなたの苦しむ顔があまりにもそそるものでしたから、もう少し堪能しようと思いましてね。さっきまではまだ自由に抵抗できましたが、これからはどうでしょう……避けることも、防御することも出来ない……」
 綾の表情から血の気が引いてゆく。
「さて……どうしたものか……。痛めつけるだけでは芸が無いので……そうですね。尋問でもしましょうか。アンチレジストの本部の場所と、この学校に他にもアンチレジストの構成員がいるのか教えていただけますか?」
「な……そんなこと……い……言う訳ないでしょ! こんなことしても無駄……ゔぐぅッ!?」
 綾が言い終わらないうちに、涼の拳がむき出しの綾の腹部にめり込み、滑らかな肌を巻き込んで手首まで痛々しく陥没した。
「ふふ……そう、口を割らない方がこちらも楽しめますよ。頑張って耐えて下さいね」
 ずぶ……ずぶ……ずぶ……と一定の感覚で、涼の拳が綾の腹部に突き刺さる。攻撃を受けるたび、綾の身体が跳ね上がった。
「がッ!? ごぶッ! うぐッ! ぐぶッ!」
「どうですか? 背中を壁に着けていると、威力が逃げずにそのまま受け止めるしか無いでしょう? もっと苦しんで下さい」
 壁と拳に挟まれ、綾の腹は痛々しくひしゃげた。上着が捲れ上がり、微かに赤く染まった肌が痛々しい。綾は目に涙を浮かべながらも歯を食いしばって耐え、涼の拳を受け入れ続けた。
「おぐぅッ! ゔあッ! ぐぶっ!? ぐッ……けほっ……こ……こんなの……効かない……から…………」
 歯を食いしばりながら、必死に涼を睨みつける。
「はっ……はぁ……どうしたの……もう……終わり?」
 綾は必死に強がって見せるが、膝は力が入らずガクガクと笑っている。苦痛の連続で下あごが震え、歯が僅かにカチカチと音を立てていた。綾の様子に涼は満足そうな笑みを浮かべ、綾の肩に手をかける。
「これは大変失礼を致しました。お詫びに、死にたくなるほどの苦痛を味わわせて差し上げます。どうぞご勘弁を……」
「くっ……あぅ……」
 涼の手に、綾の肩が小刻みに震えている感触が伝わる。涼は綾の下腹に拳を埋めると、柔らかな胃の感触を確かめる様にゆっくりと埋めていった。
「あ……ぐぷっ!?」
 ぐりっ……という嫌な音が狭い空間に木霊する。
 涼は綾の胃を正確に探り当てると、それを潰す様にさらに拳を突き込んだ。
「げぽっ?! うぶ……おぉぉぉ……」
 胃を完全に潰され、綾の口から透明な胃液がこぼれ落ちる。今までの苦痛とは明らかに違う内蔵へのダメージに、綾の瞳孔は一気に収縮した。涼は拳を抜かず、嬲る様にぐぢぐぢと拳で掻き回す。
「ふふ……壁との間に胃を挟まれて、さぞ苦しいでしょうね」
「あ……うっ……ぬ……抜い……て……」
「これはどうでしょう?」
 涼は膝を引き絞って綾の両肩を掴むと、背骨の感触が分かるほど深く綾の腹に突き込んだ。臍から鳩尾の下までの広い面積が一気に陥没し、とてつもない苦痛が綾を襲った。
「ぐ!? ぐあぁぁぁぁぁ!」
「いかがですか? 拳とは比にならない威力だと思いますが」
「げぼッ……う……ぐぷッ……や……やめ……赤ちゃん……出来なくなっちゃう……」
 この世のものとは思えないほどの苦痛に、綾は口を大きく開いて喘いだ。心が折れそうになるが、強い使命感と友香を助けたいという気持ちが、ぎりぎりで屈服しそうな心を支えてい。
「……いい顔だ。たまらない……一回……出すぞ……」
 涼は文字通り人間離れした力で綾の腕を拘束していた縄跳びを引き千切った。崩れる様に綾が地面に両膝を着く。涼は綾の頭を押さえて仰向けに倒れるのを防ぐと、おもむろにスラックスのファスナーを下した。一般男性の二周りほど大きい性器を取り出し、綾の顔の前でしごきたてる。体勢的に真正面からそれを直視してしまった綾は、一瞬で自分が何をされようとしているのかを理解した。
「あ……えっ……? うそ……まさか……嫌、嫌ぁ!」
「くっ……出る……くおぉッ!」
「うあッ?! ああああっ!」
 涼は何の躊躇いも無く綾の顔を目掛け、信じられないほど大量の粘液を浴びせかけた。綾は本能的に顔を逸らそうとするが、涼に頭を掴まれて逃げることが出来ず、どくどくと溢れでる粘液を浴びるしかなかなかった。
「くあぁ……まだ……止まらないですよ。ちゃんと舌を出してたっぷりと受け止めなさい」
「あ……あうっ……ぅぁ……えぅ……まら……れてる……」
 ダメージで意識が朦朧としているのか、涼が命じると綾は素直に舌を出して放出を受け止めた。あどけなさの残る顔でうっとりと上目遣いで見上げ、舌全体で濁った粘液を受け止める様子はこの上なく背徳的で、涼の興奮は最高量に達し、放出は数十秒続いた。
「えぅ……あぁ……はっ……はぁ……」
「くふぅ……かなり出ましたね……。どうですか? 一番強力なチャームの味は? もう身体の制御が効かないはずですが」
「あ……あ……あぁ……」
 綾はバケツをひっくり返された様な量の粘液を浴びせられ、真っ白にコーティングされた舌を出しながら恍惚とした表情で涼を見上げた。胸の前に差し出した両手にもなみなみと白濁が溜まり、口からこぼれて来る白濁を受け止めている。
「さぁ……口に溜まったものを飲みなさい」
「うぅん……ごくっ……ん……んふぅ」
「くく……素直で良いですよ。さぁ、これを舐めて綺麗にしなさい」
「はぁ……はぁ、う……あ……」
 涼は一歩前に進むと、放出したばかりだというのに硬度を保ったままの性器を綾の前に突き出した。綾は吸い寄せられるように差し出された性器を咥えようと小さく口を開ける。しかし、性器の先と綾の唇が触れようと舌直前、微かに綾の目に光が戻った。
「だめ……友香……友香を……助けるまで……負けられない……」
「……何だと? 私の最も強力なチャームを飲んだはず……。既に精神が侵され、チャームを求めるだけの存在になってもおかしくはないというのに……まぁいい、なら死ぬ寸前まで痛めつけてやる」
 涼は倉庫の壁から新しい縄跳びを取ると、綾を再び壁に拘束した。綾の目からは、恐怖と苦痛と悔しさで自然と涙が溢れた。このままでは殺されるかもしれない。友香の救出を断念し、組織のことを話して助かろうかという考えが浮かんだ。なぜ自分が顔も知らないファーザーや、見ず知らずの他人の為にこんな目に遭わなければならないのかと。しかし、その考えはすぐに消えた。家族とは疎遠になっている綾にとって、友香は境遇の似ている、何でも打ち明けられるかけがえの無い親友だ。その友香が、この男に弄ばれたのだ。絶対に敵を討ちたい。たとえ討てなくても、屈服だけは絶対したくない。
「殺すなら……殺しなさいよ。絶対に……絶対に! お前なんかに屈しないから!」
「……なら、望み通りにしてあげましょう。殺すのは惜しいですが、替わりは探せばいくらでもいますからね……」
 涼は拳が軋むほど強く握り、弓を引き絞るような動作で綾の腹部に狙いを定める。
「内臓を潰し、背骨を粉砕してあげましょう……のたうち回って死に……ぐぅっ!?」
 急に涼の顔つきが変わり、握られた拳がゆっくりと開かれた。一瞬のことに、綾は何が起こったか分からなかった。涼が背を向ける。後ろには綾の親友、友香が立っていた。
「お前……なぜここに? わ……私に何をした……?」
「綾をひどい目に合わせたからよ。目を覚ましたら、先生が居なかったから、探したら声が聞こえて……。よくも綾に酷いことを!」
 涼の背中に包丁が突き刺さっている。グレーのスーツがみるみる赤く染まっていく。涼は包丁をつかみ引き抜くとその先をまじまじと見つめた。
「馬鹿な……お前は完全に私のチャームに侵されていたはずだ……。正気に戻ることなど……」
 涼の手から包丁が落ちる。大きな音を立てて、コンクリートの床の上で跳ねた。涼は信じられないものを見る様に、床に落ちた包丁を見つめた。
「お前みたいな出来損ないが……一番強力なチャームに打ち勝っただと? おとなしく私のチャームを求めるだけの存在になっていればいいものを……」
「……友香……本当に友香なの?」
「綾、待ってて。すぐに助けるから」
 涼は先ほどまでの余裕の表情が消え、憎悪の表情でゆっくりと友香に近づく。
「出来損ないが……お前のような落ちこぼれに私が負けるはずが無い! せめてお前だけでも殺してやる!」
「たとえ出来損ないだって、ちゃんと生きて存在しているのよ! 人妖のチャームがどれだけ強力か知らないけど、綾のことを忘れる訳無いでしょ!」
 涼が友香に近づく瞬間、背後で綾が叫んだ。ほんの一瞬、涼の気が削がれる。友香はその瞬間を見逃さず、もう一本の包丁を取り出すと涼に突進し、それを左胸に突き刺した。包丁は滑るように涼の身体に吸い込まれていった。
 涼がくぐもった悲鳴を上げる。何かを呟きながらよろよろと友香の脇をすりぬけ、扉に向かって歩き出す。友香は綾に駆け寄り、床に落ちていた包丁を拾って綾を拘束している縄跳びを切った。綾は崩れ落ちる様に友香に倒れる。ほとんど身体に力が入らなかったが、両手は友香をしっかりと抱きしめていた。
「友香……ありがとう……怖かった……。それに、友香も無事で良かった……」
 二人の瞳からは自然と涙が溢れ、友香も綾の頭をなでながらうなずいた。背後から涼の低い声が聞こえた。
「二人とも、覚えておけ……ごぶっ……今日は油断したが、私にここまで深手を負わせたことを後悔させてやる……」
 涼は体育館の中央で唸る様に言うと、そのまま暗闇へと消えて行った。友香が急いで追いかけるが、既に涼の姿はどこにも無かった。


「あーあ、身体が鈍っちゃった。早く訓練したいなぁ」
 綾は青空に向かって伸びをしながら病院の玄関を出た。横には友香が並んで歩いている。
「もう訓練するの? 一週間の入院で済んだことが奇跡的なのに」
 友香が綾の横をお歩きながら呆れた様に呟いた。
「結局、校長……誠心学園の人妖は行方不明。その後は組織が後処理して、綾がいない間に表面上は海外の教育機関へヘッドハンティングってことで話がついてる」
「うわ、嘘くさい。この時期にそれはかなり無理があるんじゃない?」
「仕方ないわよ、緊急だったし。でもやっぱりファンが多かったのね。相当数の女子が悔しがってた。その後に派遣された校長がまた普通の太ったおじさんでね……今までのとギャップがあり過ぎてみんなヘコんでる」
「人妖の可能性は?」
「無いでしょ? 普通に結婚して子供もいるみたいだし。時々家族で買い物をしている所を見られてるって」
 ふふ、と二人で笑い合い、駅に向かって歩く。
「組織に行く前に、何か食べて行く?」
 友香が綾に聞いた。綾の顔が満面の笑顔になる。
「ジ……」
「ジェラート! でしょ? それも塩キャラメルのダブル」
「さっすが!」
 清々しいハイタッチの音が青空に抜ける。
 脅威は消えた訳ではないが、今はつかの間の平和を味わいたかった。
 おそらくそう遠くないうちに、再び涼と対峙するだろう。その時は、今度こそ助からないかもしれない。今回のように運が良かったということは無く……。今生きていることが確立の高い偶然であることを二人は噛み締めていた。だからこそ、今を楽しみたい。
 今、生きているということを。


AYA2

 室内に月明かりが差し込んでいる。
 銀色の光は、少女の身に纏っている白と濃紺の体操服に似たコスチュームや、それに包まれた滑らかな肌をうっすらと輝かせていた。少女は分厚い木製のドアに背中を押し付けている。男の顔が触れ合うほど近づく。両手首は男の大きな左手によって頭の上で交差されたまま固定されていた。
 緊張しているのだろう。少女の早い呼吸が部屋に響く。
 男が右の拳を脇の下まで引き絞る。少女が「ひっ」と小さく悲鳴を上げ、恐怖心から瞼が大きく見開かれた。捻れたバネが戻る様に拳が突き出される。柔らかい化学繊維の生地に包まれた少女の腹に、岩石の様に固く骨張った男の拳が深く埋まった。杵で突かれた餅の様にずぶりと腹部が陥没すると、少女の瞼が限界まで開かれた。
「ひゅぐッ?! う……げぷ…………ッ!」
 その一撃は、華奢な身体の少女にとってはあまりにも残酷だった。
 体操服の様な上着は男の拳によって捻れ、今にも裂けてしまいそうなほどギチギチと悲鳴を上げている。少女の口からは無理矢理押し出された唾液が糸を引いて床へと垂れた。
「ゔぶッ……うぐ……ぬ……抜い……て…………」
 男は少女の反応を楽しむ様に、少女の腹部にめり込んだ拳をピストン運動の様にリズミカルに押し込む。少女の項垂れていた頭が反動でビクリと跳ね上がり、天を仰いだ。
「あっ! あゔッ……! おぐ……うむぅッ……!」
「ふふ……良い反応ですね。上代友香(かみしろ ゆうか)。普段の姿よりよっぽど素敵だ」
 ダークグレーのスーツを着た男は、蛇を思わせる切れ長の目を細めながら口の端を釣り上げた。友香の腹に埋まった拳をゆっくりと引き抜くと、オールバックに纏めた髪を掻き上げる。口調は丁寧だが、どこか相手を嘲笑う様な狡猾な質感を孕んでいた。
 男が友香の顎を掴む。
 力が入らず、床を向いた友香の視線が強制的に男に向けられた。
 男は口の端を舐めると、先ほど散々責めた友香の腹部に再び容赦の無い一撃をめり込ませた。友香の目が大きく見開かれ、悲鳴と共に大粒の涙がこぼれる。
「おぐぅぅっ……! な、何で……何で……先生が…………」
 男は友香の両手首を解放する。まるで膝から下が無くなった様に、友香はその場に崩れ落ちた。両腕で腹を抱えながら女の子座りでうずくまる友香の胸元を掴んで、無理矢理立たせる。上着が引っ張られ、滑らかな腹部と縦長の臍が露になった。男はまだ脚に力が入らず、中腰の姿勢の友香の髪を掴み、強引に唇を吸う。
「んむっ? んんぅ! ん……んぅ……」
 友香は最初は激しく抵抗したものの、男の舌が生き物のように口内を嬲り、唾液が流し込まれると、不思議と痺れる様に全身の力が抜けていった。
「んん……んふぅ……ふぅっ……あむっ……」
 次第に友香の目が蕩ける。痺れが徐々に口内から脳へと移動し、不思議な恍惚感に包まれる。目の前を白黒のノイズが明滅し、ゆっくりと瞼が閉じて行く。
 ぐずり……と重い衝撃が友香の腹部を襲った。
「ぐぶっ?! んゔっ……ッ!!」
 友香の思考が白くとろりとした恍惚感から、コールタールの様な真っ黒い苦痛に転落した。一瞬何が起こったか分からずパニックになる。
「ぐっ! ぐむっ!? んぐっ! んんっ! んぐぅっ! ん……ぷはっ! あ……ああぁ……」
 男は口を付けたまま友香を攻撃し続けた。生腹を拳で抉り、殴られた箇所が痛々しく陥没する。
 悪夢の様な攻撃を止めると、友香は崩れ落ちる様にしゃがみ込んだ。男は倒れ込もうとする友香の髪の毛を掴むと、半開きになった口に硬直した性器をねじ込んだ。
「んぐぅうううう!?」
「くぅぅっ……限界だ……。ほら……溺れなさい……」
 男は友香の頭を両手で固定すると、友香が苦しむのも意に介さずに強引に前後に揺すった。大きくエラの張った先端が友香の喉を擦り上げ、猛烈な嘔吐感がこみ上げる。友香が両手で男の腰を突き飛ばそうとした瞬間、通常の男性の射精量の数倍はあろうかという粘液を友香の口内に放出した。
「んぐっ?! んゔぅッ! んんんぅ…………ぐぶッ!? んんんっ! ごくっ、ごくっ……んふぅうううう!?」
 友香は目を白黒させながら突然の放出を受け止めた。
 思わず飲み込んでしまった粘液は唾液と同様に食道や胃を痺れさせ、不可解な快感となって友香の脳へと登って行った。
 男の放出は壊れたポンプの様に定期的に脈打ちながらも弱まること無く、開かないドアの前で癇癪を起こした様に友香の口内を叩き続けた。口内や喉が多量の粘液で塞がれ、口の端から滝の様に溢れる。
「お……おぉ…………最高だ……」
 友香は気道までも粘液で塞がれ、まともに呼吸が出来ない。窒息寸前で徐々に黒目が瞼に隠れる。男は苦しむ友香を気にすること無く、自らの快感に任せて放出を続けた。
「ぐ……ぐぶっ……げぇ……」
「おっと……そろそろ危ないか……」
 ワインのコルクを抜く様な音を立てて、喉を塞いでいた性器を抜き取る。
「げほぉっ! うぶっ……ゔえぇぇぇぇッ…………あぁ…………」
 性器が抜かれると同時に、友香は背中を丸めて白濁した粘液を吐き出した。床の上に粥をこぼした様な水溜りが広がる。友香は内臓全てを吐き出す様な激しい嘔吐の後、自らの吐瀉物の上に顔から倒れ込んだ。
『こちらアンチレジスト本部、アンチレジスト本部。神崎綾(かんざき あや)上級戦闘員、神崎綾上級戦闘員へ。聞こえますか?』
「はいはーい、聞こえまーす」
 綾と呼ばれた少女が独り言を呟く様に答える。左耳に納まっているインナーイヤホンの感度は今日も良好だ。個人の耳の形を型取りして成形しているため、装着感は殆ど無い。
 夜の公園のベンチ。明るく透き通る様なセミロングの茶髪に、ややオレンジがかったブラウンの瞳。気の強そうな吊り目がちの目を細めながら、ベンチの背もたれに身体を預ける様に上体を反らして星空を見る。少し遠くの空の、水面に浮かぶ油膜の様な都心の光は、綾の真上に浮かんでいる郊外の夜空までぼんやりと霞ませていた。綾は胸や腹の筋肉を伸びるのを意識してふぅっと長く息を吐いた。背中を反らしてもなお、その童顔にアンバランスな大きさの胸は茶色と白を基調としたセーラー服を押し上げ、その存在を誇示している。
『こちらも良好です。予定通り、誠心学院に棲み付いた人妖討伐の任務を遂行して下さい。反応を見る限り、まだ中にいます……どうか気をつけて……』
「りょーかい。で、今日も友香から連絡は無かった?」
『……はい……残念ながら……』
「そっか……。やっぱり、捕まったんだね……」
『…………』
「至急現場へ向かいまーす! 通信終了っと……。はぁ……上級戦闘員になって最初の任務が、まさか自分が通っている学校の人妖退治とはね」
 ジンヨウ……という聞き慣れない単語が綾の口からこぼれる。
「人間の様な妖怪」と名付けられたそれは、十数年前から、人間社会の脅威として水面下で調査、対策がとられてきた。そのひとつが、綾の所属する組織、人妖討伐機関アンチレジストである。
 人間の様で、妖怪の様な存在の人妖。妖怪は人を喰う。人妖もまた、人を喰う。
 この場合の「人を喰う」とは、頭からばりばりと食べることではない。調査の結果、人妖は食事をほとんど必要とせず、人間との粘膜の接触、いわゆる性行為に類似した行為により活動エネルギーを得ているということが解明された。そのため、人妖の分泌する汗や体液には特殊なフェロモンが含まれており、人間の精神に作用して魅入らせる効果がある。男性型の人妖は人間の女性を、女性型の人妖は人間の男性を魅入らせ、喰うのである。
 綾の所属しているアンチレジストは、その人妖の脅威を消し去る何らかが発見、開発されるまで、対症療法的に人妖を退治する戦闘集団である。
 綾は両手を組んで伸びをすると、そのまま背もたれに両手を着いて、バク転をする様にベンチの背もたれを飛び越えた。
 乱れた衣服を直し、ポケットからオープンフィンガーグローブを取り出して両手に嵌める。何回か装着具合を確認した後、パシッと乾いた音を立てて自分の拳と手の平を合わせた。
 綾はセーラー服に似た戦闘服に身を包んでいた。全組織から支給される戦闘服は、各戦闘員に合わせてオーダーメイドされている。どの程度まで個人の好みを優先出来るかは戦闘員のランクに拠る所が大きい。また、防御性、機動性、デザイン等、どの項目を重視するかは各戦闘員の好みに拠るが、とかく上級戦闘員に近づくほど、相手の攻撃を受け流し自分の攻撃を当てやすくするために軽装になる傾向が強い。綾もその例に漏れず、母校の夏服の制服を基調としたセーラー服をオーダーしていた。白地に茶色のラインがあしらわれた、通常の制服よりも丈が短く詰められた上着に、茶色の短いプリーツスカート。肘や腰、股関節や膝の動きを阻害しないため動きやすいが、なかなかに際どい格好だ。昼間に街中を歩けば格好と綾のプロポーションが相まって、かなり目立つだろう。
「無事に帰ったら塩キャラメルのジェラートをダブルで奢ってもらうからね! 友香!」
 綾は軽くジャンプして気合を入れると、公園の母校に向かって駆け出した。

 防犯カメラを避けながら、グラウンドの外周を回り込む様に進む。湿った雑草を踏むがさがさという音がいやにはっきりと耳に届いた。
 昇降口を照らす灯りの死角を通ってドアの前まで来ると、綾は定期報告をするためにイヤホンの通話ボタンを押した。
「オペレーターへ。こちら綾。昇降口に到着しました。応答願います……。もしもし? 応答願います…………あれ?」
 砂漠に吹く風の様なホワイトノイズが微かに聞こえるが、聞き慣れたオペレーターの声は微塵も聞こえて来ない。綾は耳孔にすっぽり納まったイヤホンを耳から取り出して通信機を再起動させた。ホワイトノイズ。再び取り出して乱暴に振ってみた。通信機能が回復する気配は無い。
「あれ? おかしいなぁ……今まで故障なんかしたこと無いのに……」
 綾は諦めてイヤホンを耳に戻すと、胸ポケットから針金を適当に捻った様な形のキーピックを取り出して、昇降口横の非常口の鍵を開けた。
 靴箱の壁をすり抜け、左右に分かれた廊下に出る。月明かりが廊下を照らしていた。人工的な灯りは非常口を表す緑色のランプと、非常ベルの赤い光のみ。暗いが、普段から通い慣れている為、慣れればライトが無くても困らないだろう。
 耳を澄ましても物音ひとつしない。
 本能的に身体が緊張する。
 まるで異世界に紛れ込んだみたいだと、綾は思った。昼間の活気溢れる様子は微塵も無い。綾はごくりと喉を鳴らすと、校内の調査を開始した。この建物のどこかに、人妖がいるはずだ。おそらく友香もそこに……。


「んっ……んむっ……はぁ、すごい……」
 湿った淫らな音が部屋の中に響く。革張りのゆったりした椅子に座る男と、その足の間に跪き一心不乱に男の性器に奉仕を続けている女子学生。友香が男の性器を口に含んだまま、頭を男の腹に何度も打ち付ける様に上下に激しく動かす。動かす度に、ショートカットの黒髪が揺れる。
「んっ、んっ、んっ、んっ、んっ……ごくっ……ごくっ……。んふぅう……」
 口の中にたまった唾液を音を立てて飲み干し、興奮の為に潤んだ瞳で男を見上げる。額には汗が滲み、吐息には熱っぽい感情が溶け込んでいる。
「くっくっく……ずいぶんと積極的になって……。ろくに教えてもいないのに、ますます上手くなっていますよ」
 男が頭を優しく撫でると、友香はうっとりと満足げな視線を向け、肉棒から口を離した。
「ぷはっ! だ、だって、先生のこれ……逞しくて素敵で……放したくないんです……はあぁ……はむ……っ……」
 友香は熱に浮かされたように男性器に頬ずりすると、それを再び深くくわえ込んだ。
「んふぅぅっ……。んくっ、んくっ、んくぅぅぅ……」
 頷くように頭を動かし、下の歯を軽く立てながら性器を擦りあげる。軽い痛みと激しい快感から男の顔から余裕が無くなり、蛇の様に縦に切れた瞳孔に暴力的な光が宿った。
「くぅぅぅぅッ! く……ぐッ……そんなに……私のが欲しいのか……?」
 友香は男を見上げながら、激しく頷く。男は友香の頭を両手で掴むと、激しく上下に動かした。喉奥を幾度と無く突かれ、友香は激しく嘔吐いた。目を見開き、大粒の涙を流しながら男の責めに耐える。
「んゔッ?! んっ! んぐッ! んゔッ! んむうぅッ!」
 セーラー服の上着は汗で貼り付き、白い下着が透けている。友香は抵抗の為に必死に手の平で男の内股を叩くが、男は責めを緩めず友香の喉を擦り続けた。徐々に友香の意識が遠のいてゆく。
 男は天を仰ぎながら友香の喉を気が澄むまで堪能すると、性器を一気に引き抜いた。友香の口内と男の性器に粘液の橋が架かる。
「ゔぁっ?! げほっ……げほっ!」
「ぐぅっ……よく頑張ったね……。ほら、ご褒美をあげるから、舌を出しなさい」
「あっ……けほっ……はぁ……えあぁ……」
 友香は本能的に命令に従い、舌を限界まで伸ばした。男は何回か性器を扱くと、ポンプで圧縮した様な粘液を友香の舌目掛けて放出した。
「えおぉっ?! んあぁ!」 
 突然の大量放出に驚き、友香は一瞬顔を引いた。しかしすぐに舌を足したまま、恍惚とした表情で放出を受け止める。自分のために、男性が達したという満足感。通常の男性では放出しきれない量の粘液を浴び、友香はうっとりと目を細めた。

 綾は音が鳴らない様に注意しながら、重い体育館の扉を開けた。月明かりがワックスを何層も塗り固めた床に反射している。バスケットゴールは床と平行になるように折り畳まれ、床にはボールひとつ落ちていない。綾は周囲に注意を向ける。動くものは何も無い。意識を張りながら、対角線状に体育館を横切る。自分の履いているブーツの底が床を擦る音しか聞こえない。注意してステージの袖、体育倉庫の中をうかがうが、誰もいない。緊張をほぐす様にその場で伸びをして深呼吸をした。半ば諦め気味にイヤホンのスイッチを入れるが、相変わらず反応は無い。
「ここも怪しい所は無いか……。一階は粗方見たから、あとは二階の職員室と図書室……専門教室の準備室と、校長室……」
 額に手を当てて頭の中に学校の地図を思い浮かべ、人妖が潜んでいそうな場所に目星をつける。
 侵入してから一時間。このまま学校の外に逃げられれば、再び人妖の反応がキャッチ出来るまで待つしかない。
 綾は体育館を出ようと入り口を振り返る。
  人影。
 心臓が跳ね上がり、綾は思わず両方の拳を顎の高さに構えた。
 入り口側のバスケットゴールの下に男が立っている。男はコツコツと硬質な足音を立てながら綾に近づいた。徐々にシルエットが露になる。
「え? 校長先生?」
 綾は虚を突かれた表情をしながら無意識に呟いた。
「ええ、神崎綾さん。こんな時間にお会いするとは珍しい」
 男は自分の顎を撫で摩りながらゆっくりと綾に近づく。
 男の名は、桂木涼(かつらぎ りょう)。
 昨年、綾の通う誠心学園へ三十代後半という異例の若さで校長の職制で赴任してきた人物だ。三十代後半と言えば、誠心学園の教職員の平均年齢とほぼ同じである。若い教師達はともかく、保守的な考えを持った高齢の教職員達の中にはあからさまに鼻白んだ態度を取る者もいたり、創立者の縁故や何らかの権力の影響と根も葉もない噂を流す者もいたりしたが、三ヶ月もすると教師達は皆一様に涼に従う様になった。
 とにかく、仕事が出来た。
 普段は校長室に籠もり、表に出ることは少なかったが、対外的な交渉術に長け、内部の問題解決能力も高かった。古かった設備は一新され、定期的に外部講師を招いての特別授業も好評だった。入学希望者も増え、元々偏差値の高い学校であったが、来年はさらに上がることは間違いなかった。また、生徒全員の顔と名前を記憶しており、廊下ですれ違った時は必ず生徒一人一人の名前を呼んで挨拶をした。
 当然、生徒からの、特に女生徒からの人気は高かった。
 長身痩躯だが、脂肪を削ぎ落とした筋肉質な体つき。墨の様な黒髪をオールバックに撫でつけた髪型は野性的で彫の深い顔によく似合っていた。また、切れ長でどこか加虐的な光を宿した瞳も人気があった。
「止まって下さい」
 綾が左の掌を涼に向ける。涼が肩をすくめながら歩を止めた。
「先生、こんな時間に何をされているんですか?」
 綾は威嚇する様に両方の拳を腰に当て、首を傾げながら刺のある声で訪ねた。吊り目がちの目で相手を睨む。迫力があると言うよりは、背伸びをした子供の様な可愛らしい仕草だった。
 涼は綾の身体を舐め回す様に眺めた。透明感のある明るめの茶髪。気の強そうな童顔に不釣り合いな大きさの胸。ショート丈のセーラー服からはくびれた腹部と可愛い臍が覗き、健康的な太腿が短いスカートから伸びている。
 思わず生唾を飲み込む。その身体は近くで見ると、増々魅力的に見える。教員同士の宴席の際には酒の勢いもあって、生徒を下劣に値踏みする教師もいた。その中で必ず名前が挙がる生徒の一人が綾だった。
「ふふふ……私も同じ質問をしてもよろしいですか?」
 涼が右の拳を口に当てながら近づく。
「確かに私は普段個室に籠っているため、生徒達にとって暇そうに見えるかもしれませんね。その暇人がこのような時間に学校内を徘徊している。確かに怪しいと思うでしょう。しかし、校長という役職はなかなか忙しいものです。生徒や教師全員の管理から教育委員会をはじめとした外部機関への折衝。予算や経費のチェックや新しい教育プログラムの企画など……。それに、最後まで残っていた教員は学校内全ての施設の見回りをした後、施錠して帰宅することになっています。生徒達の安全を守ることは我々の最も重要な使命のひとつですからね。さて、私がこの時間に学校をうろついていることに、何か問題でもありますか?」
「いえ……それは……」
「よろしいですか? ではこちらの質問です。神崎さんこそ、このような遅い時間に何をしているのですか? 二十一時を過ぎると誠心学園はオートロックがかかり、外部からの侵入は不可能なはずです。神崎さんは確か部活動に所属していませんでしたね? この時間まで残って何をしているのですか? もしくは、何らかの方法で鍵を開けて侵入したのですか? 疑う訳ではありませんが、もし後者の場合、不法侵入ということになりますが……」
「あ……いえ……その……」
 綾は咄嗟に嘘がつけない性格のため言葉に詰まった。顎を汗が伝う。
「それにその格好は何ですか? どこかの制服のようですが、誠心学園のものではありませんね。ずいぶんと露出が多いみたいですが……。しかも土足で校内を歩き回るとは何事ですか?」
「あ……いえ……その……探し物を……」
「何を探しているのですか? よろしければ手伝いますが?」
 涼がずいと綾に歩み寄る。その顔には笑みが浮かんでいた。綾が探し物等していないことなど百も承知なのだろう。言い訳が出来ない状況に綾は焦った。状況的に見て、学校のものではないセーラー服を身に纏い、土足で鍵のかかった校内を徘徊している綾の方が異質だ。この時間に教師が残っているはずが無いと捜索を優先した判断が裏目に出た。軽く長いパニック。その隙を見逃さず、涼が音も無く綾の眼前に近づいた。
「……え?」
「実は私も探し物をしていましてね……」
 ズグン……という重い衝撃が、綾の腹部から全身に水面を伝う波紋の様に広がった。
「誠心学園に忍び込んだ、アンチレジストの戦闘員を探しているのですよ……」
「あ……? え……? ぐぷッ?!」
 綾の腹部……ちょうど布の無い剥き出しの生腹に、骨張った涼の拳がめり込んでいた。綾の身体がくの字に折れる。無意識に拳を抜こうと涼の手首を掴んだ。着弾の直後は無痛だった。ただ悪意を持った石塊を腹に埋められた様な不思議な感覚があり、その直後、粘つく様な激しい苦しみが脊椎を伝わって脳天に達した。
「がふッ?! ッぁ……うぐっ……」
 完璧な不意打ちを喰らい、綾は嘔吐いた。涼が拳を抜き、綾の身体からふっと力が抜ける。涼は膝から崩れ落ちそうになる綾の身体
を支える様に、鳩尾を突き上げた。
「ひぐぅっ?!」
 ごりっ……という硬質な振動。心臓を石臼ですり潰される様な激痛に、綾は悲鳴を上げた。
 綾は一瞬目の前が暗くなり、涼の腕に倒れ込む様に身体を預けた。大粒の涙が頬を伝い、口内には粘度の増した唾液が溢れる。
 拳を抜かれると、綾はつっかい棒を外された様に膝から崩れ落ちた。涼はセーラー服のリボンを掴んで強引に立たせる。いや、掴み上げるという表現が近い。綾の足は完全に地面から浮いてる。衣服で首が絞まるり、必死に涼の手首を掴んで抵抗する。上着がめくれ上がり、形の良い下乳が覗く。綾は任務中は締め付けられる感覚を嫌い、ブラジャーを身に付けていない。涼は満足そうにそれを眺めると、拳を握って腹部に狙いを定めた。程よく鍛えた筋肉と僅かな脂肪を包む様な滑らかな肌。すっと縦に切れた臍。その中心に拳を突き込む。
「ぎぅッ……くっ……!」
「ほぉ……」
 予想外の硬い感触に、涼は目を少しだけ見開いた。
 涼の拳は僅かに綾の腹筋を凹ませただけで止まった。綾は腹筋を固めて攻撃に耐えた。歯を食いしばり、涼を見下ろす体勢で睨みつける。涼が掴んでいたリボンを解放する。綾は着地と同時にバックステップで距離を取ると、呼吸を整えた。
「げほっ! けほっ! はぁ……はぁ……んくっ……まさか……先生が……」
「こちらも驚いていますよ。貴女の様な魅力的な生徒がアンチレジストの戦闘員だったとは。当面は栄養補給に困らなくて済む」
「……知ってたの? 私がアンチレジストの戦闘員だって……」
「ふふ……以前から貴女には目を付けていましたよ。その魅力的な身体は近いうちに栄養源としていただくつもりでした。どのように犯してやろうかと考えるのは、とても楽しかったですよ」
 綾は背筋に冷たいものを感じ、無意識に後ずさりした。
 涼の瞳は、人妖特有の蛇の様に縦に割れた瞳孔に変化していた。微かに赤く光りながら、綾の身体を足先から頭まで嬲るように見回している。綾は肩幅に足を開き、左足を一歩前に出すと、両方の拳を上げて構えた。
「不意打ちが当たったくらいで、いい気にならないでよね……」
 両足を踏みしめる。ブーツのゴム底が光沢のある床と擦り合い、甲高い音を立てた。
「もう先生が……いや、お前が人妖だって分かったからには容赦しないから! 今から謝っても無駄よ!」
「ふふ……お手柔らかに」
 涼は両手を床にだらりと垂らすと、挑発する様に顔をずいと前に出した。綾の表情がさっと険しくなる。
「この……なめるなぁ!」
 とん、と軽い音を立てて綾の脚が床を蹴った。その音からは想像出来ないほど速く、綾の顔が涼の近くまで迫る。涼はその顔を掴もうと手を出した。綾の顔が消える。「ここよ……」という静かな声が涼の足元から聞こえた。綾が地面にしゃがみ込んでいる。綾の右手に嵌めているグローブが音を立てて軋むほど強く握られている。立ち上がると同時に、右手を突き上げた。涼の細い顎が跳ね上がり、一瞬身体が浮く。綾は右アッパーを放つと同時に、身体を捻りながら左の拳を脇の下に引き絞っていた。捻れた胴体が戻る勢いを利用して、涼の鳩尾を目掛けて拳を突き抜く。
 涼の大柄な身体が後方に弾け、背中から体育館中央の床に落下する。綾はふっと息を吐くと、警戒しながら涼に近づいた。距離を取りつつ、両方の拳を腰に当てて涼を見下ろす。
「油断して挑発なんかするからよ……。どうする? まだやる? 抵抗せずに大人しく拘束されるなら、これ以上危害は加えないけど? イエスだったら、両手を頭の後ろに組んでうつ伏せになりなさい」
 両方の拳を腰に当てながら首を傾げて、涼に問いかける。この仕草はどうやら綾の癖らしい。
 涼の目が開く。
 両足を上げ、反動を利用して跳ね起きる。
「……まだやるの? 後悔するわよ……?」
 綾は訝しんで距離を取り、構え直す。自分の攻撃は完璧に決まったはずだった。得意の殴打技。しかも持ち前の瞬発力を生かして相手の懐に潜り込んでの一撃は必勝の技だ。この技で綾は今まで参加した実戦において、ほとんど一撃で人妖を倒してきた。多くは賤妖と呼ばれる、人妖に比べて能力的に劣る相手であったが、それでも不覚をとり再起不能になる戦闘員も少なくない。
 くっくっと涼が笑いながら、首を左右に傾けた。ぱきぱきという音が綾の耳に届く。
「一方的な展開では面白くないでしょう? 私は自信に充ち溢れていた顔が絶望に変わる瞬間がたまらなく好きなもので……丁度今の綾さんの様な顔がね……」
「大した自信じゃない……。それなら鏡で自分の顔でも見てなさいよ!」
 綾が地面を蹴る。正面からの突進。そして、突進からの急激な方向転換。かがみ込みながら、涼の後方右四十五度の位置に移動する。一瞬で死角に入るため、常人であれば綾が消えた様に見える。
「やあっ!」
 気合いと同時に放つ、脇を締めたボディーブロー。涼の右脇腹上部、肝臓の位置を正確に貫く。ごつッ……という重い音の後、異様に固い感触が綾の拳から肩に抜ける。
 涼は薄笑いを浮かべながら綾を見下ろした。
「…………え?」
「惜しかったですね。今のはなかなか響きましたよ……。もう少し威力が高ければかなり効いたでしょう」
「嘘……まともに入ったのに……」
「綾さんは他の戦闘員とは違うみたいですね。今まで私に挑んできた戦闘員とは、スピードや威力が段違いだ。しかし、生憎私は友人の強力の元、身体強化を施しています。あなたの攻撃では傷が付かない程度に……」
「くっ……このッ!」
 正面からの攻撃。鳩尾、喉、腹へ無呼吸での乱打を叩き込む。涼は防御すること無くすべてを身体で受け止めたが、ダメージはありそうも無かった。
「ぷはッ! はぁ……ふぅッ!」
 大振りの顔面への殴打。綾のセミロングの髪の毛から汗の飛沫が舞い、月明かりに反射して輝く。綾の拳は唸りを上げながら涼の鼻へと向かうが、まるで時が止まった様にピタリと動きが止まった。
「ああっ?! 嘘……」
「そう……良い表情になってきましたね……」
 涼の腕が獲物に襲いかかる蛇の様に動き、綾の手首をがっしりと掴んでいた。そのまま力任せに上へと持ち上げる。身長差のある綾がつま先立ちの姿勢になった。涼は腹部ががら空きに鳴った瞬間を見逃さず、鈍器の様な拳を綾の腹に突き込んだ。
「うぐぅッ?!」
 腹筋が伸び切っていたため、拳はまるで餅を突く様にずぶりと綾の腹にめり込んだ。衝撃で綾の目が大きく見開き、大粒の涙が溢れる。
「さて、そろそろ反撃しましょうか?」
 涼は綾の手首を話すと、セーラー服のリボンを掴んで力任せに綾の身体を引き寄せた。引き寄せる勢いを利用し、再び拳を腹に埋める。
「ぐぶッ?! げぼぉッ! あ……あぁ……」
 まるでバットのフルスイングを受けた様な衝撃が腹から脳天へ突き上がった。崩れ落ちそうになる身体を涼が支え、綾の腹に連打を叩き込む。
「ゔッ! うぐッ! ごぶッ! ゔぅッ! あぐぅッ!」
 皮膚を打つ音とは違う、重いものが内部に埋まる湿った重い音が体育館に響き渡る。綾は口を開けっ放しで腹を突き上げられる度に悲鳴を上げた。意識が飛びかけているため、まともに腹筋を固めることも出来ず、涼の攻撃をほとんど無防備で受け入れた。
 ごりっ……と骨同士がぶつかる音が聞こえた。涼の拳が綾の鳩尾を抉る際に、肋骨と擦れたのだろう。
「んぶぅッ?!」
 綾は口をすぼめて悲鳴を上げた。心臓を突かれ、鼓動を無理矢理乱されたことによる、ぞわりと背中を駆け上がる異質な苦痛。
 綾は顔を上げようとしたが、かくんと糸が切れた様に頭が落ちた。その顎を掴む様に涼が支える。
「あ……ぁ……」
「ほぉ……ギリギリですが、今の攻撃を受けて失神しないとは……。攻撃力もさることながら、タフさも兼ね備えているらしい。今日は本当に楽しめそうですよ」
「はっ……はぁ……はぁ……」
 綾は小刻みに震えながら、焦点の合わない目で涼の顔を見る。磨りガラスの様な視界の先に、満足そうに笑う涼の顔があった。
「本当に良い表情だ……ファーザーもなかなか目が高い……」
「ふ……ファーザーを……知ってる……の……?」
 思わぬ名前が涼の口から発せられ、綾は思わず聞き返した。
 綾の所属している対人妖組織アンチレジストのボス、ファーザー。人妖が出没し始めたタイミングとほぼ同時に、アンチレジストの元となる組織を築いた人物だ。その性質上、素性は明らかにされていない。指示はもっぱら文書か加工された音声のみで伝えられ、姿や年齢は不明。しかし構成員の間では、組織の運営にかかる費用、戦闘服や通信器をはじめとした物資、果ては構成員の給与までファーザーの私財から出ていることから、社会的地位がかなり高い人物か、もしくはその関係者ではないかと噂されている。
「ええ……多少は知っています。それより、もう少し楽しませてもらいますよ。失神しない様に加減しますが、気をしっかり持って下さい。夜はまだ、長いですから……」
 涼は拳を握りしめ、綾の腹部に狙いを定めた。


AYA

涼の放出は数十秒続き、綾の髪や顔中、口内や上半身までもどろどろに染め上げていった。

「えぅ・・・ああぁ・・・はっ・・・はぁあ・・・」

「ううっ・・・く・・・。こんなに大量に出るとは・・・。どうですか?一番強力な特濃チャームの味は?たとえあなたでも、もう身体の制御が効かないはずだ」

「あ・・・あぅ・・・あ・・・」

綾はとても男性一人で放出したとは思えない量の白濁を顔で受け止めた後も、真っ白にコーティングされた舌を出しながら光を失った目で男を見上げ続けた。

「さぁ、口に溜まったものを飲みなさい」

「うぅん……ごくっ…ん…んふぅぅぅ」

「くくくく、素直で良いですよ。さぁ、これを舐めて綺麗にしなさい」

「はぁっ……はぁぁ、う……あぁ……」

涼は一歩前に出ると、放出したばかりだというのに硬度を保ったままの男根を突き出した。綾は左腕で腹部をかばうようにおさえながら、吸い寄せられるように涼の男根を咥えようとする。しかし、寸でのところで目にわずかに光が戻り、動きが止まる。

「だめ……友香……友香を……助けるまで……負けられない……」

「こいつ……ここまで強情とは…。まぁいい、なら死ぬ寸前まで痛めつけてやる」

涼は新しい縄跳びを取り出すと、元の体制に綾を縛り直した。

「まだまだ…これからですよ。組織の場所を喋りたくなればいつでもどうぞ」

喋れば、楽になれる。このままでは殺されるかもしれない。恐怖と苦痛と悔しさで目からは自然と涙があふれる。もう喋ってしまおうか。組織の本部と訓練場の場所を喋り、この場を凌いで家族の元へ返ろうか。なぜ自分が顔も知らないファーザーの為にここまでしなければならないのか?
一瞬のうちに様々な考えが浮かんでは消えていったが、綾は決して喋らなかった。頭の片隅に常に浮かぶ友香の顔。一緒に頑張ってきた友香がこの男に弄ばれたかもしれないのだ。絶対に敵を討ちたい、いや、討てなくても屈服だけは絶対したくない。

「……絶対に…お前なんかに…屈しないから……」

「………すばらしい。死ぬまでいたぶってあげますよ」

涼の拳がギチギチと音を立てるほど強く握られ、弓を引き絞るような動作で綾の腹部に狙いを定める。

「次は……強力ですよ。これで……ぐぅっ!!??」

急に涼の顔つきが変わり、握られた拳がゆっくりと開かれていく。一瞬のことに、綾は何が起こったか分からなかった。涼がゆっくりと綾に背を向ける。後ろには綾の親友、友香が立っていた。

「ゆ…友香……なぜここに?わ…私に何をした…?」

「綾をひどい目に合わせたからよ。目を覚ましたら先生が居なかったから、探したらここから声が聞こえて…。よくも綾に酷いことを!」

涼の背中には調理室にあった包丁が突き刺さっていた。グレーのスーツがみるみる赤く染まっていく。涼は包丁をつかみ引き抜くとその先をまじまじと見つめた。

「馬鹿な…私達人妖の身体は刃物ごときで傷つけられるはずが……。!?、こ、これは、対人妖グローブか…」

「あなたの身体にグローブを当てて、その上から刺したわ。実戦では一撃も当てられなかったけど、やっと役に立った…」

「こんな、こんなもの…まさか本物か?ファーザーめ、実力の劣る友香には本物を渡したな…」

涼の手から包丁が落ち、大きな音を立ててコンクリートの床に落ちた。

「綾ならともかく、お前みたいな出来損ないが…一番強力なチャームに打ち勝っただと?おとなしく私のチャームを求めるだけの存在になっていればいいものを…」

「友香…本当に友香なの?」

「綾、待ってて。すぐに助けるから」

友香の中で人妖の強力なチャームの力よりも、綾との友情の力の方が勝ったのだ。もう少しで涼の言う通り思考もすべて停止し、人妖の体液のみを求める存在にまで堕ちるところだったが、綾の苦しむ声が聞こえ、邪悪な力に打ち勝つことが出来た。
涼は先ほどまでの余裕の表情が消え、憎悪の表情でゆっくりと友香に近づく。

「出来損ない出来損ない出来損ない…お前のような落ちこぼれに私が負けるはずが無い…せめてお前だけでもあの世に送ってやる!」

「たとえ出来損ないだって、ちゃんと生きて存在しているのよ!あなたこそ忘れないでよ、グローブはもうひとつあるんだから!」

「な、なんだと!?ぐがぁぁぁぁ!!」

友香は先にグローブが刺さっている包丁をもう1本取り出し、涼に突進するとそれを左胸に突き刺した。包丁は滑るように涼の身体に吸い込まれていった。

「が……馬鹿…馬鹿な…。私が…私がこんな奴らに…」

涼はよろよろと友香の脇をすりぬけ、扉に向かって歩き出す。友香はかまわず綾に駆け寄り、拘束している縄跳びを床に落ちていた包丁で切った。綾は友香に崩れるように倒れるが、しっかりと友香を抱きしめた。

「友香…ありがとう…。怖かった…。それに、友香も無事で良かった…」

2人の瞳からは自然と涙があふれ、友香も綾の頭をなでながらうなずいたところで、背後から涼の声が聞こえた。

「お、お前ら2人とも、覚えておけ…。ゴボッ…。これくらいでは私は死なんぞ…。近いうちに絶対に殺してやる。散々痛めつけてからな…。首を洗っておけ…」

涼はそれだけ言うと扉の前から消えた。あわてて友香が追いかけるが、体育館の中には既に涼の姿はなかった。床に落ちた血の跡を追うも、明らかに人が通れるはずも無い排気口の前で消えていた。

この後、綾は組織の息がかかった病院に入院するも命に別状は無く、1週間ほどで退院できた。その間も毎日のように友香が見舞いに訪れてくれた。1週間後に綾が学校を訪れると、涼は海外の教育研究機関に派遣されたことになっており、所々で悔しがっている女生徒の姿が見受けられた。数日後に赴任して来た後任の校長はどう見ても人妖には見えない平凡そうな年配の男で、女生徒はますます悔しがっていた。
しかし、綾と友香はどこかで涼が生きていることを確信している。もちろん海外になど行っておらず、自分たちの近くに潜んでいることを。「絶対に殺してやる」という涼の吐き出すような呪詛の言葉が2人の間から消えることは無かった。



レジスタンス 第一章  「case:AYA」

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